ギンリョウソウ
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#600 [向日葵]
久しぶりの優しいキスは、ホワイトクリスマスをよりロマンチックにするものだった。

―――――――――…………

「そういえば、もういいの?」

椿がいなくなってしばらくして、越と美嘉は一緒に帰っていた。

「何が?」

越の問いに、美嘉は首を傾げる。

「あんなに前は反対してたじゃない。椿と婚約者さんのこと」

美嘉は肩をすくめ、ため息を吐く。
息はとても白い。
息と同じくらい白い雪が、地面に積もって、先程からさくさくと音を奏でる。

⏰:09/02/05 01:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#601 [向日葵]
「いいのよ。結局美嘉も、アイツを上部だけで判断してた未熟者だもの」

彼は最初、最低な理由で椿に近づき、たくさん傷つけた。
でも彼を知っていけばいく程、椿に対する想いや、彼の辛く重い過去を理解出来た。

「何より、椿が幸せで、あんなに居ても立ってもいられないぐらいアイツが好きなら、美嘉はそれでいいよ」

美嘉の言葉に、越は柔らかく微笑む。

T字路で、バイバイと言い合った美嘉と越は、別々に道を進んだ。

何歩か進むと、後ろから肩を叩かれた。

⏰:09/02/05 01:53 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#602 [向日葵]
「あっ!」

「お久しぶりです」

立っていたのは、要の従者、大久保だった。
小さな紙袋を片手に持っている。

「どうしたんですか?」

「近くに今日のパーティーの買い出しを。皆さん手が離せないものですから、私が」

にっこり笑って、大久保は美嘉と歩き出す。
もしかしたら、さっきの会話は聞かれた?

一度、彼に弱音というか、本音を語ってしまったとは言え、なんだか気恥ずかしかった。

⏰:09/02/05 01:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#603 [向日葵]
「美嘉さまがお友達で、椿さまはきっと嬉しいんでしょうね」

目を細めて優しく笑う。

やっぱり聞かれてた……。

しかし、からかってる訳じゃなく、心から思ってるみたいだったから、美嘉は普通に照れてしまう。

「パ、パーティーですよね!美嘉も手伝いますっ!」

突然、美嘉は要の家へと走り出す。

「み、美嘉さま!?」

大久保も走り出す。

美嘉は走りながら手を顔に当てる。
どうしてこんなに熱い?

⏰:09/02/05 02:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#604 [向日葵]
パニックを起こして、更に早く走るから、大久保は驚きながらも必死に美嘉を追わなければならないはめになった。

ロマンチックなホワイトクリスマス。
クリスマスと言う特別なイベントに、何かを期待したりするのも、悪くないかもしれない。

⏰:09/02/05 02:03 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#605 [向日葵]
[第14話]

話は翌年の6月になる。

要と椿の誕生日も終わり、はれて二人は18歳になった。
が、二人には誕生日よりもビックイベントが待っていた。

「椿、やっぱり結婚式はジューンブライドがいいよね。梅雨だけど毎日雨って訳じゃないから、僕はいいと思うんだけど」

「けっこんしき……?」

要と椿はいつものように椿の家の庭を散歩していた。
紫外線はよくないからと要に言われた椿は、日傘を要と相合い傘のようにしてさしている。

「まさか、忘れてた?」

⏰:09/02/05 02:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#606 [向日葵]
忘れていたと言うよりは抜けていた。

「やっぱり盛大にしたいなー。心配しなくても、椿のドレスやアクセサリーは、僕がデザインするからね」

「ジ、ジューンブライドって……っ。あと何週間しかないですよ!?」

只今5月半ば。

「6月中にすればいいんだよ。大安の日をちゃんと選んでね。式場でなんかしなくても、僕の家を使えばいいしね。堅苦しい式は望んでないからね」

いきなり心の準備そこそこに言われた椿は、頭がごちゃごちゃになりそうだった。

⏰:09/02/05 02:15 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#607 [向日葵]
「だから椿、これから忙しくなるよ」

にっこり笑った要は、とても楽しそうで、嬉しそうだった。

―――――――――……

そしてここからが6月の話。
今は6月始め。式は月末の27日に決まった。

5月に要がにっこり言ったとおり、椿は毎日忙しく過ごしていた。
今でも目が回りそうな程……。

そんな椿が今やっているのは、披露宴での衣装選びだった。

要が何十着も用意するから、椿はより似合うものをとさっきから着せ替え人形のように着たり脱いだりを繰り返している。

⏰:09/02/05 02:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#608 [向日葵]
「椿さまは淡いお色がお似合いですね」

