●S×S〜sugar×spice〜●
最新 最初 全 🆕
#1 [桃色]
はじめまして一生懸命書いていくので気長にお付き合いいただけると嬉しいです

●感想板●
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3672/

⏰:08/06/06 16:59 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#2 [桃色]
●アンカー●
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800
>>801-900
>>901-1000

⏰:08/06/06 17:15 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#3 [桃色]
ごめんね、みーと。


たくさんたくさん傷つけたよね。


ホントならあたしが守ってあげなくちゃなのに。


なんでこんなになっちゃったのかな。

⏰:08/06/06 17:17 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#4 [桃色]
大好きだよ、みーと。


いつまでもこの気持ちは変わらない。


あたしたちの関係も変えられないように。

⏰:08/06/06 17:19 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#5 [桃色]
たくさんの温もりを、


愛を、


ありがとうみーと。



あたしの



かわいい弟‥‥

⏰:08/06/06 17:20 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#6 [桃色]
同じ親から生まれて、同じ家で育って、気づけばいつもそばにいたみーと。


かわいいかわいいあたしの弟。


小さい頃から何でもできて、1つ上のあたしが妹に間違われることの方が多かった。

⏰:08/06/06 17:23 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#7 [桃色]
ケンカなんてほとんどしたことない。


いつも優しいんだみーとは。


自慢の弟。


でも、甘えすぎたんだよね。


みーとの優しさに、強さに。

⏰:08/06/06 17:25 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#8 [桃色]
きっかけなんて、あったのかな?


あったとすれば


きっと―――――――

――――――――
――――――
――――
――

⏰:08/06/06 17:27 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#9 [桃色]
キッチンから漂うおみそ汁の香り。野菜を刻む手際のいい音が耳に心地いい。

いつもと同じ朝の光景。


「瑞穂、湊斗起こしてきてちょうだい」


いつもと同じお母さんのセリフ。

いつも通りみーとを起こしに2階へ上がる。

⏰:08/06/06 18:08 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#10 [桃色]
階段のすぐ側がみーとの部屋で、あたしの部屋と向かい合わせになっている。


「桜井湊斗くん、朝ですよ−!起きなさ−い!」

当然起きるわけもなく、ノックを2回。


「入るよ、みーと」

⏰:08/06/06 18:12 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#11 [桃色]
少し散らかったみーとの部屋。


「今日から新学期だよ、いつになったら1人で起きれるの−?」

朝が苦手なみーと。唯一の弱点。

でもそのおかげで毎朝じっくりこの寝顔をひとり占めできるのだ。

⏰:08/06/06 18:15 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#12 [桃色]
そぉっと、眠り姫ならぬ眠り王子に近づく。

長いまつげ、部活でやけた肌にすっきりとしたアゴのライン。

我が弟とは思えないほど整った顔立ちのみーと。

ホント羨ましいよ。

背だってこの春休みでまた伸びて、見上げなきゃならなくなった。

⏰:08/06/06 18:21 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#13 [桃色]
おそるべし成長期‥。

だけどホント、キレイな顔‥。

姉ながら惚れ惚れしちゃうよ。


「みーと!いいかげんに起きないと遅刻だぞ!」

頬をつまんで力を込めた。

ここまでは、いつもと同じ。


だけどこの日は‥。

⏰:08/06/06 18:25 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#14 [桃色]
「ん‥‥みーほ?」

そう言ってうすく目を開けたと思ったら、みーとの左腕がぐっとあたしの腰をつかんだ‥

瞬間、みーとの胸に抱き寄せられてしまった。


「ちょ、ちょっとみーと!?」

慌てたあたしは起き上がろうと両手に力を込めたけどビクともしない。

⏰:08/06/06 23:39 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#15 [桃色]
いつの間にかみーとの両腕にすっぽりおさまってしまっている。


「みずほ‥‥みずほ‥‥
みー‥‥ほ?」

やっと意識がはっきりしてきたらしく、少し力がゆるんだすきに抜け出したあたしは、ベッドの横にそのままへたり込んでしまった。

⏰:08/06/06 23:42 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#16 [桃色]
「??おはよーみーほ」

寝ぐせではねた髪の毛をぐしゃぐしゃしながら体を起こすみーと。


「なんか、夢見た」

「夢?」

必死に平静を装って聞き返すと


「そう、すっげぇ幸せな夢‥」

そう言うとあたしの頭をくしゃっとなでて部屋を出ていってしまった。

⏰:08/06/06 23:46 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#17 [桃色]
‥‥‥やだ、何この感じ。

鼓動が体中に響いてる。



顔が‥‥



「熱い‥」


しばらくそのままでいると

⏰:08/06/06 23:48 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#18 [桃色]
「みーほ!みそ汁冷めちまうぞー」

下からみーとの声がしてまたビクっと反応してしまった。


ほてる顔をパタパタあおいで、バレないように席につく。

テーブルにはお母さんの料理が並んでて、いつの間にか起きてたらしいお父さんが新聞広げてコーヒーを飲んでいる。

⏰:08/06/06 23:52 📱:SH703i 🆔:IEyGbrBQ


#19 [桃色]
「いただきます‥」

ふとオムレツに目をやると、ケチャップでハートマークが描かれている。

ニターっといたずらっぽく笑うみーとに、さっきの力強さなんて感じられなくて


(きっと夢に好きな子がでてきたんだよね)

って自分を納得させてさっさと朝ごはんをすませた。

⏰:08/06/07 10:46 📱:SH703i 🆔:DcViYWnU


#20 [桃色]
2階に上がって制服に着替える途中、みーとの部屋で起こったことを思い出してしまった。

というよりも忘れられなかった。


みーとの腕が、胸が、ぬくもりが、


「みずほ」と呼ぶ声が‥


ダメだ‥。何考えてるのあたし。みーとは弟じゃん。

弟にドキドキするなんて‥

⏰:08/06/07 10:52 📱:SH703i 🆔:DcViYWnU


#21 [桃色]
ブレザーのボタンを留めスカートをはく。

ネクタイは鞄に入れて玄関に向かうとみーとはもう靴をはいて待っていた。


「2人とも気をつけて行ってらっしゃい。瑞穂は今日から受験生なんだから、気持ちひきしめてね。湊斗はサッカー頑張るのよ」

お母さんに見送られ


「行ってきます」

と声を合わせる。

⏰:08/06/07 10:56 📱:SH703i 🆔:DcViYWnU


#22 [桃色]
バス停までの道、いつもなら昨日見たドラマの話しとか、何でもない会話をするんだけど‥

何だか意識してしまってうまく話せないでいると


「どーしたみーほ?腹でも痛い?」

意地悪そうなみーとの声。


「別に‥」

「今さらエリカ様かよー」

立ち止まるみーとにかまわず歩いていると

⏰:08/06/07 11:01 📱:SH703i 🆔:DcViYWnU


#23 [桃色]
「何?どうしちゃったワケ、おねぇちゃ〜ん」

甘えた声が追いかけてくる。


(バカ、あんたのせいだよ)

余計早足になったあたしの腕をぐっと引っ張ったみーとの表情に、また騒ぐ心臓。


「マジで、どうしちゃった?」

「ごめん、何でもない。大丈夫!」

⏰:08/06/07 11:05 📱:SH703i 🆔:DcViYWnU


#24 [桃色]
笑顔をつくってごまかしたつもりでも、みーとは納得してない様子。


「まぁいいや。はい、ネクタイ出して」

バスを待つ列に並びながら、みーとが手を差し出す。

鞄からエンジ色のネクタイを取り出し素直に渡した。

すると


「おー、今朝もやってるねお二人さん!」

⏰:08/06/07 11:12 📱:SH703i 🆔:DcViYWnU


#25 [桃色]
と、景気のいい声が聞こえてきた。

瀬能 梓だ。

あずちゃんは小・中とあたしの同級生でサッカー部のマネージャーをしている。

春休み前にベリーショートにした髪が、少し伸びて耳にかかっている。

そんなあずちゃんはみーとと同じくらいあたしの世話をやいてくれる、頼れるお姉ちゃん的存在。

⏰:08/06/08 02:06 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#26 [桃色]
「おはよーっす」

と言いながら、きゅっとネクタイを締めてくれたみーとを見て


「つくづくできた弟だね−!幸せだよ瑞穂は!」

とニタニタ笑いながらひじであたしをつついてきた。

はぁ、あずちゃんが来てくれて助かった‥

あたしの安心をよそに


「あっれー?湊斗くんまた背伸びたぁ?」

「おかげさまでー」

なんて話してる。

⏰:08/06/08 02:09 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#27 [桃色]
安心したのもつかの間、通学ラッシュのバスの中は満員状態。

気づくと目の前にはみーとの胸があった。


“発車します”のアナウンスと同時に波打つ車内。

吊り革も手すりも空いてなくて思わずバランスを崩したその時‥

支えてくれたみーとの左腕。

さっきの出来事をまた思い出してうつむいたままのあたしに

⏰:08/06/08 02:14 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#28 [桃色]
「だいじょーぶ?」

って小さく聞いてくる。

あたしも小さく頷いたけどやっぱり顔は見れなくて、学校までそのままやり過ごしてしまった。


「ひゃー!バス、混みすぎだし!大丈夫だった?瑞穂」

あずちゃんの声も届かないほど鳴り響く心臓‥

どうしちゃったんだろ、あたし‥

⏰:08/06/08 02:17 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#29 [桃色]
だけどさっきのみーとの手、すごく優しかった。

何てゆうか、起こしに行った時とは違う‥

きっとアレは夢で好きな子のこと抱きしめてたからだよね。

‥好きな子‥


みーとの‥‥‥


「‥ほ!ねぇ瑞穂ってば!さっさとしないと遅刻しちゃうんですけど!」

⏰:08/06/08 02:20 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#30 [桃色]
はっとした時にはもう予鈴が聞こえてて、先生たちが門の前でイライラしていた。


「ごめん!ごめん!」

「ほーんと、ほっとけないねーアンタのねーちゃんは!」

イヤミっぽく笑うあずちゃんに

「ね、ほんと」

とやわらかく笑うみーと。

みーとの好きな子って‥

あずちゃん!?

⏰:08/06/08 02:23 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#31 [桃色]
って‥いくらなんでも安易すぎるか‥


小走りで昇降口に向かおうとするあたしに

『今日始業式だから講堂!!』

口をそろえて言ってくる。

‥うぅ‥

息ぴったりだし‥

⏰:08/06/08 11:55 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#32 [桃色]
講堂に入るやいなや


「あー来た来た!瑞穂もあずちゃんも、また一緒のクラスだよーん!」

と飛びついてきたのは及川 寧々。

その後ろには日野 詩織。


寧々はいわゆる不思議ちゃんタイプ。

あたしと並ぶ小柄でマシュマロみたいな女の子。

⏰:08/06/08 12:07 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#33 [桃色]
詩織ちゃんは根っからの委員長気質。

トレードマークの青ブチ眼鏡を光らせては規律を正す。

1年の時から執行部に入っていて、今年からは生徒会役員になるんだってはりきっている。


高校生活最後の1年を、またこのみんなで過ごせるんだ‥。

何ともいえない安心感があたしを包む。

きっと楽しくなるだろうな。

⏰:08/06/08 12:12 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#34 [桃色]
2年生の人だかりの中にみーとの姿が見えた。

あの様子だと、みーともクラスメートに恵まれたみたい。



始業式を終え、各クラス新しい教室へ移動する。

あたしたち3−Dは1階の1番はし。

うちの校舎は中庭をぐるりと囲むようにして建っている。

1・2年と2階で過ごしてきたあたしには嬉しくてしょうがなかった。

⏰:08/06/08 12:20 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#35 [桃色]
教室に入ると出席番号順に席につく。

“桜井”なのでいつも右から2列目くらいの位置。

後ろは運よくあずちゃん。

両隣は寧々と詩織ちゃん。

何たる偶然!

もはや必然!?

さっきの安心感とはまた違った、ふわふわした感覚に浸っていると前の子からプリントが回されてきた。

⏰:08/06/08 12:28 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#36 [桃色]
学校だよりやテストの日程、時間割やら何やらかんやら‥‥


担任の話しも一段落し、終礼のチャイムが鳴る。


「ね、あたし運命感じちゃった」

振り返るなり満面の笑みを浮かべたあたしに

「かわいいヤツめ!」

と額に触れるくらいのデコピンをするあずちゃん。

顔を見合わせて笑っていると

「瑞穂、あれ湊斗くんじゃない?」

怖い顔した詩織ちゃんが眼鏡をぐいっとあげている。

⏰:08/06/08 12:46 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#37 [桃色]
その鋭い視線の先には中庭を挟んだ2年の校舎の1階、あたしたちの教室の真向かいの窓から両手をぶんぶん振っているみーとが見える。

思わず窓に飛びつくとさっきのあたしなんて比じゃないほどの最高の笑顔で

「みーほみーほ!今日一緒に帰ろうよ!」

と叫んできた。

(は、恥ずかしい‥)

両手で控えめにOKサインを出して窓から離れようとすると

「あちゃー、シスコン炸裂だねー」

と呆れた感じのあずちゃんの声がした。

⏰:08/06/08 16:32 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#38 [桃色]
普段部活があるみーとと登下校することなんてめったにないんだけどな‥。

明日からテストだし部活は休みなんだろうけど‥

今日は運命の3人とどこか寄って帰りたい気持ちもあったけど仕方ない。

みんなにまた明日、と告げ教室を後にする。

⏰:08/06/08 16:38 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#39 [桃色]
途中クスクスと笑い声が聞こえたけど‥気にしないもん!

刺さる視線を振り払うかのように早足で昇降口へ向かう。

2年の下駄箱の方へヒョコッと顔を出すと、みーとはまだ来てない様子。

そのまま傘立てに腰掛けて待っていると

「お!桜井姉!」

⏰:08/06/08 16:43 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#40 [桃色]
いきなり声をかけられ体がビクっと揺れる。

聞き慣れない声の主に目をやると、サッカー部のキャプテン‥確か名前は――


『園田 洋介!』

「なんだ、知ってんじゃん」

と白い歯を見せて笑う園田くん。

いや、ついハモってしまったけど、名前知ってたのはみーとの話しでちょこちょこ耳にしてたからで‥

⏰:08/06/08 18:55 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#41 [桃色]
言い訳しかけたところで

「うちのねーちゃんに手ぇ出さないでくださいよー!」

とふくれっ面したみーとが現れた。

「はいはい、わかってますよ!それよりお前ちゃんと勉強しとけよ?赤点とったらレギュラー取れねんだからな!」

「俺に限ってそれはないっす!」

「はは、確かにな〜」

そう言って園田くんは手を振りながら行ってしまった。

学年でもモテる方の彼の笑った顔は確かにかっこいい‥‥かな?

⏰:08/06/08 19:01 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#42 [桃色]
「あー!みーほ今洋介さんの事考えてただろー!?」

履きかえた靴を床でトントンしながらスネた表情を浮かべるみーと。

考えてないって言えばウソだけど‥

「ご、ごめん‥」

何謝ってんだ?あたし。

「まぁいいよー。洋介さんかっこいいし?モテるし?キャプテンだし?」


今に始まったわけじゃないみーとのヤキモチ。

小さい頃からいつもそう。

⏰:08/06/08 19:06 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#43 [桃色]
あたしが男の子と遊んでいると、いつも割って入ってくる。

“みーほちゃんはボクの〜!”ってね。

昔は可愛かったけど今はさすがに‥


だけど何でだろう、今朝からあたし、やっぱりおかしい。

いつもは流してたみーとのヤキモチも、今日はなぜだか嬉しく感じてしまう‥

ダメだ。

頭回んないや。

とりあえず話題を変えようと、まだブツブツ言ってるみーとに

「それよりさ、凄いんだよ!またあずちゃんたちとおんなじクラスなんだ!」

⏰:08/06/08 19:12 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#44 [桃色]
無理に大きな声出してみたのに反応ナシ。

何もそんなにショック受けなくたって‥


「帰ろっか‥」

呟きながら歩きだしたあたしに

「待ってみーほ!今日一緒に帰ろうって誘ったのは他でもない‥」

そう言って携帯の画面を見せられる。


 4/7 11:53


「今日はなーぁんの日?」
ニコニコしながら聞いてくるみーとに

⏰:08/06/08 19:19 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#45 [桃色]
(4月7日‥4月7日‥)

「あ、お父さんとお母さんの結婚記念日!!」

「お見事ー!」


そんな事すっかり忘れてたー!

しかも今年で20年目なはず‥

去年もみーとに言われてから思い出したんだっけ‥

娘失格!

あたしって親不孝者‥


「確か去年はお揃いのパジャマあげたんだよね」

隣に並んだみーとに話しながら今年はどうしようかと考えていると

⏰:08/06/08 19:24 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#46 [桃色]
「もう目星はつけてあるんだ」

そう言われてほっとした。

「けどさー、20年ってすごいよねー。今でも仲いいし」

家とは逆方向のバス停のベンチに座りながら両親のことを考える。

「みーほ、それ去年も言ってたよ『19年ってすごいよねー』って」


あれ?そうだっけ。

成長してないってことね‥

学生時代から知り合いだったお父さんとお母さん。

⏰:08/06/08 19:29 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#47 [桃色]
付き合ったのは社会人になってからだって聞いてるけど、たった一人の人を愛し続けるのってすごいよ。

尊敬しちゃう。


あたしにもそんな人、現れるんだろうか‥


何気なく隣を見ると、みーとが笑ってた。

斜め45度から降るその眼差しは優しくて、あたたかくて‥

ドクン、と波打つ心臓の音と共に、あたしはうつむく事しかできなかった。

⏰:08/06/08 19:34 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#48 [桃色]
(何弟に照れてんのよ!)

自分につっこんでみたものの笑えるはずもなく。

そうこうしているうちにバスが目の前に現れ、またも下校ラッシュの車内に身を押し込めた。


朝の過ちはおかすまい、と我れ先に手すりにしがみつく。

みーとに背中を向けたまま、流れる景色をぼんやり眺めていた。



繁華街に近いバス停で降り、みーとの後ろについて歩く。

⏰:08/06/08 19:40 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#49 [桃色]
「ねぇみーと、何プレゼントするつもりなの?」

「ナーイショ!行ってからのお楽しみだよ」

そう言ってウインクするとちらっと舌を出しながらこっちを見る。

「ケチー!」

むくれながらも内心ドキドキ。

あんなウインクどこで覚えてきたんだか!


そんなあたしを見てまた、あの笑顔。

⏰:08/06/08 19:47 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#50 [桃色]
細めた目をキラキラさせて、まるで愛おしいものを見るかのように‥


吸い込まれそうなほどのその笑顔に負けるもんかと慌ててあっかんべーをした。

「あはは、かわいいなぁ、みーほは」

そしてまた髪の毛をくしゃっとなでられる。


ダメ、みーと。

思い出しちゃう‥


こんなにドキドキするなんて。

お姉ちゃんも失格だよ。

⏰:08/06/08 19:51 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#51 [桃色]
だけどどうして?

今日のみーとはいつもといっしょのようで、何かが違う。

わけわかんないよ。



戸惑うあたしの気持ちを察してか

「ここの3階」

指差したのは百貨店。

しかも着いてみるとベビー用品売り場。

お父さんとお母さん、いくら仲いいからって

まさか‥ねぇ。

⏰:08/06/08 19:55 📱:SH703i 🆔:CqjwAsgc


#52 [桃色]
「実はさ、もう予約してあったんだよね」

「え!?な、何を?」

おもむろに引換券を取り出し、店員さんに手渡す。

すると奥から

「桜井様、お待たせ致しました」

とぬいぐるみらしきものを2体運んできた。

状況を把握できないあたしに

「こちら、ウエイトベアーと申しまして、赤ちゃんの出生時の体重と同じ重さを再現し、足の裏には生年月日、出生時の体重、それから赤ちゃんのお名前を刺繍できるメモリアルグッズとなっております」

と、店員さんがにこやかに説明をしてくれた。

⏰:08/06/09 00:12 📱:SH703i 🆔:CqeX2tMg


#53 [桃色]
よく見ると、ブルーのリボンをつけたくまには

【1991,8,31】

【3038g】

【MINATO】


もう一方のピンクのリボンをつけたくまには

【1990,9,1】

【2993g】

【MIZUHO】

の文字が。

⏰:08/06/09 00:18 📱:SH703i 🆔:CqeX2tMg


#54 [桃色]
とりあえずはお母さんのオメデタってわけじゃないことにほっと胸を撫で下ろした。

「お子様がお生まれになった時の記念や、結婚式の贈り物などにご利用されるお客様が多いんですよ」

安心したあたしは、続けて話す店員さんの声なんて耳に入らないくらい、胸の奥がじぃんと温かくなっていくのがわかった。

照れ臭そうに耳をいじるみーとに

「みーと、すごいね!絶対お母さんたち喜ぶよ!!」

そう言うと

⏰:08/06/09 00:25 📱:SH703i 🆔:CqeX2tMg


#55 [桃色]
「だろ?これ見つけたときにこれしかない!って思ったんだ」

ってキレイな顔をくしゃくしゃにして笑った。



ラッピングする前にウエイトベアーを抱かせてもらう。

「けっこぉ‥重い‥」

赤ちゃんって、こんなに重いもんなんだ‥

てゆうか、この重さがお腹の中にいたってことだよね!?

ありえない!

お母さん、すごすぎるんですけど!

⏰:08/06/09 00:29 📱:SH703i 🆔:CqeX2tMg


#56 [桃色]
 
ラッピングができあがるのを待つ間にメッセージカードを書く。


“お母さん産んでくれてありがとう”

“お父さん、見守っててくれてありがとう”

“二人とも大好きだよ、結婚記念日おめでとう!!”


ありきたりすぎる??


そっとみーとのカードを覗くと

「コラ!勝手に見ないの!」

と怒られてしまった。

⏰:08/06/09 00:34 📱:SH703i 🆔:CqeX2tMg


#57 [桃色]
みーとの事だから、きっと感動して泣いちゃうようなこと書いてんだろうなー。

ほんと、神様ってば不公平だよ。

思う気持ちは同じなのにさっ。


「そろそろラッピングできたんじゃない?」

ツンとした態度のあたしに

「なに?みーほ、スネてる?」

顔は見なくてもわかる。

きっとまたいたずらっぽく笑ってるんだ。

⏰:08/06/09 00:37 📱:SH703i 🆔:CqeX2tMg


#58 [桃色]
「い――――っだ!」

精一杯憎たらしい顔をして後ろを振り返ると

「ほんとガキだな」

ってまたくしゃっと頭をなでられた。

今日何回目よ!?

ってゆうか姉としてどーよ!?

もう、ドキドキなんてしてやんない。

みーとを追い越してサービスカウンターへ急ぐ。

できあがりを確認して受け取り、振り返ると

みーとの姿がなかった。

⏰:08/06/09 00:41 📱:SH703i 🆔:CqeX2tMg


#59 [桃色]
学校の鞄を右肩にかけ、大きな包みを両脇に抱えながらキョロキョロと辺りを見渡したけど、みーとらしき姿は見つからず、そのままフロアを行ったり来たりしていると

「焦った?」

後ろから聞き慣れた声。

「重いよ!」

振り向き様に包みを押し付けて

「探したじゃない!どこ行ってたの?」

と怒るあたしに

「ずっと後ろにいたけど?」

わざと目線を低くして、上目使いで顔を近づけてくる。

⏰:08/06/09 15:21 📱:SH703i 🆔:CqeX2tMg


#60 [桃色]
 
「てゆうか、俺がみーほを見失うなんて、まずありえないから」

自信たっぷりの表情に戸惑いながら

「今日のみーと変だよ!!今朝だって―――っ!」

言いかけて口を両手で押さえるあたしに

「今朝?そういえば、みーほベッドの横に座ってたよね」


あたしのバカ!あれは寝ぼけてたんだし何で思い出させるような事‥

「はっはーん、さてはみーほ、俺の寝込みを襲おうとした?」


‥良かった、こいつもバカだ。

⏰:08/06/09 15:26 📱:SH703i 🆔:CqeX2tMg


#61 [桃色]
逆です、その逆!!


とは言えるはずもなく‥

「あー、はは、バレたら仕方ない。実はぁ‥‥‥って何でよ!?何が悲しくて弟襲わなきゃなんないっつーの!」

そのままこの話し忘れてくれー

内心ビクビクのあたしとはウラハラに、何か考え込んでる様子だったけど

「それもそうだよな。いくら俺が男前でも♪」

そう言って少しの間フザけ合った。

⏰:08/06/09 15:31 📱:SH703i 🆔:CqeX2tMg


#62 [桃色]
帰りのバス停までの道、どんどん人通りが多くなってく中、大きな包みを両脇にかかえたみーとと、そんな彼を引き連れて歩くあたしをジロジロ見る人は少なくなかった。

指差して笑う人や中身は何かと話す人。

1番ヒドかったのは

「あれはどう見ても不釣り合いっしょー!女見る目疑うねー」


あの‥聞こえてますけど。

やっぱみーとってハタから見てもかっこいいよね。

⏰:08/06/09 15:36 📱:SH703i 🆔:CqeX2tMg


#63 [桃色]
あたしなんか、お姉ちゃんじゃなきゃこんなとこ一緒に歩いてもらえないかもな。


‥そういえば、みーとの好きな子って誰なんだろ?

今まで彼女とか聞いたことないしな‥

ずーっとその子に片思いとか?


ブルーな気持ちでボンヤリバスを待つあたし。

あぁ、こんな弟を持ったばっかりに‥

⏰:08/06/09 15:40 📱:SH703i 🆔:CqeX2tMg


#64 [我輩は匿名である]
 
 
「これ、見つけた時さぁ‥」

いきなり話しだしたみーとの声に耳をかたむける。

「今までのプレゼントって残るっつっても、ココには残んなかったじゃん?」

プレゼントを抱えながらも親指で胸をさすみーと。

「だから、これしかないって思ったんだよね。何てゆうか、生んで、育ててくれて、ありがとう‥じゃないけど‥ほら、父さんと母さんが結婚してなかったら、俺ら生まれてなかったわけだし?」

⏰:08/06/10 00:44 📱:SH703i 🆔:svGIPPNA


#65 [桃色]
 
 
春の風が優しくみーとの髪をなでる。

普段見えないおデコが見えて、細めた目がやけに色っぽかった。

「とにかくさ、父さんと母さんの子供で良かったよ、俺。こうして、みーほにも会えた」

「ん、フフ‥そうだね」

「わ、笑うなよ!人が真剣に話してんのに!」

「や、はは、ごめんごめん。その通りだなーと思って!」


何もひけめを感じることなんて無いんだよね。

⏰:08/06/10 00:54 📱:SH703i 🆔:svGIPPNA


#66 [桃色]
あたしはみーとのお姉ちゃん。

大好きなお父さんとお母さんの娘。

こんなステキな弟、どこ探してもいないよ。



―――だけどこの事実が、どんどん二人を追いつめていったね。

深く深く、どこまでも。

この時は考えもしなかった―――



「ありがと!元気出た!」

⏰:08/06/10 00:58 📱:SH703i 🆔:svGIPPNA


#67 [桃色]
「あれ?元気なかったの?」

わざとトボけたみーとの笑顔は何だか満足そうだった。

「ねぇ、スーパー寄って帰らない?」

「いいけど?」

「今日の夕飯、あたしたちで作ってあげよう!」



バスに揺られている間、さっきのみーとの話しを思い出して、また笑ってしまう。

⏰:08/06/10 01:03 📱:SH703i 🆔:svGIPPNA


#68 [桃色]
「思い出し笑い?エロいんだー」

「髪の毛伸びるのが異常に早いみーとに言われたくありませんよーだ!」

さっきのブルーなあたしはどこへやら‥


スーパーに近いバス停で降りる。

「何作ろっか?」

そう言いながらもあたしの頭に思い浮かんでいたのは

『ロールキャベツ!』

みーとの口からも同じメニュー。

小さい頃からうちのお母さんは誕生日やお祝い事がある日は、決まってロールキャベツを作ってくれた。

⏰:08/06/10 01:08 📱:SH703i 🆔:svGIPPNA


#69 [桃色]
それから‥

普段無口なお父さんが『お母さんがロールキャベツならお父さんはロールケーキだ』ってゆうわけのわからない理由で買ってきてくれる‥

『ロールケーキ!』

思わず声をあげて笑う。

「あとはお父さんの好きな鮭のムニエルと、お母さんの好きな春雨のサラダだね」

「俺から揚げも食べたい!」

「了解!」

冷蔵庫にある食材を確認するため、家に電話をかける。

⏰:08/06/10 01:18 📱:SH703i 🆔:svGIPPNA


#70 [桃色]
だけどいくらコール音を繰り返しても誰も出る気配はない。

「出ないの?」

「んー、居ないみたい」

今日はお母さん仕事休みのはずなんだけどなぁ‥


一旦帰るのもめんどうなのでそのままスーパーに入る。

家になさそうな食材をざっと予想してかごの中に入れていく。

空いているレジを選びつつ、さて並ぼうか、と進もうとしたその時

「ママー!ママどこぉ?」
3才くらいの男の子がキョロキョロ辺りを見回しながら、泣き出しそうな顔をして走ってきた。

⏰:08/06/10 01:29 📱:SH703i 🆔:svGIPPNA


#71 [桃色]
「ママとはぐれちゃった?」

精一杯優しく話しかけたつもりだったのに、男の子はその場にフリーズ‥

え?なんで?

「おいでー、兄ちゃんと探しに行こ!お名前は?」

両手に抱えた包みの間から見えたみーとの笑顔に

「こやしし たてう‥」

小さな指を3本立てながら意味不明な言葉を並べる。

「おー、こばやし たけるくんね。みーほ、ちょっとたけるのママ探してくるわ!」

そう言って包みをカートのかごに乗せると、あたしが返事をする前に二人は手をつないで背を向けていた。

⏰:08/06/10 23:37 📱:SH703i 🆔:svGIPPNA


#72 [桃色]
(どうやってもこばやし たけるには聞こえなかった‥)

軽い敗北感と屈辱感を味わいながら、みーとって子供ウケいいんだ‥

ってゆうよりもあたしが悪すぎ!?

なんて事を考えながらレジを済ませた。


袋詰めに精を出していると横からひょいっとみーとが現れ手伝ってくれる。

「たけるくんのママ見つかった?」

「うん。ママに会えた途端泣き出しちゃって、かわいかったよ」

「良かった。みーとって子供好きなんだ?」

「知らなかった?結構なつかれんだよ、すぐ」

⏰:08/06/10 23:43 📱:SH703i 🆔:svGIPPNA


#73 [桃色]
うん、確かにあたしには全くなついてくれそうもなかったよね。

さっきの敗北感が帰ってこようとした時、

「あのー、先ほどはどうもありがとうございました‥」

と、たけるくんを抱っこしたママらしき人が話しかけてきた。

年は多分あたしたちとそんなに変わらない。

だけど全然ヤンキーみたいな感じはしなくて、むしろステキなお母さんって感じのキレイな人だった。

まだ少し涙目のたけるくんに

「たけるー、えらかったなぁ」

って頭をなでてるみーとを見て

まさかあたしとたけるくんって同レベルなんじゃ!?

⏰:08/06/10 23:53 📱:SH703i 🆔:svGIPPNA


#74 [桃色]
なんて考えていると

「ステキな彼ね。離しちゃダメよ」

とたけるママがこっそり耳打ちしてきた。

「や、あの、違うんです!」

慌てるあたしにたけるママは、口の前で人差し指を立てるとニコッとほほ笑んでスーパーを出てしまった。

肝心のみーとは不思議そうな顔をしながらも、手だけはのんきにたけるくん親子を見送っていた。

⏰:08/06/11 00:04 📱:SH703i 🆔:jCge.cGI


#75 [桃色]
“弟なんです”

なんで言えなかったかなー。

まぁ、いいか。また会うとも限らないし。

そう思った途端になぜかニヤけるあたしの顔‥。

思えば妹に間違われた事は数え切れないほどあっても、彼女に‥っての初めて‥。


‥彼女、かぁ。

今までの様子からしていた形跡はない‥と思う。

隠してるだけ?

⏰:08/06/11 16:20 📱:SH703i 🆔:jCge.cGI


#76 [桃色]
だけどヒマがあればみーほみーほって言ってるしなぁ。

今や彼のシスコンっぷりは校内でも有名だし‥。


みーとにスーパーの袋を持ってもらい、自分の分のウエイトベアーを前に抱えて歩きながらふと思う。

(あれ?あたし今日一日中みーとのこと考えてる!?)

