ギンリョウソウ
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#421 [向日葵]
でもそれで良かった。

「はめて」と言われても、椿はきっと恥ずかしくて出来なかっただろう。

そして気づけば、また椿がどうしたらいいか分からない雰囲気になってしまった。

顔にかかる艶がある長く黒い髪の毛を、要はそっとよける。
うつむいていた椿の顔が少し現れる。
椿はこわごわと視線を上げる。
すると要は笑う。

「なに緊張してるのさ」

「い、いえ……」

徐々に要が近づくのを視界の隅で捕らえる。

⏰:08/09/06 02:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#422 [向日葵]
どうすればこの空気に溶け込む事が出来るのか分からず、体を硬直させる。
目をギュッとすれば、耳と感触しか頼りがない。

要の大きな掌が、耳元から頬を温かく包み込む。
体の力が、どうしてか少し安心したので少しずつ抜けていく。

「やっぱりまだ触れると恐い?」

心配そうな要の声に、目をゆっくり開けると、彼の方を見る。

心底心配する彼に、胸の中に温かさが広がっていく。

「え、えっと……。今はただ、恥ずかしいだけなんです……」

正直に告げれば、要はアハハと笑った。

⏰:08/09/06 03:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#423 [向日葵]
「本っ当可愛らしいな君は」

そんな事を言うから恥ずかしくなる。
そんなのを言うなら要だって……。

「素敵……」

「へ?」

うっとりしていた椿はしばらく固まって、やがて真っ赤になりながら口を抑えると要から離れる。

心の中で言うつもりだった言葉が表に出てしまった。
これは最高に恥ずかしい。

要も椿がそんな事を言うだなんて思わないから、椿の顔を包み込んだままのところで手が固まり、ぽけっとしていた。

⏰:08/09/06 03:13 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#424 [向日葵]
椿は顔を両手で隠して座ったままベッドに突っ伏す。

「ご、ごめんなさいっ……!言うつもりなんて全くなくって、でも言った事は本当でして、いえ、そうじゃなくって、えと……っ」

しどろもどろ。錯乱状態。
今の椿はそんな感じだ。

とりあえず椿が何度も忙しなく謝り続けていると、要は吹き出し、声を上げて笑い出した。

「面白すぎっ!」

立ち上がり、椿の前まで行くと、床に膝をついて椿の頭を撫でる。
「顔を上げなよ」

「む、無理です……っ」

⏰:08/09/06 03:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#425 [向日葵]
「椿……」

優しく名前を呼べば、椿はゆっくりと顔を要に向ける。顔は未だ隠しているが、指の隙間を微かに見えるぐらいに開いて見ている。

なめらかな黒い髪の毛から少し覗いている耳と頬は、これまでにないくらい真っ赤だ。

「真っ赤な顔でも上げてよ。椿の顔見たいからさ」

椿は身を起こして、ちょこんとベッドに座り直す。

「椿の顔、椿色だ」

楽しそうに要が笑うから、椿は両手で頬に手を添え熱を確かめながらも笑った。

要は椿と目線を合わせる。

⏰:08/09/07 02:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#426 [向日葵]
目が合えば、やっぱり照れくさくて2人して笑ってしまう。

そこで初めて、要は椿が自分に対して心からの笑顔を向けてくれたと嬉しくなった。

そして必ず幸せにしてみせると、心に誓う。

⏰:08/09/07 03:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#427 [向日葵]
[第10話]

新幹線に乗った椿、美嘉、要の3人は少し前に起こった出来事を何回も思い出しながらぼんやりとしていた。

「すごかったなぁ……アレ」

美嘉が呟く。
それに椿がこくこくと頷く。

「あんな事、ドラマしかやらないと思ってた」

椿はまたこくこくと頷く。

―――――――――…………

それは4日程前から話は遡る。

[別荘へ行かないか?]

いつものように椿宅へ来た要は、抜糸してだいぶ治った手で椿と手を繋ぎ、庭を散歩していた。

⏰:08/09/07 03:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#428 [向日葵]
椿の腕は、抜糸までもう暫くはかかるが、だいぶ良くなっている。

[別荘ですか?]

[と言っても君の別荘だけどね。僕のはほとんど外国にあるし、前に社長にいつでも使ってくれと言われてたのを思い出したんだ]

椿も両手で足りる程しか行った事はない。
行ってみたいと単純に思うが……。

2人きりだろうか……。

[美嘉でも誘ったらどうかな?この前の1件では、色々と世話になったし]

この前の1件とは、聖史の事だ。
風のたよりに聞けば、彼はドイツの方へ行ったらしい。

⏰:08/09/07 03:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#429 [向日葵]
もう会う事はないのだろうか……。
それでも今は、距離を置きたいから、ホッとしているのは確かだ。

[で、行く?]

[ハイ、美嘉ちゃんも一緒なら行きます]

[“なら”って何?……椿、僕が君を襲うとでも思ってるの?]

[えぇっ……!?]

要と2人きりは気まずい。
だがそれは恋人同士の空気に慣れてない椿がただ困るだけで、こんな態度では要が気分を害してしまうのではないかと心配していたからだ。

しかし美嘉が来てくれるのならばその空気は幾分か無くなり、自分もいつもみたいに振る舞えるだろうと考えていただけだ。

⏰:08/09/07 03:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#430 [向日葵]
[私はそんないやらしい考えは……っ]

[いやらしいって、まるで僕がそうみたいじゃないかっ!]

些細なケンカは嫌いだ。
だから椿は余計に混乱する。

[そんな事思った事はないです……っ!要さまは素敵な紳士だと思い……]

ここまで言って、自分が恥ずかしい事を言っている事に気づいた椿は顔を背けて顔を赤らめる。

それには要もなんとなく黙ってしまい、恥ずかしい居心地の悪さを2人して感じる羽目になった。

[……とにかく……]

しばらくして、要が咳払いを軽くすると口を開いた。

⏰:08/09/07 03:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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