ギンリョウソウ
最新 最初 全 
#587 [向日葵]
白い白い、綿のような雪が舞いはじめていた。
いつも以上に息は白く、寒い空気が喉を刺激する。
咳き込みそうになるのもお構いなしに、椿は走る。
「今、駅前のデパートで、今から、帰ります……っ」
{急がなくても、僕も移動中だよ。だから椿、無理して走ったら体に触る……}
「いいんです……っ!」
息を弾ませて喋る椿に、受話器の向こうで要はハッとした。
「体なんて、気にしてる場合じゃないのです……っ」
そんな椿をいとおしく思い、要はそっと笑う。
:09/01/30 01:08
:SO906i
:☆☆☆
#588 [向日葵]
{分かった……。僕も出来るだけ早く行くよ}
そう言って、電話を切った。
椿は自分の足を出来るだけ早く動かす。
早く、早くと……。
―――――――――…………
自分の家に帰ってきた椿は、門の鉄格子を握って息を整える。
鉄格子は冷たい筈だが、最早そんな感覚すらないぐらい椿の手の方が冷たくなっていた。
心臓がうるさい。
走ったせいでもあるが、それ以上に会えると言う喜びが大きい。
ちゃんとじっとしていないと、周りから怪しまれるのに、そわそわして、そこらを行ったり来たりしてしまう。
:09/01/30 01:13
:SO906i
:☆☆☆
#589 [向日葵]
椿は要に会った時の事を考える。
まずは、おかえりなさいと言おう。
それから寒いから家に入ってもらって、ゆっくりと話をしようー
もしかしたら要宅でやるパーティーに要も行けるかもしれない。
そしたらもっといっぱい一緒にいれるかもしれない。
と、携帯が鳴った。
「も、もしもし椿です」
{分かってるよ}
笑ってる彼の声が近くに感じる。
もうすぐ会えると分かってるせいだろうか。
「今、どの……」
「どのあたりですか」と訊ねようとした時、椿は何かに包まれた。
「君のそばだよ」
:09/01/30 01:18
:SO906i
:☆☆☆
#590 [向日葵]
右から受話器ごしの要の声。
そして左からは……。
後ろから抱き締められてるから、腕だけしか分からない。
それでも、ちゃんとここにいると実感できるが、夢のようだとも感じる。
思わず携帯を落としてしまう。
「要……さま……」
ゆっくりと振り返れば、大好きな人がそこにいて、柔らかく微笑んでいた。
「ただいま。寒いね今日は」
少しだけしか、会っていなかったかのような会話。
だからか余計に苦しくて、椿は要に抱きつく。
:09/01/30 01:22
:SO906i
:☆☆☆
#591 [向日葵]
さっき考えてた事なんて、まったく意味がなかった。
ただ彼を感じたくて、無我夢中で彼の胸に頬を寄せ、腕にありったけの力を込める。
「嬉しいな。こんな歓迎の仕方をされるだなんて」
椿は何も言わない。
「椿、顔をよく見せてよ」
椿は首を横に振った。
要はおかしそうに笑った。
「泣いてるのが恥ずかしい?」
言われて、彼女の肩がピクリと反応する。
要は椿の頬に手を触れて、上を向かす。
:09/01/30 01:27
:SO906i
:☆☆☆
#592 [向日葵]
上を向いた椿の瞳と頬は濡れ、顔は寒さと泣いてる為によるもので淡く赤くなっていた。
要が目を細めて笑みを深くすると、椿の目から更に涙が流れた。
それは止まる事を知らない。
瞬きをする度、彼女の目から、またいくつも滴が流れる。
要はそれを指で拭う。
「かな……め……さま……」
「会いたがってくれて嬉しい。僕も、会いたかったから」
その言葉に、寄せていた眉を少し緩めた椿の表情は、彼が意外な事を言ったとでも言うようだった。
「あきれて……ないのですか……?」
「あきれる?どうして」
:09/01/30 01:32
:SO906i
:☆☆☆
#593 [向日葵]
>>589×ゆっくり話をしようー
○ゆっくり話をしよう。
:09/01/30 01:47
:SO906i
:☆☆☆
#594 [向日葵]
「あ……あんな、わがままを言ってしまったから……」
「わがまま?」
要はまだ分からないのか眉を寄せる。
椿は恥ずかしくて、ほんの少しだけ要から距離をおく。
「あ……会いたいって……言ってしまったこと……」
あまりに恥ずかしくて、椿は顔を両手で隠した。
一方、要はなんだか信じられない気持ちで椿を見つめていた。
椿がそこまで自分を想ってくれているのが、どこか夢のようだからだ。
それでも、すぐにそんな彼女にいとおしさを感じて、柔らかく微笑む。
:09/02/05 01:12
:SO906i
:☆☆☆
#595 [向日葵]
「そんな可愛いわがままなら、もっと言ってよ」
椿は少しだけ顔をあげる。
「なんでも言ってよ。誰にも言えない君の本音や弱音は、僕が全部受け止めたいんだ」
離れて分かった事が、椿も要もたくさんあった。
離れなきゃわからないなんて、まだまだ未熟かもしれない。
だからこそ、誓わなきゃいけない事がある。お互い、共に成長していく為に。
「君が僕を支えてくれて、そばにいてくれるなら、僕も支えて君を守るよ。何もかもから」
「要……さま……」
椿は目を見開く。
:09/02/05 01:18
:SO906i
:☆☆☆
#596 [向日葵]
「それにね、嬉しいんだ。椿がそうやって僕を想ってくれる事が。少なくとも、僕だけがって訳じゃないってことでしょ?」
また椿の顔が一段と赤くなる。
要はうつむこうとした椿の顔を包んで、上を向かす。
「会いたいって言えたなら、言えるよね?」
「え……?」
「僕が好きって」
「え……ええっ!?」
すごく驚いた椿の顔を初めて見た要は、おかしそうに笑う。
そんな要をよそに、いきなり「告白してみろ」と言われた椿は、ただうろたえるばかり。
:09/02/05 01:22
:SO906i
:☆☆☆
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194