立ち止まったあたしのポケットの中で携帯がふるえる。

画面を見るとお母さんからだ。

⏰:08/06/11 16:28 📱:SH703i 🆔:jCge.cGI


#77 [桃色]
「もしもし、あのね今日―‥」

言いかけてやめたあたしに

「どうかした?」

心配そうにそばに寄るみーと。

「お母さんたちホテルのディナー予約してあるから、今日は二人で夕飯食べてって‥なんか超浮かれてたんですけど」

少し泣きそうなあたしを見て

「マジかよー」

みーともヘコむ。

あーあ、なんか二人して恥ずかしいじゃん。

逆に笑えてきた。

みーとも声をあげて笑う。

⏰:08/06/11 16:33 📱:SH703i 🆔:jCge.cGI


#78 [桃色]
お互いの笑いにつられて涙が出るまで笑った。


家に着いたら17時少し前だった。

「ねー、ケーキどおする?」

笑いすぎて少し高くなった声で聞くと

「こうなりゃヤケでしょ!」

てなワケであたしは夕食作り、みーとはケーキを買いにそれぞれ取りかかった。

⏰:08/06/11 16:38 📱:SH703i 🆔:jCge.cGI


#79 [桃色]
 
お母さんみたいに上手くできるか心配だったけど、何とかそれらしい形になってきた。

「あたしってばやればできるんじゃ〜ん」

よくある塩と砂糖を間違えるなんてミスは絶対しないように何度も確かめながら味付けをする。

鮭と唐揚げの下ごしらえもOK。

サラダは一旦冷蔵庫に入れておいてっと‥

「たっだいま〜!おっ、いい匂い!」

⏰:08/06/11 16:42 📱:SH703i 🆔:jCge.cGI


#80 [桃色]
やけに嬉しそうなみーとの声。

近くのケーキ屋さんのはずなのに、やけに遅かったな‥と思いながら

「おかえり、すぐできあがるから待ってて」

と言うと、キッチンに入るなり

「ジャーン!」

のかけ声。

飛び出してきたのはシャンパン。

「え!?買ってきたの?」

⏰:08/06/11 16:49 📱:SH703i 🆔:jCge.cGI


#81 [桃色]
「お祝いだしね!」

お祝いったって、主役いないよ‥

「よく売ってくれたねぇ」
「うん、アルコール入ってないやつだから」

(なーんだ‥)

親がいない時ってなぜかハメ外して騒ぎたくなっちゃうあたし。

今日はまさにそんな気分だったけど‥

⏰:08/06/11 16:51 📱:SH703i 🆔:jCge.cGI


#82 [桃色]
ま、雰囲気雰囲気♪

明日からテストだしね。

みーとにも手伝ってもらい慣れないながらも頑張ったあたしの料理が並べられる。

「ごはん、ごはん」

としゃもじを持つみーとを見て気づく。

「あ!ご飯炊くの忘れてた!」

それと同時に炊飯器のフタが開く。

中はもちろん空っぽ‥

⏰:08/06/11 16:56 📱:SH703i 🆔:jCge.cGI


#83 [桃色]
塩も砂糖も関係ないし‥

てゆうか初歩的過ぎる‥

「いいじゃん、ロールケーキもあるだし!」

みーとの優しささえ皮肉に聞こえる。

「ごめん‥」

テンションだだ下がり。

だけどみーとはいつだってあたしを笑顔にしてくれるんだ。

⏰:08/06/11 17:00 📱:SH703i 🆔:jCge.cGI


#84 [向日葵]
失礼しますm(_ _)m

>>1-50
>>51-100
>>101-150

⏰:08/06/11 18:42 📱:W52SH 🆔:RymUvnTo


#85 [桃色]
「みーほみ−ほ!」

何か企んだ顔の下にはさっきのシャンパン。

親指で押さえながら振って振って‥‥

「ちょっとみーと!やめっ」

思わず目をふさいだ瞬間、スコーンという景気のいい音と共にたくさんの白い泡が吹き出した。

「はは!結婚記念日オメデトー!」

叫ぶみーとを見ていたら、笑わずにはいられなかった。

⏰:08/06/11 23:26 📱:SH703i 🆔:jCge.cGI


#86 [桃色]
 
「あ〜ぁ、もぅ3分の2ぐらいしか残ってないじゃん」

床に飛び散ったシャンパンを片付けながらそう言うと

「あれぐらいしなきゃパーっとなんないかなーって」

こりない様子のみーとが笑う。

「さ、食べよ食べよ」

そそくさと席につき、いただきますのポーズをして

「せっかくの料理が冷めちゃうよ」

あたしを急かす。

「みーとのせいでしょー!」

洗い流したふきんを絞ってあたしもやっと席につく。

⏰:08/06/11 23:33 📱:SH703i 🆔:jCge.cGI


#87 [桃色]
『いただきます』


所々シャンパンの味がした夕飯は今まで作ったどの料理よりも満足のいくできだった。

みーとにも

「いつの間にか上達してない?」

って言われたし。

これって合格点ってことだよね?

シャンパンで乾杯をして泡がつぶれてから一口含む。

「あれ?アルコール、入ってるよね?」


クッと喉の奥が熱くなるこの感じ‥

⏰:08/06/11 23:43 📱:SH703i 🆔:jCge.cGI


#88 [桃色]
ラベルを確認すると

“アルコール度数11%”

「あ、バレちゃった?」

すでに頬を赤くしたみーとがグラス片手に舌を出している。

喜ぶべきかいなか‥


「おいしーね!」

何て弱い心の持ち主‥

すっかりテンションが上がったあたしたちは、あれよあれよという間にシャンパンの瓶を空にし、テーブルいっぱいに並んだ料理も全てキレイにたいらげた。

⏰:08/06/12 00:00 📱:SH703i 🆔:MGAYyT5I


#89 [桃色]
満腹感プラス、アルコール効果で眠気が襲ってくる。

「片付けめんどくさ〜い」

ほろ酔い気分でリビングのソファーでだらけるみーとに近付くと、小さい寝息が聞こえてくる。

「‥なに寝てんのよー!」

酔っ払った勢いでみーとの前にペタンと座りこむ。

‥どっかで見たようなシチュエーション。

あれ?

デジャビュ?

⏰:08/06/12 19:59 📱:SH703i 🆔:MGAYyT5I


#90 [桃色]
ぽぉっとする頭じゃ何も考えられなくて、ただひたすら上がったり下がったりを繰り返すみーとの胸を見つめてた。

視線を上げると大好きな寝顔‥


立てひざをつこうとしたその時、

目の前が一瞬にして真っ暗になった。

「っっ‥!」

あまりに突然な出来事に頭も体もついていけず、何が起きたのかわからない。

だけど1つだけ確かなのは、あたしがみーとの腕の中にいるってこと。

覆いかぶさる様にして、すっぽりとあたしを包んでいる。

⏰:08/06/12 20:05 📱:SH703i 🆔:MGAYyT5I


#91 [桃色]
「みー‥と?」

消え入りそうな声でおそるおそる名前を呼んでみる。

返事がない代わりにぐっとみーとの腕に力が入る。

だけど少し震えてる‥?

鼓動が速過ぎて胸が痛い。

だけど耳に直接響くのは、あたしよりも速いみーとの鼓動‥。

「苦しいよ、みーと」

腕の中でこもる声は、自分の声とは思えないほど色っぽくて‥

次の瞬間、その言葉を待っていたかのようにみーとが顔を上げた。

⏰:08/06/12 20:11 📱:SH703i 🆔:MGAYyT5I


#92 [桃色]
まぶしくて目を細めながらみーとを見上げると、潤んだ瞳でまっすぐあたしを見つめていた。

動けない。

みーとの目が動くなって言ってるようで‥


その時あたしの中の何かが、溢れ出すのがわかったんだ。


やがてみーとの顔がゆっくりと近づいてきて、あたしの視界にみーとしか映らなくなったとき

“ダメ!”

⏰:08/06/12 20:18 📱:SH703i 🆔:MGAYyT5I


#93 [桃色]
 
何でそう言わなかったのか‥



答えは簡単。


あたしもそうなることを望んでいたから。


素直に目を閉じ、あたしたちは唇を重ねた。


みーとの手があたしの頭をそっとなでる。

クラクラする。

ねぇみーと、今何考えてる?

⏰:08/06/12 20:22 📱:SH703i 🆔:MGAYyT5I


#94 [桃色]
うすく目を開けると長いまつ毛がわずかに動く。

2回、3回、ゆっくりと傾きを変えながらキスをする。

間隔は徐々に短く、深いものになろうとしたとき


「っ‥ごめん‥」


あたしの肩をつかんで下を向いたままそう呟くみーと。

「あ、あたしお風呂入ってくるね!」

ほてった顔に手をあてながらバタバタと足音を立ててお風呂場へ向かう。

⏰:08/06/12 20:38 📱:SH703i 🆔:MGAYyT5I


#95 [桃色]
洗面台の鏡に映ったあたし‥

何て顔してるの?

まだ浅いバスタブのお湯に無理矢理身を沈め、ひざを抱えて考える。

「あやまんないでよ‥」

唇を指でなぞってみる。

みーと‥

あんな上手にキスするんだ‥

小さい頃はおやすみのキス、当たり前だったのにな。

いつからかしなくなって‥

(さっきのは完璧おやすみのキスじゃ片付けらんないよな‥)

⏰:08/06/12 20:44 📱:SH703i 🆔:MGAYyT5I


#96 [桃色]
湯舟にブクブクと泡を立てて、消えないうちにすくう。

だけど泡はすぐにはじけて‥

手の平には何も残らない。

みーとはどういうつもりで、あんな事したのかな?

もう間違いじゃ納得できない。

だってこんなにもあたしの胸をしめつけてる。


あやまるぐらいなら、してほしくなかった。

少しでも嬉しいと思ってしまった自分が恥ずかしかった。

⏰:08/06/12 20:52 📱:SH703i 🆔:MGAYyT5I


#97 [桃色]
姉弟なのに‥


姉弟なのに‥


姉弟‥‥なのに‥


最低だ、あたし。

自分から目つむって、あれじゃまるでキスしてって言ってるようなもんじゃん‥。

だけどみーともみーとだよね。

あたしのこと、どうゆう目で見てんだか!

姉弟そろってバカだよホント。

⏰:08/06/12 20:56 📱:SH703i 🆔:MGAYyT5I


#98 [桃色]
考えれば考えるほど、開き直ってしまいたくなる。

というよりも認めざるを得ないこの気持ち‥



みーとのこと‥



「すき‥」


思わず口をついた言葉に焦って、取り消す動作をしながら立ち上がる。

湯舟から出てさっと全身を洗い、髪の毛のシャンプーを泡立てながらもう一度考える‥

家族としてじゃなく

弟としてでもなく

‥‥‥‥‥‥‥‥‥

⏰:08/06/12 21:01 📱:SH703i 🆔:MGAYyT5I


#99 [桃色]
 
認めたくない‥‥

だけど

だけど‥‥


モヤモヤしたままお風呂から上がる。

気まずいながらもリビングに戻るとみーとの姿はなく、食卓はキレイに片付けられて結婚記念日のプレゼントが置いてあり、洗いものも済まされていた。

小さくため息をつき冷蔵庫からお茶を取り出しコップに注いでいると

『ただいまー』

お母さんたちが帰って来た。

⏰:08/06/12 21:07 📱:SH703i 🆔:MGAYyT5I


#100 [桃色]
「あら?湊斗は?」

「うん、部屋じゃないかな」

何となく目を合わせ辛い。

ごめんね、お父さん、お母さん。

「テーブルにプレゼント置いてあるから!みーとが選んだんだ。あと、いつもロールケーキも冷やしてる!じゃあ、おやすみ!」

逃げるように2階へ上がる。

みーとの部屋からは物音ひとつ聞こえない。

「みーと?」

ドアのそばに寄ってみたけど返事がないままあたしも自分の部屋へ入った。

⏰:08/06/12 21:13 📱:SH703i 🆔:MGAYyT5I


#101 [桃色]
 
テスト勉強‥

そんな気分じゃないけど一応目を通す。

ベッドの上に寝そべりながら、リーダーのノートを開く。


‥何これ、全然わかんない。

所々抜けてたり、肝心の訳が書いてなかったり‥

日頃の行いって大切だ、と身に染みてわかった。

ま、わかったところでまた繰り返すのがオチなんだけど。

携帯を開きあずちゃんにメールする。

⏰:08/06/14 00:32 📱:SH703i 🆔:iYbo8zL2


#102 [桃色]
“勉強してる?”

すぐに受信ランプが光る。

“眺めてるだけ”

ニッコリマークにほっとするあたし。

“あたしもてゆうか今日さ”

‥打ちかけた指を止める。

いくらあずちゃんでも弟とキスしたって言ったら引くよな‥

ハートマークまでに消し直してメールを返した。

⏰:08/06/14 00:37 📱:SH703i 🆔:iYbo8zL2


#103 [桃色]
あのキスは‥

なんだったんだろう。

酔った勢い?

それとも‥


少なくとも、あたしはあの時キスしたかった。


あたしこそ酔ってた?

わからない‥

だけど今だってみーとの顔が見たくてしょうがない。

声が聞きたい

触れられたい

もう一度‥キス‥したい‥

⏰:08/06/14 00:40 📱:SH703i 🆔:iYbo8zL2


#104 [桃色]
あたしって変かな。

頭おかしくなっちゃったのかも。



ねぇ、みーと

あの日からあたしは

みーと、あなたを‥

弟として見れなくなったんだよ。

⏰:08/06/14 00:43 📱:SH703i 🆔:iYbo8zL2


#105 [桃色]
そうさせたのは、あなただと思ってた。

だけどそれよりもずっと前から

あなたが辛い葛藤の中にいたなんて知らなかったの。

少しでもあなたをその闇の中から救えた?




―――気がつくと朝の光が優しくあたしを包んでいた。

⏰:08/06/14 00:46 📱:SH703i 🆔:iYbo8zL2


#106 [桃色]
昨日はあのまま眠ってしまったらしく、あたしの体には毛布が掛けられていた。

何時だろう?

時計に目をやると‥

「8時!?」

跳び起きて階段を駆け降りる。

リビングにはお母さんたちが飲みなおしていたんであろう残骸が、ロールケーキの空き箱と共に散らかっていた。

ってことはお父さんも!?

⏰:08/06/14 00:50 📱:SH703i 🆔:iYbo8zL2


#107 [桃色]
そのまま寝室へ駆け込んでお父さんをゆり起こす。

歯を磨いてからみーとの部屋へ、今日はノックなし!

だけどそこにはいつもの寝顔はなく、制服と鞄も見当たらなかった。

(今日も朝練ないはずなのにな‥)

後でゆっくり考えようと、身支度を整えて玄関までまた駆け降りると

「ごめんね、瑞穂」

お母さんが申し訳なさそうに立っている。

⏰:08/06/14 00:54 📱:SH703i 🆔:iYbo8zL2


#108 [桃色]
「プレゼント、ありがとう‥嬉しくって、つい飲み過ぎちゃって‥」

二日酔いオーラ全開だ。

「あ、うん‥行ってきます!毛布掛けてくれてありがと!」

叫ぶあたしにこめかみを押さえながら“何のこと?”と問いたげなお母さんに見送られ、勢いをつけて玄関を飛び出した。

⏰:08/06/14 01:00 📱:SH703i 🆔:iYbo8zL2


#109 [桃色]
 
予鈴はとっくに鳴っていたけどなんとかギリギリ間に合って、肩で息をしながら教室に入る。

「おっはよー!珍しいね、遅刻?」

今日も元気なあずちゃんが駆け寄ってくる。

「ギ‥リギリセー‥フ」

呼吸も整わないまま親指を立ててニカッと笑うと

「あれ?今日湊斗くん一緒じゃなかったんだ?」

自分のネクタイをヒラヒラさせながら不思議そうな顔をする。

⏰:08/06/14 01:05 📱:SH703i 🆔:iYbo8zL2


#110 [桃色]
「え、今日って朝練あったんじゃ‥」

「ないない、ないよー!テストの日はいっつもないじゃん!」

そっか‥

そうだよね‥

てことはあたし

まさか‥‥



‥避けられてる?

⏰:08/06/14 01:08 📱:SH703i 🆔:iYbo8zL2


#111 [桃色]
>>2
●100刻みのアンカー●

>>84
●50刻みのアンカー●

⏰:08/06/14 01:13 📱:SH703i 🆔:iYbo8zL2


#112 [桃色]
今日の更新はここまで

なんだか胃が痛い(ノд*、)


高校生活思い出すのに必死デス{笑)

違和感あればご指摘くださいネ(´・ω・`)

●本編●
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/8325/

それでゎみなサマ良い夢を,;*゚◇$.~゚;

⏰:08/06/14 01:16 📱:SH703i 🆔:iYbo8zL2


#113 [桃色]
>>112↑
あわわスミマセン感想板のコメント載せてしまいました‥

どうかスルーで‥‥

⏰:08/06/14 01:23 📱:SH703i 🆔:iYbo8zL2


#114 [桃色]
1時間目のリーダーから4時間目の現代文まで、みーとの事で頭がいっぱいでテストどころじゃなかった。

3回あった休み時間の間に、何度みーとの教室まで行こうとしたか‥

だけど結局思いとどまって(というよりは怖じけづいて)、いつもの3人と学食に並んでいる‥。


「今日はすさすがに空いてるねー、どこ座ろっか」

あずちゃんの声に周りを見渡すと3年の生徒たちばかり。

「なんで!?2年生は?」
驚くあたしに

「2年生は午前中までのはずよ?1年生もね」

⏰:08/06/15 10:04 📱:SH703i 🆔:TqPXBDCY


#115 [桃色]
詩織ちゃんがさくっと教えてくれる。

「それより瑞穂、どうしてネクタイしてないの?忘れてきたんなら予備の貸してあげるから‥」

「ケンカしたんだよねー!湊斗くんと!」

詩織ちゃんの話しを遮ってあずちゃんがニヒヒと歯を見せて笑う。

「めっずらしぃ!」

寧々も興味津々といった様子で入ってくる。

「別に‥ケンカってわけ‥じゃあ‥」

しどろもどろになるあたしとは逆に、3人の目は輝いている。

⏰:08/06/15 10:10 📱:SH703i 🆔:TqPXBDCY


#116 [桃色]
相談したいのは山々だけど、理由が理由だけに‥

「昨日ね、どっちが先にお風呂入るかで‥」

とっさに嘘をついてしまった。

『で?』

声を合わせる3人。

うぅ‥続きが出てこない‥

「まぁ、言いたくないならいいよ。だけど帰ったら仲直りしなよー?」

少しアゴを上げて笑うあずちゃん。

「瑞穂たちの事だから心配いらないわよ」

と定食を受け取る詩織ちゃん。

⏰:08/06/15 10:20 📱:SH703i 🆔:TqPXBDCY


#117 [桃色]
寧々は

「寧々なんて、兄弟ゲンカできるだけでもうらやましいよ」

と柔らかそうなほっぺを膨らます。

あたしも食券と引き換えにヤキソバを受け取り、いつもはいっぱいで座れない中庭に1番近い席に座った。


弟と酔った勢いでキスして避けられてます‥

なんて言ったら、みんなどんな反応するだろう。

しかも男として好きみたい‥

⏰:08/06/15 10:23 📱:SH703i 🆔:TqPXBDCY


#118 [桃色]
 
‥確実に軽蔑されるよな。

友達は失いたくない。

あたしの胸だけにしまっておこう‥



午後からは1年生の保護者会と、明日の部紹介のための会場作り。

なんで3年だけでしなきゃならないのか。

みーと、もう家に帰ってる頃だよね‥

電話、してみようかなぁ‥

ぼんやり考えていると

「瑞穂!そこの列歪んでるからきっちり揃えて!」

⏰:08/06/15 10:28 📱:SH703i 🆔:TqPXBDCY


#119 [桃色]
青ブチ眼鏡を光らせた詩織ちゃんに指示を出される。

講堂で椅子を並べてる最中にも、みーとの事が頭から離れない。



帰ってどんな顔すればいい?

この時初めて同じ家に暮らしていることを恨んだ。

フラフラと講堂を後にする。

携帯を開いて発信履歴からみーとを探す。

だけどかける勇気なんてわくはずもなく‥

⏰:08/06/15 10:37 📱:SH703i 🆔:TqPXBDCY


#120 [桃色]
しばらくの間、画面にうつる“みーと”の文字とにらめっこしてみたものの‥

パタンと閉じてまたポケットにしまった。


はぁ、とため息をつきながら講堂の前の植え込みに座る。

「サボんなよなー!桜井姉−!」

後ろからする大きな声に、ビクッと肩を揺らし振り返ると、サッカー部キャプテン園田くんが仁王立ちしていた。

よっこらしょ、と隣に腰をおろす園田くんに

「瑞穂です。てゆうか桜井でいいです」

⏰:08/06/15 23:23 📱:SH703i 🆔:TqPXBDCY


#121 [桃色]
そう言い放ちその場を去ろうとすると

「つれないねぇ、みーほちゃん」

みーとよりもワントーン低い声に足が止まる。

なぜか覚えた嫌悪感に、普段みーと以外から“みーほ”と呼ばれていない事が繋がる。


「みーほって呼ばないで」

振り向きもせずにそれだけ言うと、今度こそあたしはその場を去った。


園田くんって結構ヤな奴!

ますますみーとの声が聞きたくなる。

⏰:08/06/15 23:30 📱:SH703i 🆔:TqPXBDCY


#122 [桃色]
終礼を待てずに、具合が悪いからと言って早退する事にした。

心配そうなあずちゃんたちに心の中でごめんと手を合わせ、バス停まで急ぎ足で歩く。

運良くすぐに来たバスに乗り込むと携帯が震える。

(みーとかな‥)

淡い期待も“お母さん”の4文字にかき消される。

お母さんからのメールは

[湊斗が帰ってくるなり部屋に閉じこもってるの。何か知らない?]

という、答えようにも答えられない内容だった。

⏰:08/06/15 23:37 📱:SH703i 🆔:TqPXBDCY


#123 [桃色]
[今帰る途中だから、後で聞いてみるよ。]

とりあえずそう返信して携帯を閉じて握りしめる。


まだ家にも着いてないのに、心臓が騒ぐ。

避けられてる理由はわかる。

だけど何で避けられなきゃなんないのかは、わかんない。

桜井家存続のためにも、ちゃんと話し合わなくちゃ‥



「ただいま」

昨日渡しそびれたメッセージカードをお母さんに渡す。

⏰:08/06/15 23:44 📱:SH703i 🆔:TqPXBDCY


#124 [桃色]
「みーとの様子、どう?」

「何いってもダメ。うんともすんとも言わないんだから」

言葉は強気でも、かなり心配そうなお母さん。

ダイニングをのぞくと、手つかずのお昼ご飯が見えた。

みーとの奴‥

「お母さんは心配いらないよ、あたしに任せて」

そう言って階段を上がっていく。

「頼むわね」

心配するなって言ったところでお母さんの表情が晴れるわけじゃないけど‥

⏰:08/06/15 23:49 📱:SH703i 🆔:TqPXBDCY


#125 [桃色]
まず自分の部屋に入って鞄を置き、部屋着に着替えてからみーとの部屋に行く。

「みーと、入っていい?」

返事がないのは百も承知で聞いてみる。

しばらく待ってもやっぱり返事はない。

「入るよ‥」

そう言ってドアを開けると、カーテンは締め切ったまま、明かりもつけずに布団にうずくまっているみーとがいた。

そっとドアを閉めてカーテンを開ける。

少し光りが射した部屋は色味を取り戻す。

⏰:08/06/15 23:56 📱:SH703i 🆔:TqPXBDCY


#126 [桃色]
ギシッと音を立てながら、うずくまるみーとの足元に腰を降ろす。

「ねぇみーと、顔見せて?」

無言のままのみーとにゆっくりと話しかける。

「昨日の‥できごとは、さ?あたしたちの‥問題じゃん?」

ぽつり、ぽつりと言葉を選びながら話す。

「だから‥お母さんたちや、友達に‥心配かけないでおこう?」

かすかに布団のすれる音がする。

⏰:08/06/16 22:42 📱:SH703i 🆔:ryGYp0Gg


#127 [桃色]
「だから、昨日のことは忘れて‥‥いつも‥通りに‥」

わずかに見えるみーとの髪を眺めながら、気持ちとはウラハラに口をついて出る言葉に自分でも驚いた。

だけど、どうしても言えなかったんだ‥

お母さんのあんな表情(カオ)見ちゃったらさ‥

好きだなんて‥

言えるわけなかったんだよ‥

⏰:08/06/16 22:46 📱:SH703i 🆔:ryGYp0Gg


#128 [桃色]
 
ゆっくりと体を起こしたみーとは、そのままあたしの顔を見ずに

「わかった」

と小さく呟いて部屋を出て行ってしまった。


取り残されたあたしの目には、なぜか涙が溢れ出してくる。


ごめんねみーと。

ごめん‥


だけど他にどうすれば良かったの?

⏰:08/06/16 22:49 📱:SH703i 🆔:ryGYp0Gg


#129 [桃色]
 
しばらく涙は止まらなくて、自分の気持ちに嘘をつかなきゃならない事にもまた、泣けてきた。

とめどなく流れる涙といっしょに

みーとのいたずらっぽく笑う顔や、

細めた目の奥の優しさ、

くしゃっと頭をなでる仕草に、

“みーほ”と呼ぶ柔らかい声‥‥


全部が急に愛おしく思えてきて、鳴咽を漏らして泣いていた。

⏰:08/06/16 22:54 📱:SH703i 🆔:ryGYp0Gg


#130 [桃色]
自分で失う道を選んだのに‥

きっとみーとを傷つけた。

だけどこうするしかないじゃない‥

だってあたしたち‥

血の繋がった姉弟なんだよ!?







‥泣きすぎて脳に酸素がいかなくなる‥

⏰:08/06/16 22:58 📱:SH703i 🆔:ryGYp0Gg


#131 [桃色]
呼吸が乱れ、手足の感覚がなくなってくる。


苦しい‥

苦しいよ、みーと‥

これはきっとあたしへの罰だね‥

みーとを傷つけた‥


弟を好きになった‥



報いなのかな‥‥

⏰:08/06/16 23:01 📱:SH703i 🆔:ryGYp0Gg


#132 [桃色]
目の前は、所々モヤがかかったように白くなり、やがてチカチカし始めた。

それにすごく寒くて、息がうまくできない‥


何これ?

気持ち悪い‥


意識が遠のきかけたその時‥

何か大きな物音と共に聞こえたのは、確かにみーとの声だったけど‥


まるで水の中にいるような感覚のあたしには届かず‥

そのまま意識を失ってしまった。

⏰:08/06/16 23:13 📱:SH703i 🆔:ryGYp0Gg


#133 [桃色]
 



目覚めると自分の部屋に寝かされていて、口にはビニール袋を当てられていた。

そのビニール袋を持っていてくれたのは‥


「‥みー‥と」

さっきあれだけ泣いたのに、ぶわっと涙が溢れ出してくるのがわかった。

もうしびれてはいなかったけど、もたつく手でみーとを求める。

⏰:08/06/17 23:24 📱:SH703i 🆔:NsLL4Sf2


#134 [桃色]
 
「ぅ‥みーと、みーと、みーとぉ‥」

たまらず頭を抱える形で抱きしめてくれたみーとに

「‥母さん、いるよ‥」

と言われたけど、みーとの首に回していた腕にあるだけの力を込めて、決して離そうとはしなかった。


「泣いたらまた過呼吸になるわよ」

お母さんの厳しいけど優しい声‥

「かこきゅー?」

やっとみーとを解放して、涙と鼻水でぐちゃぐちゃのままお母さんに問う。

⏰:08/06/17 23:32 📱:SH703i 🆔:NsLL4Sf2


#135 [桃色]
「そう。変にね、息し過ぎるとなるのよ。そうやって袋の中で呼吸を整えたら、次第におさまるんだけど‥」

そしてため息をつきながら

「まったく、何があたしに任せてーよ。みーとなんて、倒れてるあんた見るなり救急車ー!って叫んで大変だったのよ?」

少し怒った顔のお母さん。

だけど目尻に安堵の色がある。

「ごめんなさぃ‥」

尻すぼみになる声が聞こえたかはわからないけど、タオル冷やしてくるわね、と言って下へ降りて行った。

⏰:08/06/17 23:41 📱:SH703i 🆔:NsLL4Sf2


#136 [桃色]
 
とりあえずティッシュで顔をぬぐい、腫れているであろう目に手の甲を当てる。

「湊斗、これ瑞穂に当ててあげて。夕飯食べれるようなら降りてらっしゃい」

再び現れたお母さんは、固くしぼったタオルをみーとに渡すと、まるで二人で話しなさい、とでも言いたげにドアまで閉めてまた下へ降りて行った。


たたみ直したタオルをそおっと目の上にのせてくれるみーと。

離れそうな手をつかみ、握ったまま呟く‥


「さっきは‥ごめん」

「悪いのは、みーほじゃないよ」

⏰:08/06/17 23:49 📱:SH703i 🆔:NsLL4Sf2


#137 [桃色]
 
“みーほ”

そう呼ばれてまた目頭が熱くなる。

けれど涙はタオルに染み込まれていき、鼻だけがじんわり赤なるのがわかった。

「違うの‥嘘ついて、ごめん‥」

握る手に力が入る。

「無かったことになんて‥‥思ってないっ」


そこまで言って、完全に涙声のあたし。

みーとの手にも力が入るのがわかった。

瞬間、抱き起こされる形であたしの上半身が持ち上げられた。

当然タオルは布団の上に落ち、涙がみーとの胸元を濡らす。

⏰:08/06/17 23:55 📱:SH703i 🆔:NsLL4Sf2


#138 [桃色]
昨日とは違い、あたしもそれに答えるようにしてみーとの背中に腕を回した。

「‥みーほ、顔あげて?」

「‥ヤダ」

「どうして?」

「ブサイクだもん‥」

心地良いみーとの体温‥

なんてホッとするんだろう‥

まるで心が浄化される気分‥

こんなに愛おしい存在を切り離そうとしただなんて‥

なんてあたしは愚か者なんだろぅ。

⏰:08/06/18 00:02 📱:SH703i 🆔:KIe3IGp.


#139 [桃色]
 
「どんなみーほでも俺は好きだよ」


「‥知ってる」

クスッと笑うみーとの肩に、背中からゆっくりと腕を持ち上げ、からめる。

あたしこそ、こんな動作どこで覚えたんだろう?

自分で自分に驚きながら、まだ少し口元のゆるんだみーとの瞳をじっと見つめる。

それからゆっくり視線を唇にうつし、何の躊躇もなくじりじりと近づいていく。

何だろう、この感覚‥泣いた後だからかな?

体がやけに熱くて‥

今まで知らなかった何かがあたしをつき動かす。

⏰:08/06/18 00:12 📱:SH703i 🆔:KIe3IGp.


#140 [桃色]
当然みーとの口元からは笑みが消えていて、そのままお互いの体温が伝わりそうな距離になった時‥

目を閉じて昨日よりも長くて深いキスをした。

みーとの細いけど男らしい手が、あたしの頭をわしづかみにする。

首を上下に動かしながら、丁寧に唇を重ねる。

昨日よりも優しいキス‥

やがて間隔は狭くなり、舌を絡めて深くなる。

胸が何度もキュンと鳴る。
このまま頭、おかしくなりそう‥

歯止めが効かなくなりそうになったその時‥


トントンと階段を上がる音がした。

⏰:08/06/18 00:27 📱:SH703i 🆔:KIe3IGp.


#141 [桃色]
シャボン玉がはじけるみたいにぱっと離れたあたしたちは、何でもなかったかのように取りつくろう。


「ご飯、持って上がろうか?」

心配そうなお母さんの声に

「大丈夫っ‥降りて一緒に食べるよ」

と返事をした自分の声があまりにかすれて色っぽくて、みーとの目を見れなかった。

「‥ご飯、食べよっか」

下を向いたままベッドから降りようとしたあたしの腕をぐんっと引っ張り、包み込むように抱きしめるみーと。

「俺の方こそ、避けたりなんかして‥ごめん」

⏰:08/06/18 23:36 📱:SH703i 🆔:KIe3IGp.


#142 [桃色]
まだ速いみーとの鼓動が伝わってきて、やけにかわいく思えた。

見上げると同時にニコッと笑うと、大袈裟にチュッと音をさせて触れるだけのキスをした。


ダイニングへ行くとお父さんも帰って来てて、どうやらあたしたちを待っててくれたみたい。

「具合はもういいのか?」

「うん、大丈夫」

普段は何も言わないお父さんも、さすがに心配してくれたみたい。

「あんなに泣くまでケンカするなんて、仲が良いんだか悪いんだか」

⏰:08/06/18 23:40 📱:SH703i 🆔:KIe3IGp.


#143 [桃色]
呆れたようなセリフからも、優しさがにじみ出てるお母さん。

「もう仲直りしたから‥心配かけてごめんなさい。ね、みーと」

「うん、父さんも母さんも、ごめん‥」

「はいはい、仲直りしたならそれで良し!さ、いただきましょう」


いつものように食卓を囲んで夕飯を食べる。





‥‥絶対にこの幸せは壊しちゃいけない‥‥

⏰:08/06/18 23:44 📱:SH703i 🆔:KIe3IGp.


#144 [桃色]
 
誰にも言えなくて、辛いと思う時が来るかもしれない‥


だけど二人で乗り越えて見せる。


もう誰も傷つけたくない。


‥‥なんて、まだ子供だったあたし‥


隠し通せば、守れると思ってた‥




みーとがどんな気持ちを秘めてたかも知らないで‥‥

⏰:08/06/18 23:50 📱:SH703i 🆔:KIe3IGp.


#145 [桃色]
 
「ごちそうさま」

食器を流しまで持って行って、リビングへ行こうとすると

「もう少し部屋で横になりなさい」

すかさずお母さんに止められる。

もう全然平気だったけど、これ以上心配かけたくなかったから素直に従う。

リビングでお父さんとテレビを見ていたみーとは、くるっと顔だけこちらに向けて意味深な笑みを向けてきた。

その目は何となく“後でね”と言っているように見えたので、コクリと頷く動作をした。

⏰:08/06/19 00:32 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#146 [桃色]
 
ため息と共にベッドの上に座る。

これで‥良かったのかな?

あのままみーとと口きかない方が、お母さんたち変に思うよね。

それに、あたしだって辛い。

パタンと布団の上に倒れ込み、さっきここで起きた出来事を思い出す。


あの時、お母さんが上がってこなかったら‥


ってコラ!ないない!!

絶対有り得ないから!