「お肌が白いですものね」

「ピンク色か……オレンジ色でもいいですわね」

口々に、着替えを手伝うメイドが言う。
それに若干引きつりながらの笑顔を返して、椿はそっとため息を吐いた。

要との結婚に不満がある訳ではない。
ただここまで次々と準備をしていくと、疲れてなんだか気が滅入ってくる。

結婚式なんて、しなくていいんじゃないかと思ってしまうくらい……。

⏰:09/02/15 00:53 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#609 [向日葵]
そう思ってしまって、椿は急いで首を横に振り、マイナス思考を振り払う。

「あ、あの……」

次のドレスを用意しようとするメイド達に、椿は声をかける。

「要さまに、ご用があるので、行ってもよろしいでしょうか?」

「はい。いってらっしゃいませ。ではその間にお茶を用意して参ります」

今度はちゃんと笑顔を返してから、椿は部屋を後にした。

要は別室で仕事と並行させながら式の準備をしていた。
服は既に決まったらしく、椿のドレスが決まる間に、飾りつけの指示や、来客リストを作っているらしい。

⏰:09/02/15 00:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#610 [向日葵]
要がいる部屋にたどり着き、ノックをすれば、中から返事が帰ってきた。

「失礼します」

「ん?ああ、椿か。どうかした?」

仕事用の椅子ではなく、机に座って、何かの資料を見ていた要は、椿に気づくと彼女の元まで足を運ぶ。

「え、ええと……、要さまは、何色がお好きでしょうか……。ドレスが多すぎて、決まらないんです……」

そんな事、自分でさっさと決めろと言われてしまうだろうか?

言ってしまってから、椿は不安になった。

⏰:09/02/15 01:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#611 [向日葵]
「そうなの?じゃあ、僕も一緒に選ぼうか?」

ただでさえ忙しい要に、そんな事までさせてしまうのが悪い気がしてきた椿は首を横に振った。

「い、いえ、いいんです……」

何故か落ち込んだように首をうなだれる椿に困惑した要は、長く綺麗な椿の黒髪を避けて、髪とは対照的な白い頬にそっと触れる。

温かな手に、ゆっくりと顔を上げた椿を、心配そうに覗き込む。

「疲れてない?ここのところ、ずっと忙しくしてたから、ロクに休んでないんじゃないの?」

「……大丈夫です。ちょっと、戸惑ってるだけで、疲れては……」

⏰:09/02/15 01:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#612 [向日葵]
「疲れたなら疲れたって言って。椿が倒れる方が、僕は嫌なんだからね」

頭を優しく撫でられる。
それだけで、疲れた心が癒される。ふんわりと温かくなる。

「本当に、大丈夫です。要さまのお姿を見て、元気になりました」

不意の椿の言葉に、要は少し顔を赤くした。
照れ隠しのように、撫でていた手に力をいれて、椿の髪を乱す。

――――――――…………

ある日の午後。
式準備で忙しい要宅に、二つの影があった。

「で、美嘉たちが?」

美嘉と越だ。
大久保が、要に頼まれて呼んだのだ。

⏰:09/02/15 01:15 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#613 [向日葵]
「椿が、ドレス選びに一人で困ってるのは分かりましたけど、私達が選んじゃってもいいんですか?」

大久保の説明を聞いていた越が、質問した。

「はい。友達なら、見る目は確かだと、要さまもおっしゃっていましたから。なにより、慣れない事を、椿さま一人でなさっているので、少しでも安らげるようにという意図もおありだと思います」

ならわざわざジューンブライドにこだわるなよ、と美嘉は思ってしまったが、要が意外とロマンチックだと言う面白さの方が勝ってしまって口を閉ざした。

それにここで愚痴っているより早く椿の元へ行ってあげた方がいいと思った。

⏰:09/02/15 01:23 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#614 [向日葵]
「じゃあ大久保さん、案内お願いします」

「かしこまりました」

一礼して、大久保は歩き出した。



ちょうどドレスを着た時、部屋のドアをノックされた。
と思ったら、返事をする間もなく美嘉が部屋へ入ってきた。

「美嘉ちゃんっ!越ちゃんっ!」

「やっほー椿っ!来たよっ!」

「椿キレイ!」

少し肩を出した淡いグリーンのドレスを着ている椿は、美嘉や越にとって別世界の人に見えた。

⏰:09/02/15 01:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#615 [向日葵]
しかし、美嘉はもう一つの変化に気づいていた。
椿に近づき、声を落として問う。

