ギンリョウソウ
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#320 [向日葵]
「お、同じクラスの、神田越さんと言う方がいまして、その人のお家にお、お邪魔、してまして……」

椿は咄嗟に嘘をつく。
けれど聖史にはそれが嘘だと分かっているだろう。
なのに聖史は「へぇ……」と椿の嘘に何故か付き合い、話の先を促す。

まるで、追い詰める事を楽しんでいるかのように……。

だから椿は余計に恐くなる。
気づけば膝の上に置いていた手が、小刻みに震えている。
それを抑えるように、もう片方の手を重ねる。

「越さんのお家は4人兄妹でして、すごく、仲が良いんです……。う、羨ましいくらい……に」

⏰:08/08/25 00:56 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#321 [向日葵]
いつの間にか、少し空いていた椿と聖史の間を埋めるように聖史は椿に接近していた。

「そう。その越さんのお家で何をしてきたの?」

「4才の妹さんがいるんですが……妹さんと遊んだり、していました……」

「どんな?」

「い、色塗りや、お人形で……」

「そうか……。それは是非会ってみたいね。僕は子供が好きだし、椿みたいに色塗りや人形でその子と遊んでみたいよ。明日会えないかな?」

「え、越さんは忙しいので、たまにしか、遊べなくて……」

⏰:08/08/25 01:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#322 [向日葵]
言い訳のようになってしまっている。
いや実際越が忙しいのは事実なのだが、今この状況では、椿の苦しい言い逃れのようだ。

「ねぇ椿、何故嘘をつくの?」

耳元で低く囁く聖史に、ビクリと肩が震える。

今から、攻撃が始まる……。

椿はそう予感した。

「う、嘘では……」

「残念ながら君が要くんの家に行った事は知ってるんだよ」

「……っどうして……!」

「なんだ、やっばりそうだったのか」

⏰:08/08/25 01:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#323 [向日葵]
「え……」と椿は呟く。
そして頭を思いきり叩かれたように、重みを感じる衝撃を受ける。

聖史は要の家に椿が行ったと言う確かな証拠がなかったが、予想はしていた。
そして椿自身に真実を吐かした。
つまりカマかけていたのだ。

「それでその嬉しそうな様子かぁ……。僕は完全に出遅れてしまったのかなぁ……?」

喉の奥でクククと笑い出す聖史。

椿の頭に、「この人は誰?」と言う疑問が浮かんでは消える。
あの優しい聖史は?

逃げたい衝動にかられる。
しかし足に力を入れたくても入らない。

⏰:08/08/25 01:12 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#324 [向日葵]
「椿、はっきり言ってよ。僕はもう君達の間に入る余地はないのかい?」

口の端を上げただけの奇妙な笑い方。
でも椿は言わなければならない。
自分は選ぶ権利などないと思ったが要がそばにいてくれれば嬉しいと思ってしまうから……。

毅然として、背筋をしっかり伸ばす。
はっきり言わなければ、それこそ聖史に失礼だと椿は思った。

「ごめんなさい聖史さま……。聖史さまは素敵な方ですし、私には勿体無いと思う程です。……ですが私は……」

そこまで言うと、きつく抱き締められる。

⏰:08/08/26 01:05 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#325 [向日葵]
あまりのきつさに、椿の細い体は耐えられず、苦しさを感じる。

「せ……じさ……」

「やっぱり言わせない。僕が負けだなんて認めたくない。椿は僕と幸せになるべきなんだ!」

聖史は椿に強く口づける。
驚いた椿はすぐさま抵抗するが、片腕は椿の腰を捕らえ、もう片方は椿の後頭部に添えられ離れないようにされる。

要の時感じた恐怖をまた感じ出す。それも、あの時以上の恐怖を。
手加減してないからだ。

それでも椿は胸を押し返し、離れようと頑張る。
胸を叩いて止めてくれと意思表示する。

⏰:08/08/26 01:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#326 [向日葵]
助けて……っ!
要さま…………っ。

