ギンリョウソウ
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#140 [向日葵]
>>135誤]今日の限って、こんなにも
正]今日に限って、何故こんなにも
:08/07/24 11:58
:SO906i
:☆☆☆
#141 [向日葵]
ガタガタ震えだす体をシーツと一緒に巻き付けるようにして自分の腕で抱く。
ギュッと目を瞑り、うつむく。
ゆっくりとドアが開けられた時、椿の恐怖はピークに達した。
「――っ!」
息を吸い込んで、音にならない悲鳴を上げる。
「何をやっているんだ君は……」
この声は……。と椿は固く閉ざしていた目をゆっくりと開く。
うつむいていた体も同じように起こして、暗さが増した室内を見渡し、ドアの方に目をこらした。
「まったく……呼び鈴を鳴らしても出てこないし……携帯に連絡してもやっぱり出ないし……」
:08/07/27 01:56
:SO906i
:☆☆☆
#142 [向日葵]
キュッと音を鳴らしながら要は椿の部屋へ入ってくる。
その音と共に水の滴る音も聞こえる。
微かな光のおかげで、椿の近くまで来た要の姿が見えた。
その姿はびしょ濡れになっていた。
驚いて要に見いる椿の視線に要は気づく。
「ちょっとした手違いで濡れただけだよ……。気にしなくてもこんな事で風邪をひく程、僕の体は柔じゃないから」
手違いでそんなに濡れる訳が無い。
もしかして、急いで駆けつけてくれたのだろうか……。
……まさか、そんな訳……。
:08/07/27 02:05
:SO906i
:☆☆☆
#143 [向日葵]
「あの……何か拭くものをご用意しますね……」
「いいよ。すぐ乾く」
「でも……」
「言ったでしょ?そんな柔じゃないって」
言いながらドスンとベッドに腰を下ろす。
そして椿をじっと見つめる。
「そんなの巻いて……やっばり寂しかったんじゃないか」
ドキリとして、椿は口ごもり、顔を赤らめる。
暗くて良かった。
「寂しくは……ないですわ……。少し寒い気がしたので……」
暗くなければ、こんな強がり言えない。
:08/07/27 02:10
:SO906i
:☆☆☆
#144 [向日葵]
しかし要は何もかもお見通しだと言うようにクスリと笑った。
「寒いのなら頭から被る必要はないと思うよ?いい加減素直に恐かったと言ったらどう?」
確かに恐かったけれど、いつもはそんな風には思わなかった。
要が「寂しいか?」等と訊くから、隠し通していた形のないものがはっきりとしてしまったみたいで……。
だが結局、椿は寂しかったのは事実なのだ。
それが恐怖を呼び、今に至った。
それでも椿は言った。
「……大丈夫です……」
椿がそう言った後、沈黙が少しの間2人を包んだ。
聞こえるのは、雨と、風と、風に揺れる窓の音だけ……。
:08/07/27 02:16
:SO906i
:☆☆☆
#145 [向日葵]
そして要がため息をついた。
「何なんだ……君は……」
「え……」
ぐいっと腕を引っ張られ、間近で要と見つめあう形になった。
微かな明かりで見える要の顔は、機嫌が悪いと言うよりは怒っているように見えた。
「僕は君の婚約者なんだ。君が誰にどんな強がりを言おうとそれは勝手だ。だけど、こんな時くらい弱みを僕に見せる事すらしてくれないのかっ!」
椿は目を見開く。
もう要は自分の気持ちに気づいていた。
可愛いとか可愛くないとかどうでもいい。
:08/07/27 02:20
:SO906i
:☆☆☆
#146 [向日葵]
他人の為なら、何もかも諦めてしまいそうなこの少女を守るのは自分しかいないと感じている。
何が……好きになれそうにないだ……。
痛々しくて、驚く程健気な椿に、徐々に惹かれていたくせに……。
認めたくなかったのは、「好きになれそうにない」と言った彼自身の言葉に意地になっていたからだ。
でも……もう隠す必要はない。
隠そうとしても、椿のする事なす事に、こうして首を突っ込んでしまうのだから……。
「君の本音は僕だけが聞く。他の誰にも打ち明ける事が出来ないのなら、僕だけは君の為に耳を傾ける」
:08/07/27 02:25
:SO906i
:☆☆☆
#147 [向日葵]
椿の華奢な両肩を、腕を引っ張った力より優しく柔らかく掴む。
「だから、無理して笑うな。これは命令だ。君が使用人達に、無理矢理言うことを聞かそうと、この“命令”と言う言葉を使うなら、僕だって無理矢理にでも聞いてもらう」
椿は未だ驚いたように要を見る。
そんな椿の頭には疑問しか浮かばなかった。
どうして?
