愛の在り処
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#32 [果樹]
原因はなんだったか忘れてしまった。

離婚後、私は父に引き取られた。

離婚後も月1で母には会っていたが、それも私が中1になったのを期になくなった。

母に恋人が出来たからだ。

その人と再婚するから私とはもう会えない。
それが私に向けた母の言葉だった。

⏰:08/06/12 16:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#33 [果樹]
それからは、父と普通に暮らしていたが中3の秋、父が女を連れて家に帰ってきた。


「結婚したいんだ」

そう言った父の相手は、10も年の離れた父の秘書をしている女だった。

社長という肩書きを持つ父といつも一緒にいたせいで情でも移ったのか、はたまた財産目当てか。
どっちにしても、私には気に食わないことだった。

⏰:08/06/12 16:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#34 [果樹]
その女が家に住み始めてからも、私は一切その女と話そうとはしなかった。


一ヶ月程経ったある日、父が私を居間に呼び出した。

「マンションを買ってやるからそこに住みなさい。その方がお前も気兼しなくて済むだろう」

それが父の言葉だった。

一見私の事を考えた苦渋の選択と取れる父の言葉。

⏰:08/06/12 16:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#35 [果樹]
でも本音は、二人だけになりたかった。
私とあの女との板挟みが辛かった。
などそんなとこだろう。


父にとってはマンションを買うくらい安いものだったのだ。

私は頷くだけの返事をして、一週間後、ここに住み始めた。


こんな広い家でのたった一人の生活は孤独以外の何ものでもなかった。

⏰:08/06/12 16:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#36 [果樹]
笑い合う相手も一緒に食事をする相手もいない。
一人きりの生活。

銀行に月に20万振り込まれる父からの生活費。

生活に困ることはなかったが、寂しさが私も侵食していくのがわかった。


かつて愛し合った二人は離れ、子供をも見捨てて自分の愛に走る。
私は愛が何かわからなくなった。

⏰:08/06/12 16:23 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#37 [果樹]
次第に私はぬくもりを求めて彷徨うようになった。

真実の愛がないのなら誰かに身体を委ねて一時だけでもぬくもりが欲しかった。

一哉もその一人。

男は付き合うと必ず肉体関係を求めてくる。

だれかが生殖行為は子孫を残す為だとか言っていたけど、本当にそうなのか疑ってしまう。

⏰:08/06/12 16:24 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#38 [果樹]
ただ気持よければそれだけでいい獣なんじゃないのかな?

でも、私も同じか・・・。

気持ちいいから身体を委ねる獣。


――――――――・・・・


「お父さーんお母さーん」

満面の笑みで走る私。

⏰:08/06/12 16:26 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#39 [果樹]
「愛実。そんなに走ると転ぶわよー」

「愛実は元気だなー」

遠くで笑う父と母


幸せだった。
生温いくらいの幸せ。
ずっとつかっていたかった幸せ。


「愛実はお父さんもお母さんも大好き!」

⏰:08/06/12 16:26 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#40 [果樹]
大好きなんだよ


――――――――・・・・


パチッと目を開けると白い天井が目に飛込んできた。

「夢か・・・」

布団に入ったままぼそっと呟く。

そうだよね・・・。

⏰:08/06/14 00:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#41 [果樹]
もう戻れないあの時の記憶。
生温い夢。


「支度しよう」

ギシッとスプリングを鳴らして、私はベッドから降りる。
父と母に「おはよう」を言ってから部屋を出た。


――――――――・・・・


「愛実もう帰るの?」

⏰:08/06/14 00:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


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