ギンリョウソウ
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#277 [向日葵]
けど負けてはいられない。
美嘉を動かすのは椿を守るという使命感だけ。

「聖史兄ちゃんはいい人だけど、椿が望んでないなら意味がない。椿には心から好きな人とくっついて欲しい」

「だから僕に何をしろと?」

「椿に会ってあげて欲しいの」

「……話がまるで分からないよ。明確に説明してくれないか」

「だからぁ!椿はアンタが好きだと思うの!最近元気がないのは、きっとアンタに会いたがってるんだと思うから……。だってそうでしょ?聖史兄ちゃんが好きならいつもそばにいるのに元気ないなんておかしいじゃないっ」

⏰:08/08/22 01:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#278 [向日葵]
そんな事責められたってと要はため息をつく。

椿が自分を好きという図式が要の中で作る事が出来なかった。
彼女が元気ないというのは多分自分を怒らせてしまった後ろめたさと怪我の事が気になっている程度だろうと考える。

「……会わない」

「ちょっとアンタ……」

「いや、会えないんだ……」

美嘉は眉を寄せる。

「どういう事……?」

要はバルコニーに出る。
手すりに両手をついて、剪定されて綺麗な庭の木々を見つめる。

⏰:08/08/22 01:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#279 [向日葵]
「君も見ただろう。僕は椿にあんな事をした奴だ。僕は欲しいものはとことん貪欲でね。でも、そんな自分の欲を抑えれなかったからあんな事態を招いたんだ」

震える椿。
涙を流し、許しを請う姿はどれだけ胸を締めつけるものだったろうか。
聖史なんかに負けたくない。
椿が欲しい。

そうまでして、手にいれようとしたが、許せない。

そして……。

「少し……自分が恐いとも思った。この先、椿を壊してしまったら、どうしようとか……」

あの白い肌を、細い体を、自分が潰してしまったら……。
そう思えば、余計椿に会いづらくなっていた。

⏰:08/08/22 01:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#280 [向日葵]
こちらは真剣に悩んでると言うのに、驚くほどあっけらかんに美嘉は言った。

「なぁんだ。アンタも年相応な考え持ってんじゃん」

「は……?」

「誰だって好きな人の全ては欲しいし、貪欲にだってなるでしょうよ。潰してしまうかもとかマイナスな思考じゃなくってさ、どれだけ好きか分かってもらおうってプラスの思考で考えなさいよ」

要はぽかんとしていた。
どうしてあっさりと物事をそんな風に考えるのか、要には分からなかった。

すると美嘉はカラリと笑った。

「アンタ頭良いくせに意外にあったま悪いんだね!なんかちょっと親近感湧くわ」

⏰:08/08/22 01:40 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#281 [向日葵]
「はぁ……」

「でもっ!」

美嘉は要に指を突きつける。
ビクリとしながら要は複雑な顔をして美嘉を見る。

「アンタの事、認めた訳じゃないんだからっ!」

それだけ言うと、満足そうに美嘉は出て行った。

「だから……なんなんだ……」

半ば唖然として要は呟く。
するとクスクスと笑っている声が聞こえた。

「大久保……いるなら入ってこい……」

ドアの陰から、大久保が姿を見せる。
おかしそうに笑いながら。

⏰:08/08/22 01:45 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#282 [向日葵]
そして持っていた紅茶のセットが乗っているトレーをテーブルの上に置く。

どうやらお茶を持って来たが、入ろうとして話が聞こえ、立ち聞きされていたらしい。

「随分と明るいお嬢さんで。椿さまのお友達だというのがなんだか分かります」

「そうかい……。僕は眩しいくらいだよ」

これは決して悪口ではない。
寧ろ要はそんな美嘉が羨ましくさえ思う。
そして椿も、美嘉と同じくらい眩しい。

2人とも、あまり素直で、純粋すぎる。
自分には持っていないものだった。

⏰:08/08/22 01:50 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#283 [向日葵]
「そろそろ、けじめをつけなくてはならないのでは?」

意味深に微笑みながら、大久保は言った。

「……まあね……。」

―――――――――…………

ガヤガヤと、帰る学生で校舎内はうるさい。

椿は廊下掃除をしながら、今日も1日終わったとホッとしていた。と同時に、もうすぐ中間テストだと言う事実に少しばかり気が滅入っていた。

勉強は嫌いじゃない。
だがいい加減な点数を取ってしまえば野々垣家の恥だと椿は思っている。

⏰:08/08/22 01:56 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#284 [向日葵]
父は成績なんて気にしなくていいと言うが、普通の学校に行かせてくれたワガママをきいてもらったと思っている椿は、成績だけは優秀でいようと心に決めていた。

もたろん父は、その事だって気にしちゃいない。

「椿ー!」

遠くから越が駆けて来た。

「ハイ。なんでしょうか?」

「今日、放課後遊ばない?珍しく桜が部活無いから、家の手伝いしてくれるって言うの。美嘉も誘ってさ!」

桜とは、彼女の妹だ。
それならばと、椿は頷く。

「掃除は?もう終わり?」

「あとゴミを取れば……」

⏰:08/08/22 02:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#285 [向日葵]
「じゃあ教室で待ってるねっ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

掃除を全て終えた椿は、教室に戻ってきた。

「椿っ!美嘉ね、椿に行って欲しいとこがあるんだ!」

入るなり、美嘉が椿に言う。
行って欲しいところ?と椿は首を傾げて瞬きを繰り返す。

「美嘉と越は先回りして待ってるから、10分ぐらいしたら車に乗って!行き先は運転手さんが知ってるからー!」

「え……、美嘉ちゃ……」

美嘉はまるで逃げるように越を引っ張って行ってしまった。

⏰:08/08/22 02:07 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#286 [向日葵]
ポツリと残された椿は困り果てる。
何かびっくりさせたい事でもあるんだろうか?

仕方ないので、10分教室で過ごした椿は美嘉の指示通り、校門まで行き、いつもの迎えの車に乗り込む。

「あ、あの、尾崎さん。一体どこへ……?」

椿は運転手に訊く。

「申し訳ありませんお嬢様。美嘉さまに言わないよう言われておりますので……」

椿は背もたれにもたれ、過ぎ行く街並みを見る。

一体どこへ連れて行かれるのだろうと不安になりながら。

⏰:08/08/22 02:11 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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