うつぶせになり足をバタつかせる。

考えただけなのに全身がほてって、心拍数も尋常じゃない。

⏰:08/06/19 16:19 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#147 [桃色]
“過呼吸”の存在を思い出し、深呼吸して気持ちを落ち着かせた。

みーとも早く上がってこないかな〜、なんて考えているうちに、うとうとしてきたあたしはそのまま眠りに落ちていった。


夢の中に、みーとが現れた。

いつもより目線は少し高い気がする。

駆け寄るあたしにただ笑いかけているだけで、声はしない。

抱きしめようと手を伸ばしてもなぜか上手くいかなくて、何度も何度も追いかけるんだけどみーとは笑顔のままで、ついには見えなくなってしまう。

⏰:08/06/19 16:25 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#148 [桃色]
 

そんなおかしな夢を見た。

布団をかぶってなかったせいで、起きると全身が冷えていた。

ふと足元の毛布を見て、みーとの部屋のものだと気付く。

(昨日毛布掛けてくれたのみーとだったんだ‥)

あとでお礼言わなきゃな、と思いつつもまずお風呂で体を温めようと下まで降りていく。

みーとはまだ下にいたようで、先にお風呂に入っていいか聞こうとドアノブに手をかけると

「お母さん、それは納得いかない。だから賛成もできないわ」

⏰:08/06/19 16:30 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#149 [桃色]
 
厳しい口調で話すお母さんの声が聞こえた。

話してる感じからして、相手はみーと?

「だけど、もう決めたんだよ」

いつもより荒いみーとの声‥

二人ともどうしちゃったの?

聞いてはいけない気がしたけど、足はその場を離れようとしない。

二人の表情は見えないが、もめている事は確かだ。

ゴクリ、と唾を飲む音がやけに大きく耳に残る。

沈黙はいつまで続くのか‥

ギシッ

そう思った矢先に物音を立ててしまう自分が憎い。

ガタッと椅子を引く音がして、ダイニングのドアが開く。

⏰:08/06/19 16:36 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#150 [桃色]
「みずほ、寝てたんじゃなかったの?」

少し焦った様子のみーとが早口で話す。

「う、うん。お風呂、入ろっかなーって、今降りて来たところ‥」

聞いてたの、バレてる?

こんなとき、嘘つくのがもう少し上手なら、と思う。

お母さんが何か言いたそうに顔を上げたけど、みーとが目で合図して止めたのがわかった。

そんなことされたら余計気になるよ‥

だけど何だか雰囲気的に聞いてはいけないような気がして、仕方なく言った通りお風呂へ入ることにした。

⏰:08/06/19 16:40 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#151 [桃色]
入浴剤を溶かして肩までつかる。

‥みーと、お母さんと何話してたんだろ‥

頭に浮かんだみーとの顔がどんどん近づいてきて妄想が膨らむ‥

変態か、あたし。

それにしてもみーとの奴、一体どこであんなキス覚えてくるんだか!

いや、待てよ‥

他に練習する子がいるとなると、それはそれですごく嫌だな‥

だけどさっき“どんなみーほも好きだ”って‥

それってそういう事だよね?

⏰:08/06/19 16:51 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#152 [桃色]
そういう事ってどういう事?

てゆうかこんなに浮かれてていいのか?あたし‥

だけど、生半可な気持ちじゃないもん。

好きになったのがたまたま弟だっただけ。

今はそれでいいじゃない‥



この時のあたしをあなたは笑う?

逃げるなって責める?

それてとも優しく頭をなでる?

どの道、舞い上がり過ぎなのは確かだよね‥

⏰:08/06/19 16:56 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#153 [桃色]
 
 
次の日から、またいつもと同じ毎日が始まった。

ただ一つだけ違うのは、みーとが弟でもありまた別の存在にもなったってこと。

昨日はあれから、みーとが上がって来るのを待てずにまた寝てしまった‥

もともと寝たら忘れるタイプのあたしは、昨日のダイニングでの一件も、何事もなかったかのように1階へ降りて行く。

「あら、おはよう瑞穂。よく眠れた?」

「うん、寝過ぎて体痛いくらい」

いつものおみそ汁のいい匂い。

今日は目玉焼きとソーセージ!

⏰:08/06/19 17:04 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#154 [桃色]
 
「湊斗起こしてきてちょうだい」

待ってましたと言わんばかりに降りて来たばかりの階段を駆け上がる。

「みいとっ」

ノックを2回、ドアを開ける。

昨日は見られなかったみーとの寝顔。

起こすのが勿体ないくらいキレイな寝顔‥

あたしなんて絶対ヨダレ垂らして寝てるんだろうな‥

なんて考えながら、そっとみーとの唇に触れる。

大きいけど薄いみーとの唇。

この唇があたしの胸をキュンと鳴らす‥

⏰:08/06/19 17:09 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#155 [桃色]
上からのぞき込むと、あたしの髪がみーと頬を少しかすめた。

普段はこんな事じゃ絶対起きないくせに、みーとの目がぱちっと開く。

キョロッと黒目を動かしてあたしを確認すると、頬にかかった髪を指に絡める。

まさか寝たフリしてた!?

こんな寝起きのいいみーと見たことない!

唇をチュンと尖らせて、絡めた髪の束をツンツンと引っ張ってくる。

え、キスしろってこと!?

目を見開くあたしとは逆に目をつむるみーと。

⏰:08/06/19 17:19 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#156 [桃色]
その顔をまだ見ていたくて、口を尖らせたままのみーとをしばらく眺める。

長いまつ毛は相変わらず色っぽい。

あと3秒、見ていたい‥


焦らすあたしにしびれを切らせたみーとは、絡めた指をほどきあたしのアゴを固定して強引にキスをしてきた。

「おはよーみーほ」

おでこを合わせニマッと笑うみーとに、あたしの心臓は朝からお祭り騒ぎだった。


今日も部紹介があるので朝練はないらしい。

ゆっくりと朝食を済まし、2階に上がって制服に着替える。

⏰:08/06/19 22:56 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#157 [桃色]
もちろんネクタイは鞄の中。

ドアを開けるとみーとも部屋から出て来たところだった。

「今日、部活あるの?」

何気に予定が気になってしまう。

「明日からだよ」

フニャッと笑って見せるその顔、あたし以外に見せないでほしい。

‥意外‥

嫉妬深いんだ、あたし。

関心しながら階段を降りる。

「みーほは?今日も午後まで?」

後ろからされた質問に

「あたしは部紹介関係ないから、午前中まで!」

⏰:08/06/19 23:11 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#158 [桃色]
得した気分でそう答えると

「じゃあ今日も一緒に帰れないな‥」

寂しそうにうなだれるみーと。

何だか今日はやけに甘えたな気がする。

「え?みーと部紹介出るの?」

振り返りながら話していると、最後の段を踏み外してしまい、右肩がガクンと下がった。

と同時に腰を抱えるようにして、みーとの長い腕が支えてくれる。

それを見ていたお母さんが

⏰:08/06/19 23:17 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#159 [桃色]
 
「もう!冷やっとさせないで!昨日の今日なんだから少しは気をつけなさい」

ごめんなさい、と小さく言ってしゅんと下を向いていると

「昨日言わなかったから、瑞穂の分もお弁当!」

念押しするようにもう一度、気をつけるのよ、と言いながらお弁当を手渡される。

すると普段は一緒に出ないお父さんも玄関までやってきた。

「今日は何か美味しいもの作るわね」

そう言って手を振るお母さんに見送られ、3人揃って家を出た。

⏰:08/06/19 23:24 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#160 [桃色]
 
前を歩く二人を見て、歩き方がそっくりな事に思わず笑った。

「どうした?」って振り向く姿まで。

やっぱり男の子は男親に似るもんなのね。

だけどあたしは‥

お母さんにあまり似てない。

お父さんには全くと言っていいほど‥

あえて言うなら口下手なところ?

ホント、あたしって両親の悪いとこばっか似ちゃったんだなきっと。

なんて考えてる間にバス停は目の前。

あずちゃんの後ろ姿が見える。

⏰:08/06/19 23:34 📱:SH703i 🆔:U7RYMj6g


#161 [桃色]
「おはようあずちゃん!」

「おっ、その様子だと仲直りしたね?あ、おじさんおはようございます!」

あたしの肩越しにひょこっと顔を出し、ペコリと頭を下げる。

「‥おはよう‥」

相変わらずなお父さん。

「ごめんね、お父さんいつもあんなで」

「いーの!いーの!それより今日はこれ、やんないの?」

首元でネクタイをしめる仕草をするあずちゃん。

⏰:08/06/20 15:59 📱:SH703i 🆔:szuxIMco


#162 [桃色]
「あ、また忘れるところだった!」

詩織ちゃんの眼鏡が浮かぶ。

あたしからみーとにはい、と手渡すと

「んーってして」

と自分も首を持ち上げる。

あずちゃんはあたしたちのやり取りを見て何か言いたそうだったけど、お父さんがいる手前ぐっとこらえているようだった。


学校前のバス停で降り、お父さんに手を振る。

振り返さずにじっとこちらを見ているだけなのが、お父さんらしかった。

⏰:08/06/20 16:05 📱:SH703i 🆔:szuxIMco


#163 [桃色]
なんだもかんだも言ってたようには思えないけど‥

ふと、さっきの二人の後ろ姿が浮かぶ。

あの時何か話してたのかな?

「で、瑞穂、ケンカの原因は何だったのよ?仲直りしたなら教えなさい!」

あずちゃんが後ろから勢いよく肩を組んできた。

「えぇ?」

ごまかそうにも思いつかない。

みーとにSOS信号を送ると

「あずちゃん先輩も部紹介手伝うんすよね?」

すかさず助け舟を出してくれた。

ナイスみーと!

⏰:08/06/20 16:12 📱:SH703i 🆔:szuxIMco


#164 [桃色]
「そうそう、湊斗くんは出る側だよね。そうだ瑞穂も見に来りゃいいじゃん」

案外あっさり話しがそれた事に、ホッと胸をなで下ろす。

みーとの眉が歪んだ気がしたけど、気にせず話しを進めているとあずちゃんはニマニマ、みーとは何故かうなだれた様子だった。



思いもよらず楽しみが増えて、この日のテストも上の空になったことは言うまでもない。

⏰:08/06/21 00:04 📱:SH703i 🆔:EpU7fY9k


#165 [桃色]
4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴ったのとほぼ同時にスカートのポケットが震える。

先生が教室から出ていくのを見計らって携帯を取り出す。

みーとからのメール。

“お昼一緒に食べない?中庭で待ってる”

思わず顔の筋肉がゆるむ。

「ごめんあずちゃん、みーとが‥」

「あいよー」

全部言い終わる前に笑顔でゴーサインを出してくれるあずちゃん。

たまにエスパーかもって思う時がある‥

あずちゃんに感謝しつつ、詩織ちゃんと寧々にまた明日、と告げお弁当を抱え中庭側の窓から外を見回す。

⏰:08/06/21 00:12 📱:SH703i 🆔:EpU7fY9k


#166 [桃色]
まだ誰もいない中庭。

このまま窓から出ていきたい気持ちを抑え、廊下から回って中庭へ出る。

すると昇降口の近くの大きな木の下に、愛しい人の姿を見つける。

根っこに座って空を仰ぐ姿は、遠くで見るからなのかいつもより凛々しく見える。

“みーと”と声が出かかったとき、後ろから

「みーほちゃーん!」

と耳障りな声がする。

あたしが振り返る前にみーとの険しい顔が、あたしの背後を凝視していた。

⏰:08/06/21 00:18 📱:SH703i 🆔:EpU7fY9k


#167 [桃色]
けれどその声の主はそんなことおかまいなしといった様子でこっちに向かってきているのが、みーとの目線でよくわかる。

「おまえらそこでメシ食うの?俺もまぜてくれよ」

声はどんどん近づいてきて、無神経な手があたしの肩に触れる。

思わずぎゅっと目をつむると

「ちょっと洋介!あたしの瑞穂に気安く触んなっ!」

割って入ってくれたのは他でもないあずちゃんだった。

そっと目を開きみーとを見れば、ぐっと握った拳の力をゆるめるような動作‥

⏰:08/06/21 00:28 📱:SH703i 🆔:EpU7fY9k


#168 [桃色]
口元は歯を食いしばっているのか歪んだままで、あたしの視線に気づくと気まずそうに目をそらした。

園田くんにもそんなみーとの様子は見えてるだろうに、少しの沈黙‥

「ったく!あんたのバカみたいにデッカイ声が聞こえるから、何かと思って来てみれば!」

嫌な空気を変えてくれたのもあずちゃん。

くるっとみーとの方へ向き直り

「湊斗くん、ちゃんと瑞穂のこと守ってあげてよ!」

「ぁ、はいっ‥」

あずちゃんの迫力に押されてたじたじのみーと。

⏰:08/06/21 17:32 📱:SH703i 🆔:EpU7fY9k


#169 [桃色]
園田くんは頭をポリポリかいている。

「あはは!ありがとうあずちゃん!」

たまらず声を出して笑うあたしにつられてみーとも笑う。

園田くんも笑おうとしたその時

「あんたは笑う資格無し!」

ピシャリと言われて肩を落としてる。

それをみてさらに声を高くして笑った。



成り行きでそのまま4人でお昼を食べることになり、木陰で輪になりお弁当を広げる。

⏰:08/06/21 18:13 📱:SH703i 🆔:EpU7fY9k


#170 [桃色]
たわいのない会話で盛り上がっていると、あまり知らない3年生の女子が友達を引き連れこちらへ向かって来る。

そしてどう見ても取り巻きであろう1人の女子に、園田くんが呼び出された。

そのやり取りを見上げながら

(これって今から告白されるとか?)

内心ドキドキしながらあずちゃんの顔をのぞくと、何だか少しムッとした様子。

「あずちゃん?」

声をかけると我に返ったのか

「さっすがキャプテン!モテる男は辛いねー」

⏰:08/06/21 18:18 📱:SH703i 🆔:EpU7fY9k


#171 [桃色]
と、どこにでもあるようなセリフを吐きつつも、目だけはしっかり園田くんを追っていた。

あずちゃんって‥まさか!

真意を確かめようと口を開きかけたとき、みーとにそっと肩を叩かれる。

振り向くと黙って首を横に振っている。その眼差しは真剣だ。

なるほど、あたしの知らないところで知らない何かが起きているんだな‥

あずちゃんから一度も恋愛の相談を受けたことがないことに、ショックを隠しきれずにいると

⏰:08/06/21 18:37 📱:SH703i 🆔:EpU7fY9k


#172 [桃色]
「たはは、参った参ったー」

全く参ってなさそうな園田くんが戻ってきた。

「で?今度は何て言って断ったの?」

あずちゃんの目から不安の色は消えていて、まるで気にしてないように話している。

ところがそれに対して園田くんは

「それがさ、俺次に告白してきた子と真剣に付き合ってみようかと‥」

眉間にうっすらシワを寄せて、誰とも目を合わさずに腰を降ろす。

あずちゃんの片目がピクっと動いたのがわかった。

「‥今、思ったんだよね!だからいつ告白してきてもいいんだぜ、みーほちゃん!」

⏰:08/06/21 18:44 📱:SH703i 🆔:EpU7fY9k


#173 [桃色]
ドカッと座ってニカッと笑う園田くんに

『だから瑞穂は
   (みーほ)
 あたしのだから!
 (俺のっすから)』

二人の見事なまでにハモられた声が、校舎から跳ね返って中庭中に響く。

「弟に女だろ?負ける気がしねー!」

ケタケタ笑う園田くんにつっかかるあずちゃん。

あたしはみーとと目を見合わせて、複雑ながらも声をあげて笑った。

⏰:08/06/21 19:15 📱:SH703i 🆔:EpU7fY9k


#174 [桃色]
「それよか湊斗、お前ちゃんと練習してきたか?」

部紹介のことだろう。

リフティングとかするのかな?家で練習してた様子はなかったけど‥

「さすがに家では‥」

苦笑いするみーとに

「それじゃ最終リハやるか!」

そう言って二人はお弁当をかきこみ、先に講堂へと行ってしまった。

「サッカー部の出し物って何なの?」

お茶を飲みながらあずちゃんに尋ねる。

「湊斗くんから聞いてないんだ‥‥言いたくないのもわかるけどね。ま、楽しみにして間違いないよ」

⏰:08/06/21 19:29 📱:SH703i 🆔:EpU7fY9k


#175 [桃色]
●100刻みのアンカー●
>>2

●50刻みのアンカー●
>>84

良ければ使ってください

⏰:08/06/21 22:27 📱:SH703i 🆔:EpU7fY9k


#176 [桃色]
そう言うと、何か思い出したようにクスッと笑うあずちゃん。

言われた通りワクワクしながら講堂に向かう途中

「瑞穂ぉ、さっきみたいなの‥気をつけなよ?」

何のことかさっぱりわからない、といった表情をあずちゃんに向けると

「だからぁ、洋介のこと!あいつ見た通り手ぇ早いから!」

え!?手を出す?

あたしに?

「何言ってるの?さっきのは冗談でしょ?」

思い出したらまた笑えてきた。

⏰:08/06/23 01:02 📱:SH703i 🆔:BLkQzfZs


#177 [桃色]
そのままヘラヘラしていると

「わかってないなぁ。瑞穂、あんた結構モテるんだから!自覚なさすぎ!」

あずちゃんの目は真剣そのもの‥

もちろん全部聞き終える前に耳まで赤くなるあたしの顔。

モテる?

あたしが?

「ま、待って!みーとならまだしも‥あたしなんてっ」

「あぁもうこの子は!まずその華奢な体!細くてサラサラな長い髪!透けるんじゃないかってほど白い肌!極めつけは‥その黒目がちなたれ目!!」

あたしの話しを遮って、スバズバ指差し確認をするあずちゃん‥

⏰:08/06/23 01:13 📱:SH703i 🆔:BLkQzfZs


#178 [桃色]
「そんなこと‥言われても‥」

おとついみーとと買い物行ったときは、散々笑われたんですけど‥

言葉にならず口ごもってしまう。

「とにかく!何かされそうになったら大きな声出して逃げなさい」

あたしの両肩をおさえながら、演技じゃないかと思うくらい真剣に話すあずちゃんに

「わかりました‥」

と小さく答えるのがやっとだった。

あれ?

だけどあずちゃんって園田くんが好きなんじゃないのかなぁ?

それも結局聞けぬまま、講堂に到着するなり

⏰:08/06/23 01:19 📱:SH703i 🆔:BLkQzfZs


#179 [桃色]
「ここだと邪魔にならないから」

と席につかされ

「うちの部紹介、トリだから!」

楽しみにしてて、と軽く手を振りながら準備のために裏へ行ってしまった。


1・2年生はまだ来ていなくて、ぽつりと一人隅の方へ座っている。

あちらこちらでいろんな部のいろんな声がこだまする。

運動があまり得意でないあたしは、特に部活動に興味もなくずっと帰宅部だ。

今思えばもったいない事したのかなーとも思う。

⏰:08/06/23 01:25 📱:SH703i 🆔:BLkQzfZs


#180 [桃色]
 
ふと舞台へ目をやると、ちらっとみーとらしき姿が見えた。

え?

あの姿はまさか‥


立ち上がろうと椅子に手をかけたとき、調度1・2年生が先生に引率されてゾロゾロと入って来た。

せっかく指定された席を明け渡すわけにもいかないので、そのままゴソッと座り直すだけにする。




しばらくして場内の明かりが消され、騒がしかった周りの空気が一瞬しんとなる。

⏰:08/06/23 01:31 📱:SH703i 🆔:BLkQzfZs


#181 [桃色]
どうやら司会を務めるらしい生徒にスポットライトが当たり、視線がそちらに集中する。

最初の部が紹介され、次々に多種多様なパフォーマンスが行われる。

そして次はいよいよサッカー部。

期待と同時に緊張感が身を包む。

姿勢を直して舞台を見つめていると

[園田先輩出るらしいよ]

後ろからヒソヒソと声がする。

さすが園田くん‥人気あるなぁ。

[あたしは桜井くん狙い!]

思わぬところにライバル出現!

⏰:08/06/23 20:47 📱:SH703i 🆔:BLkQzfZs


#182 [桃色]
振り返りたいがそんな勇気はない。

[マジで?桜井くん、顔はいいけど超シスコンじゃん!]

あのすいません、聞きたくないのに聞こえます‥

まさかあたしがここにいるなんて気づいてもらえるわけもなく、見知らぬ後輩たちの口はまだまだ閉じる気配を見せない。

何か別の事に集中しようとしたその時

[だけどこないだC組の子が告ったらしいよ]

みーと狙いだという女子が少し興奮気味に話し出した。

お腹の底で鈍い痛みが生まれる。

⏰:08/06/23 20:53 📱:SH703i 🆔:BLkQzfZs


#183 [桃色]
手にはじんわり汗がにじむ。

[ま、ソッコーで断られたらしいけどね]

その声にまた別の痛みが生まれる。

それはきっと、あたしのせい‥

みーとが断ったことに対して手放しで喜べない。

本来なら断る理由に入ってはいけない存在のあたし。

想い合う気持ちは同じでも、あたしたちは恋人にはなれない。

‥あたしただけを見ていてほしい気持ちと、このままでいていいわけがないという気持ちが折まざって‥苦しくなった。

⏰:08/06/23 21:05 📱:SH703i 🆔:BLkQzfZs


#184 [桃色]
「それでは最後になりました!サッカー部のみなさん、どうぞ!」

拍手がいっせいに鳴り響く。

落ち込み続けるあたしの耳に聞こえてきたのは‥

[これってドリームガールじゃん?]

口々に周りが騒ぎ始めて、あたしも気になり舞台へと顔を上げる。

と同時に目に入ったのは、厚化粧をしてカツラをかぶり、ギラギラのドレスを身に纏った3年男子と園田くん、それから

「みー‥とぉ!?」

思わず口に手をあてる。

その瞬間黄色い絶叫にも似た声が四方八方から上がったのは言うまでもない。

⏰:08/06/23 21:11 📱:SH703i 🆔:BLkQzfZs


#185 [桃色]
観客席の反応に最初ははにかんだ様子のみーとも、曲が始まるにつれだんだん本気でモノマネをしていた。

特に真ん中(おそらくビヨ●セ役)の園田くんは、モノマネ芸人そのものだった。

そこかしこから[キレイー]だの[写メとりたーい]だの聞こえてきたけど、あたし自身も同じ気持ちではしゃいでいた。

キレイ‥キレイ過ぎるよみーと‥

姉として、いや女として何だか悲しい気持ちになった。

⏰:08/06/23 21:20 📱:SH703i 🆔:BLkQzfZs


#186 [桃色]
曲が終わると三人同時におじぎをして

『俺たちと、心の汗、流そうぜ!』

とこれまたどこかで聞いたことのあるセリフでしめくくられた。

てゆうかサッカー関係ねぇ!

観客席が拍手を送る中、舞台からはける途中でみーとと目が合い、小さく手を振られた。

後ろの女子が[今あたしに手ぇ振ってくれた!]とはしゃいでいる声が、またあたしの胸を刺した。

罪悪感に駆られていると

「なぁ、さっきの右端におった子ぉの名前わかる?」

⏰:08/06/25 00:36 📱:SH703i 🆔:kqUVxTA6


#187 [桃色]
つんつん、とひじをつつかれたと思ったら、聞き慣れない関西弁と突然の質問に少し戸惑う。

隣を見るが暗くてあまりよく見えない。

しかも右端って‥みーとじゃん。

「さっきのって、サッカー部の?」

たじろぎながらそう言うと

「そうそう!右端の子、わかる?」

もう一度同じことを言われ

「‥桜井‥湊斗だよ」

言いたくないのがバレないように、どうでもよさそうに答える。

だけどその努力もむなしく

⏰:08/06/25 00:43 📱:SH703i 🆔:kqUVxTA6


#188 [桃色]
「桜井湊斗かぁ‥ありがとぉ!うち惚れてもたかもしれん!」

思わず口が、いや顔全体がひきつる。

相槌をうつ暇もなくその女の子は話し続ける。

「あんな男前おると思ってなかったし!転校してきて正解やわ!」

なるほど、どうりでみーとのこと知らないはずだ。

納得していると場内が明かりを取り戻す。

1・2年生は先生に引率されてゾロゾロと講堂を出て行く。

あたしはみーとたちがいるであろう講堂裏へ行こうと立ち上がると

⏰:08/06/25 00:49 📱:SH703i 🆔:kqUVxTA6


#189 [桃色]
「ありがとうな!」

とさっきの子の声がして振り返るとかなりギャルっぽい女の子がくりっとした目を輝かせて笑っていた。



裏へ回るとみんな後片付けに追われていて、出番が最後だったみーとたちはまだメイクも落としていない状態だった。

あたしが駆け寄るよりも先に、何人かの女子生徒が「写メ撮らせてください」と言って並んでいる。

ノリノリの園田くんたちに無理矢理付き合わされているみーと。

近くで見ると迫力あるなぁ‥

⏰:08/06/25 00:55 📱:SH703i 🆔:kqUVxTA6


#190 [桃色]
キレイだけど、デカイ(笑)

あたしも列に混ざって携帯を準備する。

最後に現れたあたしを見て、耳まで真っ赤になるみーと。

「キレイだよ、みーと」

言って大爆笑してしまった。

だって照れてる仕草が女の子?むしろ女性?にしか見えないんだもん!

だけどさらに近くで見ると、妖艶で‥なまめかしい‥

果たしてあたしがお化粧したところで、こんなにも色気が出るものだろうか‥

複雑ながらも笑いはおさまらない。

⏰:08/06/25 01:02 📱:SH703i 🆔:kqUVxTA6


#191 [桃色]
どうにかしてビヨ●セみーとを写メにおさめようと、笑い声と共に揺れる手に携帯を構えていると

「撮ったげるよ」

とあずちゃんが後ろからひょいと手を伸ばしてきてくれた。

照れるみーとの腕につかまり、満面の笑みでピースをする。

帰ったらお母さんたちに見せなきゃな‥

自然と顔がほころぶ。

「みーほ、何その邪悪な顔!」

はっとしてみーとを見ると、その姿にやっぱりまた笑ってしまった。

⏰:08/06/25 01:07 📱:SH703i 🆔:kqUVxTA6


#192 [桃色]
 
 

「ククク‥」

家に帰っても携帯を開いては笑うあたしに少しうんざりしているみーと。

そう、さっきの写メを待受にしたのだ。

「もぉ、いいかげんにしてよ」

「ごめんごめん、だけどあまりにも似合い過ぎててさ‥」

笑いすぎて頬の筋肉が痛い。

夕飯のときに撮った写メを披露したら、お母さんは意外にも「さすが私の息子!」と大絶賛、お父さんは予想通り「よく撮れてるな」の一言だった。

⏰:08/06/27 21:33 📱:SH703i 🆔:lbKX3/oc


#193 [桃色]
テスト勉強からも解放されて、みーとと部屋でくつろいでいる。

「あんなので部員集まるのかなぁ」

心配そうに顔を歪ませるみーとに

「そうだね‥」

と曖昧な返事しかできないのあたしは、講堂で聞いたみーとの噂やみーとの名前を尋ねてきたあの関西弁の女の子のことを考えていた。

‥もしもまたみーとに告白する子が現れたら‥

[C組の子‥ソッコーで断られたって‥]

次も迷わずにあたしを選んでくれる?

不安が胸いっぱいに広がる。

⏰:08/06/27 21:41 📱:SH703i 🆔:lbKX3/oc


#194 [桃色]
あたしなんかよりみーとに似合う女の子はたくさんいるのに‥

どうしてみーとはあたしの事特別だって思うの?

みーとの気持ちが変わる事はないのかな‥


「ねぇみーほ、聞いてる?」

ベッドの上に座っていたはずのみーとが、いつの間にか隣にいてあたしの顔を覗き込んでいる。

「え?ごめん、何?」

思わず体ごと後ろにひいてしまう。

みーとは少しムッとしながらもそれ以上こっちに来る気配はなくて

「今度の予選見に来てくれる?」

⏰:08/06/27 21:54 📱:SH703i 🆔:lbKX3/oc


#195 [桃色]
そう言って真っすぐにあたしを見つめる。

「も、もちろん!いつもみんなで行ってるじゃん!」

視線が痛い気がしてそっと目をそらす。

少しの沈黙‥

自分で作っておきながら後悔する。

「‥何かあった?」

静かにゆっくりと、決して責めるようには言わないみーと。

だけど、何て言っていいのかわからない。

「ん‥何もないよ?」

心配かけまいと笑ってみせると

「ねぇみーほ、俺は生まれてから今まで、ずっとみーほのこと見てきてるんだよ?だから、嘘なんてつかないで‥」

⏰:08/06/27 22:05 📱:SH703i 🆔:lbKX3/oc


#196 [桃色]
みーとの目は、いつもあたしを真っすぐ見つめる。

もしかしてその目で心の中も見ることができるんじゃないだろうか。

「心配しなくても‥俺が見てるのは今までもこれからも‥みーほだけだから」

床に座るあたしに並んで頭をこつんと寄せてくる。

愛おしい‥
離したくない‥
誰にも、渡したくない‥


みーとのシャツの裾をきゅっと握る。

いつまでも、とは望めなくても、せめてあと少しだけあたしたちのわがままを許して下さい‥

いつからかあたしは、心の中でそう願うようになっていた。

⏰:08/06/27 22:20 📱:SH703i 🆔:lbKX3/oc


#197 [桃色]
 
 
 
部紹介の日から数日経ったある日

「瑞穂、最近湊斗くんに変わった様子ない?」

あずちゃんからの突然の質問。

最近のみーとと言えば、あの的外れな部紹介が男女共に好評で入部希望者が後を絶たず、そのおかげで朝練はもちろん帰ってくるのも9時を回ることなんてザラだ。

変わるも何もあまり顔を合わせてない。

マネージャーのあずちゃんなら知っているはずなのに‥

「んー、最近忙しそうなのは確かだけど、変わったことは‥特にないかな」

⏰:08/06/29 13:18 📱:SH703i 🆔:EGyJ13dA


#198 [桃色]
疲れているのは本当で、夕飯の後もいつものようにリビングへは行かず、お風呂に入って寝てしまうことが増えた。

あたしとしては寂しいけど、部活に一生懸命になるのは良いことだし‥

「そっかぁ、ならいいんだけど。あたしの考え過ぎかな!」

そう言いながらも腕を組んだまま首をひねるあずちゃん。

「どうかしたの?」

そうまでされると途端に気になる。

多分みーとのことだから余計に。

あずちゃんは少し迷った表情を浮かべながらもその言葉を待っていたかのように話しはじめる。

⏰:08/06/29 13:30 📱:SH703i 🆔:EGyJ13dA


#199 [桃色]
「それがさ、最近湊斗くんにファンっていうか‥付きまとってる子がいるんだよね‥」

思いもよらないあずちゃんの言葉に、少しの間黙り込んでしまう。

頭をフル回転させて、もう一度ここ何日かのみーとにおかしな点が無かったかを思い出していく。

‥だけどやっぱり思い当たるフシはなかった。

「瑞穂どうしたの?顔色悪いよ」

詩織ちゃんが心配そうに駆け寄ってきてくれた。

⏰:08/06/29 13:35 📱:SH703i 🆔:EGyJ13dA


#200 [桃色]
もう一度さっきと同じ説明をするあずちゃんの横で、またあの不安がよぎる。

‥もしもみーとに好きな人ができたら‥

あたしは素直に喜べる?

こんなこと考える時点で、みーとのことを信じてない証拠だよね‥



その日はお弁当もあまりのどを通らず、ぐるぐると自問自答を繰り返していた。

そんなあたしを見るに見兼ねて、放課後に詩織ちゃんに「どんな様子か実際その目で確かめてみたら?」と言われて、いつの間にか話しが伝わっている寧々と一緒にサッカー部まで偵察に行くことになった。

⏰:08/06/29 13:41 📱:SH703i 🆔:EGyJ13dA


#201 [桃色]
だけどその足取りは重い‥


「あずちゃんの話しでは、とにかくベタベタしてるって言ってたよ!」

何だか嬉しそうな寧々の言葉に、胃がきゅうっとなり吐き気が伴う。

想像しただけでも泣きそうになる‥

あたしってこんなに弱かったっけ?

みーとを信じたい半面、傷つくのを恐れている自分がいる。


考えているうちにグラウンドはもうすぐそこまで迫っていた。

⏰:08/06/29 13:59 📱:SH703i 🆔:EGyJ13dA


#202 [桃色]
意を決してグラウンドに足を踏み入れる。といってもサッカー部の練習場所は遥か彼方。

目をこらして何となくみーとと他の子の区別がつくくらいの距離。

だけどあたしには、はっきりとみーとがどこにいるのかわかってしまう。

弟だから?

‥ううん、きっと好きな人だから。

みーと以外はフィルターを通したようにぼやけて見える。

そんな中、制服のままサッカー部の辺りをウロウロしている女の子の姿が見て取れた。

⏰:08/06/29 14:04 📱:SH703i 🆔:EGyJ13dA


#203 [桃色]
「あー、きっとあの子だわ」

詩織ちゃんがおでこを覆うようにして手を当てている。

「どこどこ?」

寧々も大きな胸を揺らしながら、背伸びをしてサッカー部を凝視する。


何だか見ていたくなくて目を反らすと同時に

『あっ!』

声を合わせて驚く二人につられ、結局目線を元に戻すと制服の女の子がみーとにタオルを渡しているところだった。

また鈍い痛みがダイレクトに心臓に伝わる。

しばらく目を離さないでいると、ジャージを着たあずちゃんが何やらその子に話している。

⏰:08/06/29 14:22 📱:SH703i 🆔:EGyJ13dA


#204 [桃色]
するとみーとがこちらに気付いて、大袈裟に体を揺らしながら手を振ってきた。

あずちゃんと女の子はまだ何か話してる様子だったけど、手を振るみーとに気付いた女の子もこちらを気にしているようだった。

「あずちゃん、何言ったんだろ?」

あはっと声を上げて笑う寧々とは逆に

目を吊り上げて腕を組む詩織ちゃん。

「こっち来た来た!」

ますます声が高くなる寧々。

あたしはというとそれ以上グラウンドを向いていられず

⏰:08/06/29 14:50 📱:SH703i 🆔:EGyJ13dA


#205 [桃色]
「か‥か帰るね!」

言うよりも先に足は校門に向かっていた。



‥最悪だ、あたし。

どんな女の子なのか確かめる勇気もないなんて‥


その日はみーとが帰ってくる前に夕飯も何もかも済ませて部屋に上がった。

携帯にメールが3件。

1件目は詩織ちゃん。

急に帰ってしまった事を心配してくれたメール。

2件目はあずちゃん。

あたしの様子がおかしかったのは自分のせいだったらごめん、と自分を責めてるメール。

二人とも、心配かけて本当にごめんね。

⏰:08/06/29 14:57 📱:SH703i 🆔:EGyJ13dA


#206 [桃色]
精一杯の気持ちを込めてメールを返す。

明日学校でもう一度きちんとあやまろう‥

そして3件目は、みーと。

[今日グラウンド来てたでしょみーほいたから張り切っちゃった!]