要の事を強く心の中で、呼んだ時、ようやく椿の唇は解放された。

「椿、僕とキスしちゃったね……。これを要くんはどう思うかな」

ドクリと頭の中で鼓動を聞いた気がした。
動揺し、固まっている椿を見て満足気に微笑んだ聖史はいつもな聖史に戻っていた。

「椿の事、ふしだらだと思って嫌うかもね」

椿は目を大きく見開く。
その瞳の奥で、要が冷たく自分を見下ろす姿が見える。

⏰:08/08/26 01:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#327 [向日葵]
ベッドから降り、椿と視線を合わすように片膝をついた聖史は、さらりと椿の髪の毛をよけながら頬に触れる。

「でも僕なら椿をそんな風になら思わない。もしそうされたなら、要くんの温もりがないくらい椿を愛してあげる」

立ち上がり、ドアの方へ向かっていく。

「どちらが寛大か、椿、よく考えるんだね。じゃ、また明日……」

やけにドアが閉まる音が部屋に響いた気がした。
椿の体は、おさえきれない震えに襲われていた。

ベッドから、ズルズルと床に落ち、座り込む。

⏰:08/08/26 01:23 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#328 [向日葵]
今さっきの事が、本当に起こった事なのかまだ信じられずにいる。

どうして聖史があんな事をしたのかも分からない。

ただ恐くて、嫌で仕方なかった。

[ふしだらだって……]

その言葉が、頭の中を響き渡る。

要が自分をふしだらだと思う。
それは、嫌われるという事だろう。
諦めないで欲しいと言い、嫉妬までしたくせに、他の男性に唇を許してしまったのだ。

また椿の瞳の奥で、要が出現する。

⏰:08/08/26 01:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#329 [向日葵]
「君は僕に嘘をついた。これがどういう事か分かる?」

違う、あれは望んでした事じゃない。

「逃げる事だって出来たんじゃないの?」

……足に力が入らなくて……。

「望んでないとか言ってさ、本当は望んでたんじゃないの?逃げる気すら無かったんじゃないの?」

そんな事ない……っ!

「僕はそんないやらしい女性は嫌いだよ。悪いけど、僕はこの争いから手を引くよ」

待って下さい……!
お願いいかないで!!

⏰:08/08/26 01:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#330 [向日葵]
ガタン!と窓が風に揺れる音で、椿は我に返る。

そして唇にそっと指先を触れ、その手を拳の形にし、手の甲でぐいぐい拭く。
聖史の唇の感触全て無くなるよう、唇が摩擦で熱く痛くなるまで擦る。

要に嫌われたくない。
せっかく勝つと言ってくれたのに、こんな事で自分自身惑わされたくない。

それなのに……。

まだ震えが止まらない体を、自分の腕でしっかりと抱き、椿はうずくまる。

そして助けてと、心の中で必死に叫んだ。
助けてほしいのは、父でも美嘉でも誰でもない。

ただ、要に……。

⏰:08/08/26 01:40 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#331 [向日葵]
[第8話]

「椿さま、椿さまっ」

ハッと目を覚ました椿は、額にじっとりと汗を滲ませていた。
目の前には、心配そうにこちらを覗き込むメイドの佐々木がいた。

「佐々木さ……」

「大丈夫ですか?とても苦しそうなお顔をされていましたし、いつもの時間になっても朝食に来ませんもので……」

ゆっくりと体を起こした椿は顔が真っ青だった。
昨日の今日で、気分はすぐれない。
夢を見れば要が出てきて、椿はいくら追いかけても、遠くにいる要に追いつく事は出来なかった。

⏰:08/08/26 01:45 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#332 [向日葵]
走り疲れて息を切らして座り込む。すると世界が闇に包まれ、その闇が椿にまとわりつく。
その闇を振り払おうとするが、闇は段々と椿を覆っていく。
そして闇にのまれていくと感じた時、声が聞こえる。

「要くんに嫌われちゃうね」

聖史の声だった。

「今日は、学校休まれますか……?」

どこが悪いのか分からないが、とりあえず背中をさする佐々木は椿に問う。

しかし椿は首を振った。

「いえ、行きます。ご心配かけてすいません」

⏰:08/08/27 01:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#333 [向日葵]
佐々木はまだ不安そうな顔をしながらも、椿が着替えると言うので部屋を出て行った。

