ギンリョウソウ
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#505 [向日葵]
それだけあっさりと言うと、美嘉はリビングへと消えていった。
美嘉のそんな気持ちに感謝し、要は外へと出た。

数時間前の雨もなんのその。
雲間からは三日月が冴えざえと辺りを照らし、雨が降ったあとの冷たい空気は気持ち良く感じる。
穏やかな風に身を任せていれば、揺れる草がしゃらしゃらと音を奏でているのが聞こえる。

そんな空気をしばらく楽しんだ要は歩き出す。

彼が向かうのは湖だ。
そこへ、椿が落としたと言う指輪を探しにいく。

あれじゃないと、彼女は納得しないように思った。
だから探し出す。
もしかしたら湖のほとりにでも落ちているかもしれないからだ。

⏰:08/10/15 00:56 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#506 [向日葵]
湖につけば、水面に映し出された月が綺麗でぼんやりと眺めたくなるが、それが目的ではないと、持っていた携帯のライトで足元を探してみる。

こんな風に、光をあてれば光って見つかりそうなのだが……。

「やっぱり無いか……?」

呟いた次の瞬間、少し強めの風が吹いた。
寒さとその強さに目を瞑った要は、再び目を開けた時驚く。

数メートル離れた所に、誰かがいる。
青白い肌、闇にも似た黒く長い髪。
口元には微笑みをたたえている。それは、要がよく知る人物だ。

「椿……?」

⏰:08/10/15 01:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#507 [向日葵]
呟きは再び吹いた風にかき消される。
ゆっくりと立ち上がった彼は、彼女をじっと見つめる。

「何をやっているんだ君は!熱があるのに、ちゃんと寝てなきゃ……っ」

最後まで言う前に言葉を切る。
それは月が雲から完全に出て、彼女を鮮やかに照らしたからだ。
改めて彼女を見た要はまた驚く。

椿……じゃない……。

とてもよく似ている。
髪や顔、その肌の白さまで。
しかし、椿はもっとおっとりした空気をまとっている。
今、彼の目線の先にいる人物は、どちらかと言えば凛としていた。

じゃあ彼女は一体誰なんだ?

⏰:08/10/15 01:07 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#508 [向日葵]
眉を寄せ、彼女をじっと見ていると、彼女はゆっくりと指を要の方へ差す。
自分を差された要はうろたえるが、彼女は一層微笑みを浮かべると、口を開く。

「あっちよ……」

あっち?
更に要はいぶかしむ。
すると、背後が急に光った気がした。
急いで振り返るも、さっき感じた光はもう無かった。
が、ある1点がほのかに光っている気がする。

月のせい?

そう思いながらも近づく。
そこには、銀色の小さな輪があった。
それこそが、椿に贈った婚約指輪だった。

「……!あった……っ」

⏰:08/10/15 01:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#509 [向日葵]
軽くついてる泥を丁寧に払い、大切にポケットにしまう。
そして振り返る。

まだ、彼女はいた。

さっきよりは近づいている。
普通の音量で話してもなんとか届くくらいの距離。
相変わらず彼女は微笑んでいる。

2人の間を、柔らかく冷たい風がすり抜ける。

この人を、自分は知っている。
さっきは驚いていたせいもあって思い出せなかったが、よくよく考えれば、1度、写真で見た事があった。

吹き終わると、要は口を開いた。

「椿の……お母様ですね……」

⏰:08/10/15 01:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#510 [向日葵]
彼女はにこりと笑ってから頷いた。

(初めまして、要さん)

椿の母はもういない。
そこにいるのは魂。
つまりは幽霊。
それなのに動揺する事もなく話しているのは、怖く感じないからだろう。
だから要は普通に会話する。

「こちらこそ、初めまして。改めまして、葵 要と申します」

(椿がとてもお世話になっています。今も……)

椿の母は別荘がある方へ目をやる。

(あんな、臆病な子になってしまったのは、私のせいです。私がもっと、体が丈夫でしたら、あんな心配や重荷を背負わずのびのびと生きれたでしょうに……)

⏰:08/10/15 01:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#511 [向日葵]
「あなたのせいでは……。それに椿は、あなたの事を本当に尊敬しています」

(要さんは優しいのね……。あの子が好きになる筈だわ……)

要は少し照れてから、まっすぐ彼女を見つめる。

どうしても、確かめたい事があったのだ。

「僕が、椿と結婚する事を許して頂けますか?」

椿は自分は要と結婚してもいいのかと問うてきた。
要は構わなかった。
椿がそばにいてくれるのならと。
ならば自分は?

最初は不純な動機で交わした約束。
そのまま気持ちを重ねて婚約したが、自分こそ、椿と結婚してもいいのかと思い始めた。

⏰:08/10/15 01:30 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#512 [向日葵]
あまりに、自分は勝手すぎたかもしれなかった。

椿の母は、微笑んでいるが真剣な顔つきになる。
そしてゆっくり口を開く。

(駄目よ)

要はズキンと胸を痛める。
しかしここで引き下がる訳にはいかない。
どう考えても自分は椿とは離れたくないからだ。

「認めて頂けないなら……認めて頂けるよう成長します」

その答えを聞いた彼女は微笑みを深くして要に近づいてくる。
近づけば更に彼女の姿が分かった。

幽霊の筈なのに、触れられそうだ。

⏰:08/10/16 21:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#513 [向日葵]
(冗談よ)

彼女は片目を瞑ってみせる。
要は何が何だか分からなくて間抜けな顔になってしまった。
そんな彼の表情を面白そうに笑ってから椿の母は更にもう1歩要に近づく。

(椿が求めている相手を私が否定する訳ないじゃないですか。……いいえ、椿には要が必要です。だからそばにいてあげて下さい)

微笑んでいても、母が椿を思う気持ちはひしひしと伝わってくる。
要は神妙に頷き、頭を深々と下げる。

「大切にします」

少し間をおき、楽しそうに「フフ」と笑う声が聞こえた。
要が頭を上げた時には、そこには椿の母の姿はなく、彼ただ1人になっていた。

⏰:08/10/16 21:45 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#514 [向日葵]
――――――――…………

別荘に帰れば、リビングに美嘉と大久保がテレビを見ていた。

それを一目見てから要は階段を上がる。
ゆっくりと椿の部屋に入れば、ベッドの上で椿は体を起こしていた。

「椿っ」

「あ……要さま……」

「まだ寝てなきゃ駄目だろ」

肩を掴んで寝かせようとする要の手に自分の手を重ねて椿は拒否する。

「あの、それが……熱は下がったみたいで……」

⏰:08/10/16 21:50 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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