ギンリョウソウ
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#233 [向日葵]
「ありがとう。美嘉の期待に答えれるよう、僕も頑張るよ」
美嘉は満面の笑みを浮かべ、帰って行こうとして、また聖史の方へ振り返る。
「そうだ。あのね、椿今1人になりたいみたいだから、そっとしといてあげてね」
「うん。分かったよ」
そして美嘉はまた歩き出して、帰って行った。
「さてと……」
そう行って聖史は歩き出した。
向かったのは、椿の部屋だ。
ドアの前に立ち、そっとドアに触れる。
:08/08/15 01:45
:SO906i
:☆☆☆
#234 [向日葵]
「椿……」
優しく名を呼ぶ。
返事はない。
もう1度呼ぶも、また返事はなかった。
しばらく考えて、ドアノブに触れる。
開けようとした時、椿のか細い声が聞こえた。
「開けないで下さい……」
「……どうして?椿」
「今は……少し、1人になりたくて……」
しかし聖史はドアを開ける。
ベッドで膝を抱くようにしながらうつむいている椿の元まで行って、抱き締める。
:08/08/15 01:49
:SO906i
:☆☆☆
#235 [向日葵]
「椿は……何も悪くない……」
椿は何も言わなかった。
それでも聖史は黙って抱き締め、あやすように頭を撫でた。
しばらくそうしていると、椿がやんわりとだが、聖史の腕を拒否した。
うつむいている彼女の表情は、やっばり分からない。
しかし聖史は、本当に今は1人になりたいんだと悟ると、最後に椿の頭をひと撫でし、部屋を出て行った。
椿の不安はただ1つ。
要がもう姿を現さないのではないかと言う事だった。
[その方が……椿は幸せかもね]
:08/08/15 01:55
:SO906i
:☆☆☆
#236 [向日葵]
もう、自分は用なしだと言っているような言葉。
勝つと言ったのに……諦めてしまったのではないだろうか。
それが嫌だと思ってしまうのはどうしてだろう。
心が無くてもいい。
どうでもいいと言いながら、椿を助けて、叱ってくれる要がいてくれるなら、それだけでいい。
誰も癒す事が出来ない寂しさを、癒してくれた要にいてほしい。
それは、甘えなのだろうか……。
「要さま……っ」
お願いだから諦めないでと、椿は願う。
あの嵐の日、ここで見た空より、今日の空は暗くて、寂しげだった。
:08/08/15 02:02
:SO906i
:☆☆☆
#237 [向日葵]
――――――――…………
リダイヤルで、何度かけても要は出なかった。
メールで前の事は気にしなくていいと言っても、返信は無かった。
メイドの佐々木に要の状況を訊けば、また服作りに忙しいらしいと聞いた。
邪魔はしてはいけないと思いながらも、1日1回はかけてしまう。
まるで前の要のようだ。
繋がらなければ、なんて役に立たない文明の利器だろうか……。
「つーばきっ」
窓から外を眺めていれば、越が後ろから覗き込んできた。
:08/08/15 02:07
:SO906i
:☆☆☆
#238 [向日葵]
:08/08/15 02:19
:SO906i
:☆☆☆
#239 [向日葵]
ハッとして、携帯を慌てて閉じ、越に向き直る。
「ハ、ハイ。なんでしょう?」
「なんかぼんやりしてるから、どうしたのかなぁって思って」
「……ごめんなさい、今日はいい天気だなと思ってただけですから」
と椿は微笑む。
そこで椿は「あれ?」と思った。
笑顔が、上手く作れていない気がする。
ちらりと窓に視線を向けて、自分の顔を確かめてみる。
窓に映る自分は、いつも通り、ちゃんと笑えている。
:08/08/18 00:56
:SO906i
:☆☆☆
#240 [向日葵]
…………なのに、どうして……?
これは、本当に自分の顔?
窓に映る完璧な微笑みをたたえている自分の顔が、気持ち悪く感じる。
私の……私の本当の顔は、表情は、……気持ちは……どれ……?
視界が揺らぐ。
まるで蜃気楼のように。
そう思うと、冷たい床が近づいた。
視界はすでに闇の包まれた。
そして意識すら遠退く。
「きゃあっ!椿っ!」
越が悲鳴を上げる。
「大丈夫だ」と言いたいのに、口が思うように動いてくれない。
:08/08/18 01:04
:SO906i
:☆☆☆
#241 [向日葵]
[笑うな]
誰かの声が聞こえた気がした。
不思議な人。
他の誰も、父や美嘉だって、笑わせないよう強制した事はない。
なのに何故貴方だけは……。
椿はこの声が誰のものか知っているような気がした。
でも知らない気もした。
どうしてこの人に振り回されているのだろうと、自分自身不思議で仕方ない椿だ。
動じないフリは、椿の得意技だったのに、彼は容易く打ち砕く。
暗闇の中、椿の口が動く。
しかし、音にはならない。
:08/08/18 01:09
:SO906i
:☆☆☆
#242 [向日葵]
もどかしい。
声が届くなら、どうかお願い。
あの人へ……。
椿は息を吸い込む。
要さま。
音にはならなくても、耳の奥では聞こえていた。
その不思議な空間から抜け出したくて、闇の中、目をこらして光を探す。
そして小さな光を見つける。
遠くの方に。
椿はそちらへ歩いて行く。
「――……きっ!」
誰かが、呼んでる。
行かなきゃ……心配かけてはいけない。
:08/08/18 01:14
:SO906i
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