「椿……なんか痩せてない?」

椿は目を見開く。

休日以外、毎日会ってるから小さな変化に気づかなかったが、肌を少し露出し、体のラインが分かるドレスは、その小さな変化を表すものだった。

キュッと唇をしめた椿は、ゆっくりと口を開く。

「最近、食欲があまりなくて……。でも、調子が悪い訳ではないので……っ」

じっと椿を見つめるが、彼女は柔らかく微笑むだけ。
諦めた美嘉は、数あるドレスの山に目を向けた。

⏰:09/02/22 12:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#616 [向日葵]
「さ、選びましょうかねっ」

そうやってなんともないフリをすれば、椿はホッとしたように息を吐いた。

美嘉が諦めたのは椿を困らせたくない為じゃない。
もちろん心配は心配だ。
この頃は、体の調子もよく、あまり気にせず過ごしていたが、本来はか弱い椿なのだ。
ただでさえ細い椿がまた細くなったとなれば、やはり気になってしまう。

だが、どうやったって、椿が自分の事を素直に話す相手は、もうただ一人だけなのだ。

…………という訳で。

「かぁなめぇーっ!」

⏰:09/02/22 12:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#617 [向日葵]
ノックもせず、大久保が教えてくれた要の作業部屋に、美嘉は乗り込む。

本人が駄目なら本人以上に椿の性格を分かっている要に直談判。
行動派の美嘉はそう考えた。

なんの前触れなしに乗り込んできた美嘉に、要は慣れたのか「ああ君か」と呟き、また資料に目をとおす。

「ちょっとちょっと!紙なんか読んでる場合じゃないの!」

「椿の事なら分かんないよ」

先に訊きたい事の答えを言われた美嘉は、要に向けて歩いていた足をぴたりと止めた。

「え、そうなの?」

⏰:09/02/22 12:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#618 [向日葵]
紙を机に置いた要は、ため息をついた。

「当たり前だろ。分かってるなら何かしてる」

「じゃあ、なんで何もしないの」

「美嘉も知ってるだろ?彼女は大丈夫だと言えば頑なにその意思を貫く。僕にだって出来ない事はあるんだ」

意気込んで来た美嘉は、すっかりその気合いを削がれてしまったので、お構い無しに要の机に腰かける。

「アンタなら何か知ってると思ったんだけどなぁ……」

要は瞬きを数回する。

⏰:09/02/22 12:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#619 [向日葵]
「君の方が分かるだろ?僕はそういうのも込めて君達を呼んだんだよ?」

今度は美嘉が瞬きを数回した。

なんだ、お互いがお互いそう思っていたのか。

最初は絶対こんな奴認めるかと思っていたが、いつの間にか椿の事に関しては頼りにしてる自分に、美嘉は少しおかしくてクスクス笑った。

「要、頼むから、あの子大切にしてやってね……」

間があって、静かだが、力強い返事が返ってきた。

「もちろん」

――――――――…………

⏰:09/02/22 12:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#620 [向日葵]
美嘉たちは夕飯の為に帰って行った。
椿は用意された部屋のソファに身を深く沈めて全身の力を抜いた。

疲れた……。

ただそうしか思えない。
先程、夕飯を済ませたが、今日もあまり食べれなかった。
部屋に来る前、要に心配されたが、曖昧に返して逃げるように部屋に帰って来たのだ。

このままじゃ、要に心配かけっぱなしになってしまう。
しっかりしなきゃと思うのに、今は力が入らなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ふわりと、心地よい感覚に意識がいく。

いつの間にか寝てしまったのか。

⏰:09/02/22 12:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#621 [向日葵]
意識は現実に戻るも、まだ目は眠いから閉じたままだ。
そうしていると、柔らかな所に体を置かれた。

誰かに抱き上げられていたのだと気づく。
薄手の布団を丁寧にかぶせられ、顔にかかった綺麗な髪をそっとよける。そして撫でられる。
目を開ければ、頭が濡れている要がいた。

「あ、ごめん、起こした?」

「い、いえ……」

寝ていては落ち着かないので、ゆっくりと体を起こす。
要はベッドに腰をおろす。

「熟睡してたね。やっぱり疲れがきてるんじゃ……」

⏰:09/02/22 12:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#622 [向日葵]
「い、いえ、そんな……」

