ギンリョウソウ
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#541 [向日葵]
「有名ブランドを背負うデザイナーの息子……。それがどれだけ要さまの背中にのしかかった事でしょう……」

父の地位へ上り詰める事は容易くなく、評価が重なり、それはまた彼を押し潰してしまいそうだった。
そんな要を近くで見守り続けたのは、従者である大久保だった。

しかし、自分の無力さを、大久保は呪っていた。

見守るのは、いつも要の寂しげな後ろ姿だった。

「あの方に、何が出来るか考えました。考えた末に見つけた答えは、見守る事だけだったのです」

あぁ……自分は何も出来ないのかと、ただただ失望した。

⏰:08/11/16 02:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#542 [向日葵]
そんなある日、要は言った。

強い眼差しは今でも鮮明に覚えている。

[大久保、お前だけは僕と対等な関係でいろ。なんでも言い合える、友のような存在でいろ]

黙って見守り続けていた事は無駄ではなかったのだ。
ビジネスを続ける上で、自分に寄り添い、支えてくれた大久保は、要にとって唯一、心を許せる相手だったのだ。

「それからは、主従関係は抜けませんが、心の中では対等なお付き合いをさせて頂いてます」

そんな彼が、変わり始めた。

それは1人の少女との出会いだった。

⏰:08/11/16 02:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#543 [向日葵]
「びっくりしたのは大雨の日ですよ。急に野々垣邸へ車を飛ばせと言うのですから」

美嘉はそういえばと思い出す。
いつだったか、椿が要のお見舞いへ行くと言っていた。

もしやそれが何か関係あるのか?

「着いて早々、傘もささずに遠い玄関まで走っていくものですから、私も思わず唖然としてしまい、要さまを追いかける事も忘れてしまってました」

苦笑しながら話す彼の目元に柔らかさが戻りだす。

「しばらくして、戻ってきた要さまのお顔が変わっていました。どこか、決意をなさったお顔をされてましたので」

⏰:08/11/16 02:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#544 [向日葵]
そこでかっ!と美嘉はパチンとパズルがはまった感覚になった。

要がようやく椿になけなしの誠意を見せたのは!

少々失礼な事を思うが、彼女にとって今そんな事はどうでも良かった。

「でも、アイツなんで椿を好きになったんだろう」

そんな事つきとめても仕方ない事は分かる。
理由は分からないけれど何故か惹かれ合うものがあるのだろうと、ぼんやりだか理解しているからだ。

それでも、椿をビジネスの道具としてしか考えていなかった要が何故と疑問だった。

⏰:08/11/16 02:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#545 [向日葵]
自分が知らない内に二人は絆を深めていってた事に驚いた。

あの椿が、要に襲われかけた後、本心からの願いを言った時、美嘉は椿の気持ちに気づいてしまったし、その後要を訪ねれば、彼の気持ちにも気づいてしまった。

そして二人は相思相愛と悟った。

「美嘉は……嫌な奴かもしれない……」

ボソリと美嘉が呟くと同時に、風が吹き、木々が揺れる。

「美嘉さま……?」

「椿が幸せなら嬉しい。だってあんな子だもの、誰よりも幸せになってほしい……」

それなのに……。

⏰:08/11/26 23:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#546 [向日葵]
胸の中に、気持ち悪く残るこの感情は、何……。

いつも、椿の近くにいるのは自分だった。
それが、いつの間にか彼女の隣には、彼女をいとおしそうに見つめ、大切に思っている人が現れた。

いづれはそうなるだろうと思っていたし、要が前ほど嫌いだから拒絶している訳でもない。
あの二人が、楽しそうに笑ってくれていれば、ほっとするし、顔がほころぶ。

「寂しい……」

「美嘉さま……?」

それでいい筈なのに、どこかおいてきぼりされた気分なのはどうしてなんだろう……。

⏰:08/11/26 23:07 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#547 [向日葵]
「美嘉は、だめだめですね。友達の幸せ一杯な姿を見て、寂しく感じるだなんて……」

美嘉の顔が歪む。
嫌悪感でいっぱいになる。
そんな美嘉を、大久保は変わらない微笑みで見つめる。
近づいていき、美嘉の手をそっと取る。

温かい大久保の手に、少し安心した気分になる。

「寂しく感じるくらい、椿さまを大切になさっている美嘉さまは、とても素敵な方だと思います」

伏せていた目を、ゆっくりあげる。
自分は背が高いが、大久保は自分より更に高い。
目線を上にしなければならないのが、少し新鮮に感じる

⏰:08/11/26 23:13 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#548 [向日葵]
要ですら、美嘉より背が低い。
椿はもっと低い。
だから、自分より背が高い人から見下ろされ、こんな風に微笑まれれば、自分を守ってくれる気がすると、美嘉は思った。

「あと、要さまが椿さまを好きな理由ですが……」

我に返った美嘉は、どこかぼんやりした頭を必死に起こす。

さっきのふんわりした気分は一体なんなんだと思いながら、要の椿に対する気持ちを聞く方に興味がいってしまったので、疑問は彼方へ消えてしまう。

「椿さまを、どうしても放っておけない自分がいたらしいです。あまりに痛々しくいじらしい椿さまのお姿は、要さまの胸を締めつけ、頭では仕事の為だと思っていても、本当の心の声には負けてしまったみたいですね」

⏰:08/11/26 23:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#549 [向日葵]
美嘉にはそんな経験はない。

何せ幼い頃からボーイッシュな性格は自覚していたし、見た目も椿のような儚さや、女の子らしい柔らかさのようなものは持ち合わせていないと思っていた。

だから恋する事は諦めていた。

いくら偉そうに恋愛話をしたって、所詮は一般論である事は分かっていた。

自分もそんな風に、心の素直な声に抗えず、従ってしまう程の運命の相手に出会う事が出来るのだろうか。

と思いながら、ちらりと大久保を見る。

大久保は、美嘉を女の子扱いした。

⏰:08/11/26 23:25 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#550 [向日葵]
それが珍しい。
大抵は、そんな扱いしてもらえない。
だからか、不思議な気持ちになってしまう。

名前、なんだっけ……。
未だに思い出せない。
彼は自分を名前で呼んでくれるのに。

「あなたは、そんな相手がいた事がありますか?」

何気なく訊いてみる。
深い意味はない……つもりだと、美嘉は自分でもわからなくなっていた。

大久保は人差し指を唇にあてる。

「内緒です」

⏰:08/11/26 23:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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