ギンリョウソウ
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#323 [向日葵]
「え……」と椿は呟く。
そして頭を思いきり叩かれたように、重みを感じる衝撃を受ける。
聖史は要の家に椿が行ったと言う確かな証拠がなかったが、予想はしていた。
そして椿自身に真実を吐かした。
つまりカマかけていたのだ。
「それでその嬉しそうな様子かぁ……。僕は完全に出遅れてしまったのかなぁ……?」
喉の奥でクククと笑い出す聖史。
椿の頭に、「この人は誰?」と言う疑問が浮かんでは消える。
あの優しい聖史は?
逃げたい衝動にかられる。
しかし足に力を入れたくても入らない。
:08/08/25 01:12
:SO906i
:☆☆☆
#324 [向日葵]
「椿、はっきり言ってよ。僕はもう君達の間に入る余地はないのかい?」
口の端を上げただけの奇妙な笑い方。
でも椿は言わなければならない。
自分は選ぶ権利などないと思ったが要がそばにいてくれれば嬉しいと思ってしまうから……。
毅然として、背筋をしっかり伸ばす。
はっきり言わなければ、それこそ聖史に失礼だと椿は思った。
「ごめんなさい聖史さま……。聖史さまは素敵な方ですし、私には勿体無いと思う程です。……ですが私は……」
そこまで言うと、きつく抱き締められる。
:08/08/26 01:05
:SO906i
:☆☆☆
#325 [向日葵]
あまりのきつさに、椿の細い体は耐えられず、苦しさを感じる。
「せ……じさ……」
「やっぱり言わせない。僕が負けだなんて認めたくない。椿は僕と幸せになるべきなんだ!」
聖史は椿に強く口づける。
驚いた椿はすぐさま抵抗するが、片腕は椿の腰を捕らえ、もう片方は椿の後頭部に添えられ離れないようにされる。
要の時感じた恐怖をまた感じ出す。それも、あの時以上の恐怖を。
手加減してないからだ。
それでも椿は胸を押し返し、離れようと頑張る。
胸を叩いて止めてくれと意思表示する。
:08/08/26 01:10
:SO906i
:☆☆☆
#326 [向日葵]
助けて……っ!
要さま…………っ。
要の事を強く心の中で、呼んだ時、ようやく椿の唇は解放された。
「椿、僕とキスしちゃったね……。これを要くんはどう思うかな」
ドクリと頭の中で鼓動を聞いた気がした。
動揺し、固まっている椿を見て満足気に微笑んだ聖史はいつもな聖史に戻っていた。
「椿の事、ふしだらだと思って嫌うかもね」
椿は目を大きく見開く。
その瞳の奥で、要が冷たく自分を見下ろす姿が見える。
:08/08/26 01:16
:SO906i
:☆☆☆
#327 [向日葵]
ベッドから降り、椿と視線を合わすように片膝をついた聖史は、さらりと椿の髪の毛をよけながら頬に触れる。
「でも僕なら椿をそんな風になら思わない。もしそうされたなら、要くんの温もりがないくらい椿を愛してあげる」
立ち上がり、ドアの方へ向かっていく。
「どちらが寛大か、椿、よく考えるんだね。じゃ、また明日……」
やけにドアが閉まる音が部屋に響いた気がした。
椿の体は、おさえきれない震えに襲われていた。
ベッドから、ズルズルと床に落ち、座り込む。
:08/08/26 01:23
:SO906i
:☆☆☆
#328 [向日葵]
今さっきの事が、本当に起こった事なのかまだ信じられずにいる。
どうして聖史があんな事をしたのかも分からない。
ただ恐くて、嫌で仕方なかった。
[ふしだらだって……]
その言葉が、頭の中を響き渡る。
要が自分をふしだらだと思う。
それは、嫌われるという事だろう。
諦めないで欲しいと言い、嫉妬までしたくせに、他の男性に唇を許してしまったのだ。
また椿の瞳の奥で、要が出現する。
:08/08/26 01:29
:SO906i
:☆☆☆
#329 [向日葵]
「君は僕に嘘をついた。これがどういう事か分かる?」
違う、あれは望んでした事じゃない。
「逃げる事だって出来たんじゃないの?」
……足に力が入らなくて……。
「望んでないとか言ってさ、本当は望んでたんじゃないの?逃げる気すら無かったんじゃないの?」
そんな事ない……っ!
「僕はそんないやらしい女性は嫌いだよ。悪いけど、僕はこの争いから手を引くよ」
待って下さい……!
お願いいかないで!!
:08/08/26 01:34
:SO906i
:☆☆☆
#330 [向日葵]
ガタン!と窓が風に揺れる音で、椿は我に返る。
そして唇にそっと指先を触れ、その手を拳の形にし、手の甲でぐいぐい拭く。
聖史の唇の感触全て無くなるよう、唇が摩擦で熱く痛くなるまで擦る。
要に嫌われたくない。
せっかく勝つと言ってくれたのに、こんな事で自分自身惑わされたくない。
それなのに……。
まだ震えが止まらない体を、自分の腕でしっかりと抱き、椿はうずくまる。
そして助けてと、心の中で必死に叫んだ。
助けてほしいのは、父でも美嘉でも誰でもない。
ただ、要に……。
:08/08/26 01:40
:SO906i
:☆☆☆
#331 [向日葵]
[第8話]
「椿さま、椿さまっ」
ハッと目を覚ました椿は、額にじっとりと汗を滲ませていた。
目の前には、心配そうにこちらを覗き込むメイドの佐々木がいた。
「佐々木さ……」
「大丈夫ですか?とても苦しそうなお顔をされていましたし、いつもの時間になっても朝食に来ませんもので……」
ゆっくりと体を起こした椿は顔が真っ青だった。
昨日の今日で、気分はすぐれない。
夢を見れば要が出てきて、椿はいくら追いかけても、遠くにいる要に追いつく事は出来なかった。
:08/08/26 01:45
:SO906i
:☆☆☆
#332 [向日葵]
走り疲れて息を切らして座り込む。すると世界が闇に包まれ、その闇が椿にまとわりつく。
その闇を振り払おうとするが、闇は段々と椿を覆っていく。
そして闇にのまれていくと感じた時、声が聞こえる。
「要くんに嫌われちゃうね」
聖史の声だった。
「今日は、学校休まれますか……?」
どこが悪いのか分からないが、とりあえず背中をさする佐々木は椿に問う。
しかし椿は首を振った。
「いえ、行きます。ご心配かけてすいません」
:08/08/27 01:21
:SO906i
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