何だか一気に力が抜ける。

何よ‥

あたし一人でうじうじ悩んで、バッカみたい!

パコンと携帯を乱暴に閉じる。

そのままベッドに潜り込み、みーとを待たずに眠りについた。

⏰:08/06/30 18:41 📱:SH703i 🆔:7Vt1WC.I


#207 [桃色]
 


次の日、いつもよりも早く目が覚めたあたしはいつも通りダイニングへ降りていく。

お母さんも調度起きたところで、一緒に朝食の支度をする。

ご機嫌な様子で鼻歌を鳴らすお母さんに、何かあったのかと聞くと

「それがね、お母さん見ちゃったの」

ニヤニヤしながら野菜を刻むその音は、いつもより景気がいい。

「見たって何を?」

焼いたトーストをお皿にうつしながら聞いてみると

「昨日ね、湊斗が女の子と家の前で話してたのよ」

そう言うとまた鼻歌をうたいだす。

⏰:08/06/30 18:42 📱:SH703i 🆔:7Vt1WC.I


#208 [桃色]
と同時に耳鳴りのような嫌な音が耳の奥で鳴り響く。

何だか頭がクラクラする。

もうヤダ‥

これからあと何回、こんな思いをしなくちゃならないの‥

それよりもみーとが何を考えているのか全然わからない。

[今までもこれからも、みーほだけを見てるから‥]

あんな言葉を信じようと必死になってる自分がバカらしくなってきた。


「ごめんお母さん、今日学校休んでもいい?」

⏰:08/06/30 18:44 📱:SH703i 🆔:7Vt1WC.I


#209 [桃色]
鼻歌を遮るように少し大きな声で話したあたしに、心配そうに眉をひそめるお母さん。

ごめんね、完全に八つ当たり。

「急にどうしたの?」

それでも優しく聞いてくれる。

そんなお母さんにみーとの姿がタブって見えた。

「ちょっと、生理痛‥」

バレバレの嘘だとわかっていても、何も言わないお母さんにますます募る罪悪感と共に部屋へ上がる。

ベッドに座って一息つくと、また心配をかけてしまうのであずちゃんにメールを送る。もちろん詩織ちゃんと寧々にも伝えてもらえるように。

⏰:08/06/30 18:47 📱:SH703i 🆔:7Vt1WC.I


#210 [桃色]
待受にはビヨ●セみーとと腕を絡めて嬉しそうに笑っているあたし。


泣きたくないのに涙が溢れる。

「なんでっ‥なんで弟なの‥っ!?」

悲しいのか、怒ってるのか、自分でもわからない。

だけど抑えられないこの感情を、今は涙という形で外に出さなければ気が変になってしまいそうだった。

ベッドに潜って枕の色が変わるくらい涙を流した。

後から後から流れてくるのは、前に倒れた時とはまた違う‥静かだけど痛い涙。

⏰:08/06/30 18:48 📱:SH703i 🆔:7Vt1WC.I


#211 [桃色]
最近あたし、泣いてばっかだ‥‥

こらえることもせず、感情に任せてただひたすら泣いた。



しばらく経ってみーととお母さんが話す声が聞こえてきた。

それからすぐに階段を上がる音がして、あたしの部屋のドアが遠慮がちに開けられた。

「みーほ‥あの、入ってもいい?」

こんな顔見せられるわけないので、枕に顔を埋めたまま黙っていると、床がわずかにきしむ音がしてそっと髪に手が触れる。

⏰:08/06/30 18:53 📱:SH703i 🆔:7Vt1WC.I


#212 [桃色]
久しぶりに感じるみーとの温もりに、また目頭が熱くなる。

「その‥母さんに、お腹痛いって‥聞いたんだけど‥」

恥ずかしそうなみーとの声。

生理痛とは言えないらしい。

「最近部活が忙しくって‥来週の予選が終わったら一段落するからさ」

そう言うと髪に触れた手がわずかに頭をなでてくれる。

「そしたらさ、デートしよう?どこでも、みーほの好きなところ行こう‥?」

温かい声が近づいてくるのがわかる。

耳に息がかかってくすぐったい。

⏰:08/06/30 18:59 📱:SH703i 🆔:7Vt1WC.I


#213 [桃色]
「だから‥泣かないで、みーほ」

耳に唇が触れるんじゃないかってくらいの距離で聞こえるみーとの声が、あたしの背中をゾクッとさせる。

聞き慣れない距離から聞こえる声は、甘くて甘くて‥

溶けてしまいそうになる。

それでも頑なに背を向けるあたしの頬に、触れるか触れないかのキスを落として、みーとは部屋を出て行った。


あんなの‥反則だよ!

涙なんてすっかり乾いて、別の意味で顔を赤くしたあたしは、何だか悔しくてもう一度ふて寝することにした。

⏰:08/06/30 19:11 📱:SH703i 🆔:7Vt1WC.I


#214 [桃色]
 


目が覚めたのはお昼を過ぎてからだった。

お母さんも仕事に行ってしまっていて、誰もいないリビングで普段見ることのないワイドショーをぼんやり眺める。

ズル休みがこんなにも退屈なものだとは‥

一人で食べるお昼ご飯は空腹なのにも関わらず、おいしいとは感じなかった。


時計を見てもまだ14時過ぎ。

今朝の自分のワガママに後悔していると携帯の着信音が鳴る。

⏰:08/07/01 20:19 📱:SH703i 🆔:6vxSHI5w


#215 [桃色]
一瞬、みーとだったら‥と期待を寄せるが昼休みはとっくに終わっている。

きっとお母さんだろうと携帯を開くと、画面に出た‘みーと’の文字にあたしの胸は小さく踊る。

一呼吸置いて通話ボタンを押す。

「みーほ?具合どお?」

心配そうなみーとの声。

その後ろからは休み時間特有のザワザワとした話し声が聞こえる。

そっか、もう5時間目の休み時間なんだ。

「うん、もう起きても平気」

元々仮病だし‥
ごめんねみーと。

⏰:08/07/01 20:20 📱:SH703i 🆔:6vxSHI5w


#216 [桃色]
心の中で舌を出しながら謝ってみる。

良かった、電話だと案外普通に話せる。

それに耳に直接届くみーとの声に、何だか心から安心できる自分がいた。

「今日、こんな天気だから部活休みなんだ。だから早く帰ってみーほの看病してあげる!何か食べたいものとかある?」

カーテンを開けても外は薄暗く、細い雨が線を描くように降り続いていた。

「ミルクプリン‥食べたい‥」

思いついたままを言うと

「わかった!じゃあいい子で待っててね」

チャイムの音が聞こえたので、じゃあねと言って電話を切った。

⏰:08/07/01 20:21 📱:SH703i 🆔:6vxSHI5w


#217 [桃色]
 
16時までには帰ってくるであろうみーとをソワソワした気持ちで待つ。

普段着に着替え髪をきちんと整えていると、リビングに置いていた携帯が着信を知らせている。

急いで携帯を取りに行くと手に取ったところで切れてしまった。

履歴を見るとあずちゃんからだ。

かけ直すとすぐに出てくれた。

「寝てた?ごめんね!」

大丈夫、と言うと興奮した様子で話し始める。

「さっき顧問からマネージャーが一人増えたからって言われてさ‥入部届け見せてもらったら昨日言ってたあの子だったの!あたしに断る権限なんてないし‥洋介に言ってもヘラヘラしてるだけで‥」

⏰:08/07/01 20:24 📱:SH703i 🆔:6vxSHI5w


#218 [桃色]
 
あずちゃんの声が耳の奥でわんわん響くのは、いつもにも増して大きな声で話してるってだけじゃなさそうだ。

そのまますとんっとソファーに腰を落としてしまう。

「‥瑞穂聞いてる?」

携帯を握り直し

「うん、ごめんごめん。昨日詩織ちゃんたちと見に行ったんだけど‥どんな子なの?」

人づてに聞くだけなら何とか堪えられそうなので、思い切って聞いてみる。


あずちゃんはうーんと唸って

「2年なんだけどね、転校生らしくて関西弁なんだ。それがまた部員たちにウケててさぁ‥顔も結構可愛いんだよね」

⏰:08/07/01 20:25 📱:SH703i 🆔:6vxSHI5w


#219 [桃色]
すぐさま講堂での記憶が蘇る。

‥あの子だ。
みーとに狙いをつけてた‥

「ギャルっぽい感じで、目が印象的な子?」

「そうそう!髪も巻いてて‥って瑞穂どうして知ってるの?」

予感が確信に変わると自分の手が震えていることに気付いた。

あずちゃんの疑問に答えることなく、ありがとうと精一杯元気な声を作ってお礼を言うと、適当に理由をつけて電話を切った。

そしてあの時[またね]と手を振っていた女の子をゆっくりと正確に思い出す。

⏰:08/07/01 20:30 📱:SH703i 🆔:6vxSHI5w


#220 [桃色]
‥確かに、ギャルっぽかったけど明るくて可愛らしい子だった。

いかにも自分に自信があるような。

もしもあんな子に迫られたら‥

みーとだって悪い気はしないよね。

そう思うといてもたってもいられず、雨が降っているのを承知でみーとを迎えに行くことにした。

早くみーとに会いたい。

会って一言「大丈夫だよ」って言ってほしい。

はやる気持ちを抑えながら玄関まで行き紳士用の大きな傘を1本持って外へ出る。

⏰:08/07/01 20:43 📱:SH703i 🆔:6vxSHI5w


#221 [桃色]
バス停までの道、耳に入るのは雨音だけで逆に考えがまとまってくる。

こんなに不安になるのは、それだけみーとの存在が大きくなってるって証拠。

みーとが女の子に人気なのは前からわかってたし、信じてるつもりだったけど‥

あたしがみーとの“特別”だっていう何かが欲しい。

普通の恋人同士みたいに口約束ってわけにはいかないから‥


ねぇみーと、あたしがこんなに弱い女だって、あなたは知ってる?
 


春先とはいえ、雨の中を立ち続けていると体温が下がってくる。

⏰:08/07/02 20:22 📱:SH703i 🆔:LWb55gpc


#222 [桃色]
冷たくなった手を合わせてさすりながら、じっとみーとの帰りを待つ。

1本、2本とバスが行き過ぎ、寒さも限界に達しようとしたその時

「みーほ?」

驚いたみーとがバスから飛び降りてきた。

すぐさまあたしの手から傘を取ると、鞄からスポーツタオルを取り出し肩にかけてくれた。

みーとの顔を見るだけでさっきの不安なんてどこかへ消えてしまいそうだ。

だけど、微笑むみーとの肩越しに今一番見たくない人が現れる。
 

‥‥あの転校生だった。

 
「湊斗くん傘持ってなかったやろー?」

⏰:08/07/02 20:23 📱:SH703i 🆔:LWb55gpc


#223 [桃色]
そう言いながら顔をあげたその子と目が合う。

明らかに不快そうな顔。

だけどすぐに表情はゆるんで、何かを思い出したように口を開けると

「部紹介のとき隣りにいてた子やんなぁ?湊斗くんの妹さんやったん!?」

笑うと八重歯がちらっと見えて、あたしには何だか怖かった。


妹って‥

確かに姉には、まして彼女には見えないだろうけど‥

黙ったままのあたしに

「何だみーほ根本さんと面識あったの?」

フォローを入れたつもりのみーとの声がいつもより高い気がしてついイラっとしてしまう。

⏰:08/07/02 20:24 📱:SH703i 🆔:LWb55gpc


#224 [桃色]
多分雨音のせいでそう聞こえるんだろうけど‥

「面識っていうか、なっ!みいほちゃんていうんや。うち根本麗羅!レイラでええよ、よろしくね!」

みーとの横から細い手がすっと伸びてくる。

それよりもみーととレイラの距離が近くなったことが気になって、握手どころじゃない。

つくづく小さい女だな、あたし。

しかも、妹扱いのままだけど

「あ‥」

あたしが口を開きかけると、みーとがあたしの肩をぐっと抱き寄せ

「根本さん、こいつ俺の彼女なんだ」

⏰:08/07/02 20:27 📱:SH703i 🆔:LWb55gpc


#225 [桃色]
 

フザけてるのかと思ってみーとを見ても、口は笑ってるけど目は真剣だ。

レイラはきょとんとこちらを見てる。

雨の音が三人を包む――



しばらくの沈黙を破ったのはあたし‥

「レイラちゃん、桜井瑞穂。湊斗の姉です。こちらこそよろしく」

みーとの手を冷静にどけて、誰が見ても社交辞令だとわかるような笑顔でレイラの手を握ると

「傘持ってってないと思って来ただけだから」

みーとと目も合わさずにスポーツタオルを頭から被って家に向かって走り出す。

⏰:08/07/02 20:31 📱:SH703i 🆔:LWb55gpc


#226 [桃色]
 

みーとが何か言ってたけど、雨の音に掻き消されてあたしのところまで届かない。


走って走って息が切れても苦しくても、今は止まりたくない‥

胸が痛いのは走ってるせい、頬が濡れているのは雨のせいにしてしまいたかった。


だけど体力のないあたし‥

すぐに足がもたついて転びそうになる。

立ち止まろうとしたその時

「みーほ!」

後ろからするみーとの声は、そんなに距離が離れていない事を表す。

振り返るのに戸惑っているとバシャバシャと凄い勢いで走ってくる音が近づいてくる。

⏰:08/07/03 20:09 📱:SH703i 🆔:FAMYBXkw


#227 [桃色]
 
もう逃げても無駄‥

そう思いながらもまた走り出そうとすると、追い付いたみーとに腕をつかまれる。

「っや!離してっ」

嫌だ、今は触れられたくない。

「ごめん、みーほ」

また、謝った‥

「‥どうして謝るの?」

「え‥」

めずらしく口ごもるみーと。

「すぐにバレるような嘘ついたこと?それとも部活が忙しいとか言っときながらやましい事してたから!?」

自分のものとは思えないほど荒い声に驚く。

⏰:08/07/03 20:10 📱:SH703i 🆔:FAMYBXkw


#228 [桃色]
みーとを見ると、じっと下を向き濡れた前髪が邪魔で表情はわからない。


二人とも何も言わないまま、もうすぐそこに見えている家まで雨に打たれながら歩き出す。

さっきは気にならなかった雨音が、今はやけに心を乱す。

みーとの表情は見えないながらも、泣いているようで罪悪感を感じずにはいられなかった。
 


玄関を開けるとお母さんが帰って来たところだったらしく

「まぁ!どうしたのあんたたち!てっきり瑞穂が傘持って迎えに行ってくれたんだと思ってたのに‥」

⏰:08/07/03 20:11 📱:SH703i 🆔:FAMYBXkw


#229 [桃色]
そう言いながら洗面所までバスタオルを取りに行ってくれた。

そういえば傘を持っていないみーと。

二人ともずぶ濡れ‥迎えに行った意味ないじゃん‥

「順番にお風呂入っちゃいなさい」

お母さんに促されるままあたしが先に入ることになった。

やっぱりみーとの顔は見る事ができずに足早にお風呂場へ向かった。
 


また、喧嘩しちゃった‥

あの日からあたしたち、おかしいよ‥

ううん、きっとあたしがダメなんだよね。

泣いて怒って騒いでるのはいつもあたし‥

⏰:08/07/03 20:12 📱:SH703i 🆔:FAMYBXkw


#230 [桃色]
だけどみーとがわからない。

わからないから不安になる。

今日レイラと一緒に帰って来たってことは、今朝お母さんが言ってた家の前で話してた子も、多分レイラで間違いない。



みーと‥
みーとの特別はあたしだよね?

信じていいんだよね‥

みーと‥‥

⏰:08/07/03 20:12 📱:SH703i 🆔:FAMYBXkw


#231 [我輩は匿名である]
あげ

⏰:08/07/04 02:13 📱:D705i 🆔:WWE0fPgk


#232 [桃色]
あげありがとうゴザイマス

⏰:08/07/04 20:57 📱:SH703i 🆔:Rip0ffE6


#233 [桃色]
 
少し気持ちが落ち着いたあたしはお風呂から上がったことを知らせるため、みーとの部屋へ行く。

あれだけ激しくタンカをきっといて、今さらどんな顔して話しかけよう‥

気まずさに勝てず部屋の前で立ち止まる。

まだ水気を含んだ髪からはポタポタと滴が落ちて床に小さな水溜まりを作る。

迷っていても仕方ない、いつまでもこのままってわけにはいかないんだから‥

いずれ仲直りするなら早い方がいい。

「みーと‥入るよ?」

髪を粗く束ねてからドアノブをひねる。

⏰:08/07/04 20:58 📱:SH703i 🆔:Rip0ffE6


#234 [桃色]
 

‥たけどみーとの姿はそこにはなかった。

「瑞穂?上がったの?」

下からお母さんの声が響く。

「え、あっうん!」

驚いて肩がビクっと浮いた。

なんだ‥下にいたのか。

拍子抜けしてどうしよか迷う。


‥こうなったらみーとがお風呂から上がるのをここで待とう。

(そしたら嫌でも話せるよね‥)

こんなに自分を追い込まないと、話すことさえできないなんて。

⏰:08/07/04 21:00 📱:SH703i 🆔:Rip0ffE6


#235 [桃色]
意識しすぎなのかなあたし‥

みーとはいつも、みーとらしい。

こんなままじゃ、嫌われちゃうかも。
だけど不安になるのはしょうがないよね‥
あたしが弱いから?
みーとは一体あたしのどこが‥‥‥‥‥‥‥


ぐるぐると同じ事ばかりしか考えられない。

誰にも相談できないのは正直辛い。

何も心配事がないとまではいかなくても、せめて姉弟じゃなかったら‥

なんてどうしもないことを考えてみたりもする。

⏰:08/07/04 21:00 📱:SH703i 🆔:Rip0ffE6


#236 [桃色]
 

外はまだ雨が降り続いている。窓に張り付くたくさんの雨粒が、車のライトに照らされて時々キラキラと白く光る。

かと思えばまた元の暗闇に飲み込まれ、不安で強張ったモノクロのあたしの顔が映し出される。


カチャリとドアノブを回す音がして振り返ると、上半身に何も纏わずバスタオルを首からさげたみーとが立っていた。

目のやり所に困ってまた窓の方に向き直る。

「ふっ服着なよね!」

⏰:08/07/04 21:01 📱:SH703i 🆔:Rip0ffE6


#237 [桃色]
「いると思わなかったから」

そりゃそうだ、と思い直して「ごめん」素直に謝るつもりがその言葉にさっきの場面がフラッシュバックする。

「‥ていうかさっきのごめんは何に対してだったの?」

頭に浮かんだ事がそのまま口をついて出る。

しまったと思ったけどもう遅い。また気まずい雰囲気に逆戻り‥

喧嘩したいんじゃないのに。

⏰:08/07/04 21:02 📱:SH703i 🆔:Rip0ffE6


#238 [桃色]
「みーほ、座って」

ベッドに腰掛けたみーとが、髪をくしゃっとかきながらもう片方の手で自分の隣をポンポンと叩いている。

もう余計な事は言うまいと決心して素直に従う。


「さっき謝ったのは‥根本さんに嘘ついたこと。あのタイミングで言うべきじゃなかった」

“嘘”というフレーズが胸に突き刺さる。

だけど事実。

あたしはみーとの彼女じゃない。

⏰:08/07/04 21:03 📱:SH703i 🆔:Rip0ffE6


#239 [桃色]
 
黙ったままうつむいているあたしの肩を両手で抑えて、体ごとみーとの方へ向かされる。

真剣なその眼差しに、話し出そうにもうまく考えがまとまらない。

そんなあたしの心の中を察知したのか、みーとが続けて話し出す。

「だけど俺は嘘つこうと思って言ったんじゃないよ。転校生の根本さんなら‥何も知らない根本さんになら、彼女って紹介してもいいんじゃないかって‥完全に俺のわがままだった。本当にごめん」

⏰:08/07/04 21:17 📱:SH703i 🆔:Rip0ffE6


#240 [桃色]
肩に手を置いたまま頭を下げるみーと。

そんなみーとを見ていたら、言葉よりも先にみーとを抱きしめている自分がいた。

みーとはちゃんと、充分過ぎるくらいあたしのことを想ってくれてる‥

謝るのはあたしの方だ。

「あたしの方こそ、ごめん‥本当はね、嬉しかった。嘘でも彼女って言ってもらえて‥」

ちゃんと素直に伝えよう、自分の気持ちを。

大丈夫、みーとならどんなあたしでも受け止めてくれる‥

⏰:08/07/04 21:18 📱:SH703i 🆔:Rip0ffE6


#241 [桃色]
 
それからあたしたちはお互い言えなかった事を話し合った。

「あたし最近気付いたんだけど相当なやきもち妬きみたい」

「マジで?やっぱ俺ら似てるね。洋介先輩がみーほに触れたとき、もうちょっとで殴りかかりそうだったもん」

そういえば‥とみーとの握りしめられた拳を思い出す。

「みーとはさぁ、あたし以外の女の子に言い寄られて、本当のところはどうなの?」

「んー、そりゃ悪い気はしないけど‥いい気ばかりもしてらんないかな」

⏰:08/07/05 20:54 📱:SH703i 🆔:/fZibtYw


#242 [桃色]
「どーして?」

「みーほがそんな顔するからっ!」

そう言うと乾きかけた髪をかきあげながらゆっくりと顔を近づけてくる。

斜めにかたむいた首元がやけに色っぽくて胸が騒ぎ出す。

その潤んだ瞳にはセピア色のあたしがぼやけて映り込んでいる。

「みーほ、キスして?」

いつもはここでみーとから勝手にしてくるはずが‥

目をつむりかけた自分が少し恥ずかしい。

躊躇っているとフフっと鼻で笑ってそっぽを向いてしまった。

⏰:08/07/05 20:54 📱:SH703i 🆔:/fZibtYw


#243 [桃色]
「あっ」

小さく言うと

「したい?」

片足を上げて膝の上に肘をつき、イタズラっぽく笑うみーと。

してって言ったのそっちじゃん!

文句を言うはずの口は気付いたときにはふさがれていた。

そして唇が重なったまま、みーとがあたしに覆いかぶさる形でそのままベッドに押し倒されてしまった。

「みーほが不安なら何度だって言う。俺はみーほ以外考えられない。この先どんな女の子が現れようと、俺の特別はみーほだけだ」

⏰:08/07/05 20:55 📱:SH703i 🆔:/fZibtYw


#244 [桃色]
両腕を抑えるみーとの力が強くなる。

そんな顔しないでみーと。

不安がるあたしを見て、自分を責めてるんだよね。

「あたし、信じてるから。だけどもしも、また不安になっちゃう時があったら‥」

「その度信じさせてやるよ」

そう言って素早くウインクすると、あたしの胸をときめかせる間も与えずいつもより丁寧で優しいキスをした。

⏰:08/07/05 20:56 📱:SH703i 🆔:/fZibtYw


#245 [桃色]
 


朝目覚めると隣にみーとの寝息が聞こえる。

寝ている間も離れるのが惜しくて、あのままみーとのベッドで一緒に眠ることにしたのだ。

お母さんが上がってくることなんて滅多にないからその心配はしなくてもいい。

だけど、それだけ。

それ以上を期待しているわけじゃないし、むしろキスだけで充分過ぎるくらい。

普通のカップルなら、付き合って何ヵ月で‥とかあるんだろうけど、あたしたちには当てはまらない。

⏰:08/07/05 20:57 📱:SH703i 🆔:/fZibtYw


#246 [桃色]
むしろその先なんて、あってはならない。
 

‥って朝起きて一番に考えるのがこんな事って‥

最近のあたし、やっぱ変だ。

みーとを起こさないようにそっとベッドから起き上がる。

わずかに擦れる布の音にも気を使いながら上半身をかたむけたその時、お腹から腰にかけてをぐるりと抱きしめられた。

目は閉じてるから寝ぼけてるらしい。

⏰:08/07/05 20:58 📱:SH703i 🆔:/fZibtYw


#247 [桃色]
何かうにゃうにゃ聞こえるので耳を澄ましてみると

「みずほ‥みず‥ほ」

めずらしく“みずほ”と呼ぶ声に、あの日の事を思い出す。

初めてキスをした日の朝も、確か“みずほ”とうわ言のように呼ばれたような‥

変に思ったがそんなに気に止める事もなく、まとわり付くみーとの腕をできる限りゆっくり移動させてそっとベッドから抜け出し、何食わぬ顔でダイニングへ降りて行く。
 

そしてまたいつもと同じ朝がくると思いきや、神様はイタズラが好きなようで‥

⏰:08/07/05 21:01 📱:SH703i 🆔:/fZibtYw


#248 [桃色]
 


昨日の雨で朝練がないみーとと久しぶりに登校できる。

お弁当を受け取り、玄関のドアを開けるとそこには‥

「湊斗くんおはよう!あ、お姉さんも‥」

朝からハイテンションのレイラの姿。

あたしと目が合った瞬間その笑顔が曇ったのは、言うまでもない。

手には昨日あたしがさしていった傘を持っている。

あたしたちの視線に気づいたレイラは少し照れながら

⏰:08/07/07 21:21 📱:SH703i 🆔:uiLDk8VY


#249 [桃色]
「これ、昨日置いてったから‥届けに来てん」

ありがとう、と軽く言ってレイラから傘を受け取りしまいに行くみーと。

少しの間だけど二人きりになるのは辛い‥

「あの‥お姉さんて‥」

レイラが何か言いかけたときみーとが戻って来たので話しは途切れ、しょうがなく三人で登校することになった。

レイラがみーとの隣に並ぶので、仕方なくあたしは二人の前を歩く。

本当だったら走ってでも今すぐこの場からいなくなりたい。

⏰:08/07/07 21:22 📱:SH703i 🆔:uiLDk8VY


#250 [桃色]
せめてバス停にあずちゃんがいてくれれば‥

下を向いて考えていると、あたしのローファーの動きにみーとのスニーカーが並ぶ。

見上げるとニヤっと笑うみーとが突然

「走って!」

とあたしの手を取った。

わけが分からずみーとに手を引かれるまま走りだす。

振り返るとぽかんと口を開けたレイラのまぬけな顔。

「どうしたの?」

走りながら話すと余計に息が切れる。

⏰:08/07/07 21:23 📱:SH703i 🆔:uiLDk8VY


#251 [桃色]
「何も!」

短く言うと、あたしの顔を見て笑うみーと。

みーとが何を言ったのか結局分からないままだったけど、それからレイラがうちまで来ることも、一緒に帰ってくることもなくなった。

それからほどなくしてあずちゃんからレイラがマネージャーを辞めたって聞いた。

「だけどこれで安心してちゃダメだよ。噂話しはあんまり好きじゃないんだけど‥根本さんって今まで狙った相手は百戦練磨らしくてさ、湊斗くんが全然なびかなかった事に結構腹立ててるみたいだから‥」

⏰:08/07/07 21:24 📱:SH703i 🆔:uiLDk8VY


#252 [桃色]
こんなアドバイスをくれるあずちゃんになら、みーとへの気持ちを打ち明けてしまいたい衝動に駆られる。

だけど‥

もし軽蔑されたら?

考えただけでも血の気が引いた。

やっぱり言えない‥この気持ちは誰にもいっちゃいけない。

「ごめんごめん!心配させるような事言っちゃったね。大丈夫だよ!瑞穂はあたしが守ってあげる」

あたしの眉間に寄るシワを両手の親指でぐいっと伸ばして、あたしを信じろと言わんばかりに自信たっぷりの笑みを見せるあずちゃん。

⏰:08/07/07 21:24 📱:SH703i 🆔:uiLDk8VY


#253 [桃色]
ありがとうあずちゃん‥

この時本当は気づいてたんでしょ?

あずちゃんの優しさを思うと、今でも心が温まる。

あずちゃんの事も大好きだよ。
 


あずちゃんの言った通り、あたしの心配するような事は何も起こらず、平穏な日々はゆっくりと過ぎた。

⏰:08/07/07 21:25 📱:SH703i 🆔:uiLDk8VY


#254 [桃色]
 


今日は予選をみるみる突破し、ついにトーナメント戦まで王手がかかったみーとへのお祝いを兼ねたデートなのだ。

少しでも恋人気分を満喫しようと今朝は一度も顔を合わさず、地元からは少し離れた繁華街で待ち合わせをしている。

七月の風は湿気を帯びてまとわり付く。

普段よりも少しオシャレした足元がくすぐったい。

「ごめん、待った?」

お決まりのセリフをわざとらしく並べながらちょっと遅れたみーとも到着。

⏰:08/07/08 23:15 📱:SH703i 🆔:p/CUTAq6


#255 [桃色]
「あれ?みーほいつもより背高くない?」

足元がくすぐったい理由‥

「デートだもん、オシャレしてきちゃった」

サンダルを突き出してヒールの高さを強調する。

みーとはふっと目を細めると、またあの笑顔で左手をすっと差し出して

「うん、すっごくよく似合ってる。今日はどちらへ?お姫様」

軽くお辞儀をしうわ目使いであたしを見上げる。

「や、やめてよ恥ずかしい‥」

行き交う人の視線を感じ、思わずそっぽを向いてしまう。

⏰:08/07/08 23:16 📱:SH703i 🆔:p/CUTAq6


#256 [桃色]
嘘、本当はすごく嬉しかった。

頬が染まったのを隠すようにさっとみーとの手を取りあてもなく歩き出す。

降り注ぐ太陽の熱と公の場で堂々と手を繋げるという喜びに、何だか頭がクラクラする。

とりあえずどこへ入ろうと、適当な喫茶店を見つけて中に入る。

窓際の席に案内されると、すかさずソファー側にあたしを誘導してくれるし、運ばれたお冷やおしぼりを手前に置いてくれたり‥

⏰:08/07/08 23:17 📱:SH703i 🆔:p/CUTAq6


#257 [桃色]
まるで本当の彼女になったみたいだった。

もちろん地元じゃこんな風にはいかないんだろうけど‥

夢のような時間を大事に大事に過ごす。
 

軽めのお昼を済ませ、デザートを食べながら何でもない事を話す。

記念日にあげたウエイトベアーはどこに行ったのかとか、次の対戦校はかなりの強豪校だとか‥

家でもできる会話だけど、恋人のように振る舞っているってだけで二人のテンションを高くさせた。

⏰:08/07/08 23:18 📱:SH703i 🆔:p/CUTAq6


#258 [桃色]
「みーほ、すごく楽しそう」

「うん、すっごく楽しい!みーとは?」

「もちろん」

そう言って目を細めて笑うみーと。

やっぱりたまらなくその顔が好き。

「改めて、予選突破おめでとう!」

アイスティーで乾杯をする。

こんな時間が永遠に続けばいい‥

あたしの心はどんどん欲張りになっていく。

⏰:08/07/08 23:20 📱:SH703i 🆔:p/CUTAq6


#259 [我輩は匿名である]
1-50
50-100
100-250
250-300
300-350
350-400
400-450
450-500
500-550
550-600
600-650
650-700
700-750

⏰:08/07/10 05:06 📱:DRAPE 🆔:Mddqk.Qs


#260 [我輩は匿名である]
>>1-50
>>50-100
>>100-250
>>250-300
>>300-350
>>350-400
>>400-450
>>450-500
>>500-550
>>550-600
>>600-650
>>650-700
>>700-750

⏰:08/07/10 05:07 📱:DRAPE 🆔:Mddqk.Qs


#261 [桃色]
 
アンカーありがとうゴザイマス

⏰:08/07/10 21:24 📱:SH703i 🆔:6XC5Tk4o


#262 [桃色]
 
永遠なんて、あるのかなぁ‥

最後の一口を口に入れようとすると、大口開けたみーとに横取りされた。

「もう!一番おいしそうなとことってあったのに!」

唇を尖らせ怒っていると

「今、また不安になってたでしょ」

そう言ってフォークを持ったままの右手を両手でぎゅっと大事そうに包み込まれる。

温かい、みーとの手。

「なんであたしたち姉弟なのかなぁ‥」

毎日毎日自問自答を繰り返してきた問いかけを、初めてみーとに投げかけた。

⏰:08/07/10 21:25 📱:SH703i 🆔:6XC5Tk4o


#263 [桃色]
みーとだって考えない日は無かっただろう。

目線を上げるとみーとの表情は少し強張っていた。
 

また、困らせちゃった‥

首を横に小さく振って、ごめんと謝ろうとしたその時

「実はねみーほ‥」

手を握る力は一層強くなってくる。

「‥‥‥‥」

だけどみーとはそれ以上話しを続けることは無かった。

気になって気になって仕方がなかったけど、さっきのみーとの表情からしてそんなに軽く聞いてはいけないような気がして‥

⏰:08/07/10 21:26 📱:SH703i 🆔:6XC5Tk4o


#264 [桃色]
それに、あたしにとったらバッドニュースかもしれない。

例えば‥やっぱこんなの良くないよ、とかさ‥

そんな事を思わせる程、深刻な表情を浮かべたみーとが心配だったけど、同時に不安も押し寄せてくる。

もう一方の手でみーとの手を握り返す。

大丈夫、信じるって決めたんだ。

あたしはもう逃げない。

はたから見ればバカップルだろう。

手を取り合ってずっと見つめ合ってるんだから。

あたしたちが抱える不安や葛藤に誰も気づくはずがない。

⏰:08/07/10 21:27 📱:SH703i 🆔:6XC5Tk4o


#265 [桃色]
みーとは小さく「ありがとう」と言うと、あたしの手をそっとテーブルの上に置いて残りのアイスティーを一気に飲み干した。

あたしもグラスに手を伸ばしたその時、カツカツとピヒールが床を踏み鳴らす耳障りな音が近づいてきた。

動きを止めて音のする方を見ると、いかにもという感じのギャル風な女の子がこちらに向かって歩いて、いや走っている。

それがいつもより三倍は派手であろう根本麗羅だと気づくのに、そう時間はかからなかった。

⏰:08/07/10 21:28 📱:SH703i 🆔:6XC5Tk4o


#266 [桃色]
「ちょっと!あんたらやっぱりそういう関係やったんか!」

すごい形相で怒鳴り散らすレイラに、ただただあたしは身を小さくすることしかできない。

「根本さん?どうしてここに‥」

今やっと判別がついたらしいみーとは、目を丸くして驚いている。

「どうしたも何もうちの地元じゃ!それよりあんたら姉弟でよくもまぁ、やらしいわ!」

そう言うとあたしに向かって

「傘持ってった日うちに何て言うたと思う?『俺はみいほのものだから』やて!気っ色悪いわ、何なんあんたら!」

⏰:08/07/10 21:29 📱:SH703i 🆔:6XC5Tk4o


#267 [桃色]
これだけ言ってもまだ気が済まないらしいレイラは、腕を組んでこちらに詰め寄る

さらに身を縮めるあたしの頭上から言い放たれた言葉は

「知ってる?あんたらみたいなんを 近 親 相 姦 て言うんやで」

まるで何かが取り憑いたかのようにわめくレイラに、店内にいる全員の視線が集中していた。

だけど最後の言葉を聞き終えると同時にその視線は好奇のものへと変わり、あたしたちへと向けられる。

やっと気が済んだかと思いきや、最後にお冷やを頭からひっかけられた。

⏰:08/07/10 21:30 📱:SH703i 🆔:6XC5Tk4o


#268 [桃色]
レイラが空になったグラスを置くわずかな動作にも、体がビクっと震えてしまう。

「‥おまえっ」

つかみ掛かろうとしたみーとの腕を全身で止める。

頭からかぶった水が筋になって額を伝う。

怒りに震えたみーとの拳は色が変わるくらい強く握られている。

「何よ!事実言うたまでやろ!」

半ば捨てゼリフのようにその場を足早に去るレイラ。

耳障りなピンヒールの音が耳の奥でガンガンと響く。

⏰:08/07/10 21:31 📱:SH703i 🆔:6XC5Tk4o


#269 [桃色]
呆然と立ち尽くすあたしとみーと。

はっとした様子で

「ハンカチある?」

あたしの鞄からハンカチを取り出し、丁寧に水気を拭き取ってくれる。

そんなあたしたちに、店内のほとんどの客がこちらを向いて声をひそめながら悪意に満ちた視線を張り付けてくる。

[カップルジャナカッタンダ‥]

[キョウダイダッテ‥]

[アリエナイヨネ]

[キモチワルイ]

思わず耳を塞ぎたくなる言葉に、立っているのもままならなくなる。

⏰:08/07/11 19:02 📱:SH703i 🆔:cb0fbCXQ


#270 [桃色]
みーとがあたしの肩を抱きながら心ない人たちを威嚇すると、みんな素知らぬ顔をして視線を外していく。

「歩ける?」

みーとの声はかすれていて、それが何だか心に染みて、抑えていた感情が溢れ出してしまう。

せきを切ったように泣き出してしまったあたしの手を引き会計を済ませ、店を出るなり人通りの少ない路地に入る。

あたしは顔全体にハンカチを押し当てながら、鳴咽を漏らして泣いていた。

⏰:08/07/11 19:04 📱:SH703i 🆔:cb0fbCXQ


#271 [桃色]
 

[ヤラシイワ‥]

やらしい事なんてみんなしてるじゃん!

