ギンリョウソウ
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#136 [向日葵]
[寂しくは、ないか]

「……寂しい……か……ですか……」

ずっと、見て見ぬフリをしていた。
雨の音しか響かないこの屋敷は不気味で、少しの物音ですら過剰に反応してしまう。

「あ……」

動けない……。

しっかりして、と、微かに震えてしまう手で足を叩く。
赤ん坊みたいにハイハイするような形で、なんとか自分の大きなベッドまで辿り着いた。

ベッドに這い上がり、薄いシーツを頭から体に巻きつける。

⏰:08/07/24 00:56 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#137 [向日葵]
恐怖と自分の間に、薄いシーツが挟んだおかげで、少しだけ怖くなくなった。
そんな事を思いながら、ぼんやりと窓の外を見る。

相変わらず雷も雨も止まない。

そういえば1度、台風の目に入った事があって、驚く程静かだったのを覚えている。
まるで世界で自分1人しかいないんじゃないかと思った。

その時の事を思えば、まだ音が聞こえてる方がマシなのかもしれない。

シーツを握りしめて、椿はこてんとベッドに横たわった。
静かに目を閉じれば、自然と夢の世界へと旅立っていった。

――――――――……

ピチャ……と音が聞こえた気がした。
うっすらと目を開けた椿は、寝ていたのかと、まだ眠い目を擦る。

⏰:08/07/24 01:03 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#138 [向日葵]
窓がガタガタ揺れる。
風も出てきたらしい。

先程より空は暗くなり、それと同時に椿の部屋も暗さが増した。

蝋燭か、懐中電灯は無かっただろうか、とシーツを巻いたまま床に降りようとした時だった。

キュッ……と、何かが擦れる音がした。

椿はハッとして、床に降りる足を止める。
そういえば、自分は水が滴る音のようなもので目が覚めたのだ。
でも水気があるのは窓だけで、しかもその窓はしっかりと閉めてあるから雨水がこちらへ漏れてくる事はまず無いのだ。

「じゃあ……?」と思った時、またキュッ……と音がした。

⏰:08/07/24 01:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#139 [向日葵]
椿は息をのむ。

「な……何……?」

キュッ……という音は、段々と近づいてくる……。
ベッドの上で、椿は後退り、枕元に辿り着く。

その間にも、音は止まず、大きくなっていく。

全神経を集中させて、ドアを見つめる。
するとキュッ……という音は、椿の部屋の前で消えた。

いや消えたのではない……。

椿の部屋の前で止まったのだ……。

「どうして……」

⏰:08/07/24 01:13 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#140 [向日葵]
>>135

誤]今日の限って、こんなにも
正]今日に限って、何故こんなにも

⏰:08/07/24 11:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#141 [向日葵]
ガタガタ震えだす体をシーツと一緒に巻き付けるようにして自分の腕で抱く。

ギュッと目を瞑り、うつむく。

ゆっくりとドアが開けられた時、椿の恐怖はピークに達した。

「――っ!」

息を吸い込んで、音にならない悲鳴を上げる。

「何をやっているんだ君は……」

この声は……。と椿は固く閉ざしていた目をゆっくりと開く。
うつむいていた体も同じように起こして、暗さが増した室内を見渡し、ドアの方に目をこらした。

「まったく……呼び鈴を鳴らしても出てこないし……携帯に連絡してもやっぱり出ないし……」

⏰:08/07/27 01:56 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#142 [向日葵]
キュッと音を鳴らしながら要は椿の部屋へ入ってくる。
その音と共に水の滴る音も聞こえる。

微かな光のおかげで、椿の近くまで来た要の姿が見えた。
その姿はびしょ濡れになっていた。

驚いて要に見いる椿の視線に要は気づく。

「ちょっとした手違いで濡れただけだよ……。気にしなくてもこんな事で風邪をひく程、僕の体は柔じゃないから」

手違いでそんなに濡れる訳が無い。
もしかして、急いで駆けつけてくれたのだろうか……。
……まさか、そんな訳……。

⏰:08/07/27 02:05 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#143 [向日葵]
「あの……何か拭くものをご用意しますね……」

「いいよ。すぐ乾く」

「でも……」

「言ったでしょ?そんな柔じゃないって」

言いながらドスンとベッドに腰を下ろす。
そして椿をじっと見つめる。

「そんなの巻いて……やっばり寂しかったんじゃないか」

ドキリとして、椿は口ごもり、顔を赤らめる。
暗くて良かった。

「寂しくは……ないですわ……。少し寒い気がしたので……」

暗くなければ、こんな強がり言えない。

⏰:08/07/27 02:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#144 [向日葵]
しかし要は何もかもお見通しだと言うようにクスリと笑った。

「寒いのなら頭から被る必要はないと思うよ?いい加減素直に恐かったと言ったらどう?」

確かに恐かったけれど、いつもはそんな風には思わなかった。
要が「寂しいか?」等と訊くから、隠し通していた形のないものがはっきりとしてしまったみたいで……。

だが結局、椿は寂しかったのは事実なのだ。
それが恐怖を呼び、今に至った。
それでも椿は言った。

「……大丈夫です……」

椿がそう言った後、沈黙が少しの間2人を包んだ。
聞こえるのは、雨と、風と、風に揺れる窓の音だけ……。

⏰:08/07/27 02:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#145 [向日葵]
そして要がため息をついた。

「何なんだ……君は……」

「え……」

ぐいっと腕を引っ張られ、間近で要と見つめあう形になった。
微かな明かりで見える要の顔は、機嫌が悪いと言うよりは怒っているように見えた。

「僕は君の婚約者なんだ。君が誰にどんな強がりを言おうとそれは勝手だ。だけど、こんな時くらい弱みを僕に見せる事すらしてくれないのかっ!」

椿は目を見開く。

もう要は自分の気持ちに気づいていた。

可愛いとか可愛くないとかどうでもいい。

⏰:08/07/27 02:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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