愛の在り処
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#72 [果樹]
そっと持ってきたタオルで子猫を包み抱き上げる。
暖かいものに包まれたからなのか、子猫は目を細めて気持ちが良さそうだ。
そんな子猫の姿に私は心が締め付けられるようなでも暖かいものを感じた。
「その子飼うの?」
え・・・?
:08/06/20 01:44 :P902iS :☆☆☆
#73 [果樹]
突然横槍を入れるように聞こえてきた声に振り向けば、背の高い黒髪の優しそうな顔をした男が傘を差して立っていた。
「その子。今君が抱いてる子猫。飼うの?」
男は私の隣に来て、首を傾げながら子猫を指差す。
「わかんない。雨で濡れるのが心配で来ちゃっただけだし」
「ハハッ」
:08/06/20 01:49 :P902iS :☆☆☆
#74 [果樹]
子猫を見ながら言うと男は白い歯を見せて笑った。
「何がおかしいの?」
意味の分からない男の笑いに私の眉間に皺が寄る。
「いや、ごめん。俺と同じ考えの人もいるんだなぁと思ったらつい・・・ね」
なんだそれ。
ますます意味がわからない。
だいたいついで笑うっていうのも気に入らない。
:08/06/20 01:49 :P902iS :☆☆☆
#75 [果樹]
心の中で悪態をついていたら男の手が伸びてきて子猫の顎を擦る。
「飼ってあげてよ」
優しい声色で言う男。
「あなたが飼えば?」
「俺は駄目なんだ」
私の言葉に眉を下げ悲しそうに男はいう。
なんでと口を開く前に男が口を開いた。
:08/06/20 01:50 :P902iS :☆☆☆
#76 [果樹]
:08/06/20 01:52 :P902iS :☆☆☆
#77 [果樹]
「お願い!雨の中一人なんて可哀想すぎる」
顔の前で手を合わせて私に頼み込む男。
なんか犬みたい・・・。
「わかった」
「ありがとう!」
私が猫を飼うのを承諾すると男はにぱっと屈託のない笑みを溢した。
:08/06/24 05:46 :P902iS :☆☆☆
#78 [果樹]
.
――――――――・・・・
「ただいま・・・あっ!」
あれから私は男と別れ家に帰ってきた。
もちろん子猫も一緒に。
そして今はその子猫が玄関を開けた直後に私の腕の中から脱走し、リビングに向かって猛ダッシュしていってしまった。
「ちょっ!」
:08/06/24 05:49 :P902iS :☆☆☆
#79 [果樹]
あんな泥まみれで走られたら家の中泥だらけになっちゃう!
私も急いで靴を脱ぎ子猫の後を追う。
――――――――・・・・
「捕まえた・・・」
やっとの思いで部屋の中をかけずり回っていた子猫を手の中に収めた。
泥だらけでずぶ濡れな子猫が荒らしてくれたおかげで部屋の中はぐちゃぐちゃ。
:08/06/30 04:10 :P902iS :☆☆☆
#80 [果樹]
後で片付けよ・・・。
はぁと溜め息を漏らし今は手の中でごろごろ鳴く子猫を抱き上げ風呂場に向かう。
・・・・・・・・・・・・・・・
ジャー
シャワーから流れる生温いお湯で子猫の濡れた体を温める。
ついでに泥も落としながら洗うが、子猫は嫌がるように爪を出し少し震えている。
:08/06/30 04:10 :P902iS :☆☆☆
#81 [果樹]
ンニャーとたまに鳴く子猫の嫌がった声が風呂場に木霊する。
「じっとして!」
伝わる訳もないのに口からはついそんな言葉が漏れる。
ある程度洗い終えてタオルで子猫の体を拭くが、子猫は嫌がるようにまだ爪を立てて私にしがみついてくる。
「はぁ・・・」
タオルで子猫の体を拭き終えた私は一息つくようにソファに体を沈める。
:08/06/30 04:10 :P902iS :☆☆☆
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