ギンリョウソウ
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#654 [向日葵]
「まあ君の想像に任すよ」
「否定無しだと生々しいからやめて」
椿はまた笑う。
「お仕事は終わりましたか?」
椿も手伝っていたが、美嘉が来たので許しをもらって抜けさせてもらった。
「うん。一段落したよ。だから来たの」
「そろそろ美嘉も帰るよ。邪魔しちゃいけないだろうし」
かばんを持った美嘉は立ち上がった。
見送る為、二人は玄関まで美嘉と一緒に行く。
:09/03/15 03:30
:SO906i
:☆☆☆
#655 [向日葵]
「じゃあね椿、またメールするよ。あんまり要の好き勝手させちゃ駄目だかんねっ」
「み、美嘉ちゃん……っ」
顔を赤くする椿に、美嘉はニヒッと笑って帰って行った。
ドアが閉まると同時に、椿は「うっ」と唸って胸元を押さえた。
異変に気づいた要が、椿の顔を覗き込む。
「椿?どうした?」
「あ……。いえ、なんでも」
「そう?」
:09/03/15 03:34
:SO906i
:☆☆☆
#656 [向日葵]
:09/03/15 03:36
:SO906i
:☆☆☆
#657 [向日葵]
要は歩いて行ってしまった。
椿はその後ろ姿を見ながら気持ち悪い部分を自分でさする。
さすっても、気分の悪さは優れない。
近頃、体が丈夫になった気がして、はしゃぎすぎていたのが負担になっていたのだろうか。
「よ、お姫さん」
後ろから声がするので、椿は振り返る。
そこには、赤茶色した髪の毛を後ろで結った、白衣を着た女の人がいた。
「明智先生」
「明智(あけち)」と呼ばれるその人物は椿ににこって笑いかける。
:09/03/21 02:47
:SO906i
:☆☆☆
#658 [向日葵]
本名、明智 英美(ひでみ)は、葵家の専属医師だ。
要宅には仕事部屋があり、週に何回か来る事になっている。
もちろん、別の場所にある病院の医師でもあり、かなり優秀らしい。
「ん?んん?」
明智は椿の顔をじろじろ見る。
見られている椿は落ち着かず、困惑する。
「お姫さん、なんか雰囲気が違うね」
今日は美嘉も明智もなんなのだろうと、椿は首をひねる。
「もしかして……」
明智が呟く。
:09/03/21 02:53
:SO906i
:☆☆☆
#659 [向日葵]
「先生……?」
「お姫さん、王子さま呼んで、ちょっと外の私の病院まで来て」
深刻な雰囲気に、椿は不安を隠せなかった。
――――――――――…………
「へ……?」
椿と要は診察室の中で口を揃えて呟き、目をまんまるくさせた。
「だからね、もう一回言うよ。お姫さんのお腹に、もう一つ命が宿ってる」
つまりは。
「こ、子供っ!?」
要が声をあげる。
椿も目を見開き、口を笑みの形にした。
:09/03/21 02:58
:SO906i
:☆☆☆
#660 [向日葵]
「やったね椿いっ!!」
要は椿に抱きついた。
二人の間に幸せムードが漂う。
―――が、明智の表情はやはり優れなかった。
「先生……?」
椿がゆっくりと呼ぶ。
「二人とも、よく聞いてね。子供が出来た事は喜ばしい事だ、だけどね……お姫さんの体が……」
「え……」
話はこうだった。
椿の体は、前に比べれば驚く程よくなっていた。
だが、もともと体力がなく、出産に耐えれるかどうかがわからない状態に今あった。
:09/03/21 03:03
:SO906i
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#661 [向日葵]
椿の体を考えるならば、授かった命をあきらめてしまうか、それとも、産むか……。
「あたしからは何も言えない。お姫さんの命も、授かった命も大切だ。だから、二人にはよく考えてほしい。あたしからは、以上だ……」
重い空気が、診察室を覆いつくす。
要は頭が混乱しそうになっていた。しかし椿は、お腹を柔らかく手のひらで包み、シャンと背筋を伸ばしたままだった。
――――――――…………
「産みます」
今は帰りの車の中だ。
静かに、けれどはっきりと、椿はそう言った。
:09/03/21 03:08
:SO906i
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#662 [向日葵]
要は眉を寄せて椿を見る。
「椿……。でも……もう少し、考えないか……?」
「私は、命にかえてもこの子を産みます。要さまに、会わせてあげたいんです」
「……」
要は何も言わなかった。
要にだって決めれる訳がない。
どちらも大切な命。
簡単にどちらかを切り捨てるだなんて非情な事は出来ない。
だからと言って、無責任に産めとも言えなかった。
どっちつかずな自分の気持ちに、要は吐き気がしそうだった。
:09/03/21 03:12
:SO906i
:☆☆☆
#663 [向日葵]
家に着いて、椿が家に入ろうとすると、要が椿の腕を引いた。
そのまま手を握って、ゆっくりと庭を歩き出した。
綺麗に剪定された植え込みからは、いい香りがする。
色とりどりの花壇の前で止まり、要は深呼吸した。
「マイナスに、考えちゃいけないよね」
椿は要を見る。
要も椿を見つめて、ぎこちなく微笑んだ。
「体力が無ければ、つければいい。だからさ、こうやって、毎日散歩しようか、椿」
その答えを聞いて、椿は嬉しそうに笑った。
:09/03/21 03:17
:SO906i
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