ギンリョウソウ
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#319 [向日葵]
聖史の方を見るのを何故か躊躇う。
そろりと徐々に首を回していく。心臓が不規則に跳ねるのは何故だろう。
そしてようやく聖史の方を見れば、微笑んでいた。
無機質な目をして。
その笑顔に、椿は背中がゾクリとした。
―――コワイ。
そう思いさえした。
要に襲われそうになった時の不安のような恐怖とはまた違う。
ただ恐いのだ。
「あ、あの……」
「何?」
:08/08/25 00:48
:SO906i
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#320 [向日葵]
「お、同じクラスの、神田越さんと言う方がいまして、その人のお家にお、お邪魔、してまして……」
椿は咄嗟に嘘をつく。
けれど聖史にはそれが嘘だと分かっているだろう。
なのに聖史は「へぇ……」と椿の嘘に何故か付き合い、話の先を促す。
まるで、追い詰める事を楽しんでいるかのように……。
だから椿は余計に恐くなる。
気づけば膝の上に置いていた手が、小刻みに震えている。
それを抑えるように、もう片方の手を重ねる。
「越さんのお家は4人兄妹でして、すごく、仲が良いんです……。う、羨ましいくらい……に」
:08/08/25 00:56
:SO906i
:☆☆☆
#321 [向日葵]
いつの間にか、少し空いていた椿と聖史の間を埋めるように聖史は椿に接近していた。
「そう。その越さんのお家で何をしてきたの?」
「4才の妹さんがいるんですが……妹さんと遊んだり、していました……」
「どんな?」
「い、色塗りや、お人形で……」
「そうか……。それは是非会ってみたいね。僕は子供が好きだし、椿みたいに色塗りや人形でその子と遊んでみたいよ。明日会えないかな?」
「え、越さんは忙しいので、たまにしか、遊べなくて……」
:08/08/25 01:01
:SO906i
:☆☆☆
#322 [向日葵]
言い訳のようになってしまっている。
いや実際越が忙しいのは事実なのだが、今この状況では、椿の苦しい言い逃れのようだ。
「ねぇ椿、何故嘘をつくの?」
耳元で低く囁く聖史に、ビクリと肩が震える。
今から、攻撃が始まる……。
椿はそう予感した。
「う、嘘では……」
「残念ながら君が要くんの家に行った事は知ってるんだよ」
「……っどうして……!」
「なんだ、やっばりそうだったのか」
:08/08/25 01:06
:SO906i
:☆☆☆
#323 [向日葵]
「え……」と椿は呟く。
そして頭を思いきり叩かれたように、重みを感じる衝撃を受ける。
聖史は要の家に椿が行ったと言う確かな証拠がなかったが、予想はしていた。
そして椿自身に真実を吐かした。
つまりカマかけていたのだ。
「それでその嬉しそうな様子かぁ……。僕は完全に出遅れてしまったのかなぁ……?」
喉の奥でクククと笑い出す聖史。
椿の頭に、「この人は誰?」と言う疑問が浮かんでは消える。
あの優しい聖史は?
逃げたい衝動にかられる。
しかし足に力を入れたくても入らない。
:08/08/25 01:12
:SO906i
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#324 [向日葵]
「椿、はっきり言ってよ。僕はもう君達の間に入る余地はないのかい?」
口の端を上げただけの奇妙な笑い方。
でも椿は言わなければならない。
自分は選ぶ権利などないと思ったが要がそばにいてくれれば嬉しいと思ってしまうから……。
毅然として、背筋をしっかり伸ばす。
はっきり言わなければ、それこそ聖史に失礼だと椿は思った。
「ごめんなさい聖史さま……。聖史さまは素敵な方ですし、私には勿体無いと思う程です。……ですが私は……」
そこまで言うと、きつく抱き締められる。
:08/08/26 01:05
:SO906i
:☆☆☆
#325 [向日葵]
あまりのきつさに、椿の細い体は耐えられず、苦しさを感じる。
「せ……じさ……」
「やっぱり言わせない。僕が負けだなんて認めたくない。椿は僕と幸せになるべきなんだ!」
聖史は椿に強く口づける。
驚いた椿はすぐさま抵抗するが、片腕は椿の腰を捕らえ、もう片方は椿の後頭部に添えられ離れないようにされる。
要の時感じた恐怖をまた感じ出す。それも、あの時以上の恐怖を。
手加減してないからだ。
それでも椿は胸を押し返し、離れようと頑張る。
胸を叩いて止めてくれと意思表示する。
:08/08/26 01:10
:SO906i
:☆☆☆
#326 [向日葵]
助けて……っ!
要さま…………っ。
要の事を強く心の中で、呼んだ時、ようやく椿の唇は解放された。
「椿、僕とキスしちゃったね……。これを要くんはどう思うかな」
ドクリと頭の中で鼓動を聞いた気がした。
動揺し、固まっている椿を見て満足気に微笑んだ聖史はいつもな聖史に戻っていた。
「椿の事、ふしだらだと思って嫌うかもね」
椿は目を大きく見開く。
その瞳の奥で、要が冷たく自分を見下ろす姿が見える。
:08/08/26 01:16
:SO906i
:☆☆☆
#327 [向日葵]
ベッドから降り、椿と視線を合わすように片膝をついた聖史は、さらりと椿の髪の毛をよけながら頬に触れる。
「でも僕なら椿をそんな風になら思わない。もしそうされたなら、要くんの温もりがないくらい椿を愛してあげる」
立ち上がり、ドアの方へ向かっていく。
「どちらが寛大か、椿、よく考えるんだね。じゃ、また明日……」
やけにドアが閉まる音が部屋に響いた気がした。
椿の体は、おさえきれない震えに襲われていた。
ベッドから、ズルズルと床に落ち、座り込む。
:08/08/26 01:23
:SO906i
:☆☆☆
#328 [向日葵]
今さっきの事が、本当に起こった事なのかまだ信じられずにいる。
どうして聖史があんな事をしたのかも分からない。
ただ恐くて、嫌で仕方なかった。
[ふしだらだって……]
その言葉が、頭の中を響き渡る。
要が自分をふしだらだと思う。
それは、嫌われるという事だろう。
諦めないで欲しいと言い、嫉妬までしたくせに、他の男性に唇を許してしまったのだ。
また椿の瞳の奥で、要が出現する。
:08/08/26 01:29
:SO906i
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