[キッショクワルイ‥]

姉弟なのがそんなにいけない!?

[キンシンソウカン‥]

いけない事だってあたしたちが一番よく分かってる!

怒りは涙となって次から次へと溢れ出し、ついには呼吸が乱れてくる。

ダメだ‥このままじゃまた倒れちゃう‥

あたしの異変に気づいたみーとが直ぐさまあたしを抱きしめる。

⏰:08/07/11 19:04 📱:SH703i 🆔:cb0fbCXQ


#272 [桃色]
「みーほ、一旦落ち着こう?」

背中をさすりながらゆっくりとあたしをしゃがませる。

「深呼吸して?」

言われるがまま吸って吐いてを繰り返すが、横隔膜が予告無く跳ね上がって上手くできない。

みーとは辺りを見回すと、ちょっと待ってて、と言ってどこからともなく持ってきたブロック塀に座らされ、ペットボトルの水を渡される。

ヒクヒクヒクっと音をさせながら子供みたいにしゃくり上げるあたしを見て、目線を合わすためにその場にしゃがんだみーとの顔は、苦虫を噛み潰したように歪んでいた。

⏰:08/07/11 19:05 📱:SH703i 🆔:cb0fbCXQ


#273 [桃色]
また、自分を責めてる‥

こんな時男の子は泣けなくて辛いね‥

そぉっとみーとの頭を撫でる。
 
泣きすぎて目頭とこめかみが痛い。

「ありがとうみーと、もう大丈夫」

そう言えたのは皮肉にもレイラから聞いたあの言葉‥

[俺はみーほのものだから‥]

こうなったら、あの一言にとことんすがってやろうじゃない。

他人から何を言われても、白い目で見られても‥

あたしはみーとを信じてく。

⏰:08/07/11 19:06 📱:SH703i 🆔:cb0fbCXQ


#274 [桃色]
 

実はさりげなくしてきたメイクも台なし。

ウォータープルーフじゃないからヒドイ事になってるんだろうな‥

あたしの予想は見事的中。

さっきまでシュールな表情を浮かべてたみーとが、もう歯を見せて笑っている。

情けないのと安心したのであたしもつられて頬がゆるむ。
 

こうして初デートは最悪ながらも何とか笑顔で終えることができた。

⏰:08/07/11 19:07 📱:SH703i 🆔:cb0fbCXQ


#275 [桃色]
 


だけどあたしたちはまだ知らない‥


人には悪意があることを‥


罪には罰が‥あることを‥ 


そして、揺らぎそうになるこの決心を‥
 


.

⏰:08/07/11 19:09 📱:SH703i 🆔:cb0fbCXQ


#276 [我輩は匿名である]
あげっ

⏰:08/07/13 07:41 📱:DRAPE 🆔:MQwK/RA6


#277 [桃色]
あげっありがとうゴザイマス

⏰:08/07/13 19:38 📱:SH703i 🆔:i9KxUCVU


#278 [桃色]
 


あっという間に期末テスト。

高校生って本当にテストばっかりでうんざり。

だけどテスト期間中はみーとと登下校できる唯一の時。

今朝も仲良く登校中だ。

バス停でネクタイをしめてもらっていると

「おっはよ!毎日毎日飽きないね〜」

イヤミっぽい口調であずちゃんも合流。その顔はもちろん笑っている。

「ホント、いつになったら自分でしめれるようになるんだろうね?」

みーとも意地悪な顔をする。

⏰:08/07/13 19:40 📱:SH703i 🆔:i9KxUCVU


#279 [桃色]
「この際卒業式まで予約しとくよ」

ニヒヒと憎たらしい笑いを浮かべてやる。

三人共顔を見合わせると同時に声をあげて笑う。
 

あー、好きだな‥この感じ。

期末が終われば夏休み!

高校生活最後の夏休みか‥

そういえばみんな模試が何とかって言ってたな。

進路希望の紙には、実家から通えるF大学の法学部と書いた。

と言っても相当勉強しないと無理だけど。

⏰:08/07/13 19:41 📱:SH703i 🆔:i9KxUCVU


#280 [桃色]
「何この子、ヘラヘラしてるかと思えば急に難しい顔して」

ふいにあずちゃんが顔をのぞき込んでくる。

また少し伸びた前髪を、ヘアピンで斜めに留めている。

「そういえばあずちゃんは進路希望もう出したの?」

サッカー部でマネージャーをしてるあずちゃん。

整体師とトリマー、どちらを目指すか迷ってるって前に言ってた。

「う〜ん、夏休みまでには出すって言ったんだけどね‥」

⏰:08/07/13 19:42 📱:SH703i 🆔:i9KxUCVU


#281 [桃色]
あずちゃんだったらどっちも向いてるだけに‥あたしも気の利いたアドバイスが思い浮かばない。

詩織ちゃんは名門のK女、寧々は実家の家事手伝い。

みんなバラバラになっちゃうんだよね‥

あたしがF大にした理由?

‥前にみーとがお母さんにF大の薬学部の話しをしてから‥‥

それだけ。

あずちゃんみたいになりたいものがあるわけでもないし、詩織ちゃんみたいに頭も良くない。

かといって家事手伝いって言ったらお母さんたちに怒られそうで‥

⏰:08/07/13 19:43 📱:SH703i 🆔:i9KxUCVU


#282 [桃色]
それにもしもみーとが同じ大学に入ったら、また今みたいに一緒に登校できるじゃない?

‥ダメだなあたし。

動機が不純過ぎる‥
 


バスに乗ってからもしばらく考え込んでいるあたしに

「みーほ、どうかした?」

首をかしげたみーとの顔が近づいてくる。

みーとに言ったら何て言うかな?

受けれるかもわかんないレベルなのに、期待持たせちゃ可哀相だよね。

まだ黙っとこっと‥

⏰:08/07/13 19:45 📱:SH703i 🆔:i9KxUCVU


#283 [桃色]
しれっと目をそらして何が?と言わんばかりの態度をとる。

「あ、俺に隠し事するつもり!?」

「そっそそんなぁ!するわけないじゃん!ね、あずちゃん」

困ったときのあずちゃん様!

「知ーらないっ!痴話ゲンカなら外でやんな!」

バスを降りながら歯を見せて笑う。

「待ってよぅ」

力無く言って追いかけた。
 


校門の前に腕章をした詩織ちゃんが立っている。

挨拶当番らしい。

⏰:08/07/13 19:45 📱:SH703i 🆔:i9KxUCVU


#284 [桃色]
「おはよー、詩織ちゃん」

あずちゃんと追いかけっこしながら校門をくぐると、その後ろを詩織ちゃんがまた追いかけてくる。

キャラにない詩織ちゃんの行動に、あずちゃんとあたしの足は止まった。

「瑞穂、後で話しがあるの‥ここで待っててくれない?梓も、お願い」

青ブチ眼鏡の奥の瞳は、何だかやけに深刻で、いつもは綺麗な詩織ちゃんの長くて黒い髪が何か良くないことを暗示しているかのようで少し、恐かった。

⏰:08/07/13 19:47 📱:SH703i 🆔:i9KxUCVU


#285 [桃色]
ただならぬ雰囲気をまとったあたしたちを見て、遅れてきたみーとが歩みを止める。

また心配させてしまう前に何でもないよ、とだけ言ってそのまま校舎に向かわせた。

予鈴のチャイムが鳴ると同時に腕章を外した詩織ちゃんがこっちにやって来ると、人通りを避けるようにしてあたしたちを木の陰へ引っ張って行った。

「どうしたの?詩織ちゃん‥」

あずちゃんも何が何だかわからないといった表情だ。

⏰:08/07/13 19:47 📱:SH703i 🆔:i9KxUCVU


#286 [桃色]
「あのね瑞穂」

くるっとこちらへ向き直った詩織ちゃんの顔から、あたしの予感通り何か良くない事が起きた事が推測できる。

思わず生唾を飲み込む。

それを確認するかの様にあたしとあずちゃんを交互に見つめると、意を決したように詩織ちゃんの眼鏡が光る。

「さっき、挨拶当番の前に鞄置きに教室行ったら‥」

「行ったら‥?」

焦らす詩織ちゃんを急かすかのように合いの手を入れるあずちゃん。

⏰:08/07/13 19:48 📱:SH703i 🆔:i9KxUCVU


#287 [桃色]
「黒板に‥ヒドイ落書きがしてあったの‥」

詩織ちゃんの目にはうっすら涙が滲んでいる。

「何が書いてあったの?」

目を渋らせてあずちゃんが尋ねる。

「それが‥」

チラリとあたしの目を見たかと思うと、すぐにそらして顔を伏せてしまう詩織ちゃん‥

嫌な予感が何通りも浮かんでは消え、浮かんでは消える。

どうかその中のどれでもありませんように‥

⏰:08/07/13 19:55 📱:SH703i 🆔:i9KxUCVU


#288 [桃色]
●感想ください●

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3672/

⏰:08/07/13 20:01 📱:SH703i 🆔:i9KxUCVU


#289 [桃色]
朝の涼しさは去って、上を目差す太陽がジリジリと額を照らし始める。

一斉に鳴き始めるセミの声が耳をつんざくように響く。

「‥瑞穂、と‥湊斗くんって‥‥」

目線を落として話し出した詩織ちゃんの言葉‥

背中を冷たい感覚が襲う。

夏だというのにゾクッとする。

思わず耳を塞ぎたい衝動に駆られたその時

「詩織、‥」

黙ってあずちゃんが首を横に振る。

顔を上げたあたしはきっと、涙目だったと思う。

⏰:08/07/14 19:47 📱:SH703i 🆔:u5rQBe/c


#290 [桃色]
ごめん、ごめんね。

‥‥ごめんなさい‥‥

この気持ちは誰にも言わないって決めたけど、言わないことで傷つく人もいるのかもしれない。

あたしはこの時初めて、自分がどれだけ独りよがりだったのかを思い知った。


だけどもう少し時間が欲しいの‥

この期に及んでまだそんな事を考えている自分に腹が立つ。

「瑞穂は先に教室行ってな」

あずちゃんに促され、重い足取りで教室へ向かう。

⏰:08/07/14 19:47 📱:SH703i 🆔:u5rQBe/c


#291 [桃色]
詩織ちゃんの顔は最後まで見れなかった‥

二人はきっと、さっきの話しの続きを話すんだろう‥


このままでいいの?

(だって悪いことなんてしてない)

詩織ちゃんもあずちゃんも心配してくれてる‥

(わかってるけど今はまだ言えないの)

そうやって逃げてても何も解決しない

(‥‥‥‥‥‥)
 


何も考えたくない。

いや、考えられない‥

⏰:08/07/14 19:48 📱:SH703i 🆔:u5rQBe/c


#292 [桃色]
教室に入り“何か”が書かれていたんであろう黒板を見つめる。

詩織ちゃんが消してくれたんだろう、今は何の痕跡もない。

目を閉じて深呼吸をする。

「瑞穂、おっはよ」

何も知らない寧々が駆け寄ってくる。

「おはよ‥」

あたし、うまく笑えてる?

「さっきさぁ、二年の子が瑞穂のこと探しに来てたよ」

さっきの冷たい感覚が蘇る。

⏰:08/07/14 19:50 📱:SH703i 🆔:u5rQBe/c


#293 [桃色]
「それって‥関西弁の子だった?」

「ううん、男の子が三人くらい‥だったかな?」

?

思ってもみない寧々の答えに、頭の中は疑問符でいっぱいになる。

男の子‥それも三人‥

みーとの友達?

だったらみーとから何か言われてるはずだし‥

わけがわからず席に着く。

あずちゃんと詩織ちゃんも本鈴ギリギリで教室に入って来た。

⏰:08/07/14 19:50 📱:SH703i 🆔:u5rQBe/c


#294 [桃色]
「挨拶当番お疲れ様!あずちゃん寝坊でもしたの?」

寧々の言葉に心配かけまいと見せる二人の笑顔が、あたしにはただ痛々しく見えて何だかやるせなくなった。

席に着いたあずちゃんに、後ろからトントンと肩を叩かれる。

小さく心臓が震えるのと同時に肩がぴくっと強張ってしまう。

何を言われても仕方がない‥
覚悟を決めて振り返ると、あずちゃんは案外あっさりとした表情をしていた。

⏰:08/07/14 19:52 📱:SH703i 🆔:u5rQBe/c


#295 [桃色]
それにまた罪悪感を感じてしまう‥

「今日さ、一緒に帰ろっか」

普段と何も変わらない声のトーンが、あたしの心を落ち着かせる。

コクンと頷いて見せるのが精一杯で、すぐさままた前に向き直る。

左隣りの寧々、右隣りの詩織ちゃん。

これ以上心配かけないないように、なるべく普段通りに振る舞わなきゃ‥
 


STを済ませ、担任がテストの監督役の先生と入れ代わる。

⏰:08/07/14 19:53 📱:SH703i 🆔:u5rQBe/c


#296 [桃色]
一時間目のテストが始まる。

前の席から順にプリントが配られる。

はっきり言ってテストどころじゃない‥

不安や葛藤で頭も心も押し潰されてしまいそうだ。


あと少しで開始の合図という時に、前の席の子が勢いよく振り返ってきた。

ぎょっとするあたしをよそに

「消しゴム忘れちゃった!余分にある?」

と早口で話す。

困っているクラスメートを助けるのは当たり前。

⏰:08/07/14 19:53 📱:SH703i 🆔:u5rQBe/c


#297 [桃色]
予備の消しゴムがあったので、どうぞと言って貸してあげる。

だけど前を向き直ったと思ったらまたこっちを振り返り

「やっぱりあった!」

と言って乱暴に筆箱へ戻してきた。

‥今日はわけのわからない事だらけだ‥

まぁ、あったんなら良かったけど。

チャイムと共に先生の合図で一斉に紙をめくる音がこだまする。

名前を書きながらふと思う。

⏰:08/07/14 19:54 📱:SH703i 🆔:u5rQBe/c


#298 [桃色]
前の席の子‥

何て言ったかな?

確か留年生で、黒川さん‥だっけかなぁ。

あまり学校に来ない黒川さんは、テストのときだけはちゃんと学校に来ている。

綺麗な顔立ちなんだけど、その表情はいつも鋭い。

このクラスにもあまりなじめていないようだった。

これを機会に少しでも仲良くなれたらな‥

そんな事を考えながらも今日の帰り際、あずちゃんに真実を話すかどうかで胸の中はザワザワ落ち着かない。

その時‥‥‥

⏰:08/07/14 19:56 📱:SH703i 🆔:u5rQBe/c


#299 [桃色]
 
「桜井、何だこれは」

見回りに来た先生があたしの筆箱からさっきの消しゴムを取り出した。

見ればケースと消しゴムの間に小さく折りたたまれた紙が挟まっている。

「これは先生が預かっておく。後で職員室まで来なさい」

あたしが発言する前にピシャリと言い捨てられてしまった。

何がなんだかわからない。

思考が停止するとはまさにこのことだろう。

ちょっと待って、あの消しゴムはさっき黒川さんに貸したもの‥

⏰:08/07/15 19:18 📱:SH703i 🆔:0MGruGLs


#300 [桃色]
その前は紙なんて無かった‥‥!

あたしは無言で先生の背中を睨みつける。

教室に響いていたシャーペンのコツコツという事が止む。

見て確認しなくてもわかる‥

みんなの軽蔑した視線が。

カンニングなんてしてないのに‥

そんな目であたしを見ないで‥‥!
 


結局一問も満足に解けないまま、一時間目終了のチャイムが鳴る。

⏰:08/07/15 19:19 📱:SH703i 🆔:0MGruGLs


#301 [桃色]
後ろから解答用紙を集められるより早く、ザワザワと教室中に雑音が沸き上がる。

まるであの時の喫茶店と同じ‥

そんな光景に堪えられるはずもなく、あたしはそそくさと立ち上がり足早に教室を後にした。

「待って瑞穂!」

呼び止めるあずちゃんの声も振り切って‥
 


職員室へ行くと二時間目からは別室でということになったので、監督の先生と二人っきりで視聴覚室でテストを受ける。

⏰:08/07/15 19:20 📱:SH703i 🆔:0MGruGLs


#302 [桃色]
いくら濡れ衣だと主張しても、放課後まで待ての一点張りで、全く取り合ってもらえなかった。

筆記用具は学校が用意した鉛筆と消しゴム‥

屈辱以外の何ものでもない。

悔しくて‥やり切れなくて‥思わず唇を噛んでしまう。

‥今日のテストは赤点必至だな‥

投げやりになってただ時間が過ぎるのを待つだけだった。

⏰:08/07/15 19:20 📱:SH703i 🆔:0MGruGLs


#303 [我輩は匿名である]
続き気になるーっ
最近みーとの出番が
ない><泣
毎日十回くらいチェック
してますw
主さん頑張って!

⏰:08/07/16 02:16 📱:W61SH 🆔:ApB8HAVM


#304 [桃色]
>>303我輩様

感想板にてお返事させていただきますね

●感想板●
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3672/

⏰:08/07/16 09:38 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#305 [桃色]
 

放課後、休み時間も視聴覚室に閉じ込められていたあたしは鞄を取りに教室へ戻ると、何やら廊下に人だかりができている。

様子を知りたくても覗くことすらままならない。

その時

パーンと乾いた音とともに甲高い怒鳴り声が中庭にまで大きく響いた。

聞き覚えのある声に、まさかとは思いつつ人をかき分け中へ入る。

すると目の前には頬を押さえながらすごい形相をした黒川さんに睨みつけられ、寧々と詩織ちゃんに羽交い締めにされているあずちゃんの後ろ姿が飛び込んできた。

⏰:08/07/16 19:19 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#306 [桃色]
「‥あずちゃん?」

静かに駆け寄ると、今にも泣き出しそうな寧々があたしの手をきゅうっと握ってくる。

「何があったの?」

「う‥瑞穂ぉ」

あずちゃんの手は怒りで震えているようだった。

この状況からしてあずちゃんが黒川さんをひっぱたいたんだということがわかる。

「落ち着いて、梓。暴力じゃ何も解決できない!」

冷静な詩織ちゃんの声が一旦はその場を落ち着かせたかのように見えた。

⏰:08/07/16 19:20 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#307 [桃色]
「もう一度聞く」

詩織ちゃんの言う通りだというように、深呼吸をしてからあずちゃんが静かに口を開く。

「しらばっくれても無駄だよ。あたしの他にもあんたが瑞穂に消しゴム借りたの見た子はいるんだから。瑞穂に何か恨みでもあるわけ!?」

どうにか怒鳴りたいのを抑えてるのが語尾でわかる。

その直後、左の頬をさすりながら黒川さんが飄々と話しだした内容に、あたしは一瞬耳を疑うしかなかった。

⏰:08/07/16 19:20 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#308 [桃色]
「ただ頼まれただけよ」

頼まれた?

一体‥‥

「誰に!?」

考える前にあずちゃんの声がまた響く。

うるさいなぁと言わんばかりに眉間にシワを寄せた黒川さんはさらにあたしを混乱の渦へと突き落とす‥

「それは言えない。お金だって貰っちゃったし」


今朝の詩織ちゃんの一言から、ずっと張り詰めていた緊張の糸が黒川さんのおかげでキリキリと音を立てて裂けていくいのがわかる。

⏰:08/07/16 19:23 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#309 [桃色]
お金を払ってまで‥

あたしをこんな目に合わせたい誰かがいる‥‥
 


詩織ちゃんの黒い髪、蝉の泣き声、黒川さんの鋭い瞳、あたしから消しゴムを取り上げた先生の背中と、今目の前にあるこの光景‥‥

全部がぐるぐると回って目眩と共に吐き気が襲う。

「頼まれたからって、お金‥貰ったからって、やっていい事と悪い事があるでしょ!?あんな事したら瑞穂が疑われるって思わなかった?」

⏰:08/07/16 19:23 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#310 [桃色]
怒鳴り続けるあずちゃんの声が、何とかあたしを現実に繋ぎとめていてくれる。

「担任、何て言ってた?」

腕はまだあずちゃんを抑えたままの詩織ちゃんが、顔だけこちらに向けて心配そうに聞いてくる。

「鞄‥取りに来て‥今から、行くとこ‥」

途切れ途切れのか細い声。

だけどこれ以上大きな声を出したら確実に倒れてしまいそうで‥

気を効かせて寧々が鞄を取りに行ってくれる。

⏰:08/07/16 19:24 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#311 [桃色]
それからまたあたしの手を取ると、あたしの体を支えながら寧々も一緒にドアへ向かう。

それを横目で追いながら、黒川さんがフッと笑った。

「桜井さん、被害者面すんのもいいけどさぁ、あんたにも非があるからふっかけられるんじゃないの?」

カッと頭に血が上る感覚に、心臓が急いで追いついてくる。

ドクドクと全身を黒い感情が支配する。

目頭が熱い‥

こめかみが痛い‥‥

⏰:08/07/16 19:26 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#312 [桃色]
「‥例えそうだとしてもっあたし、黒川さんに何か‥」

「だからさぁ、あたしは頼まれただけだってば!」

欝陶しそうにあたしの言葉を遮ると、机に腰掛け足を組んで髪をかき上げる黒川さん。

こんな気持ちになったのは初めてだよ‥

「瑞穂、こいつに何言っても無駄だよ。あたし担任呼んでくる」

あずちゃんが強い口調でそう言うと、顔を歪ませた黒川さんが勢いよく抗議する。

⏰:08/07/16 19:27 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#313 [桃色]
「あたしは関係ないんだから帰らせてもらうわよ」

机からヒョイと体を持ち上げ帰り支度を始める。

ドアに手をかけたあずちゃんがぱっと振り返り、見たことないくらいつり上がった目をして

「関係ないわけないでしょ!?詩織、あと頼むね」

あずちゃんが今にも飛び出していこうとしたその時

「待って‥」

あたしの声がその場の空気を一瞬止める。

「担任には‥言わない。だから、誰が黒川さんにあんなことさせたのか‥教えてくれない?」

⏰:08/07/16 19:28 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#314 [桃色]
心が闇に染まれば染まるほど、体中の熱が奪われていくのがわかる。

ひどく冷静なことに自分でも驚く。

「じゃあ担任には何て言うの?」

ごめんねあずちゃん、怒ってる?

あずちゃんの上履きが床に擦れてキュッと鳴る。

「担任には言うよ、やってないって‥」

矛盾したあたしの答えに納得が行かないようなあずちゃん。

「瑞穂はそう言うけど、あたしたち見過ごせないよ‥」

⏰:08/07/16 19:30 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#315 [桃色]
詩織ちゃんがそう言ったのとほぼ同時に、教室を囲む野次馬の声が騒がしくなる。

ガラっとドアが半分ほど開き、怪訝な顔をした担任が現れた。

どうやら野次馬の中の誰かが呼びに行っていたらしい。

「話しはだいたい聞いたぞ。黒川、詳しく聞かせてくれるか?」

ぐっと目線を低くした黒川さんは、何か言いたそうだったけど観念したようにコクリと頷いた。

「桜井、お前も一緒に来い」

そう言われて黒川さんより先に担任に付いていくあたし。

⏰:08/07/16 19:32 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#316 [桃色]
「待ってるね‥」

心配そうな三人に目だけで返事をして教室をあとにした。
 


職員室の隅にある、小さな応接用のソファーに黒川さんと並んで座らされる。

担任は肩を使って一息つくと、あたしたちの前にドカッと座った。

「で?黒川、何でこんなことしたんだ?」

黙ったままの黒川さん‥

ちらっとあたしの様子をうかがう素振りを見せる。

⏰:08/07/16 19:33 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#317 [桃色]
「黙ってちゃわからないだろ。お前ただでさえ出席日数危ないのに‥そんなに問題起こしたいのか?」

一度留年している黒川さんにとって、進級の話しは痛いのだろう。

少し肩が揺れたかと思うと、聞いてないことまで一気に話し出した。

「‥信じてくれないかもしれないけど‥今朝この紙を桜井さんの筆箱に入れて欲しいって、三千円と一緒に渡されたんだ‥」

さっきよりも少し動揺した感じで話す黒川さんを見て、彼女もまた巻き込まれただけの被害者なのかも‥という気持ちが芽生える。

⏰:08/07/16 19:34 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#318 [桃色]
「だからって今日はテストだぞ?カンニングだと疑われるんじゃないかとは思わなかったのか?」

強い口調で責める担任。

まるで尋問されているようだ。
黒川さんはうつむいてスカートをきゅっと握りしめている。

「まぁお前の事だから後先考えなかったんだろうが‥せめて誰に頼まれたかぐらい教えてくれないか?」

さっきとは裏腹に優しい表情で諭すように話す担任に、すぐさま黒川さんの口は開いた。

⏰:08/07/16 19:35 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#319 [桃色]
「それが‥わからないの。多分、二年だと思うんだけど‥三人で‥」

ぽつりぽつりと呟く声が、まるでパズルのピースのように今朝の寧々との会話にはまっていく‥

「‥男の子‥?」

次に言いかけた言葉をあたしが先に言い当てたからだろう、黒川さんは目を見開いてこっちを見ている。

その様子を首を傾げて見ている担任。

するとテスト期間中は入れないはずの職員室に男子生徒の影が見える。

「みーほ!」

⏰:08/07/16 19:36 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#320 [桃色]
それがみーとだとわかる前にあたしの名前が職員室中に響き渡る。

すると担任が立ち上がって、調度良かったと言わんばかりにみーとをこっちに手招いた。

「黒川、本当に誰かわからないんだな?」

念を押すように担任が言うと、コクコクと大袈裟に頷いて見せる黒川さん。

「わかった‥で、あの紙の中は見たのか?」

彼女はまたも無言で首を横に振る。

「本当だな?信じて‥いいな?」

⏰:08/07/16 19:37 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#321 [桃色]
威圧するように顔を近づける担任に

「あたしだってそれぐらいの良心残ってるよ」

顔をぷいっと横に反らした彼女と目が合う。

そばまでやって来たみーとがその気まずい空気を何とか断ち切ってくれた。

みーとが何か言いかけたけど、それを遮るようにして

「桜井‥の弟だな。よし、黒川はもう帰っていいぞ」

担任が両手をぱんっと打ち鳴らすと同時に、黒川さんはそそくさと帰ってしまった。

⏰:08/07/16 19:37 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#322 [桃色]
‥結局謝ってももらえなかった。

腑に落ちないまま先生に問う。

「先生あたしは?」

「おー、まぁ座れ。桜井弟!」

担任の態度に違和感を覚える。

何というか‥妙に明るい。

「さっき増田先生から預かってきたんだが‥」

増田とはあたしから消しゴムを取り上げた教師だ。

ハゲ散らかした髪に清潔感は皆無。眼鏡の奥の目はいつもよどんでいる。

担任が胸ポケットから取り出したのはあの忌まわしい紙切れ‥

⏰:08/07/16 19:39 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#323 [桃色]
「ここに書いてあること、もちろん俺も増田先生も信じちゃいない‥」

そう言いながら折りたたんでいた紙のシワを伸ばし、あたしたちの目の前に差し出す。

両手で受け取りみーとと一緒に無言で目を通す。
 


それがカンニングペーパーだったら‥どんなにマシだっただろう。

狂気を帯びて乱雑に並ぶ文字‥

この時初めて実感する。

見えない恐怖‥

人の持つ恨みや妬み‥‥

⏰:08/07/16 19:41 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#324 [桃色]
今まで感じたことのない衝撃があたしの全身を貫く。

まるで崖から真っ逆さまに落ちていく感覚‥

いや、そんな簡単なことじゃない。

みーとの表情を見てそう思い直す。

「タチの悪いイタズラだろ。二年と言っていたし、弟、何か心当たりないか?」

「‥‥‥‥‥」

みーとからの返事はない。



‥できるわけなかった。

⏰:08/07/16 19:42 📱:SH703i 🆔:FuEcMsPg


#325 [桃色]
 


――――――――――
 近親相姦近親相姦
 近親相姦近親相姦
 近親相姦近親相姦
 近親相姦近親相姦
 近親相姦近親相姦
 近親相姦近親相姦
 近親相姦近親相姦
 近親相姦近親相姦
 近親相姦近親相姦
 近親相姦近親相姦
――――――――――
 


.