要は、自分の利益の為に婚約者を名乗っているだけなのに……。
どうしてそんな事が言えてしまうのだろう……。
しかも、そんな真剣に……。
「……しい……」
そして自分もどうしてしまったのだろう。
呟くように、椿が言葉を紡ぐ。
:08/07/27 02:31
:SO906i
:☆☆☆
#148 [向日葵]
「何……?」
「……い…………」
「はっきり言え!」
少し椿の肩を揺らす。
その肩が、小さく震えだす。
「怒らない。迷惑だなんて思わない……。だから言うんだ」
椿の呼吸が乱れだすのを、要は耳で感じていた。
それでも、言わせなきゃならない。
こうでもしないと、彼女の本音はずっと閉じこもってしまったままで、代わりに嘘の笑顔と言葉が出てくるのがクセになってしまう。
「さ……寂しい……です……っ」
吐息のように、でもはっきりと、彼女の声が聞こえた。
窓からの明かりが、椿の頬を流れる滴を、幻想的に光らせる。
:08/07/27 02:37
:SO906i
:☆☆☆
#149 [向日葵]
「ずっと……寂しかったんです……。でも私はこんな体で、小さな頃から皆さんに迷惑かけてて……」
溢れ出す涙と共に、何年も閉じ込めていただろう椿の心の言葉がポロポロとこぼれていく。
それん要は黙って受け止めていた。
「せめてワガママだけは言わないで……いい子でいようと……思ってました……。寂しいなんて言っては、また皆さんを困らせるって……こんな日はずっと……朝が来るのが待ち遠しかった……」
「うん……」
「私はこんな事でしか皆さんの為にする事は出来ないんです…………。だから……だか……」
:08/07/27 02:43
:SO906i
:☆☆☆
#150 [向日葵]
椿は両手で顔を覆って静かに泣く。
それを見ながら要は、過去椿に言った酷い言葉の数々を思い出し、自己嫌悪に陥っていた。
彼女は、要の言葉のトゲを刺したまま過ごしていたのだろうか……。
ぎこちなく手を伸ばし、椿の頭にかかっているシーツを取る。
そして改めて体に巻き付けてやる。
「そんなに自分を責めなくていい……。そんな事をしなくても、皆君が好きだよ……」
椿は首をゆっくり横に振った。
「そんな訳がない」とでも言いたいのだろうか……。
:08/07/27 02:48
:SO906i
:☆☆☆
#151 [向日葵]
「その証拠に、君のとこのメイドさんが、君のそばにいてやってくれと僕の所へ来たよ」
まだ濡れている目で、椿は要を見る。
要は椿の頬に流れた涙を拭うようにして、そっと触れた。
涙で濡れた頬は、少し冷たい。
「皆君を大事にしてくれる。だから、迷惑だなんて、思わなくていいんだ……」
椿はまた顔を歪めて両手で覆った。
そんな椿を、ふわりと空気を抱くかのように要は包みこんだ。
少しだけ、椿の体がハッと硬直する。
「君は、いらない存在なんかじゃないから……」
:08/07/29 01:04
:SO906i
:☆☆☆
#152 [向日葵]
優しく包みこまれ、優しい言葉を向けられたら、椿はまた一段と泣いた。
心のどこかでは、簡単に許してはいけない、この人に弱い自分を見せてはいけないと思っているのに、温かい腕からは逃げる事は出来ず、逆にすがりついてしまう。
せめて今だけは、要の気持ちを信じたいと感じる椿は、そう思う反面でこれが本当の要のような気もしていたのだった。
「明日になるまで……ずっとそばにいるよ……」
次から次へと流れてくる涙を止めようとは思わなかった。
要なら、受け止めてくれるように思った。
この寂しかった日々も。
この形容しがたい温かな嬉しさも……。
:08/07/29 01:11
:SO906i
:☆☆☆
#153 [向日葵]
[第4話]
「え、風邪ですか……っ」
爽やかな朝。
朝食を取っていた椿の耳に驚く出来事が入ってきた。
「ハイ。どうやら高熱をお出しになったみたいで……」
それを告げているのはいつも椿の面倒を見てくれている佐々木だ。
「大変……」
実は要が風邪で寝込んでいるという。
原因は2日程前の雨が原因と見られる。
椿は私のせいだと落ち込む。
:08/07/29 01:16
:SO906i
:☆☆☆
#154 [向日葵]
それに昨日も雨が降って、嵐程でもないのに要はまた来た。
もしかしてその時から体が辛かったのではないかと思えば、更に落ち込んだ。
膝に敷いていたナプキンをのけて、椿は立ち上がる。
