ギンリョウソウ
最新 最初 全 
#327 [向日葵]
ベッドから降り、椿と視線を合わすように片膝をついた聖史は、さらりと椿の髪の毛をよけながら頬に触れる。
「でも僕なら椿をそんな風になら思わない。もしそうされたなら、要くんの温もりがないくらい椿を愛してあげる」
立ち上がり、ドアの方へ向かっていく。
「どちらが寛大か、椿、よく考えるんだね。じゃ、また明日……」
やけにドアが閉まる音が部屋に響いた気がした。
椿の体は、おさえきれない震えに襲われていた。
ベッドから、ズルズルと床に落ち、座り込む。
:08/08/26 01:23
:SO906i
:☆☆☆
#328 [向日葵]
今さっきの事が、本当に起こった事なのかまだ信じられずにいる。
どうして聖史があんな事をしたのかも分からない。
ただ恐くて、嫌で仕方なかった。
[ふしだらだって……]
その言葉が、頭の中を響き渡る。
要が自分をふしだらだと思う。
それは、嫌われるという事だろう。
諦めないで欲しいと言い、嫉妬までしたくせに、他の男性に唇を許してしまったのだ。
また椿の瞳の奥で、要が出現する。
:08/08/26 01:29
:SO906i
:☆☆☆
#329 [向日葵]
「君は僕に嘘をついた。これがどういう事か分かる?」
違う、あれは望んでした事じゃない。
「逃げる事だって出来たんじゃないの?」
……足に力が入らなくて……。
「望んでないとか言ってさ、本当は望んでたんじゃないの?逃げる気すら無かったんじゃないの?」
そんな事ない……っ!
「僕はそんないやらしい女性は嫌いだよ。悪いけど、僕はこの争いから手を引くよ」
待って下さい……!
お願いいかないで!!
:08/08/26 01:34
:SO906i
:☆☆☆
#330 [向日葵]
ガタン!と窓が風に揺れる音で、椿は我に返る。
そして唇にそっと指先を触れ、その手を拳の形にし、手の甲でぐいぐい拭く。
聖史の唇の感触全て無くなるよう、唇が摩擦で熱く痛くなるまで擦る。
要に嫌われたくない。
せっかく勝つと言ってくれたのに、こんな事で自分自身惑わされたくない。
それなのに……。
まだ震えが止まらない体を、自分の腕でしっかりと抱き、椿はうずくまる。
そして助けてと、心の中で必死に叫んだ。
助けてほしいのは、父でも美嘉でも誰でもない。
ただ、要に……。
:08/08/26 01:40
:SO906i
:☆☆☆
#331 [向日葵]
[第8話]
「椿さま、椿さまっ」
ハッと目を覚ました椿は、額にじっとりと汗を滲ませていた。
目の前には、心配そうにこちらを覗き込むメイドの佐々木がいた。
「佐々木さ……」
「大丈夫ですか?とても苦しそうなお顔をされていましたし、いつもの時間になっても朝食に来ませんもので……」
ゆっくりと体を起こした椿は顔が真っ青だった。
昨日の今日で、気分はすぐれない。
夢を見れば要が出てきて、椿はいくら追いかけても、遠くにいる要に追いつく事は出来なかった。
:08/08/26 01:45
:SO906i
:☆☆☆
#332 [向日葵]
走り疲れて息を切らして座り込む。すると世界が闇に包まれ、その闇が椿にまとわりつく。
その闇を振り払おうとするが、闇は段々と椿を覆っていく。
そして闇にのまれていくと感じた時、声が聞こえる。
「要くんに嫌われちゃうね」
聖史の声だった。
「今日は、学校休まれますか……?」
どこが悪いのか分からないが、とりあえず背中をさする佐々木は椿に問う。
しかし椿は首を振った。
「いえ、行きます。ご心配かけてすいません」
:08/08/27 01:21
:SO906i
:☆☆☆
#333 [向日葵]
佐々木はまだ不安そうな顔をしながらも、椿が着替えると言うので部屋を出て行った。
椿は制服を取るも、体にあまり力が入らなかった。
重いため息をついて、ベッドから降りる。
その時、テーブルに置いていた携帯が震えだす。
突然の派手な音に、びくりとした。
手を伸ばして、携帯を開けば、知らない番号だった。
とりあえず出てみる。
「……もしもし」
{おはよう}
:08/08/27 01:26
:SO906i
:☆☆☆
#334 [向日葵]
椿は胸が高鳴った。
それと同時に、胸の中がほっこりと安心感に包まれる。
「おはようございます……要さま……」
{なんだか眠そうだね。起きたて?}
意地悪そうでも、どこか優しい要の言葉は、今さっきの悪夢を忘れさせてくれそうだった。
「少し、寝坊してしまいまして……」
{珍しいね……。昨日眠れなかったの?}
その言葉に、椿は息を詰める。
悪夢が走馬灯のように椿の脳裏を駆け抜ける。
:08/08/27 01:31
:SO906i
:☆☆☆
#335 [向日葵]
追いつかない要。
闇に包まれる椿。
楽しそうに笑う聖史。
[要くんに嫌われちゃうね]
一点を見つめる椿の目は、何を写しているか分からない。
携帯を持ったまま固まり、立ち尽くす。
携帯の向こうの要は、いっこうに喋らない椿を不思議に感じ、呼びかける。
{椿?}
椿は要の声など耳に入っていないようだった。
要もそれが分かったのか、今度は強めに呼んでみる。
{椿っ!}
:08/08/27 01:36
:SO906i
:☆☆☆
#336 [向日葵]
ようやく椿は我に返る。
{どうかした?}
嫌われる。
その言葉が頭から離れない。
恐くなった椿は、無意識に電源ボタンを押していた。
―――――――…………
要の耳に、電子音が鳴り響く。
無言でいきなり切られた要は半ば唖然としていた。
要は受話器を置く。
椿の携帯に表示されなかったのは、要が自宅の電話機からかけていたからだ。
携帯の充電をしておくのを忘れたのだ。
流れで登録しとけと言うつもりが、いきなりの無言切り。
:08/08/27 01:42
:SO906i
:☆☆☆
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194