月の裏側
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#351 [我輩は匿名である]
温かな風呂に行ってから、お待ちかねの夜ご飯。
お酒なんか飲みながら…なんて楽しみを抱きながら、さっさと風呂を済ませた。
:08/09/19 12:09
:PC
:./.2cs2Y
#352 [我輩は匿名である]
風呂から上がり、お楽しみの晩酌を期待してリビングに行くと、その時点で気が付いた。
今日、百合の悩みがわかる。
百合の闇が晴れるのかもしれない、って…。
:08/09/19 12:10
:PC
:./.2cs2Y
#353 [我輩は匿名である]
百合の表情でわかるんだ。
何か決心した顔。
「百合、お風呂出たよ」
「…うん。ご飯の前にさ、話したい事あるから座ってくれる?」
首にタオルを巻き、俺は百合の正面の椅子に座った。
:08/09/19 12:10
:PC
:./.2cs2Y
#354 [我輩は匿名である]
何を話されるのか。
やっと聞けるんだという安心と、俺らが壊れてしまうんじゃないかという不安。
冷静を装うのに一杯一杯だった。
「どした?」
俺は煙草に火をつけた。
…マズい。
煙草をうまいと感じないほど俺は緊張していた。
:08/09/19 12:11
:PC
:./.2cs2Y
#355 [我輩は匿名である]
「夢を…見るの」
「え?」
夢?
百合は家族3人が映されている写真立てを見ながら言った。
「あんな可愛い娘がいて、家族を愛してくれる旦那がいるのに…私、最低だよ」
「…」
何も言えない。
俺は黙って煙草を吸いながら話を聞いた。
:08/09/19 12:11
:PC
:./.2cs2Y
#356 [我輩は匿名である]
「いつも、私が追い掛けてるの。泣きながら…待ってよって言いながら追い掛けてるの。なのにどんどん行っちゃうんだ」
百合がおかしくなったのかと思った。
話が統一されていない。
だけど俺は必死に理解しようとした。
:08/09/19 12:12
:PC
:./.2cs2Y
#357 [我輩は匿名である]
「追い掛けても追い掛けても届かなくって…私はつまづいて転んじゃうの。すると、やっと立ち止まってくれる。それで振り返って…百合はもういらないから、って言うんだー」
今、百合が泣きそうになりながら話してくれているのは…夢の話だ。
:08/09/19 12:12
:PC
:./.2cs2Y
#358 [我輩は匿名である]
百合がいつも見るという夢は、誰かを追い掛けているのに捕まえられない。
百合が転ぶと誰かは立ち止まって、やっと振り返ってくれる。
そしてその誰かは言う。
百合はもういらない、と。
:08/09/19 12:12
:PC
:./.2cs2Y
#359 [我輩は匿名である]
「そっか、私いらないんだって自覚して…大泣きするの。苦しくてさ、そこで目が覚めるの。枕びしょびしょになるくらい泣いててさ。夢と現実の境目わかんなくて、ボーッとしてると、隣で寝てる美優とミナトが気持ちよさそうに眠る寝息とか聞こえるの。二人見てると余計に泣けちゃってさ。」
:08/09/19 12:13
:PC
:./.2cs2Y
#360 [我輩は匿名である]
百合はそう言って泣き始めた。
もう、バカな俺でもそろそろわかってきた。
「自分が情けない。こんな素敵な家族がいるのに…あんな夢見るなんてさ。ごめんね…ごめんなさい」
「…百合」
俺は煙草の火を灰皿で消した。
:08/09/19 12:13
:PC
:./.2cs2Y
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