⏰:08/07/17 23:01 📱:SH703i 🆔:d1WaxaTQ


#326 [桃色]
紙切れいっぱいに書かれた文字。

持つ手が震えて二重にも三重にも見える。

それと同時に沸き上がってくる不安‥‥

もしも、もしも今朝の落書きとこの紙切れの犯人が同一人物だったとしたら‥

もしも名指しで書かれていたんだとしたら‥‥

‥‥‥‥‥

黒板消しを必死に動かす詩織ちゃんの姿が浮かぶ。

その可能性は

無くはない‥‥

⏰:08/07/17 23:01 📱:SH703i 🆔:d1WaxaTQ


#327 [桃色]
寒気が一気にあたしを包み、カチカチ鳴る歯を抑えようとするが上手くいかない。
 


「ゃ‥ぃゃ‥ぃやー!!」

突然奇声にも似た叫び声をあげるあたしの肩を、躊躇うことなく抱きしめるみーと。

それでもジタバタ暴れるあたしに

「みーほ、大丈夫。俺はここだよ」

みーとの声がどこか遠くで聞こえる気がして必死にみーとの名前を呼ぶ。

職員室の片隅で抱き合うあたしとその弟‥

⏰:08/07/17 23:03 📱:SH703i 🆔:d1WaxaTQ


#328 [桃色]
応接セットは囲いをされているものの、あたしの叫び声は職員室中に響き渡っていたはずだ。
 


みーとの声が届くたび、抱きしめる腕に力がこもるたび(先生の前なのに‥)そう思うのは頭だけで、心も体もみーとの温もりで何とか落ち着きを取り戻しつつあった。
 

「‥ゴホっ」

わざとらしい咳ばらいの音にみーともあたしもはっと我に返る。

と同時に突き飛ばすようにみーとから離れる。

⏰:08/07/17 23:03 📱:SH703i 🆔:d1WaxaTQ


#329 [桃色]
あたしとみーとを交互に見つめ、腕を組んで考え込む担任‥

(ヤバイ‥これ以上疑われるようなこと‥)

じわりと嫌な汗が滲む。

「お前らが仲いいのは十分わかった‥その様子だとこんなイタズラされても仕方ない‥か」

そうしてまた両手をぱんっと打ち鳴らす。

うつむいていたみーともあたしも拍子抜けして同時に顔を上げると‥

そこにはやけに納得した表情を浮かべた担任の顔があった。

⏰:08/07/17 23:04 📱:SH703i 🆔:d1WaxaTQ


#330 [桃色]
うん、うん、と二回頷いて

「弟、姉ちゃんのことしっかり守ってやれ!」

みーとの肩をバシバシ音がするくらい豪快に叩く。

「桜井、こんな頼りになる弟がいて良かったなぁ!」

あっけに取られたあたしはただ口を開けて担任の顔を見てるしかなかった。
 


職員室をあとにして、あずちゃんたちの待つ教室へと向かう‥

といってもなかなか足が進まない。

だけど少しだけ心が軽いのは、きっと担任のお陰だろう。

⏰:08/07/17 23:05 📱:SH703i 🆔:d1WaxaTQ


#331 [桃色]
向井先生‥

新任ではないが童顔で親しみやすい彼に憧れる女子は多いらしい。

あたしは全く興味ないけど‥

だけど今日、その人気の理由がわかった気がした。
 


三歩ほど先を歩くみーとが進行方向を向いたまま話し出す。

「俺‥悔しいよ‥」

立ち止まって窓の外を眺める横顔はひどく歪んでいた。

今にも泣き出してしまいそうなその表情を見ていられるわけもなく‥

⏰:08/07/17 23:07 📱:SH703i 🆔:d1WaxaTQ


#332 [桃色]
触れようと伸ばした手、だけどそれを理性が止める。

あたしの指は宙をさ迷い力無く元の位置に戻る。

切っても切れない姉弟という現実‥

重く、重くのしかかる。

あたしとみーとで半分ずつにしても、重すぎて耐え切れない‥

その時、パタパタと廊下を駆けてくる複数の足音が遠くの方から聞こえてきた。

「瑞穂!」

心配を顔に張り付けたような三人が、口々にあたしの名前を呼びながら駆け寄ってきてくれる。

⏰:08/07/17 23:08 📱:SH703i 🆔:d1WaxaTQ


#333 [桃色]
大事な大事なあたしの友達‥

隠したままでいるのは辛い。

きっと三人も、あたしから話すのを待ってくれてる。

それがわかるからなおさら‥‥

「湊斗くん、来てくれたんだね」

ほっとした表情を浮かべながらあたしの肩をぎゅっと抱く。

もう片方から寧々が、三人を覆うようにして詩織ちゃんが。

四人で抱き合いながら、こんなにも素敵な友達を持てたことを心から誇りに思った。

⏰:08/07/17 23:09 📱:SH703i 🆔:d1WaxaTQ


#334 [桃色]
 


「今日は湊斗くんと帰りな」

あずちゃんはそう言ってあたしの頭を軽くなでると

「そのかわり明日はあたしの番だからね!」

みーとの肩をトンっと小突いて詩織ちゃんたちと帰って行った。

いつも、どんな時でも味方でいてくれるあずちゃん‥

ありがとう。

もしもあずちゃんが悩んだり、困った時は絶対力になるからね‥

誓いにも似た思いを胸に、あずちゃんの背中が見えなくなるまで見つめていた。

⏰:08/07/17 23:09 📱:SH703i 🆔:d1WaxaTQ


#335 [桃色]
 


あたしたちはというと‥

ゆっくり考えながら帰りたいという理由で歩いて家まで帰ることにした。

「みーと‥あたしのせいで‥ごめん」

さっきのみーとの悔しがる表情が脳裏に焼き付いて離れない。

担任のやつ、あたしにだけ見せればいいものを‥

ついさっき感謝していたはずなのに、なんて恩知らずなあたし。

‥紙切れに書かれた四文字が、頭の中をぐるぐる回る。
せめて学校ではあたしがみーとを守らなきゃ‥

⏰:08/07/18 18:26 📱:SH703i 🆔:v7yy9LP6


#336 [桃色]
[近 親 相 姦 言うんやで!‥]

喫茶店でのレイラの罵声が蘇る‥‥

きっと今回もレイラの仕業だろう。

何でもかんでもレイラに結び付けるのは良くないかもしれないけど、他に思い当たる人物がいない‥

しばらく考え込んでいたせいで、隣にみーとがいない事に気付かないでいたらしい。

振り返ったときには遥か後方で表情もわからないほど離れていた。

⏰:08/07/18 18:28 📱:SH703i 🆔:v7yy9LP6


#337 [桃色]
 
ふと、思う‥

友達の距離‥

恋人の距離‥‥

姉弟の‥距離‥‥‥

あたしたちに相応しいのは、一体どれくらいの距離なんだろう。

みーとのいる場所まで引き返そうとすると、右手で制止のポーズをとられる。

黙って従いじっと待つ。

一歩、また一歩‥‥

確実にみーとが近づいてくる。

⏰:08/07/18 18:29 📱:SH703i 🆔:v7yy9LP6


#338 [桃色]
まっすぐにあたしを見つめて、何の迷いもない足取り。

時々揺れるみーとの髪。

ネコッ毛で柔らかくていい匂い。

フワッと香る優しい匂いがたまらなく好き。

あたしの頭をくしゃっとなぜる大きな手も‥

“みーほ”って呼ぶ、鼻にかかった高めの声も‥

全部、全部大好きだよ。

だけどやっぱりそうやって目を細めて笑う、その笑顔が一番好き‥

⏰:08/07/18 18:31 📱:SH703i 🆔:v7yy9LP6


#339 [桃色]
「手、繋ごっか」

返事の代わりに差し出された右手をつかむ。

改めて思う。

みーとだから好きなんだ。

「みーと‥あたしの弟に生まれてくれて、ありがと」

負けない‥

あんな紙切れや落書きなんかに‥‥

運命だって、受け入れてやる。

決意を込めて、みーとと繋がった左手にぎゅっと力を込める。

⏰:08/07/18 18:32 📱:SH703i 🆔:v7yy9LP6


#340 [桃色]
「ねぇみーほ‥夏休みに入ったら、話したい事があるんだ‥」

ゆっくりと話し出すみーとを見上げると、その瞳の奥には何かとてつもなく強い意志が宿っていた。

みーとの手にも力がこもるのがわかる。

その横顔に、いつかの夢で見たみーとがかぶる‥

「みーほがいたから、俺は今こうしてここにいられるんだよ‥」

呟くようにみーとが言った。

⏰:08/07/18 18:33 📱:SH703i 🆔:v7yy9LP6


#341 [桃色]
その言葉にどんな意味が隠されているかも知らないで、あたしはただ嬉しくて頬をゆるませ笑ってた。

鼻をすする音がして、もう一度みーとの方を向く。

だけど泣いてる様子はなくて、静かに二回頷いていた。

「俺にとって、みーほは生きる糧なんだ‥」

かすれた声でそう言うと、繋いでないもう一方の手であたしをゆっくり抱き寄せる。

⏰:08/07/18 18:34 📱:SH703i 🆔:v7yy9LP6


#342 [桃色]
誰かに見られやしないかという思いが一瞬頭をよぎったが、あたしの決意だって半端じゃないことを知ってほしくて、空いてる右手をみーとの腰にそっと絡めた。

お互い顔を見合わせて、小さく声をあげて笑う。

照れ隠しとは、こんなことを言うんだろう。
 


また元の位置に戻って歩き始めようとしたその時‥

「あっ!みーとっ!」

聞き慣れない幼い声が、遠くからみーとの名前を呼んだ。

⏰:08/07/18 18:37 📱:SH703i 🆔:v7yy9LP6


#343 [桃色]
見回しても声の主がどこにいるかわからない。

気のせいか、と思い直しまた歩き出そうとすると

「まってー」

やっぱり声がする。

すると草むらの影から園児が元気よく飛び出して来た。

!?

一瞬何がなんだかわからなかったあたしだったが、みーとの次の一言で全てが解決した。

「おー!たけるか?」

「ぴんぽーん!」

みーとの足にうれしそうにまとわり付く男の子。

⏰:08/07/19 20:37 📱:SH703i 🆔:xEYb4aJw


#344 [桃色]
お母さんたちの結婚記念日の日、スーパーでみーとが助けた迷子‥

小林たけるくんだった。

「きょうもおねーちゃんといっしょ?」

キラキラした目でみーとを見上げる。

この間より上手にしゃべれるようになった気がする。

「たけるは?ママと一緒?」

たけるくんを抱き上げながらみーとが尋ねると

「ううん、えりさー」

そう言って遥か彼方の人影を指さす。

ん?

えりさ?

どこかで聞いた事があるような‥

⏰:08/07/19 20:37 📱:SH703i 🆔:xEYb4aJw


#345 [桃色]
頭の上の疑問譜が取れないまま人影の方をじっと見つめる。

すると両手を口に当て、「すいませーん」と一礼してこちらに駆けてくるたけるくんの保護者らしき人物。

その距離が縮まるにつれ嫌な予感が芽生えてくる‥

向こうも歩くスピードが落ちて、恐る恐るといった様子だ。

先に疑いが確信に変わったのはあたしの方だった。

「く‥黒川さん!?」

⏰:08/07/19 20:38 📱:SH703i 🆔:xEYb4aJw


#346 [桃色]
もちろん黒川さんもそれに応えてはいるがその顔はひきつっている。

「かっ勘違いしないでよね!お姉ちゃんの子なんだから!」

ぐいっとたけるくんの手を引いて「帰るよ」と声をかけている。

「やーだー!みーととあそぶー!えりさだけかえればいーじゃーん!」

ダダをこねるたけるくんを見かねて

「よしっ!じゃあ公園行くか!」

チラッとあたしたちに目だけで了解を得ようとするみーとに、黒川さんがコクりと頷く。

⏰:08/07/19 20:39 📱:SH703i 🆔:xEYb4aJw


#347 [桃色]
やったー!と跳びはねて喜ぶたけるくんとみーとの後を、あたしと黒川さんが並んで歩く。

「‥‥‥‥‥‥‥」

もちろん無言で。

だけど先に沈黙を破ったのは黒川さんの方だった。

「‥知ってるの?猛のこと」

「‥‥前にね。お母さんも、知ってる。」

少し間を置いて答える。

すると次の言葉は黒川さんらしくない意外なものだった。

「いい奴ね、あんたの彼氏‥思ってるのと違ったな」

⏰:08/07/19 20:40 📱:SH703i 🆔:xEYb4aJw


#348 [桃色]
まずあたしに対して少なからず興味があったこと、そして何よりみーとが弟なんだって知らないってこと‥

「あたしさ、留年決まった途端フラれちゃったんだよね」

あたしが何も言わなくても勝手に話し続ける黒川さん。

「裏切られたーって思ったね。あたしはアイツが留年するなら一緒に辞めるつもりだったのに」

「‥好き‥だったんだ?」

「そりゃね、高校入ってすぐ付き合ったし、全部アイツに捧げたからね」

⏰:08/07/19 20:41 📱:SH703i 🆔:xEYb4aJw


#349 [桃色]
「‥まだ辛い?」

「‥‥‥‥‥‥」

しばらく続く沈黙。

公園のベンチに並んで座る。

学校ではいつも一人の黒川さん。

近寄りがたい雰囲気も、鋭い視線も、ただの思い込みだったのかな‥

もし今でも、別れた彼の影を追っているんだとしたら‥‥

あんな酷いことされたはずなのに、胸の奥がチクンと痛んだ。

⏰:08/07/19 20:41 📱:SH703i 🆔:xEYb4aJw


#350 [桃色]
あたしは深くため息をつくと

「あれね、弟!彼氏じゃないの」

猛くんとはしゃぎ回ってるみーとを、目で追いながら話し続ける。

「あたしが‥あんな仕打ちをうけなきゃならなかった理由」

きっぱり前を向いて言う。

もううつむかない。

何を言われてももう‥

「うそっ!?ごめん!あたしてっきりあんたの彼氏が人の女にちょっかい出したもんだと‥」

⏰:08/07/19 20:44 📱:SH703i 🆔:xEYb4aJw


#351 [桃色]
いきなりこっちを向いて話し出した黒川さんに驚いて、上半身が無意識に揺れる。

「そっかぁ、弟なんだ‥いい男だねーってウソウソ!あんたのでしょ?大丈夫だよ、取りゃしないから!」

そう言って笑いながらあたしの背中をぽんぽん叩く。 



黒川さんって、こんな人だっけ?

学校でのトゲがある印象など、今の彼女にはこれっぽっちもない。

⏰:08/07/19 20:45 📱:SH703i 🆔:xEYb4aJw


#352 [桃色]
もしかしたらこれが本当の彼女なのかも‥

そうであってほしいと願う。

「黒川さんってさ‥」

「江里沙でいいよ!」

先ほどの思いが現実のものになる。

ニコニコと笑う江里沙の表情。

今では学校での彼女の方が不自然に思える。

江里沙の好意をすんなり受け取り言い直す。

「江里沙ってさ、もしかして‥人見知り激しい?」

江里沙を見ると、照れた様子でへへっと笑う。

⏰:08/07/19 20:46 📱:SH703i 🆔:xEYb4aJw


#353 [桃色]
もうすぐ夏休みだっていうのに‥

もっと前から話しかけてれば、あんな事件も起こらなかったのかなぁ‥

「ねぇ江里沙、聞いていい?」

江里沙は小さく「ん?」と言う。

「どうして‥あんな事したの?」

しばらく返事が返ってこなくて江里沙の様子をうかがうと、少し悩んでいるらしく首をかしげて視線を落としている。

⏰:08/07/19 20:47 📱:SH703i 🆔:xEYb4aJw


#354 [我輩は匿名である]
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500
>>501-550

⏰:08/07/20 03:29 📱:W61SH 🆔:H61qZpaI


#355 [桃色]
アンカーありがとぅゴザイマス

⏰:08/07/21 00:11 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#356 [桃色]
 
「‥三人の中の一人がね、あんたの彼氏に女盗られたって言ったの」

思いもよらない江里沙の言葉に相槌をうつのを忘れてしまう。

「お金も‥いらないって散々断ったんだけどさ、『気持ちですから』ってひつこくって。だけどこの様子だと全部嘘だったみたいだね」

悲しそうに笑う江里沙に、かける言葉が見つからない。

⏰:08/07/21 00:12 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#357 [桃色]
「だからって自分がしたこと棚に上げるわけじゃないよ。本当に悪いと思ってる。あの方法でやるべきじゃなかった‥」

江里沙はすっと立ち上がってあたしの前に立つと、勢いよく頭を下げた。

その向こうに心配そうなみーとの姿が小さく映る。

「許してもらおうなんて思わない‥けど‥ごめんなさい」

あたしも立ち上がり江里沙の顔を上げさせる。

⏰:08/07/21 00:13 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#358 [桃色]
「そんな‥江里沙が全部悪いんじゃないんだし。むしろあたしのせいで巻き込まれたんだから、そんなに自分を責めないで」

江里沙の目には薄く涙が滲んでいた。

「それからっあんたじゃなくて、瑞穂って呼んで?」

ぱっと笑顔になる江里沙を見て、胸の辺りが温かくなる。

こんな機会を与えてくれた、猛くんに感謝しなきゃ。 



お腹が減ったと言う猛くんが江里沙の所へ戻って来たので、「また明日」と手を振り別れた。

⏰:08/07/21 00:13 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#359 [桃色]
人生嫌なことばっかりじゃないな。

江里沙の笑顔に見送られながらそんな思いを噛みしめていた。
 



次の日、みーとといつも通り登校して、いつも通り教室へ向かう。

途中ヒソヒソと陰口をたたく人たちもいたけどそんなの気にしない。

するとあたしたちのクラスの廊下であずちゃん、詩織ちゃん、寧々、そして頭を下げる江里沙の姿が見えた。

あたしもその場に加わり、昨日公園で話した内容を三人に話す決心する。

⏰:08/07/21 00:14 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#360 [桃色]
そう‥

あたしの、みーとへの正直な気持ち‥

それをみんなに伝えようと思う。

みんなの元へ走り出そうとしたその時、突然視界が遮られた。

思わず眉間にシワを寄せて目の前に立ちはだかる人物の顔を見上げると

「よっ!」

いつにも増して爽やかな園田くんだった。

一歩下がったあたしの表情は不機嫌だったに違いない。

「まぁそんな顔すんなよ!何も取って食おうってわけじゃないんだから」

⏰:08/07/21 00:14 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#361 [桃色]
壁に体重を預けてポケットに手を入れる園田くん。

そのモデルさながらの姿に(なるほどモテるのもわかるなぁ)なんて呑気に考える。

渋々そこに留まって話しを聞く態勢を取る。

「昨日‥大変だったみたいだな。どうせ根本ちゃんの仕業だろ?」

何でそんなこと園田くんが‥?

やけに詳し過ぎるんじゃ‥

疑いの目を向けるあたしに焦った様子でポケットから出し、ヒラヒラと否定の意を表す。

⏰:08/07/21 00:15 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#362 [桃色]
「あれだよ‥梓に昨日、聞いたんだ」

恥ずかしそうにこめかみをかきながら話す園田くんを見て、中庭でお弁当を食べたときのあずちゃんの行動を思い出す。

まさかこの二人‥‥

昨日自分の身に起きたことなんてすっかり忘れて思いを巡らす。

そして一つの答えにたどり着いたあたしは、黙ってることなんてできなくて思ったことをそのまま口に出してしまう。

⏰:08/07/21 00:16 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#363 [桃色]
「ねぇ、園田くんとあずちゃんって‥もしかして付き合ってるの?」

期待に満ちたあたしの目を見て言葉に詰まる園田くん。

すると後ろから聞き慣れた声が近づいてきた。

「瑞穂‥と洋介!?」

驚いた様子で走って来たのはあずちゃんだ。

「あんたっ!また瑞穂にちょっかいかけてんでしょ!」

怒ってるというよりは、しょうがないなという感じ。

あずちゃんの表情はいつになく穏やかだ。

⏰:08/07/21 20:26 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#364 [桃色]
それはつまりそういうことなんだろう。

「あずちゃん、園田くん、おめでとう!」

まるで自分の事のように嬉しい。

あずちゃんの手をとると涙が出てきた。

するとあずちゃんは気まずさを隠せない様子で、少し複雑な表情を浮かべる。

「瑞穂がこんなときに‥ごめん‥」

その言葉を聞いたとき、なんて自分はバカなんだと思った。

⏰:08/07/21 20:27 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#365 [桃色]
「あたしの方こそごめん!あたし‥自分のことばっかりで‥‥あずちゃん、悩んだこともあったよね?」

話してる途中で涙が溢れてくる。

「何も相談しなくて‥本当にごめん」

もう言葉にならなくて首を思い切り横に振る。

握るあずちゃんの手の甲に、あたしの涙が数滴落ちた。

「あのね、あたしも‥あずちゃんに聞いて欲しいことがあるんだ‥」

言い切ったところで本鈴が鳴る。

⏰:08/07/21 20:28 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#366 [桃色]
まだ涙が乾かないままのあたしは、園田くんに手を振るあずちゃんに引っ張られ教室へ入った。
 

教室の中でも噂の標的にされるあたし‥

無視が一番と、背筋を伸ばして堂々と席に着く。

だけど次の瞬間、ガタンと音を立てて立ち上がったのは江里沙だった。

「昨日の事はあたしが悪いの。文句があるならあたしに言って」

静かで低いその声は、教室の中を一瞬にしてしんとさせた。

⏰:08/07/21 20:29 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#367 [桃色]
 


江里沙のおかげで窮屈な思いをしなくて済み、二日目のテストは何の問題もなく全科目を終える事ができた。

テスト期間中は終礼がないので、そのままあずちゃんたちと帰ろうとすると突然担任がやってきた。

「黒川と桜井ちょっと来てくれ」

廊下からひょっこり顔を出しながらのその一言に、まだ教室に残っているクラスメートの好奇の視線があたしたちに向けられる。

⏰:08/07/21 20:30 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#368 [桃色]
すかさずガンを飛ばす江里沙を引っ張り担任の所へ行くと、みんな気になるようでドアの向こうから入れ代わり様子をうかがってくる。

気づかってくれたのか担任が舌を出しながらピシャリとドアを閉めてくれた。

するとその表情は一変、真剣な面持ちに変わる。

「昨日の件なんだが、誰の仕業かわかったぞ」

ドクンと胸に嫌な波が立つ。

えりさも同じらしく、顔を見合わせてから担任の方を同時に見る。

⏰:08/07/21 20:30 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#369 [桃色]
「黒川んとこへ紙もってきたのは二年の岡部、山本、河合だ。つってもわからんだろうから説明すると‥まぁヤンチャな連中だ。んでそいつらに頼んだって奴がいてだな‥えーと、」

出席簿に何か挟んであるらしく、それを見ながら言った名前はしっくりあたしの耳になじんだ。

「根本、麗羅だ」
 



やっぱり‥!

⏰:08/07/21 20:32 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#370 [桃色]
P[眠り姫様]q・v・)⌒+゚

一気読みありがとぅゴザイマス(人μωμ)

良ければマタ感想聞かせてクダサイ'ェ`*)σ!

⏰:08/07/21 20:34 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#371 [桃色]
スミマセン

感想板と間違えました
(*pд`q)

⏰:08/07/21 20:36 📱:SH703i 🆔:Fp4UkGy.


#372 [桃色]
あたしが歯を食いしばる様子を見て江里沙が知り合いなのかと尋ねてくる。

簡単な事情を江里沙と担任に話すと

「それは完璧に逆恨みってやつだな」

担任は呆れたように天井を見つめ、江里沙は逆に足をタンタン打ち鳴らして

「あたしがシメてやってもいいよ」

と指をパキパキ鳴らしている。

「‥自分たちの問題だから、自分の力で解決したいの。だけどもし必要ならその時はお願い‥」

⏰:08/07/22 12:37 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#373 [桃色]
好意を無下にしないよう、丁寧に断っておく。

少し残念そうだったけど、なんとか納まりが着いようだ。

「ま、こういう事は男がしっかりせにゃならんぞ」

そう言うと担任はヒラヒラ手を振り去って行った。

その背中を眺めながら

「ねぇ、向井って瑞穂たちのこと知ってるの?」

江里沙があたしに聞いてくる。

「‥あたしも今、思ってたとこ‥」

仲が良いのは周知の事実なんだろうけど‥

⏰:08/07/22 12:38 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#374 [桃色]
まさか、昨日抱き合ってたから‥?

それにしては受け入れが早いというか‥

ぐるぐる回る疑問と同じ数だけあたしの頭上に疑問譜が浮かぶ。

向井 透‥

あなどれないなぁ。

なんて考えていると窓からひょこっと詩織ちゃんが顔を出す。

「向井先生なんだって?」

「うん‥帰りながら話すよ」
 



もちろん帰りながらで時間が足りるはずもなく‥

⏰:08/07/22 12:39 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#375 [桃色]
学校の近くのファミレスに江里沙も含む五人で入る。

「やっぱりあたしの睨んだ通り!」

持っているメニューを折り曲げそうな勢いでいきり立つあずちゃん。

「だけど何でそうまでして嫌がらせしてくるのかしら?」

詩織ちゃんが眼鏡を上げる。

「女の執念ってやつ‥?」

わざと低い声で話す寧々に四人全員背筋が凍る。
 


レイラの話しはほどほどに、みんなのドリンクが揃ったところであたしはついに話し出す決心をした。

⏰:08/07/22 12:40 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#376 [桃色]
 


「‥あのね‥」

あたしの表情から読み取ったのか、全員集中して聞いてくれようとする。
 

ひと呼吸おいて恐る恐る口を開く‥

「今まで、ずっと黙ってたこと‥まず謝らせて‥本当に、ごめん。みんな気づいてると思うけど、あたし‥みーとのことが好き、なんだ‥っ」

精一杯の気持ちを伝える。

無言で頷くみんなの表情は‥

⏰:08/07/22 12:40 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#377 [桃色]
温かい。

「好きっていうのは、弟としてじゃなく‥異性として‥。今まで言えなくて本当にごめん‥」

目線を落としてテーブルの下で震える手をぎゅっと抑える。

「こんなあたしでも、友達でいてくれる?」

恐くて顔を上げられないでいると

「何言ってんの!当ったり前でしょ!?」

少し怒ったような笑顔であずちゃんが答えてくれる。

⏰:08/07/22 12:42 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#378 [桃色]
 
良ければ使ってクダサイ

●アンカー●
>>2
 
.

⏰:08/07/22 12:45 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#379 [桃色]
「そんなのずっと前から知ってたってゆうかバレバレ!」

大きな胸をテーブルに乗せてオレンジジュースをすする寧々。

「まぁ、あたしは弟くんのこと最初っから彼氏だと思ってくらいだし?」

江里沙もニヤッと歯を見せて笑う。

「バカねー、何でも話せるのが親友でしょ?」

長い髪を耳にかけながら、詩織ちゃんも笑ってる。

心がどんどん満たされていく‥‥

⏰:08/07/22 20:11 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#380 [桃色]
その瞬間、詩織ちゃんの言葉に反応したあずちゃんが手を挙げて口を開いた。

「わたくし、瀬能梓は昨日を持ちまして園田洋介の彼女となりましたっ」

まるで何かの宣言みたいに堂々たる発表。

言い終わってすぐ耳まで真っ赤に染まったあずちゃんに、可愛い以外の表現が見つからない。

あたしたちは感嘆のため息を漏らしながら拍手をする。

⏰:08/07/22 20:12 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#381 [桃色]
「どっちから?」

寧々の質問にみんなの体が前のめりになる。

「む‥向こうから」

意外な答えに園田くんの過去の行動が全てあずちゃんの気を引くためのものだったということがわかる。

帰ったらみーとに話さなきゃ。

ニマニマしていると

「瑞穂はどうなのよ?」

まだ顔のほてりが引いていないあずちゃんに無理矢理矛先を向けられる。

少し考えて

「‥みーとから?だけどほんと最近で‥」

⏰:08/07/22 20:12 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#382 [桃色]
両手で否定の意を表しながら話すあたしに口を揃えて

「いつから?」

と聞く四人。

「‥三年になってすぐ‥かなぁ」

あれ?だけどちゃんと好きって言われたのは‥

一人でブツブツ考えていると

「湊斗くんよく我慢してたわね」

「あたしはてっきり出会った頃にはもう‥」

「最近まで自分の気持ちに気付いてなかったわけ?」

口々に思い思いのことを言われたじたじのあたし‥

⏰:08/07/22 20:13 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#383 [桃色]
話題を変えようと

「そういえば担任があたしたちのこと気づいてたみたいなんだよね‥そんなにバレバレなのかなぁ?」

するとこれまた意外な人から意外な答えが‥

「透ちゃん?透ちゃんならあたしが話したのっ」

その声の主は‥

なんと寧々。

四人ともおそらく同じ顔をしていたと思う。

みんながみんな口を開けて寧々の方を凝視している。

⏰:08/07/22 20:15 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#384 [桃色]
ぷっと吹き出して寧々が笑う。

「‥透ちゃん、向井先生ね、うちのお兄ちゃんと大学もサークルも一緒だったからよく家に来てたんだ。って言っても今でもちょくちょく遊びに来るんだけど」

たんたんと話す寧々そっちのけで

「っえー!!?」

四人合わせて絶叫の大合唱だ。

当の寧々はというと、涼しい顔してジュースに手をかけまるで他人事と言わんばかりに顔色一つ変えないでいる。

⏰:08/07/22 20:15 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#385 [桃色]
ズレた眼鏡を直しながら

「そんなの全くの初耳よ」

寂しそうな詩織ちゃん‥

「まぁ、その‥色々と事情がてるんだよね」

まだ何か隠してそうな寧々の言葉に詮索したい気持ちが募るがぐっとこらえる。

「話せる時が来たら、その時は真っ先に話すから‥」

申し訳なさそうにうつむく寧々に

「あたしだって、今の今まで話せなかったんだし!」

むなしく空回るあたしの言葉。

⏰:08/07/22 20:16 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#386 [桃色]
こんなフォローで詩織ちゃんの心が埋まるわけもなく‥

「ま、まぁ誰にだって秘密の一つや二つくらい‥ね!?」

何とかこの場を取り繕おうと江里沙も頑張ってくれる。

すると詩織ちゃんは短くため息をついて

「そうね、あたしにだって無くはないし‥寧々が話すまであたしもとっとくか」

ニッと笑って寧々の頭に自分のこめかみをコツンと合わせた。

⏰:08/07/22 20:17 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#387 [桃色]
詩織ちゃんの秘密も気になって仕方なかったが、とりあえずほっとした矢先、あずちゃんの携帯が可愛いらしいオルゴールの音色で着信を知らせる。

「あ、洋介だ」

嬉しそうに席を立つあずちゃん。

その様子を微笑ましい気持ちで眺めていると

「そろそろあたしも行くかな」

腕時計を見ながら詩織ちゃんも席を立つ。

「かてきょのバイト?」

寧々の質問にコクコクうなずくその頬が、いつもより弾んで見えたのは‥あたしだけかな?

⏰:08/07/22 20:20 📱:SH703i 🆔:wi8v3me6


#388 [桃色]
 



「‥でね、あず‥‥がね、‥‥‥‥聞いてるの?」

今日あったことをみーとに話しているのだが、何だか心ここにあらずといった感じ。

あたしの声が留まることなく右から左へと通り抜けてるのがわかる。

「うん‥うん‥」

「‥‥‥‥‥‥」

「うん‥う‥」

「今何も話してなかったんだけど!」

明らかになま返事のみーとに苛立ち部屋から出ようとする。

⏰:08/07/24 16:15 📱:SH703i 🆔:YiG6dJNc


#389 [桃色]
「え、みーほ?」

慌てる様子のみーとに思い切り「いーっだ!」と言ってドアノブに手をかける。

「‥っ!」

いきなり後ろから抱きしめられて、変な声が出そうになった。

みーとがあんまり力を込めるので、あたしは体の自由を奪われ部屋から出ることを諦める。

「何‥考えてたの?」

みーとが上の空なんて珍しい。

またレイラに何かされたのかも‥

⏰:08/07/24 16:15 📱:SH703i 🆔:YiG6dJNc


#390 [桃色]
そんな事を考えていると、体が宙に浮くぐらい強い力で抱きしめられる。

「う‥く、苦しいよみーと」

あたしの声にピクッとみーとの体が反応したかと思うと

「ごっごめん‥」

いきなり力を抜くもんだから、足がフラついてドアに頭をぶつけそうになる。

「どうしたの?何か変だよ?」

振り返ってみーとの顔を覗き込む。

⏰:08/07/24 16:16 📱:SH703i 🆔:YiG6dJNc


#391 [桃色]
いつもと違って憂いを帯びたその目は、言いたいのに言えない何かを隠して、ただあたしの不安そうな顔を映し込んでいる。

(みーとのこんな瞳見たことない‥)

だけどどうしてかな?

目が離せない。

一瞬でもそらせばみーとが消えて失くなりそうで‥

胸騒ぎと共に心臓が鈍い痛みを訴える。

どうしてこんな気持ちにさせるの?

⏰:08/07/24 16:17 📱:SH703i 🆔:YiG6dJNc


#392 [桃色]
「今日も‥みーとのベッドで寝ていい?」

震える声でそう聞くと、コツンとおでこを合わせられ「うん」といつもの笑顔で答えてくる。

不自然なまでのみーとの笑顔‥

あたしの不安は消えるばかりか、大きく暗く膨らんでいく。


 

[夏休みに入ったら、話したいことがあるんだ‥]

なぜか昨日のみーとの言葉を思い出す。

嫌な予感‥

どうか気のせいでありますように‥‥

⏰:08/07/24 16:24 📱:SH703i 🆔:YiG6dJNc


#393 [桃色]
使ってクダサイ

●アンカー●
>>2

●感想板●
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3672/

コメントいただけたら嬉しいデスヾ(¨)ノ

⏰:08/07/24 16:35 📱:SH703i 🆔:YiG6dJNc


#394 [桃色]
 


みーとに手を引かれ、ベッドの上に二人で寝そべる。

「あずちゃん先輩、洋介さんとうまくいったんでしょ?」

なんだ、さっきの話しちゃんと聞いてくれてたんだ‥

「まぁくっつくのは時間の問題だと思ってたけどね」

‥良かった。

いつものみーとだ‥
 

ねぇ、どこへも行かないでね?

