ギンリョウソウ
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#180 [向日葵]
――――――――……

それから、椿は要を避けはじめた。

要もちょうど仕事が重なったのか、椿宅には来ない日が続いた。

それでも、1日1回は必ずメールや電話が来た。
でも椿は、電話には出なかった。
電話に出ないと次はメールが来て、必ず文面に「なんで電話にでないの?」と不機嫌な文が綴られていた。

椿はその事には触れず、「今日もお疲れさまでした。ゆっくり休んで下さい」としか送らなかった。

許そうとしていた、椿の要に対する心の領域侵入は、また椿によって拒まれ始めた。

⏰:08/08/04 02:35 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#181 [向日葵]
あれから1週間が経とうとしていた。

要にはこの1週間、やっばり会わなかった。
聞くところによると、現在フランスで開かれる小さなファッションショーの為に服のデザインをあれこれ考えているらしい。

どこか胸が重い椿は、うつむきながら玄関に入る。

「ただいま帰り……」

「椿」

穏やかな声だった。
ハッとして顔を上げた椿は、目を見開く。

「聖史……さま……」

そう呼ばれる人物は、穏やかな笑みを口元にたたえたまま椿に近づく。

⏰:08/08/05 02:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#182 [向日葵]
すらりした身長に細身の体格。
スーツが体にそって、よく似合う。

目は細めだが、それがまた彼の色気を醸し出している。
黒い長めの髪はサラサラだ。

聖史は椿に手を伸ばし、優しく頭を撫でた。

「久しぶりだね。元気だった?」

久しぶりの聖史に、椿はじわじわと嬉しさが込み上げ、胸が重い事を吹き飛ばし、笑顔になる。

「ハイ……っ!聖史さまも、お元気そうで……っ!」

「うん。久しぶりの休暇で、こちらに帰って来たんだ」

⏰:08/08/05 02:42 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#183 [向日葵]
「いつまでいられるんですか?」

「そうだね……。多分2週間ほど」

「じゃあ、沢山お話が出来ますね……っ!」

満面の笑みの椿を、聖史はふわりと抱き締めた。
驚く椿。
でも突き放す事は出来なかった。
特に他意はなく、親愛の意味で抱き締められてるのならば、突き放すなんて失礼な事はしてはいけないと思ったからだ。

「何してんの」

冷ややかな声が、玄関ホールに響いた。

⏰:08/08/05 02:47 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#184 [向日葵]
びくりと震え、振り向くと、そこに立っているのは、紛れもなく要だった。

要の目は、椿から、彼女を抱き締めている聖史に向けられた。

「君は誰かな。椿は僕のなんだけど。なに勝手に抱き締めてくれちゃってんの?」

「君は確か……葵 要君……?って事は椿、婚約者候補って、まさか彼の事?」

いつまでも放さない聖史にしびれを切らした要はズカズカと歩みより、力づくで椿を放させた。

そして今度は要がギュッと抱き締める。

そうされるだけで、椿は聖史に抱き締められた時よりも胸が高鳴っているのを知らないフリした。

⏰:08/08/05 02:52 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#185 [向日葵]
「“候補”なんかじゃない!僕はれっきとした“婚約者”だ!」

それだけ言うと、要は椿を引っ張って外へ連れ出そうとした。
が、椿がそれを拒む。

「か、要さま……っ。待ってください……っ!」

「待たない。君はどうも意識が薄いらしいから思いしらすべきだと思うね。だから僕の言う事を聞いてもらう」

「で……でも……っ」

「椿は誰のものなのか分かってるのか!」

そう言われても、例え要のものであっても、要は椿のものにはならないじゃないか。

⏰:08/08/05 02:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#186 [向日葵]
―――――ユイコ

知らない名を……椿じゃない名を、呼んだくせに……っ。

悔しい思いとは裏腹に、椿は脱力した。

言う事を聞かなければ。
最初からそう決めていたではないか。
何も感じないフリをしよう。
ただ笑顔でいよう。
そうすれば、何も辛い事なんてない……。

「……要さまの、ものです……」

静かに笑う椿を見て、要は目を見開く。
まただ……と。
また彼女は、自分に嘘をついていると……。

⏰:08/08/05 03:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#187 [向日葵]
「笑うな……」

「え?」

椿は笑顔を崩さない。
それにじれったさを感じた要は怒鳴る。

「どうして笑うんだ!無理に笑うなと言った僕の言葉を君はもう忘れたのか!僕の言葉は、君にとってそんな薄っぺらいものなのか!?」

ビクリと怯える椿を、後ろから聖史が引き寄せる。

「椿、彼は本当に婚約者なの?」

「さっきそう言った筈だ」

「それにしては、随分色々と強引だ。要くん。君は本当に椿が好きで婚約者を立候補したのか……」

「やめてください聖史さま……っ」

⏰:08/08/09 22:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#188 [向日葵]
椿が聖史の言葉を遮る。

