【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
最新 最初 🆕
#111 [◆1jVUKlu67k]
投下終了です

【決めゼリフ】
>>95-110

次の方どうぞ!!

⏰:08/09/14 16:46 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#112 [◆KHkHx8enOg]
今から投下します

【死んで初めて気付く大切に人】

⏰:08/09/14 17:23 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#113 [◆KHkHx8enOg]
僅かな音すらない静けさの中、ゆっくりと意識が戻ってくる。

ふわふわと宙に浮いているような奇妙な感覚に包まれて、私は目を覚ました。
たった今、生まれ落ちたばかりのように頭がうまく働かず、無心でぼーっと天井を見つめる。
天井とはこんなに低かっただろうか。
ちょっと手を伸ばせば触れてしまいそうなほどに近く感じる。
いや、実際近いのではないか?と考えが頭を過ぎったりもしたが、正直どうでもよく感じ、あっさりと思考を停止させた。
そんなことを考えながら天井を見つめていると、次第に世界に音が戻ってきた。

⏰:08/09/14 17:24 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#114 [◆KHkHx8enOg]
…何の音だろう。
聞き覚えのある一定のリズムが耳に届く。

ぽくぽくぽく…。
これは確か…。
あぁ、木魚の音か。
そういえば、さっきからお経のような声も聞こえるし、これは夢だろうか。
そうでないとするなら、私は葬式中に寝ていることになる。
頭が少しずつ機能してきた時、聞き覚えのある母の啜り泣く声が聞こえてきた。

⏰:08/09/14 17:26 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#115 [◆KHkHx8enOg]
…お母さん?

「うっ、うぅっ…」

「良枝…」

母の泣き声に次いで、父のなだめるような声が母の名前を呼んだ。

お母さん?
どうして泣いてるの?
お父さん?
何があったの?

私の声は喉から出てくることはなく、心の中で虚しく響いて消えた。

⏰:08/09/14 17:27 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#116 [◆KHkHx8enOg]
声が、出ない。
身体も動かない。
母と、その他のいくつかの泣き声とお経だけが耳に届く。

「千恵…」

母が私を呼んでいる。
どうしたの?お母さん。
答えは返ってこなかった。

私の意識は一気に覚醒してきた。
先程からずっと続いている奇妙な感覚。
身体を取り巻く違和感に、生きた心地がしなかった。

⏰:08/09/14 17:28 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#117 [◆KHkHx8enOg]
言うならば、呼吸しないで生きているような感覚。
息苦しい。
体は質量を失い、ふわふわとしながらも心臓だけがずっしりと重い。
経験したことのない感覚。

お母さん。これは夢だよね?
現実味がありすぎて、頭が困惑してしまった。
夢には思えない、でも夢だと信じたい。

⏰:08/09/14 17:29 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#118 [◆KHkHx8enOg]
私は怖くなった。


早く覚めろ早く覚めろ。

声が出ない、何故?


早く、早く!

これは夢だ!


身体もっ!

動いて…、
動いてっ…、


動いて!!


「千恵…どうして死んでしまったの?」

⏰:08/09/14 17:30 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#119 [◆KHkHx8enOg]
母の声と共に、私の体は下から弾かれたような強い衝撃を受けた。
驚く間もなく、気付いたら動けるようになっていた。
あの感覚は消えないものの、いつもと何ら変わりない目覚め。
ただ違うのは、目の前に広がる光景だった。

⏰:08/09/14 17:30 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#120 [◆KHkHx8enOg]
目に映ったのは、綺麗に正座しながら泣く、全身真っ黒の知り合いたち。
友達から親戚まで、どうやら外にもまだいるようだ。
壁には白と黒の幕が垂れ下がり、目の前にはお坊さんがお経を読んでいる。

ほらね、やっぱり夢だった。
現実的すぎるけど、これは夢だ。
夢じゃないなら何なのか、教えて欲しいくらいだ。

辺りを見渡せば、暗い雰囲気は葬式そのものだった。

⏰:08/09/14 17:31 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


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