不安があたしを大胆にさせる‥

仰向けに寝るみーとの腕を枕にして、Tシャツの胸辺りをきゅっと掴んでみる。

⏰:08/07/24 23:52 📱:SH703i 🆔:YiG6dJNc


#395 [桃色]
みーとの鼓動がだんだん速くなるのがわかる。

それと同時に自分のしたこととはいえ、この後どうするべきなのかわからなくて、じっとしているしかなくなる。

みーとの鼓動なんて比じゃないくらい、速く脈打つあたしの心臓‥

耳にじんじん響いてうるさい。

これ以上の沈黙には耐えられそうにないと体を起こそうとした瞬間‥

みーとの空いている方の手があたしの体を覆ってくる。

⏰:08/07/24 23:53 📱:SH703i 🆔:YiG6dJNc


#396 [桃色]
思わずぎゅっと目をつむると、クスッと笑って

「めずらしいね、みーほから甘えてくるなんて」

胸にこもるみーとの声が、耳から直接脳を揺さぶる。

このままあたし、どうにかなりそう‥

みーとの匂いがふわっと香ったかと思ったら、一気にみーとがあたしをまたぎ、四つん這いの体勢をとった。

下から見上げるみーとの顔は、何だかいつもより力強くて雄々しい‥

⏰:08/07/24 23:53 📱:SH703i 🆔:YiG6dJNc


#397 [桃色]
ドキドキしすぎて目が潤んでくる。

恐い‥

とは思わない。

そんなみーとをただじっと見つめることだけに集中する。

「‥そんな顔されたら俺、我慢できない‥‥」

苦しそうに歪む表情から吐かれるセリフは、悩ましくて艶っぽくて‥

また心臓が悲鳴をあげる。

あたしだって‥

あたしだって触れて欲しくて気が変になっちゃいそう‥‥

みーとに全てを委ねようとゆっくり目を閉じてみる‥

⏰:08/07/24 23:54 📱:SH703i 🆔:YiG6dJNc


#398 [桃色]
 


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
 


だけどいくら待っても何も起きることはなかった。


ぎしっとベッドが大きくきしんだかと思うと、みーとによって遮られていた蛍光灯の光りがまぶた越しに伝わった。

恐る恐る片目を開けると、ベッドのわきに座っているみーとが見えた。

何となく気まずくて、そして恥ずかしくて‥

取りあえずあたしもその場に座る。

⏰:08/07/24 23:57 📱:SH703i 🆔:YiG6dJNc


#399 [桃色]
 

‥‥少しの沈黙‥‥


「本当に俺でいいの?」

あたしに背中を向けたまま、呟くように話すみーと。

‥あたしは言葉に詰まってしまった。

みーとの背中を見つめながら、さっきの質問の真意を考える。

[‥俺でいいの?

 ‥‥俺でいいの?

 ‥‥‥俺に抱かれても

 ‥‥‥‥‥いいの?]
 


.

⏰:08/07/24 23:59 📱:SH703i 🆔:YiG6dJNc


#400 [桃色]
――――――――
―――――
――

次の日‥

目が覚めると隣にみーとの姿はなかった。

嫌な予感が全身を襲う。

またあの時みたいに避けられたら‥

だけどその不安はすぐに消えた。

しばらくすると、頭にタオルをかけたみーとが部屋に戻って来たからだ。

「朝風呂?」

「うん、何か早くに目が覚めちゃって‥ちょっと走ってきた」

そう‥とだけ言ってあたしも自分の部屋へ行き用意をする。

⏰:08/07/25 19:25 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#401 [桃色]
そして、思い出す‥

夕べのことを‥‥‥‥
 

――――
―――――――――

[みーと‥]

結局答えが見つからなかったあたしは、どうすることもできずただ名前を呼ぶことしかできなかった。

するとみーとは振り返り

[ごめんごめん、困らせるつもりじゃなかったんだ]

そう言って笑うとあたしの頭をくしゃっとなでて、[寝ようか]といつものように布団に潜ったのだった‥

⏰:08/07/25 19:27 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#402 [桃色]
もちろん何があったわけでもなく‥

ただオヤスミのキスをおでこにされただけだった。

‥これで良かったのかな‥

‥傷つけてないかな‥

‥何て言えば良かったんだろう‥

あずちゃんたちに相談できるようになったのはいいけど‥

今度はどう話すかで悩んでしまう。

さすがにこんな話しともなると引かれやしないだろうか‥

⏰:08/07/25 19:28 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#403 [桃色]
根本麗羅のあの罵声が蘇る‥

頭を振ってレイラを追い払おうとしていると

「なにやってんの?」

呆れた様子でドアの前に立つみーとと目が合う。

「なっ、な何でも!」

恥ずかしくて体温が上がる。

「あ、根本さんのことなら何とかするから。もう心配いらないよ」

あたしの頭は透けてるんじゃなかろうか‥

思わず頭を両手で覆う。

⏰:08/07/25 19:29 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#404 [桃色]
「何とかって?」

あたしの行動を見て不思議そうに笑うみーとは、返事をすることなくダイニングへ降りて行った。

そんなみーとを目で追いながら、普段通りのみーとの態度にほっと胸を撫で下ろした。

(昨日のことは、取りあえず胸にしまっておこう‥)

「ご飯できたわよー」

お母さんの呼びかけに返事をしながらあたしもダイニングへと向かった。

⏰:08/07/25 19:30 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#405 [桃色]
 



そして今日は終業式。

向井と寧々を交互に眺めながら、昨日の寧々を思い出す。

(透ちゃん、ねぇ‥)

確かに寧々は向井先生のことをそう呼んでいた。

それも呼び慣れた恋人の名を呼ぶように。

いつか話してくれるその日が楽しみだな‥

なんて考えていると後ろからあずちゃんが声をひそめて話しかけてくる。

⏰:08/07/25 19:32 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#406 [桃色]
「ねぇねぇ瑞穂、終わったら二年の校舎行こう?」

「どうして?」

あたしも声のトーンを落としてできるだけ後ろにもたれて答える。

「根本さん!明日から夏休みだし、とっちめに行こう!」

とっちめ‥

思わずズッコケそうになる。

「あずちゃんの気持ちは嬉しいけど‥昨日みーとが言ってくれたの。もう心配いらないって」

「そっか」と言って肩を落とすあずちゃん。

ありがとう、心配してくれてたんだよね‥

⏰:08/07/25 19:33 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#407 [桃色]
 


模試の日程や課題についての説明が一通り終わり、通知表を渡される。

現代文以外はほとんど赤点スレスレだったあたし‥

まず補習は確実だろうな‥

‥思った通りの結果にため息をひとつ、通知表を閉じる。

「補習受けなくちゃならない奴には事前にプリントいってるはずだ」

担任の言葉に一筋の光‥

あたし、プリントもらってない‥!

⏰:08/07/25 19:34 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#408 [桃色]
高校生活最後の夏休み。

花火に海にバーベキュー、頭の中は受験生とは思えないほど遊ぶことでいっぱいだった。

終礼のチャイムが鳴る。

江里沙と詩織ちゃん、寧々に別れを告げ、あずちゃんは園田くん、あたしはみーとを昇降口で待つ。

「ねぇあずちゃん、聞いていい?」

「そろそろ聞かれると思ってた」

照れたように笑って見せるあずちゃんの表情は、恋する乙女そのものだ。

「いつから園田くんのこと好きだったの?」

⏰:08/07/25 19:34 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#409 [桃色]
「ん〜、これといってきっかけはなかったんだけど‥ほら、目立つじゃん?洋介って」

確かに学年、いや学校一人気があると言っても過言じゃない園田くん。

「最初はこんな奴のどこがいいんだって思ってた。みんながみんなお前に惚れると思うなよ、ってさ。だけど誰にでも、もちろんあたしにも優しい洋介見てたら、いつの間にか嫉妬してるあたしがいたの‥」

きっと今あずちゃんの中で、園田くんとの色んな思い出がかけめぐっているんだろう。

⏰:08/07/25 19:37 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#410 [桃色]
赤く染まった頬があずちゃんをより乙女に見せる。

「それからは結構地獄だったよ。アイツのモテかた異常じゃん?胃に穴あくかと思ったもん」

中庭での出来事を思い出す。

あの時聞いてあげれてれば‥

「瑞穂がそんな顔することないって!ほら、今はあたし幸せ‥だし」

さっきよりも染まった頬はもう真っ赤に近い。

「のろけられちゃった」

からかうように舌を出すと

「ま、瑞穂たちには負けるけどね」

⏰:08/07/25 19:38 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#411 [桃色]
あずちゃんの細い指が、あたしのおでこをピンッと突く。

「さぁ、おのろけ話しもほどほどに!」

立ち上がってスカートについた埃を払う。

「あずちゃん、今年のお祭りは‥」

「もちろん洋介と行くでしょ」

うぅ‥やっぱり‥

もぅあたしだけのあずちゃんじゃないんだね‥‥

遠い目であずちゃんを見つめていると

「おっすー」とあずちゃん愛しの園田くんがやってきた。

⏰:08/07/25 19:38 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#412 [桃色]
「聞いたよ園田くん。大事にしてよねあずちゃんのこと。泣かせたりしたら承知しないから!」

あずちゃんを取られた寂しさを、つい園田くんにぶつけてしまう。

「おっと、それだったら心配いらねーよん!コイツが泣くのは俺が死んだときぐらいだぜ」

また調子の良いこと言っちゃって‥

いつも飛び出すあずちゃんの華麗なツッコミを期待していたが、一向にその気配がない。

振り返るとそこには耳まで真っ赤になったあずちゃんがいた。

⏰:08/07/25 19:39 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#413 [桃色]
「‥その言葉、信じていいの?」

「ったりまえだろ!?」

「う、嬉しいけど‥死ぬまで一緒にいてくれる気?」

「お前がそうしたいんなら、俺は全然かまわねーけど?」

‥‥完全に二人の世界‥‥

見てるこっちが恥ずかしい。

そのまま仲睦まじく帰っていく背中に手を振りながら思う。
 

‥二人が、羨ましいと。

⏰:08/07/25 19:40 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#414 [桃色]
良ければ使ってクダサイ

●アンカー●
>>2

ご感想はコチラニ

●感想板●
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3672/

⏰:08/07/25 19:44 📱:SH703i 🆔:LwOZeH2A


#415 [桃色]
 
あずちゃんたちの姿が見えなくなってから少しして、あたしにも待ちわびた愛しい人がやっと来た。

「待たせてごめん!ちょっとミーティングとか色々あってさ‥」

相当走ったらしいみーとの肩は息をするたび大きく上下する。

「帰ろっか」

苦しそうに片目をつぶりながら話すみーとは視界に入らず、あたしの目にはさっき見送ったあずちゃんたちの幸せそうな後ろ姿が焼き付いて離れなかった。

⏰:08/07/26 23:25 📱:SH703i 🆔:7fxghcF6


#416 [桃色]
なんだか突然やるせなくなる‥‥

みーとが「待って」と言うのも聞かず、とぼとぼ昇降口を出る。

考えても答えが出ないことなんてわかりきってる。

だけどやっぱり、片時も忘れることなんてできない。

  “姉弟”

固く結ばれたその絆は、決してほどけることはない。

「みーほ!」

肩をつかまれ後ろに倒れそうになる。

⏰:08/07/26 23:25 📱:SH703i 🆔:7fxghcF6


#417 [桃色]
それをみーとが支えてくれて、ようやくあたしたちは顔を合わせた。

少し困ったように、わずかに眉を動かすみーと。

それを無言で眺めるあたし。

自分でも思う‥

可愛くないよね。

「どうしたの?みーほ」

「そっちこそ、どうだったの?レイラちゃん」

「話しすり替えんなよ!俺はみーほに聞いてるんだろ!?」

あたしの肩をつかむみーとの手に力が入る。

⏰:08/07/26 23:26 📱:SH703i 🆔:7fxghcF6


#418 [桃色]
痛いのと怒鳴られたので顔を歪ませそれでも黙っていると、お願いだとでも言わんばかりに頭を下げてきた。

「だって‥みーほ泣いてるんだもん‥」

そう言われて初めて気づく。

自分の頬が濡れていることに。

正門を出て少しの所。

たくさんの下校生でにぎやかな道のど真ん中。

あたしは涙を流していた。

みーとはそっとあたしの手を引き、少しでも人通りの少ない脇道へ移動する。

⏰:08/07/26 23:27 📱:SH703i 🆔:7fxghcF6


#419 [桃色]
「ごめん、あたし泣いてるつもりなんて全く‥」

「また‥不安にさせた?」

わずかに首を横に振る。

だけど「そうじゃない」という言葉はすんなり口から出てこなかった。

「‥とりあえず家に帰ってゆっくり話そう?」


‥こんなあたしでもいつもと変わらず優しくしてくれるみーと‥

あたしはいつも与えられるばかりだ。

こんな自分に嫌気がさす。

⏰:08/07/26 23:44 📱:SH703i 🆔:7fxghcF6


#420 [桃色]
 


バスの中でも無言のままのあたし。

こんな態度しかとれないのはただ単にあずちゃんたちが羨ましかったから?

それならあたしは世の中の全てを羨んで生きてかなきゃいけないだろう‥

もちろん二人のことは羨ましいけど、それ以前に祝福する気持ちの方が強い。


わかってるのに考えないフリしてた。

あたしの胸のモヤモヤは、それ以外にあるんだってこと‥
 

バスのアナウンスがあたしたちの降りる停留所の名前を告げる。

⏰:08/07/27 19:19 📱:SH703i 🆔:Bw/uziKY


#421 [桃色]
先に降りて待っていてくれるみーとの背中‥

昨日、あの背中にすがっていたら‥

今あたしはこんな気持ちになってなかった?

わからない‥

わからないけど‥‥

あたしの覚悟がそんなもんだったのかって、自分で自分を責めてるのかもしれない。

今さら押し寄せる後悔と自責の念でみーとの顔がまともに見れない。

⏰:08/07/27 19:20 📱:SH703i 🆔:Bw/uziKY


#422 [桃色]
みーとはそんなあたしの手を、黙って優しく握ってくれる。
 

“不安になったらその都度信じさせてやるよ”


本当だねみーと。

みーとのこの手の温もりだけで、あたしの心はみるみるうちに軽くなっていく‥

「じゃあ、まずは俺から話そうかな‥」

あたしが話し出すか出すまいかのところで、みーとが先に口を開いた。

⏰:08/07/27 19:21 📱:SH703i 🆔:Bw/uziKY


#423 [桃色]
ちゃんと目を見てコクンと頷いてみせる。

ほっとしたのかみーとにも笑顔が戻って、繋いだ手をもう一度深く握り直した。
それから少し間を置いてみーとがゆっくりと話し出す。

「それが‥昨日あんなこと言っておいてなんなんだけど、根本さんまた転校するらしくて今日はもう学校に来てなかったんだ」

「え‥」

あたしの歩幅に合わせながら、ゆっくりと進むあたしたち二人の短い影‥

⏰:08/07/27 19:22 📱:SH703i 🆔:Bw/uziKY


#424 [桃色]
「携帯番号もメアドも交換しなかったし、転校先聞いてまではさすがに‥」
 

今までの仕打ちを考えると、すんなり納得なんてできそうにない。

足元から伸びる影、アスファルトに焼け付くんじゃないかと思うくらいの直射日光。

ジリジリと肌が焼ける感覚と同時に、沸々と怒りが込み上げてくる。


その時だった。


噂をすれば何とやら‥

くしゃみをしていたかまでは定かじゃないけど、あたしたちの家の前に見える人影‥‥

⏰:08/07/27 19:43 📱:SH703i 🆔:Bw/uziKY


#425 [桃色]
 

根本麗羅、その人だった。

みーとの手をぎゅっと握って身構えるあたし。

それに応えるようにして、みーとがあたしの一歩前に出る。

「根本さん‥どうして?」

「やっぱり仲ええねんな、あんたら」

前とは違って今日は何だかトゲがない。

「安心してや、今日は文句言いに来たんちゃうねん。忠告しに来ただけやから‥」

いつもと違うレイラの様子に、少し戸惑いながら首をかしげるあたしとみーと。

⏰:08/07/27 19:45 📱:SH703i 🆔:Bw/uziKY


#426 [桃色]
「上がらせてもうていい?」

全く意図のわからないレイラの言葉に、みーともあたしも顔を見合わせ困惑の表情を浮かべる。

「知ってるかもしれんけど、あたしまた転校すんねやんかぁ。あやまりたいこともあるし、これがホンマに最後やから‥」
 

明らかにいつもと様子の違うレイラ。

本来なら塩を撒いて追い返したいところだが、そこまで言われたら‥

あたしもみーとも家のドアを開けるしかなかった。

⏰:08/07/27 19:53 📱:SH703i 🆔:Bw/uziKY


#427 [桃色]
お母さんは仕事でいなかったので、ダイニングで話すことにした。

エアコンつけると生温い風が部屋の中を通り抜ける。

冷えた麦茶を人数分出し、みーとと並んでレイラの正面に座る。

「いきなり押しかけたのにありがとう、みいほさん」

出した麦茶を一口飲んで、レイラがぽつりと話し出した。

「あんな‥‥湊斗くんもみいほさんも、お互い本気で想い合ってんねやんなぁ?」

レイラはテーブルを見つめたままだが、二人してコクンと頷く。

⏰:08/07/28 17:52 📱:SH703i 🆔:PBpsc0gY


#428 [桃色]
「それやったら‥‥お互いのために別れることはできやんの?あたしが湊斗くんを‥っていうのは置いといてやで?ほら、世間体とか、あるやん?」

意外よりも意外過ぎるレイラの言葉に、思考が一瞬停止する。

『お互いのために』

『世間体』

一体何を言ってるの‥?

みーとも考えてることは同じようで、あたしと同じ数だけ疑問譜を浮かべている。

⏰:08/07/28 17:53 📱:SH703i 🆔:PBpsc0gY


#429 [桃色]
「あたしな‥兄妹同士で好きおうて、一緒になった人ら知ってるねん。でもな、中途半端な気持ちじゃやっていかれへんで?あんたらにその覚悟ある?もし子供ができたりしたら‥‥その子守ってやれる‥覚悟あるん‥‥‥?」

「ちょ、ちょっと待って」

たまらずみーとが話しを遮る。

いくらなんでも話しが飛躍し過ぎてる。

それに、あたしたちと似た境遇にある人を知ってるからって、レイラに何がわかるっていうの?

⏰:08/07/28 17:54 📱:SH703i 🆔:PBpsc0gY


#430 [桃色]
込み上げた思いが口をついて出てくる。

「あなたに何がわかるっていうの!?あんな卑怯なマネまでして‥あたしたちのことはもう放っとい‥」

「あたしやねん!」

わめくあたしの声よりもさらに大きなレイラの声。

ぐっと拳を握りしめたあたしを見つめながら、涙目のレイラはもう一度、今度は静かに言う。

「‥‥あたし‥‥その兄妹の子供やねん‥‥」
 



‥‥‥え?今、何て‥‥‥

⏰:08/07/28 17:54 📱:SH703i 🆔:PBpsc0gY


#431 [桃色]
 



レイラの言ったことが理解できずに宙を舞う。

「根本さん‥どういうこと‥?」

あたしとはうって代わって冷静に話しを進めるみーと。

「‥どうもこうも、言うた通り」

まばたきをしたレイラの目から、大粒の涙が筋を作って頬を伝う。

あたしはそれをただ見ているしかできなかった。

「これ‥」

みーとが音も無くティッシュをケースごと差し出す。

⏰:08/07/28 17:56 📱:SH703i 🆔:PBpsc0gY


#432 [桃色]
「これ‥」

みーとが音も無くティッシュをケースごと差し出す。

何枚かまとめて手に取ると、今日もばっちりのメイクが取れないように気使いながら涙を拭うレイラ。

(ウォータープルーフって泣いても本当に落ちないんだ‥)

そんなことをぼんやり考える。

赤くなった鼻をティッシュで押さえながら、さっきよりも鼻声になりながらもレイラは話しを続ける。

⏰:08/07/28 17:57 📱:SH703i 🆔:PBpsc0gY


#433 [桃色]
「あたし、何とかして止めなアカン思て‥面と向かったらまた喫茶店ときみたいに怒鳴ってまいそうやったから、あんな嫌がらせみたいなことしかできんかって‥昨日向井先生?に教えてもらうまでみいほさんがカンニング疑われるようなことになってるなんか知らんくて‥いや、なってなくてもやったらアカンことやってんけど‥」

だんだんと尻すぼみになっていくレイラの言葉。

⏰:08/07/28 17:58 📱:SH703i 🆔:PBpsc0gY


#434 [桃色]
一旦話しを止めて気まずそうに麦茶を一口流し込む。

ようやく思考が追い付いたあたしは、多分相当酷い顔をしていたと思う。
 


[‥その兄妹の子供‥]


確かにレイラはそう言った‥‥‥

それはつまり、お父さんとお母さんが兄妹ってことなんだよね‥‥‥

あたしが何を考えているのか、表情から感じ取ったのか悲しそうにうつむいたレイラは、また涙ぐんでティッシュに顔をうずめている。

⏰:08/07/28 17:58 📱:SH703i 🆔:PBpsc0gY


#435 [桃色]
あたしはもちろんみーとでさえも、かける言葉がみつからない様子。

レイラが落ち着くのを待つことしかできなかった。

‥しばらく続く沈黙を、またもレイラの言葉が破る。

「‥どっちにせよあたしが悪かった‥‥ごめん‥」

初めて聞くレイラの謝罪の言葉‥

だけどそんなことより目の前に突き付けられたレイラの秘密で頭の中は混乱するばかりだった。

⏰:08/07/28 17:59 📱:SH703i 🆔:PBpsc0gY


#436 [桃色]
「あたし小さい頃から引越しばっかりでな‥何でかわからんけどどこからともなく噂が立つねん。“近親相姦でできた子”って」

「まさか、今回も?」

顔を上げたみーとの声は、いつも聞いてるよりもワントーン低い。

レイラは小さく首を横に振りながら

「今回はただ単に親の仕事の都合‥‥やけど湊斗くんもみいほさんも、この先ほんまに一緒におりたいんやったら、並大抵の覚悟やったらアカンよ」

⏰:08/07/28 18:00 📱:SH703i 🆔:PBpsc0gY


#437 [桃色]
目を赤くして、真っすぐこっちを見るレイラ。

思わず唾をゴクリと飲む。

「急に押しかけてこんな話し‥でも二人には話しときたいって思ったから‥聞いてくれありがとう」

飲み残した麦茶を一気に飲み干し、席を立つレイラ。

「みいほさん‥辛い思いさせてごめんなさい。でもこれから先、あんなもんじゃないこと‥なんぼでもあると思う。それを知っといてほしかってん‥」

⏰:08/07/28 18:06 📱:SH703i 🆔:PBpsc0gY


#438 [桃色]
最後にもう一言「ごちそうさま」と言ってダイニングから出て行くレイラ。

「そこまで送るよ」

そう言ったみーとを引き止めることもせず、ただじっとテーブルの一点を見つめるあたし。

放心状態だった‥
 


何も考えられない‥

何も‥聞こえない‥‥
 


泣くことすらできないで椅子に座っていることしかできないでいた。

⏰:08/07/28 18:12 📱:SH703i 🆔:PBpsc0gY


#439 [桃色]
よければ使ってクダサイ

●アンカー●
>>2

コメントしていただけると嬉しいデスヾ'v`*)ノ

●感想板●
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3672/

⏰:08/07/28 18:15 📱:SH703i 🆔:PBpsc0gY


#440 [桃色]
 


――――――――
―――――
――
どれぐらいの時間が経ったんだろう。

みーとが帰ってくる気配はない。

時計を見ると出ていってから三十分は経っていた。

携帯に連絡をするか迷っていると、スカートのポケットからわずかにバイブレーションの振動が伝わる。

少し躊躇っていると何事もなかったように携帯電話は黙ってしまった。

⏰:08/07/29 20:36 📱:SH703i 🆔:5fgmi4/E


#441 [桃色]
そっとポケットから携帯を取り出し着信履歴を見る。

先頭に現れたのは、予想を外れ『お母さん』の四文字だった。

通話ボタンを押しかけ直す。
 


『あぁ瑞穂、今どこにいる?』

「家にいるけど‥寝ちゃってた」

とっさに嘘をついてしまう。

『あら起こしちゃった?ちょっとお母さんたちの部屋に行って探して欲しいものがあるんだけど‥』

「いいよ」

⏰:08/07/29 20:38 📱:SH703i 🆔:5fgmi4/E


#442 [桃色]
長い間座りすぎて少し足がしびれていたけど、気にせずお母さんたちの寝室へ行く。

窓から光りが差し込んで、ナイトテーブルの上を明るく照らしている。

「あ、ここに飾ってくれてたんだ‥」

『え?あぁ、くまちゃんでしょ?いつも抱いてあげてから寝るの』

久しぶりに見るピンクとブルーのリボンを付けたくまのぬいぐるみ。

空いてる方の手でそっと撫でる。

『それよりA4サイズの茶封筒なんだけど‥くまちゃんの前に置いてない?』

⏰:08/07/29 20:39 📱:SH703i 🆔:5fgmi4/E


#443 [桃色]
お母さんの問いかけに、確認するまでもなく「ない」と言う。

ナイトテーブルの上にはウエイトベアー二体と、写真立に入った家族写真しかないからだ。

『あらー、おかしいわね‥どこ行っちゃったのかしら』

「急ぐの?」

『今日中にポストに入れないとダメなんだけど‥まぁいいわ、帰ってもう一度探してみるから』

「もし見つかったら連絡入れるよ」

そう言って電話を切ると、改めてテーブルの上を見回してみる。

⏰:08/07/29 20:40 📱:SH703i 🆔:5fgmi4/E


#444 [桃色]
だけどやっぱりないものは無かった。

お母さんたちのベッドに腰を下ろしてさっきの出来事を思い出す‥‥‥
 

‥“近親相姦”‥
 

きっとレイラが一番嫌いな言葉なんじゃないかと思う。

それなのにどうしてあたしにも同じ目に合わすようなことをしたんだろう‥‥

いじめられっ子がいざいじめっ子の立場になった時、自分がされて辛かったことを仕掛けてしまう心境に似てるんだろうか‥‥

⏰:08/07/29 20:41 📱:SH703i 🆔:5fgmi4/E


#445 [桃色]
何にせよ、レイラのやったことを許すつもりは無かった。

だけどあたしのせいでみーととの恋が叶わなかったこと、そしてあたしたちのせいでレイラの傷をえぐってしまったことには変わりないので、せめて憎むことだけはしないでおこうと思った‥‥‥
 



気分を少しでも変えようと勢いよくため息をついて、ブルーのリボンのくまを膝の上に抱き、ふと家族写真に目をやる。

⏰:08/07/29 20:42 📱:SH703i 🆔:5fgmi4/E


#446 [桃色]
確か去年の夏に四人で旅行に出かけたときのものだ。

(一年でこんなにもいろんな事が変わるなんて‥)

写真を手に取り、まだ少年らしさが残るみーとの笑顔の上を指でなぞる。

すると写真が少し歪んでいることに気づき、小さな良心が芽生えた。

“直しといてあげよ‥”

この時こんなことを思わなければ‥‥‥
 

神様のイタズラとしか、思えないよ‥‥‥‥‥‥

⏰:08/07/29 20:51 📱:SH703i 🆔:5fgmi4/E


#447 [桃色]
写真立てを裏返し、四隅のツメを手際よく外す。

板をそっと外して写真のズレを直そうとすると、ふと目にとまるものがあった。 





“臨月の美空と”






確かにお母さんの字だが、見慣れない名前に臨月の文字。

⏰:08/07/30 19:48 📱:SH703i 🆔:Tu/xOHww


#448 [桃色]
ここには去年の家族旅行の写真が入ってあるはず‥

好奇心から写真をめくると、そこにはお腹の大きな女の人と、今より十歳は若いだろうお母さんの姿が写っていた。

二人ともよく似た笑顔で微笑んではいるが、お母さんの隣で笑うおそらく“美空さん”という女の人の笑顔には、何か惹かれるものがあった。

そしてなぜだかわからないけれど、全く知らないはずのこの女性に心奪われ、懐かしさまで覚えていたのだ。

⏰:08/07/30 19:49 📱:SH703i 🆔:Tu/xOHww


#449 [桃色]
あまりに見入り過ぎて、自分の指に隠された秘密に気づくのが遅れる。

写真を持っていた手を何となくずらすと、消えかけた数字がいくつか並んでいるのが見えた。

わけがわからないままよく目をこらして見てみると
 

『1990.08』


確かにそう刻印されてある。

1990年の‥8月‥?





.

⏰:08/07/30 19:50 📱:SH703i 🆔:Tu/xOHww


#450 [桃色]
ドクンと一回心臓が跳ね上がったかと思うと、鈍い痛みを引き連れて冷や汗がじんわり滲み出てくる‥

一気に血の気が引いたのか写真を持つ手は真っ白で、ガタガタ小刻みに震えている。

ちょっと待って、何かの間違いかもしれない‥

もう一度目をこらして確認するも、文字がブレてよく見えない。
 

だって‥‥‥


.

⏰:08/07/30 19:52 📱:SH703i 🆔:Tu/xOHww


#451 [桃色]
 


だってあたしが生まれたのは1990年の9月1日‥

なのに写真の中で笑っているお母さんのお腹をいくら見つめても、とても命を宿しているようには見えない‥‥‥

ということは‥‥‥‥
 





.

⏰:08/07/30 19:53 📱:SH703i 🆔:Tu/xOHww


#452 [桃色]
安易に想像できる、あたしの出生の秘密。




今までここにあった全てのものが、音を立てて崩れた瞬間だった。




足にうまく力が入らず、ベッドから立ち上がることすらできない。

⏰:08/07/30 19:54 📱:SH703i 🆔:Tu/xOHww


#453 [桃色]
握りしめた写真に写る二つの笑顔‥‥

たくさんの疑問が浮かんでは消えて、消えてはまた浮かぶ。

これだけの衝撃を受けたのにも関わらず、冷静に物事を考えている自分に驚く。

こんなことならいっそのこと、意識を失った方がましだ‥‥‥


その時、玄関の鍵が開く音がした。

急いで写真を戻そうとするが、もたついてうまく仕舞えない。

仕方なく強引にポケットに押し込み、家族写真だけはもとあった場所に何とか戻した。

⏰:08/07/30 19:55 📱:SH703i 🆔:Tu/xOHww


#454 [桃色]
ドアが閉まる音と共に、お母さんの声が聞こえる。

「ただいま、瑞穂、湊斗、いるの?」

戸惑っているうちに寝室まで来たお母さんと目が合ったが、何も言わずに傍らをすり抜け自分の部屋まで逃げるようにして駆け上がった。

頭ではさっき見た事実が延々と回っているんだけれど、気持ちが全く追い付いてこない。

泣くわけでも、怒るわけでもなく感情を持たない人形のように、その場に座ると動けなくなった。

⏰:08/07/30 19:56 📱:SH703i 🆔:Tu/xOHww


#455 [桃色]
‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥
‥‥

ここはどこ?

そう思いながらも、ここが現実の世界ではないと頭の中でわかっている。

『みずほ‥』

後ろから名前を呼ばれ、振り返るとみーとがいた。

愛おしそうにこっちを見てる。

それがたまらなく嬉しくって走ってみーとに飛び付くと、ふわりと柔らかい感覚に包まれ、夢の中なのに眠ってしまいそうになる。

⏰:08/07/30 19:58 📱:SH703i 🆔:Tu/xOHww


#456 [桃色]
クスクスという笑い声がくすぐったくて、顔を上げると、そこにはさっき写真で見た美空という女の人の笑顔があった‥

いつの間にか美空さんの腕に抱かれているあたし。

あまりに優しく笑うので、胸の奥がきゅんとする。

じんわり心から温まる感覚‥‥

気持ち良くて、いつまでもこうしていたいと思ってしまう。

突然アングルが変わって、その光景を上から見守るような形で眺めているあたしに、隣で一緒に見ていたみーとがこう言った。

⏰:08/07/30 19:59 📱:SH703i 🆔:Tu/xOHww


#457 [桃色]
『もうすぐだよ』

意味がわからなくて首を傾げながら振り返ると、いつもより高い目線に違和感を覚える。

そういえばこんな感覚前にもあったような‥

髪も見たことないくらい伸びていて、肌だって全然日に焼けてない。

声もそっくりだけど、よくよく聞いてみるとみーとはこんなに鼻声じゃない。

一体この人は誰なんだろう?

そう考えていると

⏰:08/07/30 20:00 📱:SH703i 🆔:Tu/xOHww


#458 [桃色]
『もうすぐ会えるよ、自分を信じて』

そう言ってこの前みたいに光の中へすっと姿が消えていった。

‥まだまだ美空さんを見ていたいと思ったけど、現実世界の何かがそれの邪魔をする。

‥‥
‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥

唇に甘い感覚が走って驚きと共に目が覚めた。

⏰:08/07/30 20:00 📱:SH703i 🆔:Tu/xOHww


#459 [桃色]
目の前には視界いっぱいのみーとの顔‥‥

「やっと起きた‥」

「なっなに!?」

思わず寝返りをうって顔を背けてしまう。

「なかなか起きないから‥キスでもしたら起きるかなーって」

「‥バカっ」

あたしは今それどころじやないの!

なんて考えながらもちゃっかり頬を染めてるあたし。

⏰:08/07/31 18:56 📱:SH703i 🆔:xI27awig


#460 [桃色]
「可愛いなぁ、みーほは‥晩ご飯できたって!」

「ほら」と言ってあたしを抱き起こそうとするみーと。

やけに機嫌のいいみーとに戸惑ってしまう。

レイラと何かあったのか‥

聞く気すら起こらない。

そういえばレイラのこと‥

彼女の秘密も相当なものだったが、正直すっかり忘れてしまっていた。

「‥いい、食欲無い‥」

⏰:08/07/31 18:56 📱:SH703i 🆔:xI27awig


#461 [桃色]
今はお母さんたちにどう接したらいいのかまだわからない‥

お母さん‥

お父さん‥‥

‥‥もしかしたらあたしは二人の子供じゃないかもしれない。

そうなればみーとだって‥


みーとだって‥‥



みーと‥だって‥‥‥





!!

.