本当の事を突き詰めても答えは分かっている。
要が自分との結婚を望むのは、利益があるからだ。

そんなの分かってる……。
分かってるのに……今、本人の口からそれを聞くのが嫌だった。

「私は幸せです……。要さまはとてもお優しい……。だから、そんな風に言うのは……やめてください……」

「……説得力ないよ椿。今の君は幸せそうになんか見えない」

「――――っ!」

「それはそちらの考えだろう?椿は幸せだと言ってるんだ」

⏰:08/08/09 22:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#189 [向日葵]
聖史が触れているのが嫌な要は、聖史を睨みながら椿の手をとる。

強引だと言われたので引っ張って椿を自分の所へ持ってきたいが、今は出来ずにいた。
何より聖史に何もかも分かった風に口をきかれるのが、要の癇に障る。

だが、聖史も負けてはいない。

「要くん、君は椿の性格を何1つ分かっちゃいないよ。椿は君の暇つぶしの道具じゃない。もっと大切にしてくれ」

「なんだと……っ!」

「聖史さま……っ」

「椿、まだ正式に婚約発表はしていないのだろ?なら……僕も立候補していいかな?」

⏰:08/08/09 22:41 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#190 [向日葵]
これには椿も要も驚く。

「椿、僕はね、幼い頃から君が大好きだったんだ……。なのにその君が、婚約したと聞いて胸が潰れそうだったよ。……けど」

聖史は要を睨む。
それも静かに怒りを含んだ目つきで。

「相手がこんな人なら、僕は納得しないよ」

「納得しようがしまいが僕が椿の婚約者だ。今更出てきても遅い」

「そうかな?見たところ椿の心は揺れ動いてるみたいだし……まだはっきりとしないなら、僕にだってチャンスはあると思うよ」

聖史は余裕なのか、微笑みを浮かべる。
それが挑発しているように見えて、要はこめかみの青筋を更に1つ増やした。

⏰:08/08/09 22:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#191 [向日葵]
そして行き場のない怒りは、椿へぶつけられた。

「椿、君もなんで否定しないの?そんなに僕じゃ不満って事かっ!?」

いきなり怒鳴りつけられた椿は驚き、目を見開いた。

「ふ、不満なんて……感じた事は……っ!」

あるけれど言うべきことではないし、今言っては火に油だ。
椿はそれ以上何を言っていいか分からず、口を閉じた。

「君は……僕じゃなくてもいいのか……?」

眉を寄せて、泣きそうな顔をする要に、椿は戸惑う。

⏰:08/08/09 22:53 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#192 [向日葵]
「要さま……」

「僕は……君が……」

言いかけて、要は口を閉ざす。

そして聖史を睨みつける。

本人にしか言いたくない事を、コイツの前で言う必要はないと思ったようだ。

「言っておくけど、売られたケンカは倍額で買う。こちらだってプライドがあるからね。でも、椿の事は、フェアで戦おうとは思わない。もともと椿は僕のものなのだから」

「プライドがあるのにフェアで戦わないなんておかしいよ」

「どうせフェアで無くなるのは分かってる。それとも何かい?君は椿の事を反則を犯してまで欲しいとは思わないのか?」

⏰:08/08/09 22:59 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#193 [向日葵]
これには、冷静を装っていた聖史もムカッときたのだろう。
眉を寄せて、怒りを露にする。

「そこまで言われると、心外だな。いいだろう。フェアに戦わないと言った言葉を後悔するといい」

フッと笑うと、要は踵をかえして玄関ホールを去って行った。

「あ……」と思った椿は、追いかけようとする。
が、聖史に腕を引かれた。

「追いかけてどうするの?あんな人だよ?椿が気を遣う必要なんてないよ」

「……放して……くださいませ……」

しばらく腕を掴んでいた聖史は、ゆるりと椿の腕を放した。

⏰:08/08/09 23:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#194 [向日葵]
そして椿は要を追った。

要は門までまっすぐ続く道を歩いている。

「か、要さま……っ!」

どうして追ってるか分からない。
ただ足が進むままに、椿は要の元まで走る。

「要さま……っ!」

さっきより少し大きな声で要を呼ぶと、要は足を止めてこちらを見た。

「……何……?」

少し冷たい要の言葉が、椿の胸に突き刺さる。
切なげに彼を見れば、彼も椿を見る目が切なく変化した。

⏰:08/08/10 00:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#195 [向日葵]
「私……私……」

