ギンリョウソウ
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#202 [向日葵]
「越……美嘉保健室行って来る……」
「え?なんで」
「消毒液……」
「何考えてんの美嘉……」
とりあえず美嘉を止める越を見つつ、椿は帰ってからの事を考えていた。
一触即発なあの2人だ。
椿はどちらかと言えば要の機嫌が損なわないかが不安だった。
聖史はどこか冷静な部分があるが、要は血がのぼってしまえば殴りそうな気がするからだ。
でも……。
殴るほど、自分の事で怒るだろうか?とも椿は思った。
:08/08/12 00:11
:SO906i
:☆☆☆
#203 [向日葵]
――――――……
椿宅に来た要は、学校から帰って来たら横から婚約者を立候補するという非常識な奴と認識している聖史よりも早く椿を迎えようと思っていた。
―――が。
来てそうそう見たのは、その非常識な奴だった。
「やぁ要くん。こんなに早く来ても椿はいないよ」
言外で「ばーか」とでも言われてる気がした要は不機嫌に目を半目にする。
そして椿の部屋へ足を進める。
「待ってよ。少し話をしない?君が椿をどう思っているかちゃんと知りたい」
:08/08/12 00:17
:SO906i
:☆☆☆
#204 [向日葵]
「聖史さんとやら。僕は話す事なんかないよ。椿についてどう思ってるかだって?僕の態度を見れば一目瞭然じゃないか」
「まぁそう言わず。ライバルの事を知るのは大切だと思うよ?弱点を見つけれるかもしれないじゃないか」
そんなの椿に決まっているだろうと思った要だが、これ以上怒っていれば子供だとまたもや馬鹿にされそうなので、聖史と共に応接間へと行った。
足を組んでデカイ態度で座る要に対し、聖史は静かに腰を下ろし、上品に足を組む。
身についたものだろうが、要はそんな動作すら気にくわない。
「さて……要くんは椿の何に惹かれたのかな?」
:08/08/12 00:23
:SO906i
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#205 [向日葵]
「黙秘権」
「嫌われてるなぁ……」
困ったように聖史はクスリと笑う。
「じゃあ質問を変えよう。君も気づいているだろうけれど、椿が自分自身すら騙して無理をしている理由を知っているかい?」
それを知らない要は聖史をジッと見つめる。
そういえば、自分の家に来た椿のところのメイドが言っていた。
――自分を呪っている。
……と。
「椿のお母さん、つまり奥さまが亡くなっているのは知っているよね?奥さまは椿と同じように、体が弱いお方だったんだ」
:08/08/12 00:28
:SO906i
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#206 [向日葵]
控えめだが、性格、外見には恵まれていて、言い寄る男は多かったと言う。
しかし椿の母は、今の椿の父に一目惚れをし、2人は結ばれたのだと言う。
そして間に生まれたのが椿だった。
が、椿を産むと、椿の母の命が危ないと言われていた。
椿の父の必死の反対に、椿の母は首を横に振るのみ。
絶対産む。例え自分の命とひきかえにしても。
それが口癖だったらしい。
そして椿を産んで間もなく、椿の母は息を引き取ったのだと言う。
:08/08/12 00:33
:SO906i
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#207 [向日葵]
要はありそうな話だと思いながらも、耳を傾け続ける。
「椿はやがて、自分が生まれたせいで奥さまが亡くなったと思ってね……」
それに追い討ちをかけるように、椿が成長する度、使用人達は口をそろえて言った。
[奥さまそっくりですね。奥さまがいたらさぞ喜ばれる事でしょう]
椿は、母と似ているのが嬉しかった反面、皆の母の対する親しみの思いが深いのを感じとっていた。
そんな、皆にとって大切な母を、自分が生まれた事によって死なせてしまった。
:08/08/12 00:38
:SO906i
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#208 [向日葵]
――殺シタノハ、私ダ……。
要は目を見開いた。
聖史は話を続ける。
「それから椿は奥さまの話をしてとよく旦那さまにねだっていたらしいよ。奥さまの身代わりを自分がしよう。そうしたら、使用人達の心を満たせると思ったんだろうね……。そんな事抜きでも、椿は大切に思われているのに……」
必死にいい子になり、皆に迷惑をかけない自分になろう。
皆の幸せを1番に願える自分になろう。
かつて母が、そうだったように……。
要は片手で目を覆い、うつむく。
:08/08/12 00:43
:SO906i
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#209 [向日葵]
何を……考えているんだ椿……。
「そんな椿だからこそ、ちゃんと彼女の裏の感情を分かってくれる人間じゃないと認めない。なのに、君はどうだ、要くん」
要は歯ぎしりしそうな程歯を噛み合わせた。
「自分の欲求や、不満で椿を振り回してはいないかい?」
うるさい……。
「椿を本当に、思いやってはくれてるかい?」
うるさい……。
うるさい……っ!
:08/08/12 00:47
:SO906i
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#210 [向日葵]
どうしてお前にそんな事言われなくちゃならないっ!
どうしてお前から椿の事を聞かなくちゃならないっ!
要は机に置いてあったアイスコーヒーが入っているグラスを握りしめる。
そしてそれは、カシャンと音と共に砕ける。
中の液体と氷が、高そうな絨毯を汚していく。
「…………椿は、君と結婚するのを望んでいるのかな……?」
その言葉に、頭のどこかで派手な音を聞いた要は、近くにあった花瓶を思いきり聖史に向かって投げた。
―――――――――…………
何も知らない椿は、いつも通りの時間に美嘉と共に帰って来た。
:08/08/12 00:53
:SO906i
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#211 [向日葵]
部屋に行こうと廊下を歩いていると、聖史が姿を見せた。
「あーっ!聖史兄ちゃんっ!ひっさしぶりーっ!……って、どうしたの腕!」
聖史は上着を脱ぎ、カッターの袖を捲っていた。
その腕には、包帯が巻かれていた。
「あぁ、美嘉じゃないか。大きくなったねー」
「美嘉の事なんか今どうでもいいよっ!それより腕ぇっ!」
「大した事ないよ。大丈夫。椿も、心配しなくていいからね」
美嘉の後ろで、椿は顔を青くして言葉を無くしていた。
:08/08/12 01:03
:SO906i
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