⏰:08/07/31 18:58 📱:SH703i 🆔:xI27awig


#462 [桃色]
今さら気づいた新事実に、落ち着きを取り戻していた心臓が再び跳ね上がる。

もしも本当にあたしが美空さんの子だとしたら‥‥

みーととあたしは姉弟じゃないよね‥‥‥

心臓のドクドクいう音が、お腹の底から沸き上がるくすぐったい感覚と合わさってあたしの頬を紅潮させる。

‥‥喜んでいいのか悪いのか‥‥

普通なら落ち込むべきところなんだろうけど、あたしには一筋の希望のように思えて仕方なかった。

⏰:08/07/31 18:59 📱:SH703i 🆔:xI27awig


#463 [桃色]
「おーい!みーほ?」

目の前で手の平をヒラヒラさせながら注意をひこうとするみーとを真剣に見つめながら考える。

もし、姉弟じゃなかったら‥‥

「ん?もっかいキス、したくなった?」

ニヤッと笑うみーとに、確信が持てるまでは期待させるようなことは言わないでおこうと心に誓う。

もし血が繋がってなかったらみーとは‥

喜ぶのかな‥?

悲しむのかな‥‥?

⏰:08/07/31 18:59 📱:SH703i 🆔:xI27awig


#464 [桃色]
口を尖らせてキスをせがむみーとの頭を、いつもあたしがされてるみたいにくしゃっと撫でると

「ご飯でしょ?着替えたら行くから先に降りてて」

そう言うとみーとは少し不満そうにして、尖らせた口をそのままに

「はーい」と返事をして部屋を出て行った。

ため息を一つ短くついて、スカートのポケットから例の写真をゆっくり取り出す。

さっき急いで突っ込んだから、少し角が折れてしまってる。

⏰:08/07/31 19:02 📱:SH703i 🆔:xI27awig


#465 [桃色]
「あちゃー」

折れた部分を伸ばしながら、もう一度美空さんの姿を見つめる。

夢で見たのと同じ、優しい笑顔‥‥

(あなたが本当のお母さんなの?)

なんてセリフめいたことを考えながら、机の引き出しの奥に写真をしまい込み、部屋着に着替えてダイニングに降りた。


.

⏰:08/07/31 19:03 📱:SH703i 🆔:xI27awig


#466 [桃色]
 
たわいのない会話に笑い声‥

今まで当たり前のようにそこにあったものがとてつもなく大切に思える。

単純かな、あたし‥

だけどもしかしたら他人かもしれないあたしを、ここまで育ててくれたお父さん、お母さん‥

みーととこんな関係になってなかったら、二人を憎んじゃってたかもしれないな‥‥

みーとが隣にいてくれることに、改めて感謝する。

「なに?瑞穂、ニヤニヤして」

⏰:08/07/31 19:04 📱:SH703i 🆔:xI27awig


#467 [桃色]
どうやら知らないうち笑ってしまっていたらしい。

恥ずかしくなってお茶碗で顔を隠す。

「変な子ね」

呆れたように笑うお母さんの声‥

やっぱりお母さんはお母さんだよ。

いつも寡黙なお父さんも‥

二人ともあたしの大切な人に変わりはない。

「ありがとう‥」

ぽつりと呟いたあたしに三人の視線がぶつかる。

⏰:08/07/31 19:07 📱:SH703i 🆔:xI27awig


#468 [桃色]
気にすることなくあたしも応えるように笑って、残りのご飯を口へ運ぶ。

「ごちそうさま」と食器を流しまで持って行くと、みーとが何か言いかけたような気がしてしばらく待ってみたけど、何も言ってこないのでそのままお風呂に向かう。

(感づかれたかな‥)

一瞬ヒヤリとしたけどまさか「ありがとう」の一言じゃ何もわかるまいと、さっさと服を脱いでお風呂に入った。

⏰:08/07/31 19:17 📱:SH703i 🆔:xI27awig


#469 [桃色]
 




お風呂から上がって水を飲もうとキッチンへ行く。

みーとが交代でお風呂へ行き、あたしはお父さんのいるリビングへ行った。

テレビを見ているお父さん。

会話はもちろんないんだけど、ただそこにいてくれるだけですごく安心する。

⏰:08/07/31 19:19 📱:SH703i 🆔:xI27awig


#470 [桃色]
コップの水を口に運びながら、どうやって真実を確かめるかを考える‥

直接聞いてもいいけど‥

どう切り出していいかわからない‥‥

美空さんの居場所を探すったってあの写真しか手掛かりがない。

頭を悩ませていると

「みーほ、来てー!」

階段の方から、意外に早くお風呂から上がったみーとが何やら叫んでいる。

顔が見えるところまで行くと、あの笑顔が手招きをしていた。

⏰:08/07/31 19:20 📱:SH703i 🆔:xI27awig


#471 [桃色]
引き続き機嫌のいいみーとに手を引かれ、みーとの部屋へ連れていかれる。

「‥どしたのみーと?レイラちゃんと何かあった?」

そう聞かずにはいられないほど、みーとの表情は浮かれていた。

「え!?根本さん?どうして?」

焦るみーとに益々わけがわからなくなる。

「だって‥帰って来てからやけに嬉しそうなんだもん‥」

少しむくれるあたしを見て、吹き出すように笑ったみーとは

「ひょっとしてヤキモチ?」

⏰:08/08/01 16:53 📱:SH703i 🆔:fq4qCjBo


#472 [桃色]
そう言うとまたもあたしの手を引いてベッドの上に並んで座れされた。

ツンとしたままそっぽを向いていると

「今さら俺がみーほ以外に目ぇいくと思う?」

大きな手と腕をあたしの肩に回しかけ、わざと耳元で話しかけてくるみーとの声に、あたしの心臓が反応しないわけがない。

みるみるうちに赤くなる顔に暴れだす鼓動。

反則だよみーと‥‥

⏰:08/08/01 16:54 📱:SH703i 🆔:fq4qCjBo


#473 [桃色]
「こっち向いて?」

そう言われてもまだそっぽを向くあたしのあごを片手で持つと、強引に自分の方へ向かせる。

みーとの長いまつ毛がより長く見えるこの角度‥

見下ろすみーとの視線にもう心臓が悲鳴をあげている。

写真のことなんてぶっ飛んで、みーとの全てを受け止めたいと願ってしまう‥

「俺のこと、好き?」

唇がくっついてしまいそうなくらいの距離。

⏰:08/08/01 16:55 📱:SH703i 🆔:fq4qCjBo


#474 [桃色]
言葉というよりは吐息に近い。

あごを固定されて不自由ながらもわずかに首を縦に揺らす。

するとみーとはあたしのおでこに軽く音がするくらいのキスを落とした。

「物足りない?」

意地悪な顔でそう聞くみーとに「バカ」と言ってポカンと叩く。

鼻でふふっと笑いながら

「さっきね、みーほのこと起こそうとしたとき‥笑ってたんだ」

よくわからなくて首を傾げていると

⏰:08/08/01 16:56 📱:SH703i 🆔:fq4qCjBo


#475 [桃色]
「みーほがね、俺の名前呼びながら、すっげぇ幸せそうな顔して笑ってたんだ。それが俺の、嬉しい理由」

「それだけ?」

あまりに見当違いの答えに変な声で驚いてしまう。

みーとはそんなあたしを見つめたまま、満足そうに頷いている。

そんなことで喜んでくれるなら、あたしは一生みーとの傍で、みーとの名前を笑って呼び続けていたい‥

そんなことを真剣に思った。

⏰:08/08/01 16:57 📱:SH703i 🆔:fq4qCjBo


#476 [桃色]
――――――――― 



夏休みが始まって、あたしは塾の夏期講習、みーとはサッカーの練習にほとんどの時間を費やしていた。

相変わらず寝るときは同じベッドだけど、みーとに何を話すわけでもなく‥

もちろん二人がキス以上の関係を持つ事もない。

いっそ話してしまえれば‥

そんなあたしは勉強に力を入れるフリをして、まだあの写真の真相を確かめられずに毎日を過ごしていた‥

⏰:08/08/03 22:15 📱:SH703i 🆔:TNA8pdSI


#477 [桃色]
本音を言うと‥‥

やっぱり怖い‥

あたしが真相を聞いたところで、お母さんたちの態度が変わることはないだろうとは思う。

いや、思いたい‥

だけどその後どう接していけばいいのか‥

みーととの今後をどうしていくべきか‥

あずちゃんや他のみんなには打ち明けるのか‥‥

考えることは受験勉強よりもあった。

それに気になっていることが一つ‥

⏰:08/08/03 22:24 📱:SH703i 🆔:TNA8pdSI


#478 [桃色]
『夏休みに入ったら話したいことがある』

確かにあの時そう言われたはずなのに、みーとからは未だにそれらしい話しはされてない。

まさかとは思うけど‥

みーともあたしの秘密を知ってる‥‥‥?
 



どちらにせよ、みーとの話しを聞いてからでも遅くはないだろうと、あの写真は引き出しの奥にしまったまま。

真実に触れるのを先延ばしにしている自分がいた。

⏰:08/08/03 22:25 📱:SH703i 🆔:TNA8pdSI


#479 [桃色]
 





そしてある週末の夜――

何の前触れもなく事件は起こった。





.

⏰:08/08/03 22:26 📱:SH703i 🆔:TNA8pdSI


#480 [桃色]
 

―――――――――――

「待ちなさい湊斗!話しはまだ終わってないわよ!」

普段穏やかなお母さんの聞き慣れない荒々しい声に、シャーペンを走らせる手が止まる。

いつものように晩ご飯を済ませ、あたしだけ二階へ上がって夏期講習の課題をやっている時だった。

いきなり響いたその声は、怒っているというよりは悲しみに満ちていて‥

慌てて下へ降りていくと、みーとがダイニングから出てくるところだった。

⏰:08/08/03 22:27 📱:SH703i 🆔:TNA8pdSI


#481 [桃色]
「っどうしたの!?」

駆け寄るあたしに

「みーほも来て‥」

そう言って腕をつかむとそのままダイニングに連れて行かれた。

テーブルに肘をついて頭を抱えるお母さん。

その横で恐い顔したお父さん‥


何?

一体何がどうしたっていうの?


混乱するあたしに、みーとが椅子を引いて座るように促してくる。

素直に腰をかけると、みーともその隣の椅子に座った。

⏰:08/08/03 22:28 📱:SH703i 🆔:TNA8pdSI


#482 [桃色]
 

‥‥少しの沈黙‥‥

心臓がぎゅっと縮まる感覚と共に手の平に汗が滲んでくる。

お母さんの肩は小刻みに揺れていた‥

「‥前にも言ったけど俺知ってるんだ」


―――やっぱり‥

知ってたんだねみーと‥

みーとの顔を見ると、苛立ちと不安で歪んでいた。

「だから何度も言ってるでしょ?それは違うの‥!」

⏰:08/08/03 22:28 📱:SH703i 🆔:TNA8pdSI


#483 [桃色]
さっきとはうって変わって震えた声のお母さん。

そして次の言葉が、あたしの疑惑をより真実へと近づけた。

「隠さなくたっていいよ!俺聞いたんだから、去年の俺達の誕生日の夜‥『あの子が来て17年、もうそんなに経つのか』って‥!あれって俺の事なんだろ!?」

泣きそうなみーとの必死な声が、ダイニングからキッチン、リビングにまでこだまする。

「ちょっと待って!」

それをあたしの叫び声が断ち切った。

⏰:08/08/03 22:29 📱:SH703i 🆔:TNA8pdSI


#484 [桃色]
「ちょっと、待って‥みーとじゃない‥みーとじゃないんだよ‥‥ね、お母さん‥?」

真実へのカウントダウン‥

恐る恐るつむいだ言葉に、お母さんはとうとう声を上げて泣き崩れてしまった。

そんなお母さんの肩を、優しく抱いてあげるお父さん。

みーとはわけがわからないといった様子で目を泳がせ、肩をだらんと落としたまま何も言わない。

⏰:08/08/03 22:30 📱:SH703i 🆔:TNA8pdSI


#485 [桃色]
あたしはそんな三人を見て、咄嗟に自分の部屋へ行って、引き出しからあの写真を取って来た。


(美空さん‥あたしに少し、勇気をください‥)


右の親指に力を込めて、写真に写る笑顔を味方にする。

「これ、前にお母さんから封筒探してって頼まれたときに見つけたの。勝手に持ち出してごめんなさい‥」

テーブルの上に証拠の品をそっと置く。

⏰:08/08/03 22:31 📱:SH703i 🆔:TNA8pdSI


#486 [桃色]
それを見たみーとは小さな声で「なんで」と漏らした。

「みーとにも黙っててごめんね‥だけど今日ここまでで、あたしなりに気持ちの整理はついてるつもり。話してくれるよね?お父さん、お母さん‥」

お母さんの手にそっと自分の手を重ねる。

目を真っ赤にして、涙をボロボロ流しながら何度も謝るお母さんに、あたしはずっと首を振り続けた。

⏰:08/08/03 22:31 📱:SH703i 🆔:TNA8pdSI


#487 [桃色]
●お詫びと訂正●

>>483
『あの子が来て17年』

という箇所ですが正しくは

『あの子が来て16年』

の間違いです

とんでもナイ間違いデス!

大変申し訳ありませんでしたm(._.)m

       ●桃色●

⏰:08/08/04 11:33 📱:SH703i 🆔:yjJrPiBA


#488 [桃色]
 
―――――――――――



外はすっかり闇を纏っているにも関わらず、日中にこもった熱が湿気となって体に張り付く。

少し一人になりたくて、お母さんが落ち着いたのを見計らってから外へ出た。

夜は危ないからと言って、ついて来たがるみーとを拒みきれず、少し距離を置いて後ろを歩いてもらっている。

そんな気配を背後に感じながら、さっきダイニングで話しの全てをゆっくり丁寧に思い出していく‥



.

⏰:08/08/05 01:21 📱:SH703i 🆔:PA7i3NMA


#489 [桃色]
 

―――――――――――


お母さんは泣き止んでしばらくしてからも、なかなか口を開こうとはしてくれなかった。

それでもすがるような目でお母さんの決心を待ち続けていたあたしたちを見るに見兼ねたのか、話し始めたのはお父さんだった。



「瑞穂、お母さんが話したがらないのはね‥お前に対して後ろめたい気持ちがあるからじゃないんだよ?」

あたしはわかってるというように深く慎重に頷いた。

⏰:08/08/05 01:22 📱:SH703i 🆔:PA7i3NMA


#490 [桃色]
「お母さんと、そこに写っている美空ちゃんは‥約束をしていたんだ」

「‥約束?」

「そう、お前が成人するまで、自分のことは一切話さないで欲しい‥それが彼女の、美空ちゃんの遺言だったんだよ」

“遺言”の二文字に胸がえぐり取られるような感覚が襲う。

「そんなっじゃあ、みーほを産んでくれたこの人は、もうこの世にはいないってこと!?」

みーとの声が、あたしを飛び越えお父さんに投げられる。

⏰:08/08/05 01:23 📱:SH703i 🆔:PA7i3NMA


#491 [桃色]
 





「‥そうだ」

しばらくの沈黙を置いて、お父さんは確かに頷いた。

「何となく‥そうじゃないかなって思ってた」

あたしは笑ってそう言ったつもりだったけど、みーとがそれを否定するようにあたしの手を優しく握る。

心配してくれてるの?

ありがとう‥

だけど正直、実感が湧かない。

⏰:08/08/05 01:25 📱:SH703i 🆔:PA7i3NMA


#492 [我輩は匿名である]
気になる〜
あげ��

⏰:08/08/06 00:41 📱:W61SH 🆔:sPEv/d4s


#493 [桃色]
 
あげありがとうゴザイマス

.

⏰:08/08/06 19:16 📱:SH703i 🆔:bHY7ZWdg


#494 [桃色]
想像してたのと実際目の当たりにするのとでは、あまりに掛け離れていて‥

頭の中と心の中、考える事と感じる事がまるでバラバラで、気持ちが全くついていかない。

こんな時ほど涙って出ないもんなんだね‥

なんだか自分が薄情に思えた。
 



何度も言いかけてはやめ、少し考えてはまた口を開こうとするお母さんをただじっと見つめている事しかできない。

⏰:08/08/06 19:18 📱:SH703i 🆔:bHY7ZWdg


#495 [桃色]
ようやく決心がついたのか、震える口元をぐっとこらえて静かにお母さんは語り始めた。
 


「‥何から話せばいいかな」


そう言ってまた黙ってしまいそうなお母さんに

「もう何言われても驚かないよ」とみーとが続きを促した。

「‥そうね、美空のこと‥今が話すべき時なのね‥」

⏰:08/08/06 19:19 📱:SH703i 🆔:bHY7ZWdg


#496 [桃色]
意を決したようにお母さんの目に生気が戻る。

それからはすらすらと美空さんについてあらゆる事を聞かせてくれた。


美空さんが‥

お母さんの妹だということ。

体が弱かったのにも関わらず無理してあたしを産んでくれたこと‥


そしてあたしを産んだのが、あたしと同じ18歳の頃だったこと‥‥



あたしの想像を遥かに越える美空さんの生きた証‥

⏰:08/08/06 19:20 📱:SH703i 🆔:bHY7ZWdg


#497 [桃色]
一字一句聞き逃さないようにお母さんの話しを真剣に聞いた。




だけど次の言葉を聞いた瞬間、一気に体が強張るのがわかった。




「美空を殺したのはあたしも同然なの‥っ」



「美好、それは違うって何度も話しただろ‥」

お父さんの悲しそうな声‥

完成間近のパズルのピースがどんどん目の前から消えていく感覚。

⏰:08/08/06 19:21 📱:SH703i 🆔:bHY7ZWdg


#498 [桃色]
血の気が引いてくらくらする‥

「もう一つ、あなたたちに話して置かなきゃいけないことがあるの‥」

頼りない意識を奮い立たせてお母さんに集中させる。

「お母さんね、結婚した次の年に妊娠したの‥だけどお母さんの不注意でダメになっちゃった事があってね‥‥」

どこか遠くを見るような目で話すお母さんの肩を、お父さんがしっかり支える。

「あれはお前だけが悪いんじゃない、俺だって‥」

⏰:08/08/06 19:22 📱:SH703i 🆔:bHY7ZWdg


#499 [桃色]
「そうね、もうあの時自分を責めないって約束したのに‥だけど忘れたことなんてないもの」



みーともあたしも声を失ってしまったんじゃないかと思うくらい黙り込んでしまっている。

二人にそんな過去があったなんて‥

当然だけどあたしには想像もつかなかった。

「ショックでしばらくの間立ち直れなくてね‥そんな中支えてくれたのはお父さんと美空だった‥だけどそんな事があったから余計にあの子を苦しめることになってしまったのね‥」

⏰:08/08/06 19:23 📱:SH703i 🆔:bHY7ZWdg


#500 [桃色]
こらえる涙が瞼の間でピクピクと揺れている。


いつも優しいお母さん‥


何があっても笑顔で包み込んでくれる‥お母さん‥

強い人だと思っていた。


その笑顔の裏に、これまでどんな思いを隠し続けてきたんだろう?

心が引きつるような痛みと共に、感情が一気に溢れ出す。



何も知らないで自分の事ばかり考えてた‥‥‥‥

⏰:08/08/06 19:29 📱:SH703i 🆔:bHY7ZWdg


#501 [桃色]
ケイタイ変わりましたが桃色デスヾ'v`*)ノ

これからもヨロシクお願いしマス!

⏰:08/08/08 00:53 📱:SH706i 🆔:N47Wa1DQ


#502 [桃色]
そう思ったら途端に泣けてきた。

咳を切ったように溢れ出す感情の波を止めることなんてできない。

手を握ってくれているみーとの肩に寄り掛かり、声を出して泣き崩れた。

そんなあたしの肩を、お父さんがお母さんにしているように力強く支えてくれるみーと。

みーとだって今まで辛かったよね‥

この一年間ずっと悩んでたのかと思うと胸が締め付けられるように痛い。

⏰:08/08/08 00:54 📱:SH706i 🆔:N47Wa1DQ


#503 [桃色]
気づいてあげられなかった‥

ごめんね、みーと‥

嗚咽が漏れる度、背中をさすってなだめてくれる。

そんなあたしたちを、お母さんもお父さんも驚く事なくむしろ安堵の表情で見守ってくれていた。

みーとの腕の中で、ようやく落ち着きを取り戻したあたしは、今さら取って付けたかの様にみーとから離れようとした。

「瑞穂‥そのままでいいわ。お母さんの話し、最後まで聞いてくれる?」

⏰:08/08/08 00:55 📱:SH706i 🆔:N47Wa1DQ


#504 [桃色]
顔が赤くなってるのが自分でもわかる。

泣いてほてったからじゃない‥

それをもちろんあたし以外の三人も知ってる。

どうしたらいいのか分からずそのまま無言で頷くことしかできなかった。


優しく微笑んだお母さんに、僅かに悲しみの色が滲む。




.

⏰:08/08/08 00:56 📱:SH706i 🆔:N47Wa1DQ


#505 [桃色]
その表情がまたあたしを不安にさせたけど、みーとの胸から直接伝わる鼓動がその不安を和らげてくれた。





「お母さんが流産した次の年‥今度は美空が妊娠したの。まだ18歳‥‥不安で仕方なかったでしょうに、言い出せなかったのね‥あたしがあまりに落ち込んでたせいで‥」

苦痛に顔を歪ませながら、それでも話し続けてくれる。

⏰:08/08/08 00:57 📱:SH706i 🆔:N47Wa1DQ


#506 [桃色]
「突然、姿をくらませてしまったの‥今でもどこへ行っていたのかわからない‥‥‥やっと見つけた時には、大きなお腹を抱えてた」


テーブルの上の写真に目線を落とし、懐かしむような愛おしむような、とても優しい表情を浮かべるお母さん。

「もっと早くに気づいてあげてれば‥もっと早く‥見つけてあげてれば‥‥‥あなたのお母さんは今もここにいて一緒に笑ってたかもしれないのに‥」

⏰:08/08/08 00:58 📱:SH706i 🆔:N47Wa1DQ


#507 [桃色]
その言葉を聞いたと同時に、寄り添うみーとの胸から離れてお母さんの方に向き直った。

‥違う‥きっとお母さんだけが悪いんじゃない‥‥

だって美空さん、こんなに幸せそうに笑ってるじゃない‥‥

「‥‥‥‥‥っ」

だけどどうしても言葉が詰まって、気持ちだけが空回る。

泣きそうになるのを必死にこらえて、訴えかけるようにお母さんの手を握る。

⏰:08/08/08 00:59 📱:SH706i 🆔:N47Wa1DQ


#508 [桃色]
「瑞穂がこんなにいい子に育ってくれて‥美空も喜んでくれてるかな」

精一杯の気持ちを込めて深く深く、何度も頷く。

言葉にしたら、今度こそ壊れるまで泣いてしまいそうで‥‥‥

「やっとお互い笑い合えるようになった‥その頃の写真なのよ」





改めて見るお母さんと美空さんの笑顔‥‥

⏰:08/08/08 01:02 📱:SH706i 🆔:N47Wa1DQ


#509 [桃色]
そこにはとてもそんな事があったようには見えないのに‥‥

こんな紙切れ一枚で、全て知ったような気になっていた自分が恥ずかしかった。

「父親は?」

突然発されたみーとの声に、自然と視線がお母さんに移る。

困惑の表情をお父さんに向け、お父さんも同じように厳しい顔をしている。







「父親はね‥‥‥」

⏰:08/08/08 01:04 📱:SH706i 🆔:N47Wa1DQ


#510 [桃色]
 
じっとあたしを見つめるお母さん‥

それに応えるようにして、あたしもお母さんから目を逸らさない。









「何も‥知らないの」

期待とは大きく違ったお母さんの言葉。

だけど心のどこかでほっとしているあたしがいた。

⏰:08/08/12 01:54 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#511 [桃色]
「美空さんから何も聞いてないの?」

納得がいかない様子のみーとはそんなあたしの気も知らず、必死になってくれている。

「‥話してくれてありがとう」

あたしの言葉に、お母さんたちの視線が集まる。

「みーと、あたし知らなくていい。美空さんには産んでくれたこと感謝するけど‥あたしのお父さんとお母さんは今目の前にいる二人だけだよ」

またもお母さんの目に涙が光る。

⏰:08/08/12 01:55 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#512 [桃色]
だけどそこに悲しみの色はない。

みーともそれ以上は何も言わないで、そんなお母さんの姿に目頭を熱くさせていた。






―――――――――――





しばらく回想にふけっている間も、みーとはあたしのそばに付いていてくれた。


どれぐらい考え込んでいたんだろう‥

⏰:08/08/12 01:56 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#513 [桃色]
全てを受け入れるには、一気に色んな事を知りすぎて‥‥

立ち止まったあたしの背中をみーとが優しく包んでくれる。



「‥あたしたち、姉弟じゃなかったね‥」

皮肉を込めて笑うあたし。

それでもみーとは黙ったままだった。

‥‥‥もしかして泣いてるの?

後ろを振り返ろうとしてもみーとの腕がそれを許してくれない。

いくら夜とはいっても、夏の暑さに汗が滲む。


「‥みーと?」

「ごめん‥」

⏰:08/08/12 01:57 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#514 [桃色]
さりげなく鼻をすすったみーと‥泣いていることを確信した。

「みーほ‥俺を許してくれる?」

涙声で呟くみーとはそっとあたしを解放したかと思うと、あたしを体ごと自分の方に向かせた。

「俺の中でみーほは‥ずっと大事な存在で‥小さい頃から俺が守ってやんなきゃとか思ってた。その気持ちが何なのか気づいた時は辛くて辛くておかしくなっちゃいそうだったけど、一年前のあの日‥

⏰:08/08/12 01:59 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#515 [桃色]
血が繋がってないかもって知ったあの時‥叫びたいほど嬉しくて、俺にも可能性あんじゃんってそんな事ばっかり考えてた‥それが瑞穂のことで、しかも母さんたちにあんな過去があったなんて知りもしないで‥」

「最低だよ、俺‥」そう言ったみーとの頬を伝う一筋の涙。

外灯に照らされキラリと光る。

思わずみーとを抱きしめたあたし。

⏰:08/08/12 02:00 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#516 [桃色]
考えるより先に体が動いていた。

「‥っく‥みー‥ほ」

すがりつくように抱きしめ返してきたみーと。

あたしの存在を確かめるように何度も何度もあたしの名前を呼びながら、きつくきつくあたしの心を締め付けた。






.

⏰:08/08/12 02:01 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#517 [桃色]
誰かが悪かったんじゃない。

思い合う気持ちが強すぎただけ‥

あたしは、自分を悲劇のヒロインだなんて思わない。

みーとと血が繋がってることに変わりはないし、みーとの姉として生きてきたこの17年間あたしにとって何にも変えがたい誇りだ。

これからもきっと楽しいことばかりじゃないと思う。

今日より涙を流す日が来るかもしれないけど‥

⏰:08/08/12 02:03 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#518 [桃色]
 




  sugar and spice

  楽あれば苦あり






だからこそあたしは、かけがえのない人たちと、かけがえのない時を生きていこうと、この時のみーとの涙に誓った。

⏰:08/08/12 02:04 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#519 [(^ω^)]
感動

あげ

⏰:08/08/12 02:08 📱:SH705i 🆔:pPruHqpY


#520 [桃色]
(^ω^)様

あげありがとうゴザイマス

●アンカー●
>>2

よろしければ使ってクダサイ

⏰:08/08/12 02:14 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#521 [桃色]
――――――――――
―――――――
――――
―


あれから数日後、あたしたちは海の近くのリゾート地に来ている。

みーととあたしの誕生会を兼ねた家族旅行だ。

海水浴にバーベキュー‥たっぷり遊んでついこの間の事が嘘みたいに、桜井家には笑顔が溢れていた。

本当のお父さんのこと‥

気にならないって言ったら嘘になるけど、今あたしに必要なのはお母さんやお父さんの変わりない愛情と、みーとの存在。

⏰:08/08/12 13:11 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#522 [桃色]
天国の美空ママも、きっと笑って見守ってくれてると思う。








日も落ちて海が橙色に染まる頃‥‥

先にホテルに戻るお父さんとお母さんの背中を見送りながら、みーとがぽつりと呟いた。

「あのさぁ‥」

夕日に照らされたみーとの頬が赤く見える。

⏰:08/08/12 13:11 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#523 [桃色]
そのままじっと見つめていると

「俺‥生まれる前の記憶があるって言ったら信じてくれる?」

照れているのか少し気まずそうに話すみーと。

頬の赤さは夕日だけのせいじゃないらしい。

そんなみーとが可愛くて、愛おしくて‥

つい笑ってしまう。

「本当なんだって!覚えてたのはみーほの事‥だと思ってたんだ‥あの写真を見るまでは」

あまりに真剣なみーとの表情にあたしから笑顔が消える。

⏰:08/08/12 13:12 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#524 [桃色]
それと同時に大きな疑問譜が頭の上に浮かび上がる。


「それはつまり‥‥どうゆうこと?」

みーとはもう一度「信じてもらえないかもしれないけど」とつけ加えて、過去の記憶を話してくれた。




「俺、母さんのお腹の中から、色んな物を見た記憶があるんだ。ほとんど曖昧なんだけど、その中で唯一鮮明に覚えてるのが、みーほの事なんだ」

⏰:08/08/12 13:14 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#525 [桃色]
みーとは海を眺めながら、とても大切にしまっておいた宝物を見せてくれるように話してくれる。

「ずっとその人をみーほと信じて疑わなかった。だけどよくよく考えてみたら、俺が見てたのは小さい頃のみーほじゃなくて、ちょうど今頃のみーほだったんだ」

「え‥‥」

思わず感嘆の声が漏れる。


みーとはゆっくり頷いて

⏰:08/08/12 13:15 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#526 [桃色]
「そう‥俺が見てたのは美空さん‥‥しかもその記憶は母さんが流産したって言ってた子の‥‥‥‥じゃないとつじつまが合わないんだ」

あたしの記憶も駆け巡る。

夢に出てきたみーとによく似たあの人‥‥

全身に鳥肌が立つ感覚‥

胸が震えて心拍数が一気に上がる。

‥‥やっと揃ったパズルの最後の1ピース‥‥

胸がいっぱいで言葉にならない。

⏰:08/08/12 13:15 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#527 [桃色]
 
「俺は‥この人に会いたいってお腹の中でずっと願ってた。生まれる前からみーほに恋してたんだ‥‥」

追い打ちをかけるようなみーとの言葉が心に染みる。

耳の奥で繰り返される“みーほに恋してた”というフレーズ。


泣いてもいいよね‥?


「って言ってもそれは美空さんだったんだけど」

最後に付け足されたみーとの言葉はあたしの涙に掻き消され、肩を並べたあたしたちの影は重なり合って波と混ざった。

⏰:08/08/12 13:16 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#528 [桃色]
 





これからもずっと‥‥‥




みーとの隣で笑っていたい。





美空ママ、お兄ちゃん‥‥

そこからずっと見ていてね。


あたしはこの運命をいつか形にしてみせるから。

⏰:08/08/12 13:18 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#529 [桃色]
 


「ねぇみーほ」

涙を拭い、みーとの方を向く。

「俺たち、幸せになろうね‥」

涙が頬を伝うより早く、みーとがあたしに口づけた。

この熱がいつまでも醒めることのないように‥‥‥







     S×S
  〜sugar×spice〜

      ●FIN●

⏰:08/08/12 13:19 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#530 [桃色]
最後なのに『続き』出してしまってすみません

こんな至らない物語を、最後まで読んでくださったみなサマヾ(¨)ノ

本当の本当にありがとうございました(艸Å`)

ここまで書けたのも、応援してくださったみなサマのおかけでデス(ノд*、)

完結まで、長かったような短かったような‥

楽しんでいただけたか不安はありまくりますが、それはまた次回作で挽回という形で勘弁してやってクダサイ‥(p¨q)

⏰:08/08/12 13:28 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#531 [桃色]
良かったら感想板にてご意見ご感想お聞かせクダサイ!

●感想板●
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3672/


本当にどうもありがとうございましたヾ'v`*)ノ



       ●桃色●

⏰:08/08/12 13:31 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#532 [我輩は匿名である]
主さんお疲れ様です���~
ずっとみてました��
質問なんですが
みーととみーほはお母さん達に付き合ってる事ゆわないんですか!?

⏰:08/08/12 16:24 📱:W61SH 🆔:qqe64IVQ


#533 [桃色]
P[W61SH我輩様]q・v・)⌒+゚

コメントありがとうゴザイマス

ずっと見てくれていたんですか(´囚`ハ)!?感激デスッッ

こうやってコメ貰えるとヤッパリ嬉しいですね(艸Å`)

お母さんたちへの報告は敢えて書かずに番外編でその後の彼らを描けたらと思っていマス(v艸0)

力不足でスミマセン

よろしければまた番外編もお付き合い頂けると嬉しいデスヾ'v`*)ノ

感想板にも遊びに来てくださいね(p¨q)

⏰:08/08/12 18:24 📱:SH706i 🆔:6swKtQJM


#534 [優菜]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:09/02/21 21:34 📱:SH906i 🆔:☆☆☆


#535 [我輩は匿名である]
>>500-600

⏰:09/03/12 03:51 📱:N905imyu 🆔:6DhOEnSM


#536 []
あげ

⏰:09/08/12 00:08 📱:SH904i 🆔:x49A.BwA


#537 [ゆい]
あげ

⏰:09/10/06 20:59 📱:SH05A3 🆔:5NkxHd5g


#538 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/01 22:33 📱:Android 🆔:rYsbLV12


#539 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>500-530

⏰:22/10/17 22:53 📱:Android 🆔:We5gljpk


#540 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30

⏰:22/10/17 22:54 📱:Android 🆔:We5gljpk


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
↑ msgβ
💬
🔍 ↔ V 📝
C-BoX E194.194