愛の在り処
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#41 [果樹]
もう戻れないあの時の記憶。
生温い夢。


「支度しよう」

ギシッとスプリングを鳴らして、私はベッドから降りる。
父と母に「おはよう」を言ってから部屋を出た。


――――――――・・・・


「愛実もう帰るの?」

⏰:08/06/14 00:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#42 [果樹]
HRも終わって、教室を出ようと鞄を持ったら里奈が声をかけてきた。

きっと言葉の意図は“一哉と帰らないのか?”なんだろう。

誘われた時だけしか私は一緒に帰るつもりはない。
そして今日は、一哉は迎えにこないし、待っているのも面倒だから早々に帰ろうと思っているのだ。

「うん」

「そっかーバイバイ!」

⏰:08/06/14 00:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#43 [果樹]
「ばいばい」

満面の笑みで手を振る里奈に私も軽く手を振って返し、教室を出た。


・・・・・・・・・・・・


「あ」

昇降口に続く廊下を歩いてる途中、ある事に気付いて足がピタリと止まる。

一哉にCD返すの忘れてた。

⏰:08/06/14 00:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#44 [果樹]
鞄を覗き込むとやっぱりあった。
朝入れたと思ったのは間違いじゃなかったか。

仕方がないので私は踵を返して一哉の教室に向かった。

・・・・・・・・・・・・


私のクラスの近くまで来ると、教室の電気がまだついていた。

外は薄暗くなってるっていうのに教室の中からは話声が聞こえる。

⏰:08/06/14 00:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#45 [果樹]
教室にまだ誰かいるんだ。

私がなるべく邪魔をしないように廊下を静かに歩くと、教室から話が聞こえた。

声の主は

「キャハハッ一哉くんまぢウケるー」

里奈と

「だろー!」

一哉だ。

⏰:08/06/14 00:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#46 [果樹]
私は一哉にCDを返すために教室に入ろうとドアに手をかけたが、私の手はドアを引くことなく止まる。

「てゆうかさぁ、一哉くんて愛実のどこが好きなの?」

里奈が私の名前を口にしたからだ。

「顔かな?あと身体?」

私は一哉の言葉に一つ溜め息をつく。

一哉もこんなもんか。

⏰:08/06/14 12:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#47 [果樹]
「あー確かに愛実って可愛いもんね。この間もD組の会田君に告白されてたし」

「ふーん」

一哉の声はあまり気にしていない様子だ。

「ねぇ、私じゃ駄目?私一哉くんのこと好きなの・・・」

え?

里奈の言葉に私は自分の耳を疑った。

⏰:08/06/14 12:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#48 [果樹]
「里奈ちゃん・・・」

え?

「ん・・・っ」

教室の中からは卑猥な声が漏れる。


くだらない。

所詮彼氏なんて。
所詮友達なんて。


バンッ!

⏰:08/06/14 12:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#49 [果樹]
私は力いっぱい教室のドアを開けて教室の中でキスをしている一哉と里奈を睨む。

音に驚いた二人が私を見ながら硬直している。

「愛実っ!」

「あ、あの・・・」

一哉は今にも飛び出そうなくらい目を開けていて、里奈は真っ青になっている。

⏰:08/06/14 12:35 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#50 [果樹]
私は早歩きで二人の元まで行き鞄の中から一枚のCDを取り出して一哉に突き付ける。

「一哉。これ借りてたCD」

「あ、ああ・・・」

一哉は驚きながらもそれを受けとる。

「あの、愛実これは・・・」

里奈がしどろもどろになりながらも言葉を紡ぐが、私はそれを遮る。

⏰:08/06/14 12:36 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


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