ギンリョウソウ
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#307 [向日葵]
「私が……いらなくなりましたか……?」
要に会った瞬間、胸が甘く疼き、その奥にある分からない気持ちが浮き出す。
ずっと……会いたかった。
分かったけれど、もう遅いのだろうか。
「いらない?そんな訳ないだろ!君は……っ。……僕の言葉……忘れたのか?」
少し顔を赤らめて、椿から視線を外す要。
その態度に、椿のもう1つの疑問は無くなった。
「じゃあ、この頃姿をお見せになってくれなかったのは……?」
:08/08/24 12:32
:SO906i
:☆☆☆
#308 [向日葵]
黙り込んだ要は、椿の隣に腰かける。
やがて、ゆっくりと話し出した。
「この前の事、本当に申し訳なかった。反省してる。君からの電話やメールも無視してすまなかった」
「私は……気にしてませんでしたわ」
要はちゃんと謝ってくれたし、その後乱暴な行動とは違い、優しく抱き締めてくれた。
「僕はずっと気にしてたよ。それにね椿、僕は椿が嫌でなんじゃない。僕が嫌で仕方なかった」
「どうしてですか?」
「苛立ちにも似た気持ちを君にぶつけたから」
:08/08/24 12:37
:SO906i
:☆☆☆
#309 [向日葵]
要は自分の膝に肘をつき、頬杖をついた。
絨毯をぼんやりと眺めていると、苦いため息をはいた。
「君も身をもって実感しただろ。僕はこんな奴だ。今度は歯止めすらきかなくなるかもしれない。それが恐いなら、あの聖史さんとやらを選べばいい」
椿は目を見開く。
それは、要はこの争いから手を引くということなのだろうか。
唯子の正体が分からなかった時感じた痛みより、更に鋭い痛みが胸を貫く。
「あの人は僕と違って優しいし、君も幼い頃からの知り合いなのだろう?なら尚更いいじゃないか」
要のあの告白は本当の気持ちなのに、諦める?
:08/08/24 12:44
:SO906i
:☆☆☆
#310 [向日葵]
じゃあやっぱり椿がいらない?
それならば、やっぱり、あの言葉は嘘?
椿は突然立ち上がる。
そしてドアの方へと歩いて行った。
それに驚いた要は椿を呼び止める。
「椿、どうかした?」
しかし椿は答えなかった。
ドアノブに手をかけ、開けようとした時、要が後ろからドアに手をつき、出ていくのを阻止した。
「椿、何か言ってくれないと分かんないよ」
椿は要に背を向けたまま黙り込む。
痺れを切らした要は、肩を持ち、自分の方へ向かせる。
「椿!何か言ったらど……」
要はハッと気づいた。
うつむいてる椿から、絨毯にかけて滴が落ちている。
:08/08/24 12:50
:SO906i
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#311 [向日葵]
椿は声を殺して泣いていた。
頭が混乱していた。
本当だと言ったのに何故諦めてしまうのか。
どうして聖史を選べと言うのか。
「椿、どうしたんだ?」
「わ……たしは……聖史さまを好きだたと思った事は……、いち……ど……も、ありません……」
要は恐くなんかない。
確かに押し倒された時や、要の手を素肌に感じた時は、何をされるか分からない恐怖でいっぱいだった。
けれど、勝つと言って頬に柔らかく触れた唇や、少し強引に押しつけられた唇は、嫌ではなかった。
:08/08/24 12:56
:SO906i
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#312 [向日葵]
そう思えば、椿は徐々に理解していた。
会いたいと思う気持ちも、諦めて欲しくないと思う気持ちも、要が好きだから心が叫ぶのだと。
だから要が聖史を選べと言った時、胸が張り裂けそうなぐらい痛かったのだ。
「それでも要さまが……選べとおっしゃるならば……わたしは……」
「椿……」
包帯を巻いた手で、椿の頬に触れる。
椿はその手に自分の手を重ねて、まだ潤む目で要を見つめる。
要は、見たことがないような穏やかな微笑みを浮かべる。
:08/08/24 13:01
:SO906i
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#313 [向日葵]
「椿が僕に勝って欲しいと思ってくれてるなら、僕は手を引かないよ。いいの?椿」
椿はまた沢山涙を流してこくりと頷いた。
そんな椿を、要は優しく抱き締める。
「ありがとう……。これでまた明日から、仕事に力が入るよ」
聖史のようなしっかりとした腕ではなく、覚えのある腕に抱かれて椿はホッとした。
2人はしばらくそのまま抱き合っていた。
―――――――――…………
家に帰ってきた椿は、ほっこりとした気持ちで玄関のドアを開けた。
:08/08/24 13:09
:SO906i
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#314 [向日葵]
[明日からまた仕事だけど、ちゃんと電話に出るしメールも返すから。椿も僕が連絡した時はちゃんと返してね]
帰り際に要が言った言葉だ。
こう言った後、また要は椿を抱き締めた。
お見送りと玄関ホールにやって来た大久保と唯子の前で。
唯子は「またお話して下さいね」と笑い、まるで姉にするみたいに抱きついてきた。
その時、椿は気づいた。
自分と同じくらい細い唯子の体。
門まで一緒に来てくれたら要にそれを言ってみれば、どうやら唯子は心臓が弱いのだと言う。
今まで唯子を見かけなかったのは、入院していたかららしい。
:08/08/24 13:16
:SO906i
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#315 [向日葵]
[だから僕は君が放っておけないのかもね]
と笑う要に、椿も笑った。
要はどうやら妹が可愛くて仕方ないらしい。
[そういえば、唯子の事知ってるような感じがしたんだけど、どうして?]
それは訊かれるとは思ってなかったので、椿は顔を赤らめながら事情を話した。
すると要は意地悪そうに笑った。
[へぇー……妬きもち妬いてたんだ]
やっぱり顔を赤くする椿に、要は頭を撫でる。
[また唯子とも遊んでやってよ。じゃあね、おやすみ]
:08/08/24 13:21
:SO906i
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#316 [向日葵]
自分の部屋についた椿は、着替え始める。
膝ぐらいまである花柄のチュニックを着た途端、後ろから誰かに抱き締められた。
驚いた椿は声が出せず、固まってしまう。
するとクスクスと笑い声が聞こえた。
「ゴメンネ。驚かしちゃった?」
「聖史さま……」
「でも着替え中にこんな事するのは、男として最低だね。向こう向いてるから、早く下を履いた方がいい」
そこで気づけば、下着は見えていないが、チュニックを来ただけの椿は白い足が出たままだった。
急いでジーパンを履く。
:08/08/24 13:34
:SO906i
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