【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
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#20 [◆BBhDve0Trg]
 

『もう、いーよ』


俺の口から出たのは、ひどく冷たい一言。

・・・あの時の美穂の泣きそうな顔が、瞼の裏に焼き付いて離れない。


何度も、何度も後悔した。

あの時、もっと優しい言葉をかけてやれたなら。

あんな顔、させずにすんだのに。

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⏰:08/09/14 13:18 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#21 [◆BBhDve0Trg]
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「・・・ここか」

イブ当日、俺は中井に渡された紙を見て、店の名前を確認していた。

(・・・よし)

店のドアに手をかける。

「あれー?サンタ?」

声をかけられて、俺はドアに手を当てた状態で止まった。

(この気の抜けた声は・・・)
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⏰:08/09/14 13:20 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#22 [◆BBhDve0Trg]
 
俺はゆっくりと声のした方を向く。

・・・予想通り。

振り向くと、いや、正確には振り向いて少し下を向くと、中井が不思議そうな顔で俺を見上げていた。

「なに?サンタも遅刻?」

中井は何が楽しいのか、笑いながら言った。

「あぁ、電車乗り過ごして・・・てか中井も?幹事のくせに?」

「ほら!!早く入ろ!!」
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⏰:08/09/14 13:21 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#23 [◆BBhDve0Trg]
 
質問には答えずに、中井は俺を押し退けてさっさと店の中に入っていく。

(・・・おいおい)

呆れながら中井の後に続く。

その時、中井が俺の方を振り向いた。

そして、まるで俺の心を読んだかのように、へへっと笑ってみせた。

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⏰:08/09/14 13:22 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#24 [◆BBhDve0Trg]
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「あ、サンタ!!おせーぞー!!」

部屋に入ると、すでに全員揃っていた。

「わりぃ!!電車乗り遅れた」

言いながら俺は、空いていた席に座る。

視界の隅に、美穂と進藤が隣同士に座っているのが見えた。

俺はさりげなく視線をずらして、二人を視界からはずす。
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⏰:08/09/14 13:23 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#25 [◆BBhDve0Trg]
 
まともに見る勇気は、まだない。

「あ、優子おそーい!!てか幹事のくせに遅刻って!!」

トイレに寄っていた中井が、遅れて部屋に入ってきた。

「ごめーんー!!」

手を合わして謝る中井。

(ふ・・・言われてら)

中井は座る暇もなく、もう一人の幹事である三宅に引っ張られ前に出る。
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⏰:08/09/14 13:24 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#26 [◆BBhDve0Trg]
 
「えー・・・ではやっと全員揃ったので」

三宅が言う横で、中井は慌ててかぶっていたニット帽を取る。

「みんな、飲み物の準備はいいですかー?」

「おー!!」

そこでみんな、それぞれの飲み物を手に持つ。

俺のとこには、すでにコップにつがれたジュースがあったのでそれを持つ。
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⏰:08/09/14 13:25 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#27 [◆BBhDve0Trg]
 
「え!?私持ってないよぉ」

と言いながら焦る中井に、そばに座っていた美穂が飲み物を渡しているのが見えた。

「それでは!!今日全員揃って集まれたことを祝して!!」

「「かんぱーい!!」」

結局、全部三宅が仕切っていた。

・・・中井が前に出た意味はあったのか?

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⏰:08/09/14 13:26 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#28 [◆BBhDve0Trg]
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「・・・はー、さみぃ」

俺は一人店から出て空を見上げた。

中の盛り上がりは最高潮で、熱気もすごい。

温まった体に、外の寒さは身に染みた。

空には二三個星が見えるだけで、他は黒。

その黒さが、吐いた息の白さを際だたせる。

息は徐々に色を失い、他の空気と混ざり、溶けて消えた。
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⏰:08/09/14 13:27 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#29 [◆BBhDve0Trg]
 

美穂と進藤は、超が付くほどお似合いだった。

周りの奴らは俺を気遣ってか何も言わなかったけど、俺から見てそうなんだから、他の奴らから見てもそうなんだろう。

視界の隅に時々うつる美穂の笑顔は、昔と変わらずまぶしかった。

・・・あの頃、俺に向けられていた笑顔。

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⏰:08/09/14 13:28 📱:D904i 🆔:☆☆☆


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