愛の在り処
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#172 [果樹]
トントントン
カシャカシャ
ジュウゥ・・・

夕飯の準備をしながらたまに携帯を覗くが慶からの連絡はない。

もう6時を回っているのに・・・。

――――・・・

「はぁ」

テーブルの上に並んだ料理を見ながら私は溜め息をつく。

⏰:08/11/20 13:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#173 [果樹]
時間は夜の9時。

結局慶は来なかった。

何やってるんだろう私。
馬鹿みたい。

私は冷えきった料理をタッパーに移して冷蔵庫にしまう。

ソファに寝転び片腕をだらりと垂らし指先でモアと遊ぶ。

⏰:08/11/20 13:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#174 [果樹]
「モアは慶が好き?」

ミャーン

モアの鳴き声はなんだか肯定しているように聞こえた。

「ふふっそっか。明日は来るといいね」

私はモアを抱き締めて眠りについた。

⏰:08/11/21 04:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#175 [果樹]
――――・・・

それから慶はぱったりと家にこなくなった。

学校で話しかけてもかわされ、電話をしても忙しいからと切られた。

心当たりが何もないまま1週間が過ぎ、また1週間が過ぎた。

そして慶は教育実習期間を終えて学校を去っていった。

⏰:08/11/21 04:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#176 [果樹]
――――・・・

家に帰った私はソファでモアを抱き締めながら話しかける。

「ごめんねモア。もう慶は来ないんだ・・」

ニャーン

「ごはん。たくさん残ってるから冷凍しなきゃね」

ンニャー

⏰:08/11/21 16:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#177 [果樹]
冷蔵庫には慶がいつ来てもいいようにと少し多めに作ったごはんがところ狭しと並んでいた。

「たくさん遊んで貰えてよかったね」

ニャン

「でも少し寂しくなっちゃったね・・」

私の言葉はシーンとした部屋の中で嫌になるくらい響いた。

⏰:08/11/21 16:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#178 [果樹]
――――・・・

最近まなちゃんの元気がない。
学校に来ても溜め息ばっか。
原因はなんとなくわかる。


「はぁ・・・」

ほらまた溜め息。

「まーなちゃんっ」

無視ですか・・・。

⏰:08/11/21 16:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#179 [果樹]
笑顔がみたくて笑いかけてほしくて声をかけてもまなちゃんは一回も俺に笑ってくれたことはない。

イッチーにはあんな笑顔で笑うのに・・・。

転校してきたその日に俺はまなちゃんを好きになった。

無愛想で言葉がきつくて、なのに綺麗でどこか弱そうで俺はまなちゃんに惹かれていた。

⏰:08/11/21 16:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#180 [果樹]
俺がぼけーっとまなちゃんを見ているとガタンとまなちゃんが席を立つ。

「あれ?どこ行くの?」

「・・・帰る」

「え!?な、なんで?」

驚いて目を丸くする俺にまなちゃんは

「つまんないから」

と言ってスタスタと教室を出ていってしまった。

⏰:08/11/21 16:46 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#181 [果樹]
俺はその後ろ姿を口を開けて見ていた。

――――・・・

私の生活は元に戻るだけ。
ただそれだけ。
慶が来る前の生活に・・・。

なのに胸にぽっかりと穴が空いたような空虚感はなんなんだろう。

⏰:08/11/22 23:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


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