ギンリョウソウ
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#121 [向日葵]
椿は佐々木の動揺を無視して、1番使いたくない言葉を吐き出す。

「これは命令です。早く、今の内にお帰りになって下さい」

椿の強い眼差しに、佐々木はもう何も言わなかった。
この言葉を使った彼女が折れる事は無い事を知っているからだ。

―――――――……

30分後。
幸い雨はまだマシなままだった。
使用人達はやはり実家が心配だったのか、次々に帰って行った。

「本当に、大丈夫ですか……?」

最後に出ていく佐々木が、椿を心配そうに見つめる。

⏰:08/07/17 23:59 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#122 [向日葵]
椿はにこりと笑って1つ頷く。

佐々木はまだ躊躇いながらも、ドアを閉め、野々垣邸を後にした。

残された椿はため息を小さくする。

どうか、大久保さんも、佐々木さんも、皆の家族が無事でありますように……。

椿は静まりかえった屋敷の音を聞いていた。
今は雨の音だけだ……。

彼女は慣れていたのだ。
小さい頃から、こんな事は何度もあった。
きっとこんな雨は明日になればやむだろう。
そうすればまた明日皆に会える。
自分が、この1日を越えればいいだけなのだ……。

⏰:08/07/18 00:04 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#123 [向日葵]
*******************

要は家で本を読んでいた。

椿の家にまた行こうと思っていたがこの雨だ。
行ける訳がない。
となれば今日1日暇だ。

その時、要の部屋のドアがノックされた。
適当に要が返事をすると、執事が現れた。

「要さま、野々垣家のメイドの方がいらっしゃってます。佐々木さまとおっしゃる方です」

「佐々木……?」

名前を何度も頭の中で繰り返し、ようやく「あぁ……」と思い出す。

確か椿のお付きメイドみたいなので、20代後半くらいの……。

⏰:08/07/18 00:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#124 [向日葵]
「通してもいいよ」

しばらくして、佐々木が戸口に現れた。

「失礼します、要さま」

「いいよ。どうしたの?」

「無礼を承知でお願いを申し上げます……。お嬢様の……椿さまのそばに、いて欲しいんです……」

要は首を傾げる。

どうして自分が?
そばにいるのなら他の使用人や、この佐々木だって、いればいいじゃないか、と思う。

「そばに、と言っても、この雨なんだけど」

「ではせめて、お電話をしてはもらえないでしょうか……?」

⏰:08/07/18 00:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#125 [向日葵]
「何故する必要が?」

佐々木は悲しい顔をした。
少し目を伏せながら、また口を開く。

「私達使用人は、今日は帰るように命令されました」

命令?あの椿が?
さらに首を傾げたくなったー

「何で?」

「この天候だからです。家に何かあれば大変だからって、この時期にはよくるんですか」

⏰:08/07/18 00:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#126 [向日葵]
>>125

誤]よくるん
正]よくある

⏰:08/07/22 00:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#127 [向日葵]
あ、間違った

誤]よくるんですか
正]よくあるんですが

すいません

⏰:08/07/22 00:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#128 [向日葵]
「でも急に何故……」

「新人メイドの大久保さんと言う方の実家の近くで、土砂崩れがあったそうです」

「大久保?」

「なんですか要さま」

たまたま部屋の前を通りすぎた、要の運転手である大久保は足を止めた。

「お前兄弟いるのか?」

「いいえ」

「なぁんだ。いいよ、行って」

なんで呼ばれたのか分からない運転手大久保は首を傾げながらも素直にその場を去って行った。

⏰:08/07/22 00:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#129 [向日葵]
「つまり、今椿はあの屋敷に1人ってこと?」

「ハイ……」

「でも昔からよくある事なんだろ?じゃあ椿は慣れっこじゃないのか?」

佐々木はお腹の前辺りで指を組み合わせてうつ向くと、悲しそうに微笑んでゆっくりと首を横に振った。

「あの方は、決して寂しくても寂しいと言いません。辛くても辛いと言いません。誰よりも自分を呪っている方ですから……」

「呪い……?」

要の脳裏に、儚げに笑う椿の姿が一瞬浮かんだ。
佐々木は腕時計をちらりと見てから、口を開いた。

「自分のせいで、お母さま、つまり、奥さまが亡くなったと思っているからです」

⏰:08/07/22 00:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#130 [向日葵]
要は軽く目を見開いた。

「どうして……」

「これ以上は私から言えません。いえ、言いません……。続きは是非、椿さまの口からお聞きになって下さいませ……」

それから佐々木は「失礼します」と言って要の部屋を後にした。

1人部屋にとり残された要は、読みかけの本を手に取り、またすぐに机に置いた。
窓の外はまだ昼を過ぎたところだと言うのに暗く、電気をつけるほどだ。

こんな暗い中、あの広い屋敷に、しかもたった1人で椿がいるのかと思うと、さっきの脳裏に浮かんだ儚げな微笑みが、寂しげに思うのだった。

⏰:08/07/22 00:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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