「今日、学校の帰りにお見舞いへ行って参ります。帰りは遅くなると思います」
「かしこまりました」
―――――――…………
「椿椿椿ぃー!今日帰り、アイスでも食べて帰らない!?」
学校が終わる前、美嘉が無邪気に椿に笑いかける。
「あ、えと、ごめんなさい……。今日、要さまのお見舞いに行こうと思っているんです……」
:08/07/29 01:23
:SO906i
:☆☆☆
#155 [向日葵]
要の名前が出れば、美嘉の顔が険しくなった。
彼女にとって要は椿を苦しめる最低な奴としか認識されていないのだ。
「ほっとけばいいじゃんっ。忘れたの椿。アイツのせいで椿1回倒れたのよ?」
そう言われてしまっては椿も苦笑いするしかない。
でもあの嵐の日、自分がそう仕向けたとは言え、1人ぼっちになった自分を支えてくれたのは要だ。
要がいなければ、今こんなに心が軽くなってはいないだろう。
「それでも……行きます……。今日は、私が率先して行くと言ったので……」
:08/07/29 01:28
:SO906i
:☆☆☆
#156 [向日葵]
そう言えば、美嘉はため息をついた。
1度決めた椿を止めるのを無理と知っているから諦めの意味もこもっていただろう。
「風邪って言う口実でなんかされそるになったらすぐ報せなさい」
「何か……ですか……?」
「いい!?椿」
美嘉はズズイッと椿に顔を近づけた。
椿はパチパチと瞬きを繰り返し美嘉の話を聞く。
「風邪をひいたらなんでも言うことを聞いてくれるって勘違いする奴がいるの。それを利用して無理難題押しつけてくるんだからね!」
:08/07/29 01:34
:SO906i
:☆☆☆
#157 [向日葵]
椿は美嘉が言っている事が分からないながら、とりあえず相づちを打つ。
「アイツはその見本品よ……」
今にも口から火を吐きそうな恐ろしい顔をしながら、妙に力を入れて言う美嘉に、椿はやっぱり苦笑いを浮かべるしかなかった。
―――――――――…………
要の屋敷は椿の屋敷より大きい。
デザイン職なだけあって家もデザインされた作りになっている。
例えば玄関なんて床は透明ガラスで出来ていてその下にある空色の床が見えていたり、階段は木で出来ているが色はとてもポップで、段になっている所のみ赤、青、黄色で構成されている
:08/07/29 01:41
:SO906i
:☆☆☆
#158 [向日葵]
男でも女でも楽しめそうなこの空間に、椿は感嘆のため息をもらした。
「いらっしゃいませ、椿さま」
年若い従者が椿を迎える。
「こんにちわ。お忙しい所、押し掛けた形になって申し訳ありません」
「いえ、要さまもお喜びになることでしょう。案内させて頂きます」
柔らかく微笑んだ従者と椿は、要の部屋まで歩き始める。
歩きながら、ふと従者の方を見ると、その人の耳には小さな赤いピアスがされていた。
椿の家では使用人達はアクセサリー類のは禁止されているので、物珍しそうにじっと見つめる。
:08/07/29 01:47
:SO906i
:☆☆☆
#159 [向日葵]
その視線に気づいた従者は、椿ににこりと微笑む。
「これですか?要さまが似合いそうだからとプレゼントしてくださったんです。それと、私が要さまの友人のようになるようにと言う証でもあるようなのです」
柔らかい雰囲気をまとった彼にそのピアスをする事によって、その柔らかさが良い意味で少し無くなる。
「えと……お名前をお聞きしてもよろしいですか……?」
「もちろんです。大久保と申します」
そう言われれば、この頃入ったあのメイドを思い浮かべた。
「あの大久保さん……兄弟はいらっしゃいますか?」
:08/07/29 01:54
:SO906i
:☆☆☆
#160 [向日葵]
そう言うと、大久保はクスクス笑った。
「要さまにも言われましたよ。どうやら同姓の方が、椿さまのお屋敷にもいらっしゃるようで……」
「ハイ……そうなんです……」
「後から聞いた話ですが、その方大変だったそうですね……。でも、それを聞いて、要さまが「兄弟がいるのか」と尋ねた理由が分かったんです。私の事を心配して下さったようです」
と、大久保は足を止めた。
「椿さま。要さまは優しいお方です。たまに意地悪をおっしゃったりするかもですが……彼にとっては愛情の裏返しでもあるのですよ」
:08/07/29 02:00
:SO906i
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