ギンリョウソウ
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#184 [向日葵]
びくりと震え、振り向くと、そこに立っているのは、紛れもなく要だった。

要の目は、椿から、彼女を抱き締めている聖史に向けられた。

「君は誰かな。椿は僕のなんだけど。なに勝手に抱き締めてくれちゃってんの?」

「君は確か……葵 要君……?って事は椿、婚約者候補って、まさか彼の事?」

いつまでも放さない聖史にしびれを切らした要はズカズカと歩みより、力づくで椿を放させた。

そして今度は要がギュッと抱き締める。

そうされるだけで、椿は聖史に抱き締められた時よりも胸が高鳴っているのを知らないフリした。

⏰:08/08/05 02:52 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#185 [向日葵]
「“候補”なんかじゃない!僕はれっきとした“婚約者”だ!」

それだけ言うと、要は椿を引っ張って外へ連れ出そうとした。
が、椿がそれを拒む。

「か、要さま……っ。待ってください……っ!」

「待たない。君はどうも意識が薄いらしいから思いしらすべきだと思うね。だから僕の言う事を聞いてもらう」

「で……でも……っ」

「椿は誰のものなのか分かってるのか!」

そう言われても、例え要のものであっても、要は椿のものにはならないじゃないか。

⏰:08/08/05 02:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#186 [向日葵]
―――――ユイコ

知らない名を……椿じゃない名を、呼んだくせに……っ。

悔しい思いとは裏腹に、椿は脱力した。

言う事を聞かなければ。
最初からそう決めていたではないか。
何も感じないフリをしよう。
ただ笑顔でいよう。
そうすれば、何も辛い事なんてない……。

「……要さまの、ものです……」

静かに笑う椿を見て、要は目を見開く。
まただ……と。
また彼女は、自分に嘘をついていると……。

⏰:08/08/05 03:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#187 [向日葵]
「笑うな……」

「え?」

椿は笑顔を崩さない。
それにじれったさを感じた要は怒鳴る。

「どうして笑うんだ!無理に笑うなと言った僕の言葉を君はもう忘れたのか!僕の言葉は、君にとってそんな薄っぺらいものなのか!?」

ビクリと怯える椿を、後ろから聖史が引き寄せる。

「椿、彼は本当に婚約者なの?」

「さっきそう言った筈だ」

「それにしては、随分色々と強引だ。要くん。君は本当に椿が好きで婚約者を立候補したのか……」

「やめてください聖史さま……っ」

⏰:08/08/09 22:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#188 [向日葵]
椿が聖史の言葉を遮る。

本当の事を突き詰めても答えは分かっている。
要が自分との結婚を望むのは、利益があるからだ。

そんなの分かってる……。
分かってるのに……今、本人の口からそれを聞くのが嫌だった。

「私は幸せです……。要さまはとてもお優しい……。だから、そんな風に言うのは……やめてください……」

「……説得力ないよ椿。今の君は幸せそうになんか見えない」

「――――っ!」

「それはそちらの考えだろう?椿は幸せだと言ってるんだ」

⏰:08/08/09 22:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#189 [向日葵]
聖史が触れているのが嫌な要は、聖史を睨みながら椿の手をとる。

強引だと言われたので引っ張って椿を自分の所へ持ってきたいが、今は出来ずにいた。
何より聖史に何もかも分かった風に口をきかれるのが、要の癇に障る。

だが、聖史も負けてはいない。

「要くん、君は椿の性格を何1つ分かっちゃいないよ。椿は君の暇つぶしの道具じゃない。もっと大切にしてくれ」

「なんだと……っ!」

「聖史さま……っ」

「椿、まだ正式に婚約発表はしていないのだろ?なら……僕も立候補していいかな?」

⏰:08/08/09 22:41 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#190 [向日葵]
これには椿も要も驚く。

「椿、僕はね、幼い頃から君が大好きだったんだ……。なのにその君が、婚約したと聞いて胸が潰れそうだったよ。……けど」

聖史は要を睨む。
それも静かに怒りを含んだ目つきで。

「相手がこんな人なら、僕は納得しないよ」

「納得しようがしまいが僕が椿の婚約者だ。今更出てきても遅い」

「そうかな?見たところ椿の心は揺れ動いてるみたいだし……まだはっきりとしないなら、僕にだってチャンスはあると思うよ」

聖史は余裕なのか、微笑みを浮かべる。
それが挑発しているように見えて、要はこめかみの青筋を更に1つ増やした。

⏰:08/08/09 22:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#191 [向日葵]
そして行き場のない怒りは、椿へぶつけられた。

「椿、君もなんで否定しないの?そんなに僕じゃ不満って事かっ!?」

いきなり怒鳴りつけられた椿は驚き、目を見開いた。

「ふ、不満なんて……感じた事は……っ!」

あるけれど言うべきことではないし、今言っては火に油だ。
椿はそれ以上何を言っていいか分からず、口を閉じた。

「君は……僕じゃなくてもいいのか……?」

眉を寄せて、泣きそうな顔をする要に、椿は戸惑う。

⏰:08/08/09 22:53 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#192 [向日葵]
「要さま……」

「僕は……君が……」

言いかけて、要は口を閉ざす。

そして聖史を睨みつける。

本人にしか言いたくない事を、コイツの前で言う必要はないと思ったようだ。

「言っておくけど、売られたケンカは倍額で買う。こちらだってプライドがあるからね。でも、椿の事は、フェアで戦おうとは思わない。もともと椿は僕のものなのだから」

「プライドがあるのにフェアで戦わないなんておかしいよ」

「どうせフェアで無くなるのは分かってる。それとも何かい?君は椿の事を反則を犯してまで欲しいとは思わないのか?」

⏰:08/08/09 22:59 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#193 [向日葵]
これには、冷静を装っていた聖史もムカッときたのだろう。
眉を寄せて、怒りを露にする。

「そこまで言われると、心外だな。いいだろう。フェアに戦わないと言った言葉を後悔するといい」

フッと笑うと、要は踵をかえして玄関ホールを去って行った。

「あ……」と思った椿は、追いかけようとする。
が、聖史に腕を引かれた。

「追いかけてどうするの?あんな人だよ?椿が気を遣う必要なんてないよ」

「……放して……くださいませ……」

しばらく腕を掴んでいた聖史は、ゆるりと椿の腕を放した。

⏰:08/08/09 23:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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