ギンリョウソウ
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#420 [向日葵]
それが不思議に思うから、要をじっと見る。

「ん?何?」

「私、サイズ言いましたでしょうか……?」

「佐々木さんに教えてもらったんだよ。君がいつも身につけている装飾品を作っている会社のリストを貰ってね」

それこそいつの間にしたのだろうと思う。
しかしそれよりも、指にはまった未来を約束する銀の輪の方に気がいってしまう。

「僕のは普通なんだ。でも指輪の裏には君と僕のイニシャルが掘ってある」

見せてくれた要は指輪を自分ではめてしまう。

⏰:08/09/06 02:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#421 [向日葵]
でもそれで良かった。

「はめて」と言われても、椿はきっと恥ずかしくて出来なかっただろう。

そして気づけば、また椿がどうしたらいいか分からない雰囲気になってしまった。

顔にかかる艶がある長く黒い髪の毛を、要はそっとよける。
うつむいていた椿の顔が少し現れる。
椿はこわごわと視線を上げる。
すると要は笑う。

「なに緊張してるのさ」

「い、いえ……」

徐々に要が近づくのを視界の隅で捕らえる。

⏰:08/09/06 02:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#422 [向日葵]
どうすればこの空気に溶け込む事が出来るのか分からず、体を硬直させる。
目をギュッとすれば、耳と感触しか頼りがない。

要の大きな掌が、耳元から頬を温かく包み込む。
体の力が、どうしてか少し安心したので少しずつ抜けていく。

「やっぱりまだ触れると恐い?」

心配そうな要の声に、目をゆっくり開けると、彼の方を見る。

心底心配する彼に、胸の中に温かさが広がっていく。

「え、えっと……。今はただ、恥ずかしいだけなんです……」

正直に告げれば、要はアハハと笑った。

⏰:08/09/06 03:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#423 [向日葵]
「本っ当可愛らしいな君は」

そんな事を言うから恥ずかしくなる。
そんなのを言うなら要だって……。

「素敵……」

「へ?」

うっとりしていた椿はしばらく固まって、やがて真っ赤になりながら口を抑えると要から離れる。

心の中で言うつもりだった言葉が表に出てしまった。
これは最高に恥ずかしい。

要も椿がそんな事を言うだなんて思わないから、椿の顔を包み込んだままのところで手が固まり、ぽけっとしていた。

⏰:08/09/06 03:13 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#424 [向日葵]
椿は顔を両手で隠して座ったままベッドに突っ伏す。

「ご、ごめんなさいっ……!言うつもりなんて全くなくって、でも言った事は本当でして、いえ、そうじゃなくって、えと……っ」

しどろもどろ。錯乱状態。
今の椿はそんな感じだ。

とりあえず椿が何度も忙しなく謝り続けていると、要は吹き出し、声を上げて笑い出した。

「面白すぎっ!」

立ち上がり、椿の前まで行くと、床に膝をついて椿の頭を撫でる。
「顔を上げなよ」

「む、無理です……っ」

⏰:08/09/06 03:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#425 [向日葵]
「椿……」

優しく名前を呼べば、椿はゆっくりと顔を要に向ける。顔は未だ隠しているが、指の隙間を微かに見えるぐらいに開いて見ている。

なめらかな黒い髪の毛から少し覗いている耳と頬は、これまでにないくらい真っ赤だ。

「真っ赤な顔でも上げてよ。椿の顔見たいからさ」

椿は身を起こして、ちょこんとベッドに座り直す。

「椿の顔、椿色だ」

楽しそうに要が笑うから、椿は両手で頬に手を添え熱を確かめながらも笑った。

要は椿と目線を合わせる。

⏰:08/09/07 02:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#426 [向日葵]
目が合えば、やっぱり照れくさくて2人して笑ってしまう。

そこで初めて、要は椿が自分に対して心からの笑顔を向けてくれたと嬉しくなった。

そして必ず幸せにしてみせると、心に誓う。

⏰:08/09/07 03:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#427 [向日葵]
[第10話]

新幹線に乗った椿、美嘉、要の3人は少し前に起こった出来事を何回も思い出しながらぼんやりとしていた。

「すごかったなぁ……アレ」

美嘉が呟く。
それに椿がこくこくと頷く。

「あんな事、ドラマしかやらないと思ってた」

椿はまたこくこくと頷く。

―――――――――…………

それは4日程前から話は遡る。

[別荘へ行かないか?]