椿は制服を取るも、体にあまり力が入らなかった。
重いため息をついて、ベッドから降りる。

その時、テーブルに置いていた携帯が震えだす。
突然の派手な音に、びくりとした。

手を伸ばして、携帯を開けば、知らない番号だった。
とりあえず出てみる。

「……もしもし」

{おはよう}

⏰:08/08/27 01:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#334 [向日葵]
椿は胸が高鳴った。
それと同時に、胸の中がほっこりと安心感に包まれる。

「おはようございます……要さま……」

{なんだか眠そうだね。起きたて?}

意地悪そうでも、どこか優しい要の言葉は、今さっきの悪夢を忘れさせてくれそうだった。

「少し、寝坊してしまいまして……」

{珍しいね……。昨日眠れなかったの?}

その言葉に、椿は息を詰める。
悪夢が走馬灯のように椿の脳裏を駆け抜ける。

⏰:08/08/27 01:31 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#335 [向日葵]
追いつかない要。
闇に包まれる椿。
楽しそうに笑う聖史。

[要くんに嫌われちゃうね]

一点を見つめる椿の目は、何を写しているか分からない。
携帯を持ったまま固まり、立ち尽くす。

携帯の向こうの要は、いっこうに喋らない椿を不思議に感じ、呼びかける。

{椿?}

椿は要の声など耳に入っていないようだった。
要もそれが分かったのか、今度は強めに呼んでみる。

{椿っ!}

⏰:08/08/27 01:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#336 [向日葵]
ようやく椿は我に返る。

{どうかした?}

嫌われる。
その言葉が頭から離れない。
恐くなった椿は、無意識に電源ボタンを押していた。

―――――――…………

要の耳に、電子音が鳴り響く。

無言でいきなり切られた要は半ば唖然としていた。

要は受話器を置く。
椿の携帯に表示されなかったのは、要が自宅の電話機からかけていたからだ。
携帯の充電をしておくのを忘れたのだ。
流れで登録しとけと言うつもりが、いきなりの無言切り。

⏰:08/08/27 01:42 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#337 [向日葵]
自分は何か傷つける事を言ったかと首を傾げる。

コンコンとノックされると、大久保が入ってきて、朝の紅茶を運んできた。

「大久保、今日午後何か予定はあったかな?」

「午後は12時から3時までデザイン画に合わせた装飾品デザインの会議が都内の川島ビル15階の会議室でありますが……。それが何か?」

「そう。それならちょうどいい時間になるだろう。分かった。……それより大久保」

「ハイ」

要は不満そうな顔をして、紅茶のカップを大久保にずいっと渡す。

⏰:08/08/27 01:49 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#338 [向日葵]
「今日はセイロンティーが飲みたい」

「え、要さま昨日アールグレイが飲みたいと言ったじゃありませんか」

大久保の困った顔も無視で、要は無言でカップを押しつける。
大久保はわざと大きなため息をついて、苦笑いしながら言う。

「椿さまにはそんな意地悪しちゃいけませんよ?」

「してないよ」

してると思いながらも、大久保はフフフと笑って、紅茶をいれ直しに部屋を出て行った。
もっとも、要の意地悪や憎まれ口は、愛情の裏返しだと言うのも、彼はちゃんと分かっているのだ。

⏰:08/08/27 01:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#339 [向日葵]
――――――――…………

車で学校へ向かっている椿は、ため息をついていた。

「……8回目」

隣に乗っていた美嘉が呟く。

「へ……?」

「ため息の回数。……ねえ、昨日アイツに会った?」

「あ、ハイ。そういえば、昨日はありがとうございました美嘉ちゃん。」

美嘉は照れ臭そうに頬をポリポリとかく。

「そ、それより、会ったなら、どうしてそんなに元気がないのよ」

⏰:08/08/27 02:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#340 [向日葵]
椿はうつむく。

こんな弱気ではいけない。
きっと、これは聖史の作戦だと感じている。

そう思えば、昨日の聖史の奇妙な雰囲気を思い出して、椿は身震いした。

「椿?どうかした?寒い?」

「い、いえ……」

[要くんの温もりがないくらい椿を愛してあげる]

まるでどこかの国の暴君。
思い通りにしようとする。
あんなに優しかった聖史なのに……。

そこで椿はハッとする。

⏰:08/08/27 02:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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