「……椿は、さっきの人が好き?」

「え……?ち、違っ……!」

すると要がふわりと椿を抱き締める。
空気を抱くように抱き締められてると、その力は段々と強くなり、細い椿の体は少し痛みを感じた。

けれど椿は戸惑う事なく、要を受け入れていた。

「例えそうでも、争う事をやめろなんて言わないで。僕は戦う。そして完璧に君を僕のものにする」

「要……さま……」

⏰:08/08/10 00:51 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#196 [向日葵]
要は椿を放すと、近くで見つめる。
椿は胸が高鳴る。

「僕は…………。なんでもない……。とにかく僕は勝つつもりだから」

椿はどちらを応援するなんて考えていない。
ただ少し、ほんの少し、揺れ動いている自分の心が、聖史を好きになったらどうしようと思っている。

……でも、その方がいいのかもしれないとも思っている。

―――――ユイコ……。

切なげな声で、呼ばれたその名……。
まだ頭から離れない……。

⏰:08/08/10 00:55 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#197 [向日葵]
「……じゃあ、また明日……」

椿はゆっくりと頷く。

しかしそう言いながらも、要は動こうとしない。
どうしてだろうと要を見つめれば、要もじっと椿を見つめていた。

そしてゆっくりとこちらに身を乗り出し、椿の頬に唇を寄せた。

そうして踵をかえして、要はまた歩き出した。

椿はその後ろ姿を見つめながら、さっき唇が触れた場所にそっと触れる。

好きになっても、仕方ないのに…………。

⏰:08/08/10 00:59 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#198 [向日葵]
[第5話]

「おはよう椿」

朝食にと、部屋へ来た椿に、聖史は笑いかけた。

一方椿は、そこに聖史がいると知らなかったので、出かけた欠伸を止めた。

「お、おはようございま……。聖史さま、如何なさったんですか?」

「今日は僕が君を学校まで送ろうと思って」

昨日から椿を争う戦いは始まっているのだ。
どうやら聖史は先制攻撃を仕掛けてきたらしい。

しかし、椿の頭は要の事で一杯だった。

それはきっと、遠慮がちに触れた彼の唇のせいだろう。

⏰:08/08/10 01:05 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#199 [向日葵]
「椿、早く座りなよ」

「あ、ハイ……」

席に座り、椿は聖史と一緒に朝食を取り始めた。

―――――――――…………

「椿っ!聖史兄ちゃん帰って来たって!?」

学校に着くと、美嘉が椿に言った。

「ハイ、昨日から……」

「ひっさしぶりじゃぁん!美嘉も会いたい!!今日会いに行っちゃダメ!?」

「いいえ、いいですよ」

「聖史さんって?」

聖史を知らない越はまったく話についていけない。

⏰:08/08/10 01:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#200 [向日葵]
なので美嘉が越の方を向いて説明しだす。

「椿のお兄ちゃんみたいなので、財閥の跡取りなんだけど、めちゃくちゃ優しくていい人なんだ!美嘉にも優しくしてくれて、まさに理想の旦那さまって感じ!」

“旦那さま”というワードに、椿は密かにビクリとしていた。

今日も要はきっと来るだろう。

昨日の、あの要の悲しそうな顔……。
あんな顔にさせたのは自分だ。
……けれど、椿にはあの「ユイコ」という呟きがどうしても気になり、要に悪い事をしたと思う一方、要を責めている自分がどこかにいた。

「そういえば椿、アイツこの頃大人しく感じるけど、何もされてない!?」

⏰:08/08/10 01:15 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#201 [向日葵]
そう言われて、ポンと昨日頬にキスされたのを思い出した椿は、ほのかに顔を桃色に変えた。

それにショックを受けた美嘉は、逆に青い顔をした。

「ア、アイツ……っ!美嘉の椿にぃぃぃっ!!」

「ち、違います……っ!えと、そんな、美嘉ちゃんが思ってるような事は……っ」

「じゃあ、どうしたの?」

今度は越が訊いてきた。

椿は昨日触れられた場所に指先を触れながら、更に顔を赤くさせた。

「ほ……頬に……キ、キ、キスをされまして……」

⏰:08/08/10 01:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#202 [向日葵]
「越……美嘉保健室行って来る……」

「え?なんで」

「消毒液……」

「何考えてんの美嘉……」

とりあえず美嘉を止める越を見つつ、椿は帰ってからの事を考えていた。

一触即発なあの2人だ。
椿はどちらかと言えば要の機嫌が損なわないかが不安だった。

聖史はどこか冷静な部分があるが、要は血がのぼってしまえば殴りそうな気がするからだ。

でも……。

殴るほど、自分の事で怒るだろうか?とも椿は思った。

⏰:08/08/12 00:11 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#203 [向日葵]
――――――……

