ギンリョウソウ
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#527 [向日葵]
少し不安になり、困ったように眉根を寄せる。
「僕の隠し事は話した。さて、君の隠し事は、一体何なのかな?」
あ、と椿は目を見開く。
指を組み合わせて落ち着きなく少し体を揺らす。
「そ、その、えと……昨日言ったような話だったんです」
「昨日?何を話したっけ?」
「えと、要さまが好きと再確認してしまうと、こそばゆくなるとか」
「あぁ、それが大久保とどう……?」
まったく結びつく気配がないので要は宙を見て考える。
:08/10/30 15:54
:SO906i
:☆☆☆
#528 [向日葵]
椿はその時の会話を話す。
やがて要は「あぁ」と言い、おかしそうに笑う。
「君の恥ずかしがる度合いが分からないよ」
椿が赤くなってうつむけば、要は彼女の腕を引き腕の中に閉じ込める。
「そんなだから、君を手放す事が出来ないんだろうけどね」
穏やかな口調に椿は胸が高鳴る。要を見上げれば、口調と同じくらい穏やかな笑みを向けていた。
自然に顔が近づいてくる……。
「ラブラブ中にごめんねーっと」
要がおさえていた筈のドアをいとも簡単に美嘉が開く。
:08/10/30 16:00
:SO906i
:☆☆☆
#529 [向日葵]
おさえていた要は弾かれ椿と共に転ぶ。
幸い椿は要が咄嗟に庇ったので体が痛くなる事は無かった。
「君はノックも出来ないのか……」
「ノックしただけじゃ無視しそうな雰囲気だったから。当たってるんじゃない?万年発情男くん」
にっこり笑う美嘉をムスリとしながら睨みつける。
彼女が言ってる事をあながち否定出来ないからだ。
美嘉は椿だけに手を貸して立たせてやる。
「ご飯出来たよ。降りてらっしゃいな」
―――――――――…………
運動部的な見た目や性格だから料理ももっとすごいものだと勝手な想像をしていた要や大久保は朝食を見て驚く。
:08/10/30 16:07
:SO906i
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#530 [向日葵]
トーストにスクランブルエッグ、控えめにあるベーコン、ちぎったレタスのサラダには綺麗に三日月型に切ったトマトがそえられ、寒い体を温める野菜スープまでもがある。極めつけはフルーツが入ったゼリー。
これは昨日夜に作ったのだとか。
「僕、黒こげになった料理しか出てこないか、もっと雑なものが出てくると思った」
美嘉をじっと見ながら言う。
昨日の夕食は大久保が作ったもので、美嘉は手伝いしかしていなく、その実力を見る事は無かった。
「あのね、美嘉はこう見えて料理が好きなの。学校のお弁当だって毎日自分で作ってるんだから」
:08/10/30 16:14
:SO906i
:☆☆☆
#531 [向日葵]
この時、要や大久保が購買で勇ましくもパンを勝ち取る姿しかイメージ出来なかったのは言うまでもない。
要は飛び級なのでそんなシーンは滅多に見ないが、たまにどこかの学校の前を通り過ぎる時、パン屋らしい車の前で生徒が争うように血眼でパンを買っていたのを見た事がある。
なので美嘉にはそのイメージしかなかった。
「君にも女の子らしいとこがあったんだね」
「アンタ美嘉をなんだと思ってたの」
「野生児」
「野菜スープぶっかけられたい?」
:08/10/30 16:21
:SO906i
:☆☆☆
#532 [向日葵]
本当にぶっかけるつもりなのか、おたまと野菜スープが入った小さな鍋を持ってじりじり寄ってくるものだから、椿と大久保は慌てて止めなくてはならなかった。
そんな事がありながらも、4人で楽しく朝食を食べ、一息ついた。
―――――――――…………
1時間程すると、要と椿が散歩へ出ていった。
幸せそうな2人の背中を見送りながら美嘉はホッとする。
「美嘉さま」
振り返れば、要の従者が立っていた。
「美嘉さまも散歩はしなくてよろしいのですか?」
:08/10/30 16:26
:SO906i
:☆☆☆
#533 [向日葵]
「美嘉は掃除でもしてますよ」
「なら、それは私がいたします」
「あなたこそ、ちょっとは休めばどうですか?働き詰めはよくないと思いますけど」
「いえそんな。私はいいのです」
「じゃあ美嘉もいいです」
そんな言い合いをして数分。
ラチがあかないと美嘉は黙る。
同じ事を思ったのか、従者も黙った。
しばらくして、美嘉が両手をパンと合わせる。
「じゃあ2人で散歩しましょう」
「えぇっ!?」
:08/10/30 16:30
:SO906i
:☆☆☆
#534 [向日葵]
うろたえる大久保をよそに、美嘉はさっさと用意を始めていく。
「たまにはアイツの事なんか忘れて、のんびり過ごす事も大切だと思いますよ。ホラッ!」
美嘉は強引に大久保の手を引く。
大久保は抵抗する間もなく、外へと連れていかれてしまった。
――――――――…………
どこへ行くかなどは決めず、のんびりと林の中を歩く。
暖かく柔らかな日差しが心地よく感じる。
美嘉は落ち葉を踏み、パキパキと鳴るその感触を楽しんでいた。
「美嘉さまは、いつから椿さまとお友達で?」
:08/11/16 01:37
:SO906i
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#535 [向日葵]
「ずーっと昔からです。たまたまいた近所の公園にいて、それから。あんな大きな家に住んでるのにわざわざ外へ出るなんて、変わってる子ですよね」
大久保は静かに微笑む。
大久保より数歩先を歩いていた美嘉は、片足を軸にくるりと回って大久保の方を向く。
「大久保さんは?いつからアイツのとこへ?」
「父が要さまのお父様の従者をしてまして、私も父に連れられて、要さまとは幼い頃から交流がありましたので」
「従者って言うよりは、親しげですよね、あなた」
「それは……大変光栄にございます」
:08/11/16 01:43
:SO906i
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#536 [向日葵]
本当に嬉しそうに笑うものだから、美嘉もつられて笑顔になる。
そして再び歩き出す。
「そういえば、アイツの両親って……」
「お2人共、海外で暮らしてらっしゃいます。ご多忙な為、要さまとお会いするのは3年に1度ほどなのです」
「それは、小さい頃から?」
「はい」
じゃあ、要の自己中心的な所は、小さい頃つもりつもった両親に対する寂しさからくるものなのだろうか。
と美嘉は首を傾げる。
そして思う。
そういう人だから、椿の事を理解してくれたのかもしれない、と。
:08/11/16 01:49
:SO906i
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