ギンリョウソウ
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#294 [向日葵]
「待ってよ……」

椿は目を伏せて口を閉じる。

「大体なんで君がここに?」

「美嘉ちゃんが……連れて来て下さったんです。ご挨拶をしようと思っただけですので、もう帰ります」

再び歩き出そうとする椿を、要は慌てて止めた。

「待ってって!なら会ったんだからさ、少しくらい話をしようよ」

「駄目です……っ、そんなの……」

貴方には大切な人がいるのに。
私は邪魔する事は出来ない……。

⏰:08/08/23 02:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#295 [向日葵]
「駄目?駄目ってなんで?」

よく分からないと言った風に要は困った顔をした。
椿は下唇を少し噛む。
そしてやんわりと要が掴む腕を要の手からはずした。

「私は、今…、いえ、要さまのそばにいる事は許されないのです」

「え?椿?」

「…………どうかあの方と、お幸せに」

苦しそうにそう告げ、椿は歩き出す。
これで終わった。
全て終わった。
椿は聖史を選ぶのみしか、道はなくなったのだ。

…………と、本人は思っていあ。

⏰:08/08/23 02:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#296 [向日葵]
「待ってーっ!!」

今度は両肩を掴まれて向き合うように体を回される。

「なんか誤解してない!?何お幸せにって!」

何が誤解なのか、椿にも分からなかった。
だって要と一緒にいたのは……

「思ってらっしゃる方なんですよね……?」

要はしばらくフリーズしていた。何の事かさっぱりなので、今頭の中で、物事を整理している最中らしい。

「……え?唯子の事……?」

椿はうつむいて、小さく頷く。

「な、ばっ……!あれは妹だよ!」

これには椿も目をまんまるくした。

⏰:08/08/23 02:32 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#297 [向日葵]
そしてすぐに悲しそうな顔をする。

「いいんです。要さまが婚約を解消すると言うなら私は了承しますし……」

「違っ、あの……っ。……あー!もういい!ちょっと来て!」

腕を強く掴まれ、引っ張られる。
抵抗なんてなんのそので、要は椿をズルズルと容赦なく屋敷へ連れて行った。

また屋敷に入ると、玄関ホールには大久保と唯子がいた。
何かを察知した大久保は、意味深に微笑みを椿に向ける。

「改めまして、要さまおかえりなさいませ。そして椿さま、いらっしゃいませ」

⏰:08/08/23 02:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#298 [向日葵]
椿は頭の中を上手く整理出来ず、大久保の言葉にも反応出来ずにいた。

そして要は少し怒ったように声を上げる。

「聞いてよ!椿が唯子が僕の想い人だと言って本当の事を理解しないんだ!」

一瞬玄関ホールがシンと静まる。と、誰かが吹き出した息の音を合図に、玄関ホールに笑い声が谺(コダマ)する。
唯子もクスクス笑い、要だけが「ホラ見ろ」と言わんばかりに椿を見る。

「椿さま、それは禁忌ですよ。いくらなんでもそれはございません」

「え、あの、ですが……」

チラリと唯子を見ると、視線に気づいた唯子はフワリと柔らかく微笑んで履いていたスカートをひと摘まみすると、昔の姫君のようにお辞儀した。

⏰:08/08/23 02:43 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#299 [向日葵]
「はじめまして椿さま。唯子と申します。お兄様とは2つ離れた兄妹でございます。お目にかかれて光栄でございます」

嘘を言っているのだろうか。
でも、要の顔も、大久保の微笑みも、唯子の挨拶も、嘘だとは思えなかった。

そして自分の勘違いだと気づけば、椿は消えてしまいたい程、恥ずかしくなっていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ごゆっくりと……」

パタリとドアを閉められれば、部屋に要と2人っきりになってしまった。

テーブルに置かれている紅茶は湯気が出ている。

⏰:08/08/23 02:47 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#300 [向日葵]
そんな紅茶のように、椿も湯気が出そうな程まだ真っ赤になっていた。

テーブルを挟んで目の前に座っている要は呆れていれため息をはいた。

「まったく……しょうもない……」

「ごめんなさい……」

謝るしかない椿。
自分が情けなすぎて、顔すら上げる事が出来ない。

[椿さまの事は、兄からお聞きしていますわ。早くお会いしたかったのですっ]

花のように笑う唯子は本当にそう思ってくれてるらしかった。

⏰:08/08/23 02:52 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#301 [向日葵]
>>292

誤]道なり
正]道のり

>>300

誤]呆れていれ
正]呆れている

⏰:08/08/24 11:56 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#302 [向日葵]
それなのに自分は……と何度も思い返す度、椿の顔の火照りはしばらくやみそうになかった。

「まぁいいけどさ……」

「ごめんなさい……」

さっきから何度も消えてしまいそうな声で謝る椿がさすがに可哀想だと思ってきた要は、密かにため息混じりの微笑みを浮かべると窓に歩みより、開ける。

爽やかな風が吹いてくるのに気づいた椿は、少しだけ顔を上げる。
風で、目の前にある紅茶の香りが漂ってくる。

「しかし、君の友達もおせっかいだね。僕の事が気に入らないくせに君とくっつけようとする」

⏰:08/08/24 12:05 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#303 [向日葵]
完全に顔を上げ、要を見ると、要は窓の外を眺めていた。
そんな要が夕焼けで綺麗に見えたれば、胸がドキリとした椿は、別の意味で顔を火照らす。

「で、そのお節介な友人に連れてこられた君は、僕に何か用事でもあったの?」

「え……」

言われてみれば、要に会おうなどと考えていなかった椿だ。
急に連れて来られたから、美嘉の気持ちに答えねばと入って来たが、ちゃんとした理由はあまりなかった。

訊きたかった唯子の事は分かったし、だからと言って前言ってくれた言葉は本当なのか訊く勇気は今の椿には無かった。

⏰:08/08/24 12:12 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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