ギンリョウソウ
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#191 [向日葵]
そして行き場のない怒りは、椿へぶつけられた。
「椿、君もなんで否定しないの?そんなに僕じゃ不満って事かっ!?」
いきなり怒鳴りつけられた椿は驚き、目を見開いた。
「ふ、不満なんて……感じた事は……っ!」
あるけれど言うべきことではないし、今言っては火に油だ。
椿はそれ以上何を言っていいか分からず、口を閉じた。
「君は……僕じゃなくてもいいのか……?」
眉を寄せて、泣きそうな顔をする要に、椿は戸惑う。
:08/08/09 22:53
:SO906i
:☆☆☆
#192 [向日葵]
「要さま……」
「僕は……君が……」
言いかけて、要は口を閉ざす。
そして聖史を睨みつける。
本人にしか言いたくない事を、コイツの前で言う必要はないと思ったようだ。
「言っておくけど、売られたケンカは倍額で買う。こちらだってプライドがあるからね。でも、椿の事は、フェアで戦おうとは思わない。もともと椿は僕のものなのだから」
「プライドがあるのにフェアで戦わないなんておかしいよ」
「どうせフェアで無くなるのは分かってる。それとも何かい?君は椿の事を反則を犯してまで欲しいとは思わないのか?」
:08/08/09 22:59
:SO906i
:☆☆☆
#193 [向日葵]
これには、冷静を装っていた聖史もムカッときたのだろう。
眉を寄せて、怒りを露にする。
「そこまで言われると、心外だな。いいだろう。フェアに戦わないと言った言葉を後悔するといい」
フッと笑うと、要は踵をかえして玄関ホールを去って行った。
「あ……」と思った椿は、追いかけようとする。
が、聖史に腕を引かれた。
「追いかけてどうするの?あんな人だよ?椿が気を遣う必要なんてないよ」
「……放して……くださいませ……」
しばらく腕を掴んでいた聖史は、ゆるりと椿の腕を放した。
:08/08/09 23:06
:SO906i
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#194 [向日葵]
そして椿は要を追った。
要は門までまっすぐ続く道を歩いている。
「か、要さま……っ!」
どうして追ってるか分からない。
ただ足が進むままに、椿は要の元まで走る。
「要さま……っ!」
さっきより少し大きな声で要を呼ぶと、要は足を止めてこちらを見た。
「……何……?」
少し冷たい要の言葉が、椿の胸に突き刺さる。
切なげに彼を見れば、彼も椿を見る目が切なく変化した。
:08/08/10 00:46
:SO906i
:☆☆☆
#195 [向日葵]
「私……私……」
「……椿は、さっきの人が好き?」
「え……?ち、違っ……!」
すると要がふわりと椿を抱き締める。
空気を抱くように抱き締められてると、その力は段々と強くなり、細い椿の体は少し痛みを感じた。
けれど椿は戸惑う事なく、要を受け入れていた。
「例えそうでも、争う事をやめろなんて言わないで。僕は戦う。そして完璧に君を僕のものにする」
「要……さま……」
:08/08/10 00:51
:SO906i
:☆☆☆
#196 [向日葵]
要は椿を放すと、近くで見つめる。
椿は胸が高鳴る。
「僕は…………。なんでもない……。とにかく僕は勝つつもりだから」
椿はどちらを応援するなんて考えていない。
ただ少し、ほんの少し、揺れ動いている自分の心が、聖史を好きになったらどうしようと思っている。
……でも、その方がいいのかもしれないとも思っている。
―――――ユイコ……。
切なげな声で、呼ばれたその名……。
まだ頭から離れない……。
:08/08/10 00:55
:SO906i
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#197 [向日葵]
「……じゃあ、また明日……」
椿はゆっくりと頷く。
しかしそう言いながらも、要は動こうとしない。
どうしてだろうと要を見つめれば、要もじっと椿を見つめていた。
そしてゆっくりとこちらに身を乗り出し、椿の頬に唇を寄せた。
そうして踵をかえして、要はまた歩き出した。
椿はその後ろ姿を見つめながら、さっき唇が触れた場所にそっと触れる。
好きになっても、仕方ないのに…………。
:08/08/10 00:59
:SO906i
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#198 [向日葵]
[第5話]
「おはよう椿」
朝食にと、部屋へ来た椿に、聖史は笑いかけた。
一方椿は、そこに聖史がいると知らなかったので、出かけた欠伸を止めた。
「お、おはようございま……。聖史さま、如何なさったんですか?」
「今日は僕が君を学校まで送ろうと思って」
昨日から椿を争う戦いは始まっているのだ。
どうやら聖史は先制攻撃を仕掛けてきたらしい。
しかし、椿の頭は要の事で一杯だった。
それはきっと、遠慮がちに触れた彼の唇のせいだろう。
:08/08/10 01:05
:SO906i
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#199 [向日葵]
「椿、早く座りなよ」
「あ、ハイ……」
席に座り、椿は聖史と一緒に朝食を取り始めた。
―――――――――…………
「椿っ!聖史兄ちゃん帰って来たって!?」
学校に着くと、美嘉が椿に言った。
「ハイ、昨日から……」
「ひっさしぶりじゃぁん!美嘉も会いたい!!今日会いに行っちゃダメ!?」
「いいえ、いいですよ」
「聖史さんって?」
聖史を知らない越はまったく話についていけない。
:08/08/10 01:09
:SO906i
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#200 [向日葵]
なので美嘉が越の方を向いて説明しだす。
「椿のお兄ちゃんみたいなので、財閥の跡取りなんだけど、めちゃくちゃ優しくていい人なんだ!美嘉にも優しくしてくれて、まさに理想の旦那さまって感じ!」
“旦那さま”というワードに、椿は密かにビクリとしていた。
今日も要はきっと来るだろう。
昨日の、あの要の悲しそうな顔……。
あんな顔にさせたのは自分だ。
……けれど、椿にはあの「ユイコ」という呟きがどうしても気になり、要に悪い事をしたと思う一方、要を責めている自分がどこかにいた。
「そういえば椿、アイツこの頃大人しく感じるけど、何もされてない!?」
:08/08/10 01:15
:SO906i
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