ギンリョウソウ
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#33 [向日葵]
そんな2人が外にいるだなんて知らず、要は続ける。

「彼女の会社は古くからの有名な会社でね。結婚して合併すれば、その肩書きのおかげで僕の会社が更に世界に轟くと思っただけだよ」

「そんな事で結婚するの?」

「お互いにとって別に悪い事じゃないと思うからいいんじゃない?」

そう言った途端、耳障りな音が要の耳まで聞こえた。
そして勢いよく扉が開いたと思えば、そこには美嘉と椿がいたのだった。

⏰:08/06/08 00:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#34 [向日葵]
さっきの音は、美嘉がトレイを床に叩きつけた為ティーセットが割れてしまったのだ。

割った本人は、要の言葉に怒りを隠せず睨みつけていた。
要は机にもたれながら服の新作デザインでも考えていたのか、ノートとペンを持っている。

そのすぐそばには、専属モデルか、またはそれ以上の関係かもしれない綺麗な女性が彼の首に腕を絡ませていた。


「アンタ……何様なのよ……っ!」

ちっ、聞かれたか、と要は眉をひそめる。が、直ぐに開き直ったようにまた話出した。

⏰:08/06/08 00:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#35 [向日葵]
「椿。君はむしろ僕に感謝してくれないかな。君のような病弱は跡継ぎが産めないかもしれない。つまり結婚してくれる相手なんていないと思うんだ。そこで僕が名乗り出た。もちろん目当ては君ではないけれどね」

最後まで言った途端、美嘉が要の横っ面を力一杯ひっぱたいた。
乾いた音が部屋に響く。

その時戸口にさっきの音は何事かと、そっとメイドがやって来た。

椿は何もないとにこやかに答え、何かメイドに頼んで下がらせた。
そして美嘉と要に目を移す。

⏰:08/06/08 00:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#36 [向日葵]
美嘉はあまりの怒りに目に涙をためていた。

「何が感謝よ!アンタみたいな最低人間より椿を想ってくれる人なんてたくさんいるわよ!」

「最低人間?心外だな。ちゃんと彼女達の事も考えての行動じゃないか」

「何を考えてるって言うのよ……っ。考えてるのは全部ビジネスの事ばっかりじゃないっ!」

「美嘉ちゃんいいんです」

息を荒げて振り返った美嘉は、メイドから何か受け取る椿をみつめた。

椿は渡された袋のような物を持って、美嘉の隣を通りすぎ、要に近付いた。

⏰:08/06/08 00:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#37 [向日葵]
そして袋を要に差し出す。

「顔、冷やして下さい……」

氷のうらしい。

要は少し戸惑いながらそれを受け取り、頬を冷やした。

「来て頂いたのにご挨拶が遅れました。お仕事ご苦労様でした。今から友人を送ってきます……」

美嘉の手を優しく握り、導くようにして引っ張って行く。
部屋を後にしても、美嘉はグスグス鼻をすすって泣いていた。

⏰:08/06/08 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#38 [向日葵]
門前まで来たが、未だ美嘉は泣きやまない。
そんな彼女を、椿は目を細めて見つめる。

「美嘉ちゃん……泣かないで下さい……」

「だ……、て、アイツ……ヒドす……ぎ……」

「いいえ、要さんは正しいです。こんな体が弱い私を、引き取ってくれる人なんて、きっといないって思ってますたから……」

だから、美嘉が泣くような、傷ついた思いはしていない。大丈夫だと告げるのに、美嘉は首を強く横に振り、納得しなかった。

そんな美嘉の態度が嬉しくて、自分より背が高い美嘉の頭を優しく撫でる。

⏰:08/06/08 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#39 [向日葵]
「ありがとうございます……美嘉ちゃん……」

・・・・・・・・・・・・・・・・

再び屋敷へ戻ってくると、さっきのモデルさんとすれ違う。
高いヒールを高らかにならして歩いて行く姿は美しく、やはりそういう仕事をしているのだと実感した。

自室へ戻って間もなく、ノックもせずに要が入って来た。

「お仕事お疲れ様です」

椿は一礼する。

「何のつもり?」

顔を上げた時、要は眉を寄せてこちらの考えを探るような目をしていた。

⏰:08/06/08 00:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#40 [向日葵]
「本当に納得してるの?それとも納得したフリして社長に僕の目的をひそかにバラすとか?」

挑戦的な言葉も、椿は静かに微笑んで受け流す。

「私は、納得しています。葵さまがどんなつもりであっても、父が喜んでくれるなら、私は何だっていいんです……。ですからバラされるなんて心配は無用です……」

これは椿の本音だった。
そして彼女は前から気づいていたのだ。

要が自分に対して何の感情も持っていない事を。

知っていながら、椿は父の為だけに婚約者を承諾したのだ。

⏰:08/06/08 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#41 [向日葵]
つまり自分も彼になんの感情も無かったのだ。
だから彼を一方的に怒る事なんて出来ないのだった。

「私は、父と、葵さまのサポートをするだけです……」

要は更に眉を寄せた。

ヒドイ事をやってるし言ってる自覚はある。

所詮自分達のような者は政略結婚が主だ。
もともと情なんてものは無い。

だからと言って、彼女はあまりに諦めが良すぎではないだろうか。

⏰:08/06/08 01:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#42 [向日葵]
そんなんだから、余計疑いたくもなるのだ。

「椿、君の目的は?」

「目的……ですか……?」

椿はキョトンとする。

「社長の為の他に、何かあるんじゃないのか?」

しかし椿は穏やかに微笑んでゆっくり首を横に振り否定する。

「何も、ありません」

要は戸惑った。
彼女が眩しく感じたからだ。
一点の曇りもなく、ただ父の為だけと純粋に言い張る椿を真っ直ぐに見れない気がした。

⏰:08/06/08 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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