椿宅に来た要は、学校から帰って来たら横から婚約者を立候補するという非常識な奴と認識している聖史よりも早く椿を迎えようと思っていた。

―――が。

来てそうそう見たのは、その非常識な奴だった。

「やぁ要くん。こんなに早く来ても椿はいないよ」

言外で「ばーか」とでも言われてる気がした要は不機嫌に目を半目にする。

そして椿の部屋へ足を進める。

「待ってよ。少し話をしない?君が椿をどう思っているかちゃんと知りたい」

⏰:08/08/12 00:17 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#204 [向日葵]
「聖史さんとやら。僕は話す事なんかないよ。椿についてどう思ってるかだって?僕の態度を見れば一目瞭然じゃないか」

「まぁそう言わず。ライバルの事を知るのは大切だと思うよ?弱点を見つけれるかもしれないじゃないか」

そんなの椿に決まっているだろうと思った要だが、これ以上怒っていれば子供だとまたもや馬鹿にされそうなので、聖史と共に応接間へと行った。

足を組んでデカイ態度で座る要に対し、聖史は静かに腰を下ろし、上品に足を組む。

身についたものだろうが、要はそんな動作すら気にくわない。

「さて……要くんは椿の何に惹かれたのかな?」

⏰:08/08/12 00:23 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#205 [向日葵]
「黙秘権」

「嫌われてるなぁ……」

困ったように聖史はクスリと笑う。

「じゃあ質問を変えよう。君も気づいているだろうけれど、椿が自分自身すら騙して無理をしている理由を知っているかい?」

それを知らない要は聖史をジッと見つめる。
そういえば、自分の家に来た椿のところのメイドが言っていた。

――自分を呪っている。
……と。

「椿のお母さん、つまり奥さまが亡くなっているのは知っているよね?奥さまは椿と同じように、体が弱いお方だったんだ」

⏰:08/08/12 00:28 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#206 [向日葵]
控えめだが、性格、外見には恵まれていて、言い寄る男は多かったと言う。

しかし椿の母は、今の椿の父に一目惚れをし、2人は結ばれたのだと言う。
そして間に生まれたのが椿だった。

が、椿を産むと、椿の母の命が危ないと言われていた。
椿の父の必死の反対に、椿の母は首を横に振るのみ。

絶対産む。例え自分の命とひきかえにしても。

それが口癖だったらしい。

そして椿を産んで間もなく、椿の母は息を引き取ったのだと言う。

⏰:08/08/12 00:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#207 [向日葵]
要はありそうな話だと思いながらも、耳を傾け続ける。

「椿はやがて、自分が生まれたせいで奥さまが亡くなったと思ってね……」

それに追い討ちをかけるように、椿が成長する度、使用人達は口をそろえて言った。

[奥さまそっくりですね。奥さまがいたらさぞ喜ばれる事でしょう]

椿は、母と似ているのが嬉しかった反面、皆の母の対する親しみの思いが深いのを感じとっていた。

そんな、皆にとって大切な母を、自分が生まれた事によって死なせてしまった。

⏰:08/08/12 00:38 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#208 [向日葵]
――殺シタノハ、私ダ……。

要は目を見開いた。
聖史は話を続ける。

「それから椿は奥さまの話をしてとよく旦那さまにねだっていたらしいよ。奥さまの身代わりを自分がしよう。そうしたら、使用人達の心を満たせると思ったんだろうね……。そんな事抜きでも、椿は大切に思われているのに……」

必死にいい子になり、皆に迷惑をかけない自分になろう。
皆の幸せを1番に願える自分になろう。

かつて母が、そうだったように……。

要は片手で目を覆い、うつむく。

⏰:08/08/12 00:43 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#209 [向日葵]
何を……考えているんだ椿……。

「そんな椿だからこそ、ちゃんと彼女の裏の感情を分かってくれる人間じゃないと認めない。なのに、君はどうだ、要くん」

要は歯ぎしりしそうな程歯を噛み合わせた。

「自分の欲求や、不満で椿を振り回してはいないかい?」

うるさい……。

「椿を本当に、思いやってはくれてるかい?」

うるさい……。
うるさい……っ!

⏰:08/08/12 00:47 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#210 [向日葵]
どうしてお前にそんな事言われなくちゃならないっ!
どうしてお前から椿の事を聞かなくちゃならないっ!

要は机に置いてあったアイスコーヒーが入っているグラスを握りしめる。
そしてそれは、カシャンと音と共に砕ける。
中の液体と氷が、高そうな絨毯を汚していく。

「…………椿は、君と結婚するのを望んでいるのかな……?」

その言葉に、頭のどこかで派手な音を聞いた要は、近くにあった花瓶を思いきり聖史に向かって投げた。

―――――――――…………

何も知らない椿は、いつも通りの時間に美嘉と共に帰って来た。

⏰:08/08/12 00:53 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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