ギンリョウソウ
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#695 [向日葵]
(と……ま……)
また聞こえた。
可愛らしい声だ。
温かい、黄色い光が、要の腕に宿る。
触ってみれば、ふかふかとしていた。
それはまるで、羽毛のよう。
(父さま……やっと、会えた……)
その声は、その黄色い光から聞こえてきた。
「……君は……」
言いかけた時だった。
突然、大きな泣き声が聞こえてきた。
要はハッとした。
すると、そこは元の病院だった。
:09/04/03 03:10
:SO906i
:☆☆☆
#696 [向日葵]
腕の中に、もう光はなかった。
ガチャと開けられると、白い布にくるまれたものを、看護婦が抱いて歩いてくる。
近づくにつれ、泣き声は大きくなっていった。
「おめでとうございます。元気な女の子ですよ」
要は顔を覗き込む。
小さな小さな口を、目一杯開けて、その子は泣いていた。
ああ……僕たちの光だ……。
「あの、看護婦さん、娘は……」
父に言われ、要はハッとした。
:09/04/03 03:14
:SO906i
:☆☆☆
#697 [向日葵]
「椿……っ!!」
要は分娩室に入ろうとしたが、明智に止められた。
「落ち着きな。アンタお父さんだろ。ちゃんと姫の事話すから」
明智は淡々と語り出した。
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ギンリョウソウ。
今思えば、もう少しマシな植物があっただろうに。
苦笑しながら、要はある所へ向かっていた。
それは、小さな挙式場。
:09/04/03 03:19
:SO906i
:☆☆☆
#698 [向日葵]
「とうさま?」
小さな手で、愛娘が要の人差し指を引っ張る。
「いまからどこにいくの?」
「母さまのお友達の結婚式だよ。さっき言っただろ?希望」
希望(のぞみ)。
愛娘につけた名前だ。
要が絶対に希望がいいと言って、回りの意見もきかずにつけたのだ。
「ふうん?」
何度説明しても分からない希望に笑いかけて、頭を撫でてやる。
黒く、綺麗な髪は、椿にそっくりだ。
:09/04/03 03:23
:SO906i
:☆☆☆
#699 [向日葵]
「あ、要!こっちこっち!」
式場に着けば、美嘉が手招きする。
「あ、希望っ!大きくなったねーっ。いくつになったの?」
「よーんっ」
短い指で、必死に数を表す。
そう、もうあれから4年も経つのだ。
要ももう少しすれば24歳になる。
「とうさまー。かあさまはー」
「……きっと来るよ」
要は空を見上げた。
今日はいい天気だ。
:09/04/03 03:28
:SO906i
:☆☆☆
#700 [向日葵]
自分達の挙式も、そういえば天気が良かった。
そして椿は、今まで見た中で、思わず見とれてしまうほど、綺麗だった。
「あーっ!」
希望が指をさす。
その方を見て、要は微笑む。
「椿」
「かあさまーっ!」
「要さま、希望、美嘉ちゃん」
椿は、ゆっくりした足取りでこちらへ向かってくる。
希望は待ちきれないのか、走って椿を迎えに行く。
「お待たせしました」
:09/04/03 03:32
:SO906i
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#701 [向日葵]
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「椿は……っ!」
希望が誕生した日、要は明智の様子から、最悪の事態が起きたと思った。
あまりに、明智が話さないから、苛立つ。
「早く喋れっ!」
「わーった。わーったからあまり騒ぐな」
フゥとため息をついて、明智は口を開いた。
:09/04/03 03:34
:SO906i
:☆☆☆
#702 [向日葵]
「お姫はな……」
ドクンと、鼓動が不規則になる。
音が出るほど、唾を飲み込むのに力が入る。
「……。びっくりするぐらい元気だよ」
思わずこけそうになるのを要は必死に耐えた。
「いっやーあれだけ心配してた体力もなんのその。母の底力?すごいねー」
感慨深げに頷くから、要は歯を食い縛る。
「だったら……深刻な雰囲気醸し出すなあーっ!!」
迷惑なほど、病院に要の叫びが響き渡った。
:09/04/03 03:39
:SO906i
:☆☆☆
#703 [向日葵]
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「越と柴くんもやっと結婚かー」
チャペルに向かいながら、美嘉が言った。
「結婚しても、とりあえずはあの家にいるんだってー」
「柴くんが我慢させられるんじゃ……」
同じ男として、要が柴に同情する。
「今までそんなんだから慣れたって」
その言葉に、三人は笑う。
唯一、希望だけが首を傾げていた。
「そういえば椿、どうして遅れたの?」
:09/04/03 03:43
:SO906i
:☆☆☆
#704 [向日葵]
椿が遅れた理由を、美嘉は知らない。
椿は少し照れ臭そうに笑う。
「検診です」
「え、具合悪いの!?」
「いえ……赤ちゃんです」
一瞬、美嘉は固まり、跳び跳ねるようにして驚いた。
「え、ええーっ!!うっそーっ!!」
「もうすぐ3ヶ月だっけ」
「はい」
望まなかった婚約。
そしていつの間にか求めあって結婚。
人生も、運命も、どうなるかなんて分からない。
だから、楽しい。
:09/04/03 03:49
:SO906i
:☆☆☆
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