ギンリョウソウ
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#331 [向日葵]
[第8話]
「椿さま、椿さまっ」
ハッと目を覚ました椿は、額にじっとりと汗を滲ませていた。
目の前には、心配そうにこちらを覗き込むメイドの佐々木がいた。
「佐々木さ……」
「大丈夫ですか?とても苦しそうなお顔をされていましたし、いつもの時間になっても朝食に来ませんもので……」
ゆっくりと体を起こした椿は顔が真っ青だった。
昨日の今日で、気分はすぐれない。
夢を見れば要が出てきて、椿はいくら追いかけても、遠くにいる要に追いつく事は出来なかった。
:08/08/26 01:45
:SO906i
:☆☆☆
#332 [向日葵]
走り疲れて息を切らして座り込む。すると世界が闇に包まれ、その闇が椿にまとわりつく。
その闇を振り払おうとするが、闇は段々と椿を覆っていく。
そして闇にのまれていくと感じた時、声が聞こえる。
「要くんに嫌われちゃうね」
聖史の声だった。
「今日は、学校休まれますか……?」
どこが悪いのか分からないが、とりあえず背中をさする佐々木は椿に問う。
しかし椿は首を振った。
「いえ、行きます。ご心配かけてすいません」
:08/08/27 01:21
:SO906i
:☆☆☆
#333 [向日葵]
佐々木はまだ不安そうな顔をしながらも、椿が着替えると言うので部屋を出て行った。
椿は制服を取るも、体にあまり力が入らなかった。
重いため息をついて、ベッドから降りる。
その時、テーブルに置いていた携帯が震えだす。
突然の派手な音に、びくりとした。
手を伸ばして、携帯を開けば、知らない番号だった。
とりあえず出てみる。
「……もしもし」
{おはよう}
:08/08/27 01:26
:SO906i
:☆☆☆
#334 [向日葵]
椿は胸が高鳴った。
それと同時に、胸の中がほっこりと安心感に包まれる。
「おはようございます……要さま……」
{なんだか眠そうだね。起きたて?}
意地悪そうでも、どこか優しい要の言葉は、今さっきの悪夢を忘れさせてくれそうだった。
「少し、寝坊してしまいまして……」
{珍しいね……。昨日眠れなかったの?}
その言葉に、椿は息を詰める。
悪夢が走馬灯のように椿の脳裏を駆け抜ける。
:08/08/27 01:31
:SO906i
:☆☆☆
#335 [向日葵]
追いつかない要。
闇に包まれる椿。
楽しそうに笑う聖史。
[要くんに嫌われちゃうね]
一点を見つめる椿の目は、何を写しているか分からない。
携帯を持ったまま固まり、立ち尽くす。
携帯の向こうの要は、いっこうに喋らない椿を不思議に感じ、呼びかける。
{椿?}
椿は要の声など耳に入っていないようだった。
要もそれが分かったのか、今度は強めに呼んでみる。
{椿っ!}
:08/08/27 01:36
:SO906i
:☆☆☆
#336 [向日葵]
ようやく椿は我に返る。
{どうかした?}
嫌われる。
その言葉が頭から離れない。
恐くなった椿は、無意識に電源ボタンを押していた。
―――――――…………
要の耳に、電子音が鳴り響く。
無言でいきなり切られた要は半ば唖然としていた。
要は受話器を置く。
椿の携帯に表示されなかったのは、要が自宅の電話機からかけていたからだ。
携帯の充電をしておくのを忘れたのだ。
流れで登録しとけと言うつもりが、いきなりの無言切り。
:08/08/27 01:42
:SO906i
:☆☆☆
#337 [向日葵]
自分は何か傷つける事を言ったかと首を傾げる。
コンコンとノックされると、大久保が入ってきて、朝の紅茶を運んできた。
「大久保、今日午後何か予定はあったかな?」
「午後は12時から3時までデザイン画に合わせた装飾品デザインの会議が都内の川島ビル15階の会議室でありますが……。それが何か?」
「そう。それならちょうどいい時間になるだろう。分かった。……それより大久保」
「ハイ」
要は不満そうな顔をして、紅茶のカップを大久保にずいっと渡す。
:08/08/27 01:49
:SO906i
:☆☆☆
#338 [向日葵]
「今日はセイロンティーが飲みたい」
「え、要さま昨日アールグレイが飲みたいと言ったじゃありませんか」
大久保の困った顔も無視で、要は無言でカップを押しつける。
大久保はわざと大きなため息をついて、苦笑いしながら言う。
「椿さまにはそんな意地悪しちゃいけませんよ?」
「してないよ」
してると思いながらも、大久保はフフフと笑って、紅茶をいれ直しに部屋を出て行った。
もっとも、要の意地悪や憎まれ口は、愛情の裏返しだと言うのも、彼はちゃんと分かっているのだ。
:08/08/27 01:54
:SO906i
:☆☆☆
#339 [向日葵]
――――――――…………
車で学校へ向かっている椿は、ため息をついていた。
「……8回目」
隣に乗っていた美嘉が呟く。
「へ……?」
「ため息の回数。……ねえ、昨日アイツに会った?」
「あ、ハイ。そういえば、昨日はありがとうございました美嘉ちゃん。」
美嘉は照れ臭そうに頬をポリポリとかく。
「そ、それより、会ったなら、どうしてそんなに元気がないのよ」
:08/08/27 02:02
:SO906i
:☆☆☆
#340 [向日葵]
椿はうつむく。
こんな弱気ではいけない。
きっと、これは聖史の作戦だと感じている。
そう思えば、昨日の聖史の奇妙な雰囲気を思い出して、椿は身震いした。
「椿?どうかした?寒い?」
「い、いえ……」
[要くんの温もりがないくらい椿を愛してあげる]
まるでどこかの国の暴君。
思い通りにしようとする。
あんなに優しかった聖史なのに……。
そこで椿はハッとする。
:08/08/27 02:08
:SO906i
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