ギンリョウソウ
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#274 [向日葵]
けれど、椿の笑顔がいつにも増して辛そうなのだ。
どうしたか訊いてもきっと本人は教えてくれない。
聖史は椿にはとっても優しいから、悲しませるような事はしないだろう。

なら、原因はただ1人だった。

先程、彼の従者だと言う人に部屋を案内してもらってから、美嘉は部屋の前でつっ立ったまま入ろうか悩みっぱなしだった。

「いいの……私だけが椿の理解者なんだから……」

呪文のように呟いて、息を吸い込んだ美嘉は、少し乱暴にドアをノックした。

中から返事が聞こえた。
勢いよくドアを開ける。

⏰:08/08/22 00:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#275 [向日葵]
要は美嘉を見ると、明らかに嫌そうな顔をする。
美嘉だって出来れば要と顔を合わせたくないが、今日はなんとしても言ってやりたい事が盛り沢山あった。

「ちょっと、アンタ仕事休んでるの?サボリ?」

「見て分かんない?け・が、してるんだよ」

ソファーに座っていた要は、立ち上がりバルコニーに続くガラス戸に歩いて行く。
ガチャりと開けた所で、美嘉に訊く。

「何か用なの?」

椿の部屋より広いんじゃないかと呆然としながら見ていた庶民の美嘉は、要の声にハッとした。

⏰:08/08/22 01:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#276 [向日葵]
もう冷たいだろう風を、スーツのズボンにカッターを着て、緩めたネクタイをしているだけの寒々しい恰好をしている要は、平然と受けていた。

まるで黄昏たいように、遠くを眺めて。

「えと……最近アンタ、椿にあってないの?」

「君には関係ないだろう」

「あるよ。椿は美嘉の大切な友達なの。中途半端にあの子の事接しないでほしいの」

「君はどちらの味方なんだ?君は僕が嫌いなんだろう?あの聖史さんとやらと椿がくっつけばいいとか思ってるんじゃないのか?」

冷ややかな笑みを、美嘉に向ける。
あまりの冷たさに、美嘉はゾクリとした。

⏰:08/08/22 01:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#277 [向日葵]
けど負けてはいられない。
美嘉を動かすのは椿を守るという使命感だけ。

「聖史兄ちゃんはいい人だけど、椿が望んでないなら意味がない。椿には心から好きな人とくっついて欲しい」

「だから僕に何をしろと?」

「椿に会ってあげて欲しいの」

「……話がまるで分からないよ。明確に説明してくれないか」

「だからぁ!椿はアンタが好きだと思うの!最近元気がないのは、きっとアンタに会いたがってるんだと思うから……。だってそうでしょ?聖史兄ちゃんが好きならいつもそばにいるのに元気ないなんておかしいじゃないっ」

⏰:08/08/22 01:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#278 [向日葵]
そんな事責められたってと要はため息をつく。

椿が自分を好きという図式が要の中で作る事が出来なかった。
彼女が元気ないというのは多分自分を怒らせてしまった後ろめたさと怪我の事が気になっている程度だろうと考える。

「……会わない」

「ちょっとアンタ……」

「いや、会えないんだ……」

美嘉は眉を寄せる。

「どういう事……?」

要はバルコニーに出る。
手すりに両手をついて、剪定されて綺麗な庭の木々を見つめる。

⏰:08/08/22 01:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#279 [向日葵]
「君も見ただろう。僕は椿にあんな事をした奴だ。僕は欲しいものはとことん貪欲でね。でも、そんな自分の欲を抑えれなかったからあんな事態を招いたんだ」

震える椿。
涙を流し、許しを請う姿はどれだけ胸を締めつけるものだったろうか。
聖史なんかに負けたくない。
椿が欲しい。

そうまでして、手にいれようとしたが、許せない。

そして……。

「少し……自分が恐いとも思った。この先、椿を壊してしまったら、どうしようとか……」

あの白い肌を、細い体を、自分が潰してしまったら……。
そう思えば、余計椿に会いづらくなっていた。

⏰:08/08/22 01:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#280 [向日葵]
こちらは真剣に悩んでると言うのに、驚くほどあっけらかんに美嘉は言った。

「なぁんだ。アンタも年相応な考え持ってんじゃん」

「は……?」

「誰だって好きな人の全ては欲しいし、貪欲にだってなるでしょうよ。潰してしまうかもとかマイナスな思考じゃなくってさ、どれだけ好きか分かってもらおうってプラスの思考で考えなさいよ」

要はぽかんとしていた。
どうしてあっさりと物事をそんな風に考えるのか、要には分からなかった。

すると美嘉はカラリと笑った。

「アンタ頭良いくせに意外にあったま悪いんだね!なんかちょっと親近感湧くわ」

⏰:08/08/22 01:40 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#281 [向日葵]
「はぁ……」

「でもっ!」

美嘉は要に指を突きつける。
ビクリとしながら要は複雑な顔をして美嘉を見る。

「アンタの事、認めた訳じゃないんだからっ!」

それだけ言うと、満足そうに美嘉は出て行った。

「だから……なんなんだ……」

半ば唖然として要は呟く。
するとクスクスと笑っている声が聞こえた。

「大久保……いるなら入ってこい……」

ドアの陰から、大久保が姿を見せる。
おかしそうに笑いながら。

⏰:08/08/22 01:45 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#282 [向日葵]
そして持っていた紅茶のセットが乗っているトレーをテーブルの上に置く。

どうやらお茶を持って来たが、入ろうとして話が聞こえ、立ち聞きされていたらしい。

「随分と明るいお嬢さんで。椿さまのお友達だというのがなんだか分かります」

「そうかい……。僕は眩しいくらいだよ」

これは決して悪口ではない。
寧ろ要はそんな美嘉が羨ましくさえ思う。
そして椿も、美嘉と同じくらい眩しい。

2人とも、あまり素直で、純粋すぎる。
自分には持っていないものだった。

⏰:08/08/22 01:50 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#283 [向日葵]
「そろそろ、けじめをつけなくてはならないのでは?」

意味深に微笑みながら、大久保は言った。

「……まあね……。」

―――――――――…………

ガヤガヤと、帰る学生で校舎内はうるさい。

椿は廊下掃除をしながら、今日も1日終わったとホッとしていた。と同時に、もうすぐ中間テストだと言う事実に少しばかり気が滅入っていた。

勉強は嫌いじゃない。
だがいい加減な点数を取ってしまえば野々垣家の恥だと椿は思っている。

⏰:08/08/22 01:56 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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