【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
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#316 [◆SjNZMOXdWE]
石橋の手を物凄い勢いで払いのけた七川さんが、俺めがけて走って来たんだ。
半泣きで頬を紅潮させた七川さん。
スローモーションで再生されてるような感覚‥
ゆっくり、ゆっくりと俺の方へ翔けてくる。
そのたび揺れる栗色の巻き毛。
俺の方へ伸ばされる腕は折れそうなほどか細くて‥
:08/09/14 21:19 :SH706i :☆☆☆
#317 [◆SjNZMOXdWE]
思わず一歩前に出ると同時に飛び込んできた七川さんを、体ごと抱きとめた。
「‥翔ちゃんっ」
わずかに聞こえた七川さんの声も「ヒュ〜♪」という圭太郎の口笛のせいで掻き消された。
え?
今何つった?
翔ちゃん??
:08/09/14 21:19 :SH706i :☆☆☆
#318 [◆SjNZMOXdWE]
疑問符を飛ばしながらも俺の心臓は限界を優に越えていた。
絶対七川さんに聞こえてるよなコレ‥‥
だけどわずかに動くたび鼻をかすめる七川さんの甘い香りが、俺の正気を奮い立たせる。
「あっあのっ七川さん?」
俺の胸元に埋もれる七川さんに、恐る恐る話しかける。
すると俺にしがみついた七川さんの手に、さらに力が入るのがわかった。
:08/09/14 21:27 :SH706i :☆☆☆
#319 [◆SjNZMOXdWE]
「大丈夫だよ、もう恐くない‥」
よしよし、と栗色の髪を撫でてやる。
そんなに全身で頼られちゃうと、いくらヘタレな俺でもカッコイイセリフの一つくらい言えてしまった。
もちろん耳まで真っ赤だろうけど‥
はっと我に返ったのか、急に俺から離れた七川さんは俺よりさらに顔を赤くして戸惑いを隠せないようだった。
まごまごしているその仕草も可愛いすぎる。
:08/09/14 21:30 :SH706i :☆☆☆
#320 [◆SjNZMOXdWE]
「おい、ひなたぁ‥お前そんなに大胆だったっけ?」
圭太郎の言葉に、俺は自分の耳を疑った。
ひ‥
ひ‥‥
「ひな太ぁ!!?」
からかってるとしか思えない。
何て失礼なこと言うんだコイツは!
さてはヤキモチ妬いてるな‥
「圭太郎、何言ってんだよ!ひな太なわけないだろ?ごめんね七川さん、コイツたまに変なんだ!」
:08/09/14 21:30 :SH706i :☆☆☆
#321 [◆SjNZMOXdWE]
笑ってごまかそうにも俺の頭をよぎったのは、さっき呼ばれた「翔ちゃん」の一言‥
え?
まさか?
うそ、だって‥‥
「そう、そのまさかだよ。正真正銘、藤堂 ひなた本人だ」
踏ん反り返る圭太郎に目の前の七川さんもコクリと頷く。
:08/09/14 21:30 :SH706i :☆☆☆
#322 [◆SjNZMOXdWE]
は?
えぇぇ?
有り得ないだろぉ!?
「だってひな太は男だし!一緒に木ぃ登ったし!だいたい名字が違うじゃん!アイツ藤堂!目の前にいるの七川さん!!」
「親が離婚して‥こっちに帰ってきたの」
申し訳なさそうに上目使いでそう言ったのは七川さん。
:08/09/14 21:36 :SH706i :☆☆☆
#323 [◆SjNZMOXdWE]
「あはは、あ、そう‥そうなんだ‥?」
多分俺今、涙目‥
「改めまして‥七川日向です‥ただいま、翔ちゃん」
ひな太は女で七川さん?
しかも日向って!
なになに?
いつから間違ってたの?
.
:08/09/14 21:39 :SH706i :☆☆☆
#324 [◆SjNZMOXdWE]
遠ざかる意識の中で、日向と圭太郎の手が俺を支えてくれるのがわかった。
いつかもこんなことあったっけ‥
あぁそうだ、あの時‥
――――――‥‥‥
それは俺達がまだ木に登ってじゃれ合っていた日のこと‥
:08/09/14 21:40 :SH706i :☆☆☆
#325 [◆SjNZMOXdWE]
俺が木の枝にひっついてた何かのサナギを取ろうとして、木から落ちそうになったのを二人が支えきれずに三人一緒に落っこちて、仲良く病院送りになった日までさかのぼる。
俺だけ処置が長引き、あとの二人は待合室で俺のことを待っててくれた。
その時、まさかこんな会話がされてたなんて、当時の俺が知るはずもなく‥
「転校‥するんだ‥」
:08/09/14 21:40 :SH706i :☆☆☆
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