ギンリョウソウ
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#269 [向日葵]
佐々木は椿の両手をソッと握る。

「ですが、傷つけたくない人より、気になる人の方が、心が惹かれている気がします。気になるのは、もっとその人を知りたいから気になるのではないでしょうか……」

「もっと……?」と小さく呟く椿に、佐々木は優しく、まるで母のように微笑む。

「椿さまがもっと知りたいと思っている方を、お選び下さいませ。佐々木は、どちらの方になっても、椿さまがお幸せなら嬉しいですわ……」

椿は佐々木に心からの笑みを向ける。
佐々木だけは、この屋敷の中で、、唯一椿の理解者なのだ。

⏰:08/08/20 02:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#270 [向日葵]
「ありがとうございます……佐々木さん……」

・・・・・・・・・・・・・・・・

部屋に帰った椿は佐々木に言われた事を色々と考えていた。

ふと顔を上げると、何かがピカピカ光っている。
携帯のランプだった。

手に取り、開くと、不在着信の知らせが表示されていた。
誰だと思い、ボタンを押す。

「え……っ」

驚くのも無理はないだろう。
その電話をかけて来た相手は、もう諦めかけていた要だったのだから。

「要……さま……?」

⏰:08/08/20 02:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#271 [向日葵]
どうして?なんて疑問が浮かび上がる前に、椿はリダイヤルを押していた。

耳の奥で、呼び出し音と鼓動が合唱している。

出て……。
出て……お願い……。

―――――しかし。

椿の願いは届かなかった。
いつまでも鳴り響く呼び出し音に、椿は絶望した。

でも冷静に考えれば、電話で話したところで、何を話せば分からないでいた。
「元気ですか?」なんて、怪我をしてる人に訊ける訳もない。
「大丈夫ですか?」と訊けば、きっと強がるだろう。

⏰:08/08/22 00:41 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#272 [向日葵]
部屋に敷かれている、ふわふわの絨毯の上に、椿はペタリと座り込む。

[気になる人は、その人をもっと知りたいのでは……?]

もっと……知りたい……。

確かに要の事はもっとよく知りたい。
彼の言葉はほとんどが最初と矛盾していて、はっきり言ってどれが本当か分からなくなってきている。

態度だって、優しくしてくれたと思ったら、今みたいに突き放したり……。

それに、訊きたい事も沢山……。

陽射しが、温かく椿を包む。

⏰:08/08/22 00:48 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#273 [向日葵]
その温かな光を受ける事で、最近の疲れを癒そうとした。
そこで彼女は首を傾げたくなった。

……疲れ?
何も疲れてなんて……。

[要さまといる方が……]

そんな佐々木の言葉を思い出す。
聖史といる事が、椿にとって疲れる事なのだろうか。

あんなに優しい人を……。
そんな事思っちゃいけない。
いいや、思う資格なんて、ないのに……。

――――――――…………

美嘉はドキドキしていた。

やっぱりこんなのしなくていいのでは……?

⏰:08/08/22 00:53 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#274 [向日葵]
けれど、椿の笑顔がいつにも増して辛そうなのだ。
どうしたか訊いてもきっと本人は教えてくれない。
聖史は椿にはとっても優しいから、悲しませるような事はしないだろう。

なら、原因はただ1人だった。

先程、彼の従者だと言う人に部屋を案内してもらってから、美嘉は部屋の前でつっ立ったまま入ろうか悩みっぱなしだった。

「いいの……私だけが椿の理解者なんだから……」

呪文のように呟いて、息を吸い込んだ美嘉は、少し乱暴にドアをノックした。

中から返事が聞こえた。
勢いよくドアを開ける。

⏰:08/08/22 00:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#275 [向日葵]
要は美嘉を見ると、明らかに嫌そうな顔をする。
美嘉だって出来れば要と顔を合わせたくないが、今日はなんとしても言ってやりたい事が盛り沢山あった。

「ちょっと、アンタ仕事休んでるの?サボリ?」

「見て分かんない?け・が、してるんだよ」

ソファーに座っていた要は、立ち上がりバルコニーに続くガラス戸に歩いて行く。
ガチャりと開けた所で、美嘉に訊く。

「何か用なの?」

椿の部屋より広いんじゃないかと呆然としながら見ていた庶民の美嘉は、要の声にハッとした。

⏰:08/08/22 01:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#276 [向日葵]
もう冷たいだろう風を、スーツのズボンにカッターを着て、緩めたネクタイをしているだけの寒々しい恰好をしている要は、平然と受けていた。

まるで黄昏たいように、遠くを眺めて。

「えと……最近アンタ、椿にあってないの?」

「君には関係ないだろう」

「あるよ。椿は美嘉の大切な友達なの。中途半端にあの子の事接しないでほしいの」

「君はどちらの味方なんだ?君は僕が嫌いなんだろう?あの聖史さんとやらと椿がくっつけばいいとか思ってるんじゃないのか?」

冷ややかな笑みを、美嘉に向ける。
あまりの冷たさに、美嘉はゾクリとした。

⏰:08/08/22 01:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#277 [向日葵]
けど負けてはいられない。
美嘉を動かすのは椿を守るという使命感だけ。

「聖史兄ちゃんはいい人だけど、椿が望んでないなら意味がない。椿には心から好きな人とくっついて欲しい」

「だから僕に何をしろと?」

「椿に会ってあげて欲しいの」

「……話がまるで分からないよ。明確に説明してくれないか」

「だからぁ!椿はアンタが好きだと思うの!最近元気がないのは、きっとアンタに会いたがってるんだと思うから……。だってそうでしょ?聖史兄ちゃんが好きならいつもそばにいるのに元気ないなんておかしいじゃないっ」

⏰:08/08/22 01:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#278 [向日葵]
そんな事責められたってと要はため息をつく。

椿が自分を好きという図式が要の中で作る事が出来なかった。
彼女が元気ないというのは多分自分を怒らせてしまった後ろめたさと怪我の事が気になっている程度だろうと考える。

「……会わない」

「ちょっとアンタ……」

「いや、会えないんだ……」

美嘉は眉を寄せる。

「どういう事……?」

要はバルコニーに出る。
手すりに両手をついて、剪定されて綺麗な庭の木々を見つめる。

⏰:08/08/22 01:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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