ギンリョウソウ
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#547 [向日葵]
「美嘉は、だめだめですね。友達の幸せ一杯な姿を見て、寂しく感じるだなんて……」

美嘉の顔が歪む。
嫌悪感でいっぱいになる。
そんな美嘉を、大久保は変わらない微笑みで見つめる。
近づいていき、美嘉の手をそっと取る。

温かい大久保の手に、少し安心した気分になる。

「寂しく感じるくらい、椿さまを大切になさっている美嘉さまは、とても素敵な方だと思います」

伏せていた目を、ゆっくりあげる。
自分は背が高いが、大久保は自分より更に高い。
目線を上にしなければならないのが、少し新鮮に感じる

⏰:08/11/26 23:13 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#548 [向日葵]
要ですら、美嘉より背が低い。
椿はもっと低い。
だから、自分より背が高い人から見下ろされ、こんな風に微笑まれれば、自分を守ってくれる気がすると、美嘉は思った。

「あと、要さまが椿さまを好きな理由ですが……」

我に返った美嘉は、どこかぼんやりした頭を必死に起こす。

さっきのふんわりした気分は一体なんなんだと思いながら、要の椿に対する気持ちを聞く方に興味がいってしまったので、疑問は彼方へ消えてしまう。

「椿さまを、どうしても放っておけない自分がいたらしいです。あまりに痛々しくいじらしい椿さまのお姿は、要さまの胸を締めつけ、頭では仕事の為だと思っていても、本当の心の声には負けてしまったみたいですね」

⏰:08/11/26 23:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#549 [向日葵]
美嘉にはそんな経験はない。

何せ幼い頃からボーイッシュな性格は自覚していたし、見た目も椿のような儚さや、女の子らしい柔らかさのようなものは持ち合わせていないと思っていた。

だから恋する事は諦めていた。

いくら偉そうに恋愛話をしたって、所詮は一般論である事は分かっていた。

自分もそんな風に、心の素直な声に抗えず、従ってしまう程の運命の相手に出会う事が出来るのだろうか。

と思いながら、ちらりと大久保を見る。

大久保は、美嘉を女の子扱いした。

⏰:08/11/26 23:25 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#550 [向日葵]
それが珍しい。
大抵は、そんな扱いしてもらえない。
だからか、不思議な気持ちになってしまう。

名前、なんだっけ……。
未だに思い出せない。
彼は自分を名前で呼んでくれるのに。

「あなたは、そんな相手がいた事がありますか?」

何気なく訊いてみる。
深い意味はない……つもりだと、美嘉は自分でもわからなくなっていた。

大久保は人差し指を唇にあてる。

「内緒です」

⏰:08/11/26 23:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#551 [向日葵]
優しい筈なのに、どこか意地悪な雰囲気を漂わすから思わずドキリとしてしまう。

そんな事を思っていると、ガサガサと木の葉を踏む音が聞こえた。

「あれ?美嘉と大久保じゃないか」

現れたのは、仲良く手を繋いで散歩していた要と椿だった。要はしばらく二人と少し下の場所を交互に見て、ニヤリと微笑む。

「もしかして、邪魔だった?」

なんの事か分からない当の二人は顔を見合わせてからまた要に目を向け、首を傾ける。
要の言った事が分かった椿は目を輝かせながら二人を見つめていた。

⏰:08/12/11 00:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#552 [向日葵]
分からない二人に、要はまた口を開く。

「さっきから、ずいぶん親しげに手を繋いでるじゃないか」

二人はノロノロと自分の手を見る。
美嘉の手は優しく大久保に包まれているし、大久保の手は大きな手で美嘉の手を柔らかく握っている。
さっき要が見ていたのは、二人の手らしかった。

二人同時にパッと手を引っ込める。

「すいませんっ。私とした事が……とんだご無礼を……」

「あ、あなたは何も悪くは……。美嘉が、弱音吐いたからであって……」

⏰:08/12/11 00:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#553 [向日葵]
ほのぼのと二人の間に温かい空気が流れる。
美嘉は顔が熱いのか、手を団扇がわりに軽く振っている。
そんな美嘉を見るのが初めてな椿は、静かに微笑む。

「皆様お揃いになりましたし、お茶にでもいたしましょうか」

大久保はいつも通りに戻っている。
要は大久保に何か話ながら椿たちの少し前を歩く。
その後ろからは椿と美嘉が並んで歩く。

「楽しかったですか?大久保さんとのお散歩は」

微笑みながら訊いてくる椿に口を尖らせてみせて美嘉は「あっ」と声を小さくてあげて気づく。

⏰:08/12/11 00:45 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#554 [向日葵]
×小さくて
○小さく

⏰:08/12/21 23:48 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#555 [向日葵]
「そっか、あの人大久保さんって言うのか」

「あれ?言ってませんでしたっけ?」

「いや、聞いてたけど忘れてた」

口の中で、何度も繰り返し、ふと前にいる今覚えたての従者を見る。
要と何やら話してはいるが、内容は聞こえない。

「あの人は、何でも受け止めてくれるから、容赦なく甘えちゃいそうで怖いね」

大久保を見つめながら呟く。
そんな美嘉に、椿は静かに微笑む。

「それでも、美嘉ちゃんが甘えたかったら、甘えるのもいいかと思いますよ」

⏰:08/12/21 23:52 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#556 [向日葵]
美嘉は椿をまた睨むように見る。
椿はそんな視線を送られるとは思ってなかったので目をパチパチさせて、きょとんとする。

「なによ……なによなによなによ!ちょっと経験積んだからって上から目線でぇーっ!」

「えっ!?いえ、あの、そんなつもりは……っ!」

別に今、自分の中にくすぶる気持ちをどうこうするとは美嘉は思っていない。
その気持ちも、まだはっきりとどういうものかは分からない。
ただ、弱音も何もかも包んで、女の子扱いをしてくれる大久保に、少しだけ近づいて、もう少しだけ彼について知りたい、そう思っただけだ。

⏰:08/12/21 23:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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