「食事もあまりとってないし」

「もともと少食なので……」

ちゃんと、目を見れない椿はうつ向く。
要が体を動かしたと思えば、椿の肩に手を置く。そのまま勢いよく椿をまた布団に沈めた。

「……っ!」

要が覆い被さるようにするので、椿の心臓が高鳴る。
顔に、まだ拭ききれていない要の髪から、雫が落ちてくるが、それを気にしていられる余裕は椿にはなかった。

鋭い目つきで見つめられれば、固まり、ただ要を見つめるしか出来なかった。

⏰:09/02/22 12:50 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#623 [向日葵]
「僕の目は節穴じゃない。君の調子の悪さなんてお見通しなんだ。いつか君から言ってくれると待っていたんだ」

だって……。

「そうやって、支えあって、夫婦になるんだろ?なのに、僕は未だ一方通行な気分だよ」

だって……言ってしまったら……。

「……でも、君にも譲れないものがあるだろうから、しつこい干渉は、避けるよ」

少し悲しそうに眉を寄せた要は、椿からすっと離れた。
椿は急いで体を起こす。

「ちが……っ、要さま!」

呼ぶと同時に、部屋の扉は閉められた。

⏰:09/02/22 12:55 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#624 [向日葵]
重く響く音に、椿の胸は痛んだ。

違う……。
言わなかったのは、前のような無理をしてるんじゃなく……。
ただ…………。

今、そう思ってるような事すら言えなかったと言うことは、結局前と同じようなものなのだろうか。

椿はどうしていいかわからなくて、掛布団を握り締めた。

―――――――…………

「要ぇーっ!!」

「またか……」と要は頭をガクンと落とす。
式の事がだいぶ決まり、要は一段落してるとこだった。

⏰:09/02/22 13:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#625 [向日葵]
感想板です(。・ω・。)
よければ

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3992/f

⏰:09/02/22 13:03 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#626 [向日葵]
「君はノックというものを知らないの?」

「美嘉は別にアンタを敬う気なんかないもの」

そういう問題か?と半ば呆れながら要は頬杖をつく。
要が座っていたソファの向かい側に美嘉も座る。

「椿の様子が更に変になってる。アンタまたなんかやらかしたの?」

「椿の事意外に用事はないのか君は」

「アンタに用事って何よ」

そう言われては、要も見つからないので「まぁそうか」と息を吐く。

⏰:09/03/08 17:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#627 [向日葵]
「椿を問い詰めたんだよ。疲れているんだろ、何故隠すんだとね」

そこまで言うと、美嘉が渋い顔をして見てきたので、要もなんだと目で応じる。

「まさかその時にいやらしぃー事してやいないでしょうね」

「どういう流れでそんな事をしなくちゃならない……」

「アンタの事だから変なスイッチ入ったんじゃないかと思って。なんて言うの、ホラ、怒りに任せて的なね」

休ますようにと押し倒しはしたが、あの時にそういう他意はなかったので、要はふと浮かんだ光景をすぐに消した。

⏰:09/03/08 17:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#628 [向日葵]
「あるはずない。僕はそんな獣じゃないから」

どうだか、と美嘉は背もたれに体を預ける。

「で、椿はなんて言ったの?」

「何も言わなかった。だからそれからは僕も何も問い詰めちゃいない」

「そう……」

美嘉もなんらかの形で問い詰めようとしたのだろうか。
それが敵わなかったから要ならと来たのかもしれない。
敵視していた美嘉が自分を頼りにしてくれているのが、こんな時だが要は嬉しくもあった。

「で、今椿は?」

「ドレスでいい感じのが見つかって、今は休んでる」

⏰:09/03/08 17:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#629 [向日葵]
なら、と要は席を立った。

あれからあまり話せていないし、今度は感情的にならず、冷静に話そう。
そうした方が、椿もゆっくりと話し出すかもしれない。

そう思って、扉に近づこうとした時、ノックをする音が聞こえた。

椿かもと自ら扉を開けた要だが、目の前にいたのはメイドだった。いきなり開いた扉に驚き、目を見開いている。

「ああ……、何か?」

「あ、ハイ!」

ぼんやりしていたメイドは要の声を聞くと急いで来た理由を話し出した。

「椿さまが、倒れてしまいました……っ!」

⏰:09/03/08 17:31 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#630 [向日葵]
――――――――…………

体が重い……。
鉛のようだってこの事を言うんだろうなと、暗闇の中で椿は思った。

―僕は一方通行な気分だよ

ああ……また要さまを怒らせた……。

一方通行だなんて、そんな事ないのに……。
私はただ……。

意識が朦朧としている中で、椿は必死に手を伸ばす。
何かを掴もうと。
しかし当然掴める筈もなく、手は空をかく。

なのに、ふと手に暖かさが宿った。

とても安心する。
これは……?

⏰:09/03/08 17:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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