いつものように椿宅へ来た要は、抜糸してだいぶ治った手で椿と手を繋ぎ、庭を散歩していた。

⏰:08/09/07 03:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#428 [向日葵]
椿の腕は、抜糸までもう暫くはかかるが、だいぶ良くなっている。

[別荘ですか?]

[と言っても君の別荘だけどね。僕のはほとんど外国にあるし、前に社長にいつでも使ってくれと言われてたのを思い出したんだ]

椿も両手で足りる程しか行った事はない。
行ってみたいと単純に思うが……。

2人きりだろうか……。

[美嘉でも誘ったらどうかな?この前の1件では、色々と世話になったし]

この前の1件とは、聖史の事だ。
風のたよりに聞けば、彼はドイツの方へ行ったらしい。

⏰:08/09/07 03:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#429 [向日葵]
もう会う事はないのだろうか……。
それでも今は、距離を置きたいから、ホッとしているのは確かだ。

[で、行く?]

[ハイ、美嘉ちゃんも一緒なら行きます]

[“なら”って何?……椿、僕が君を襲うとでも思ってるの?]

[えぇっ……!?]

要と2人きりは気まずい。
だがそれは恋人同士の空気に慣れてない椿がただ困るだけで、こんな態度では要が気分を害してしまうのではないかと心配していたからだ。

しかし美嘉が来てくれるのならばその空気は幾分か無くなり、自分もいつもみたいに振る舞えるだろうと考えていただけだ。

⏰:08/09/07 03:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#430 [向日葵]
[私はそんないやらしい考えは……っ]

[いやらしいって、まるで僕がそうみたいじゃないかっ!]

些細なケンカは嫌いだ。
だから椿は余計に混乱する。

[そんな事思った事はないです……っ!要さまは素敵な紳士だと思い……]

ここまで言って、自分が恥ずかしい事を言っている事に気づいた椿は顔を背けて顔を赤らめる。

それには要もなんとなく黙ってしまい、恥ずかしい居心地の悪さを2人して感じる羽目になった。

[……とにかく……]

しばらくして、要が咳払いを軽くすると口を開いた。

⏰:08/09/07 03:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#431 [向日葵]
[行くならば、しっかり用意をしておいてくれ]

そうして美嘉に言えば、2つ返事で行くと言った。
美嘉は越も連れて行こうと言う。

それには椿も賛成だった。

近頃の彼女は、前よりもぼんやりし何より悲しそうだった。
どうやら原因は彼女の大切な人である柴にあるらしかった。

心配した椿と美嘉は、誘ってみると、越も行くと行った。

ここから今日の話になる。

駅についてコンビニでお菓子でも買おうと言っていると、例の彼が越を迎えに来てあっという間に連れ去ってしまったのだ。

⏰:08/09/07 03:30 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#432 [向日葵]
3人は驚きのあまりそこでしばらく立ち尽くす。
やがて動けるようになっても夢ごごちのようにフワフワしていた。

――――――――…………

「しかし彼女に彼氏がいたんだね」

買った水を飲みながら要が言う。
椿は首を傾げる。

「まだ恋人って訳ではないらしいのです。大切な人とは思ってるらしいですが……」

「まるでアンタ達みたいね」

ポテトチップスの袋をパーティー開けしながら美嘉が言う。

⏰:08/09/07 03:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#433 [向日葵]
「失礼な。僕たちは恋人だし、恋人同士以上に婚約者だ」

要は椿の肩を引き寄せ、前に贈ったお互いの指にはまった指輪を見せる。

「椿、迷惑なら今のうちに断りな」

「まだ言うか君は」

でも椿は美嘉のその言葉が、前と違って本気ではなく、茶化しているだけだと思えば嬉しくて密かに笑う。

窓の外を見れば、過ぎ行く景色が心を躍らせた。
いい天気だし別荘の周りは自然に溢れている。

きっといい思い出になるだろう。

⏰:08/09/07 03:41 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#434 [向日葵]
―――――――――…………

