愛の在り処
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#181 [果樹]
俺はその後ろ姿を口を開けて見ていた。
――――・・・
私の生活は元に戻るだけ。
ただそれだけ。
慶が来る前の生活に・・・。
なのに胸にぽっかりと穴が空いたような空虚感はなんなんだろう。
:08/11/22 23:59 :P902iS :☆☆☆
#182 [果樹]
ぼーっと歩いているとモアを拾った道、そして初めて慶と会った道に出た。
あの時の慶の笑顔が頭から離れない。
二度目に会ったのはその次の日。
警戒心のない少年のような無邪気な笑顔だった。
三度目は学校に教育実習生として来た慶に会った。
:08/11/22 23:59 :P902iS :☆☆☆
#183 [果樹]
驚いたけど優しい笑顔は変わってなかった。
一緒にご飯を食べてモアと遊んで慶が笑っていたあの日々がなんだか懐かしくて・・・。
私は慶との思い出を振り払うように走って家に帰った。
――――・・・
慶が学校を去ってから一週間が過ぎ。
一ヶ月が過ぎ。
二ヶ月が過ぎていった。
:08/11/23 00:00 :P902iS :☆☆☆
#184 [果樹]
私の生活は前に戻った。
何にも関心を持たず干渉せず、過ごしていた。
「暇だなぁ・・・」
今日は日曜日。
出掛ける場所もなく、私は家でソファに寝転びながら呟く。
洗濯も終わって掃除もしてしまいやることが無い私はただぼーっと天井を見つめた。
:08/11/23 00:00 :P902iS :☆☆☆
#185 [果樹]
ピーンポーン
そんな時、部屋の中に人が来たことを告げるチャイムが鳴り響いた。
私はむくっと起き上がりインターホンの受話器を取る。
「はい」
『あの・・・武藤さんですか?』
私は受話器から聞こえた声に驚いて受話器を落としそうになった。
:08/11/23 00:02 :P902iS :☆☆☆
#186 [果樹]
うそ・・・でしょ。
『あの・・武藤さん?』
返事をしない私を不思議に思ってか受話器からは、しきりに私を呼ぶ声が聞こえる。
私はガチャンッと受話器をインターホンに戻し、玄関に走った。
――――・・・
エレベーターを待っている時間も惜しくて私は下に行くボタンを何度も押した。
:08/11/23 00:03 :P902iS :☆☆☆
#187 [果樹]
早くっ早く・・・っ
――――・・・
ガチャとマンションの正面玄関を開けるとそこには私の求めていた人・・・慶がいた。
正面玄関を開けるボタンキーの前で何度も通じることのない部屋の番号を押していた。
「あ・・・」
私に気付くと気まずそうに目線を下に向ける。
:08/11/27 04:09 :P902iS :☆☆☆
#188 [果樹]
私はその態度が頭にきて慶に詰め寄った。
「なんで・・っ。何で今まで来なかったの?学校では避けるし電話はすぐ切るし。今更になって何で・・」
「すみません・・」
慶の胸ぐらを掴み揺さぶる私に慶は謝る。
「すみませんじゃない!学校はさっさと辞めて大学に帰るし。あんたの為に作ったご飯は無駄になっちゃうしモアは寂しがるし。今頃になっていきなり何よ・・!」
:08/11/27 04:11 :P902iS :☆☆☆
#189 [果樹]
一気に巻くし立てたせいで私は息が荒くなる。
「あの・・怒るのは最もなんだけどとりあえず場所変えない?」
「え?!」
慶の言葉で周りを見て私は硬直する。
ここはマンションの真ん前。
目の前には多くの通行人。
:08/11/27 04:11 :P902iS :☆☆☆
#190 [果樹]
公道に面するこのマンションの前であんな大声を張り上げたものだから私達はいつのまにか注目の的となっていた。
流石にこの場での言い争いはまずいと判断した私は慶を部屋にあげることにした。
――――・・・
「はいどーぞ」
コトンとコーヒーが入ったマグカップを置くと慶がペコっと頭をさげる。
:08/11/27 04:12 :P902iS :☆☆☆
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