ついた別荘は2階建ての大きな建物だった。

中は木目調で、自然の暖かさがある造りになっている。

「ねえねえ椿、湖に行こうよ!キラキラ綺麗だよ!」

少し離れた所にあるのだ。

「行っておいで。僕は少し寝るよ」

と要は2階へ続く階段へ行く。
どうやら休みを貰う為、切り詰めて仕事をし疲れているらしかった。

「何かありましたら、電話してくださいね」

手を振りながら要は2階へと姿を消して行った。

⏰:08/09/07 03:47 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#435 [向日葵]
椿は美嘉と共に湖の近くまで歩いて行く。
周りに紅葉ももうすぐ終わる木が沢山あり、枯れ葉の茶色ささえ、なんだか愛おしく思える。

「椿、昔よくやったよね、これ」

一輪の花を、美嘉がブチリと雑に引っこ抜く。

「花占いですね」

「ちょっとやってみない?」

「でも何について占うんです?」

「私がやりたいのはまた違う花占いなの」

そう言って美嘉は花びらを1枚1枚今度は丁寧に取る。

⏰:08/09/14 01:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#436 [向日葵]
花びらが無くなった花はポイッと可哀想なくらい簡単に捨てられる。

「この頃読んだ漫画であったの。その名も子宝占い」

「子宝占い?」

「まぁ見ててよ」

美嘉は花びら全部を片方の手に乗せ握る。
そして手の甲を上へ向けて指をゆっくりと開く。
何枚か、草びれた花びらが草の上へ落ちていく。

掌をまた上へ向ければ、花びらが2枚ついていた。

「これが、美嘉が将来産む子供の数。2枚だから、美嘉は2人っ」

⏰:08/09/14 02:03 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#437 [向日葵]
「へぇー……」

美嘉はまたその辺から花を引っこ抜いて椿に差し出す。

「はい椿も」

「あ、はい……」

美嘉と同じようにして、椿は掌を開く。
花びらがまた落ち、掌を見て、椿と美嘉は驚く。

「あ、あれ……?」

美嘉は少しうろたえる。

椿の掌には、花びらは1枚もついていなかったのだ。

椿は掌を見たまま固まる。

「だ、大丈夫!たかが漫画に書いてたネタだし、本当に当たる訳じゃないよっ!」

⏰:08/09/14 02:07 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#438 [向日葵]
椿は「そうですね」と弱々しく微笑む。

“たかが漫画に書いてた占い”

そう思っていても、自分の弱い体を考えれば、その占いが実は当たっているのではないかと椿は不安だった。

子供は出来ない?
それとも、椿が会えなくなる……?

しかし、美嘉も悪気があったのではないし、楽しませようとさせてくれだと分かるから、気にしないようにする。

せっかく久々の、平和な日常なのだから……。

―――――――――…………

⏰:08/09/14 02:11 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#439 [向日葵]
しばらく散歩をした椿と美嘉は、そろそろ帰ろうかと別荘へ帰ってきた。

美嘉はお茶でもしようとお湯を沸かす。
椿は「ならば」と要を起こしに2階へと向かう。

要の部屋前へ来て、寝ているとはいえノックもせずに入るのは失礼だと思い、静かにノックをする。

「要さま……?失礼します……」

そろりとドアを開ければ、爽やかな風が入る。
入って直ぐのベッドには要はいない。

少し歩けば、窓の近くにある椅子に、片足をあげてそれに頬杖するように要が寝ていた。

⏰:08/09/14 02:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#440 [向日葵]
開け放した窓から入る風が、要の髪と膝に置いている読みかけの本をペラペラとめくる。

ギシギシ軋む床のせいで、要が起きないようにゆっくり近づいた椿は、要を覗き込む。

じっと見つめれば見つめる程、吸い込まれるように椿の顔が近づく。
その時、僅かに笑うように息が漏れる音が聞こえた。

「……そんなに近くで見なくてもいいよ」

「え……?」

目をパチリと開けた要と目が合う。
潤んだ彼の瞳に自分が映っているとぼんやりと思った椿を、笑みを含んだ要の目が見つめ返す。

⏰:08/09/14 02:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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