【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
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#396 [◆ZPM9124utk]
絢が歩道橋を引き返そう
とした時、悠二の足元に
見覚えのあるマフラーを
見つけた。
…―私が去年あげた
マフラー。
「これ、落としてる。」
乱暴にそれを悠二に
押し付けると絢は
振り向きもせずに歩道橋の
階段を駆け下りた。
:08/09/15 02:03 :F705i :☆☆☆
#397 [◆ZPM9124utk]
悠二はマフラーを
受け取りながら絢の
背中を見つめていた。
「さっきの…もしかして……。」
一人暮らししている
マンションの部屋の
鍵を開けてベッドに
倒れ込んだ絢の顔は
涙でぐちゃぐちゃだった。
「…あのマフラー、
まだ使ってた…。」
ふとさっきの情景が
絢の中で思い出された。
「悠二…。」
絢はいつの間にか
眠って夢をみていた。
一年前の話だ。
:08/09/15 02:04 :F705i :☆☆☆
#398 [◆ZPM9124utk]
絢は7年間片思いしていた
異性に男友達だった
悠二に後押しされながらも
思い切って告白した。
「ごめん、君に興味ないから。」
返ってきたのは、
期待していた言葉より
何倍も何倍も冷たい言葉。
その態度に絢が
傷つかない訳がなかった。
何ヶ月も家に引きこもった
絢を心配した悠二は
見舞いついでに絢に
声をかけた。
:08/09/15 02:05 :F705i :☆☆☆
#399 [◆ZPM9124utk]
「絢に最高の場所、
教えてやるよ。」
絢がしぶしぶ付いていくと
そこはただの歩道橋だった。
ぼやく絢に悠二は
歩道橋の上から向こうを
指差した。
「絢、ほらあれみて。」
絢の瞳に映ったのは
クリスマス期間限定で
道路の端々の木に付けられた
数え切れない程に
輝いているイルミネーション
だった。
「こんなの、知らなかった…。」
:08/09/15 02:06 :F705i :☆☆☆
#400 [◆ZPM9124utk]
絢は目を丸くして
笑顔で景色を眺める。
「絢、もし良かったら
俺とつ、つ、付き合って
くれないか!??」
絢を先ほどから見つめていた
悠二は緊張した面もちで
告白した。
驚いた絢は固まった後、
はにかみながら、
「…うん。」
と返事をした。
:08/09/15 02:07 :F705i :☆☆☆
#401 [◆ZPM9124utk]
それから悠二は
片時も絢のそばから
離れなかった。
絢が昔を思い出して
悲しくなったらいつだって
励ましてくれた。
絢の大学合格が決まった時
は自分のことのように
喜んでくれた。
そんな悠二を絢も
いつからかかけがえのない
大切な人だと感じる
ようになった。
しかし、そう思う反面
絢は自分が寂しさを
埋めるために悠二と付き合い
始め都合の良いことを
しているのではないか、
と悩むようになった。
:08/09/15 02:08 :F705i :☆☆☆
#402 [◆ZPM9124utk]
絢にとって悠二は
大切な人だった。
しかし片思いしていた異性
は絢にとってまだ
諦めきれない大好きな人
だったのだ。
そうと分かったら
いても立ってもいられなく
なった絢は悠二を
あの歩道橋に呼び出した。
「別れてほしいの。」
:08/09/15 02:09 :F705i :☆☆☆
#403 [◆ZPM9124utk]
悠二は案の定、嫌だ、
と言った。しかし絢は
聞く耳を持たずに
言ってしまった。
「あんたなんか最初から
好きなんかじゃなかった。」
『ピピピ!!!』
目覚ましの音で絢は
長い夢から目を覚ました。
「…………嫌な夢。」
絢は一言つぶやくと
いつも通り身支度を整えて、
自宅を出て大学へ向かった。
:08/09/15 02:10 :F705i :☆☆☆
#404 [◆ZPM9124utk]
いつもは通らない歩道橋
が気になって引き寄せら
れるかのように
絢は階段を上っていた。
悠二が立っていた。
髪もボサボサで服も
ジャージだ。
「………絢だよね。」
悠二が絢に近づいて
ゆっくり言った。
絢は何も言えなかった。
悠二が涙を流していたから。
:08/09/15 02:11 :F705i :☆☆☆
#405 [◆ZPM9124utk]
「俺、昨日マフラー拾って
もらった時、思い出したんだ。
絢がこれプレゼントして
巻いてくれたの。」
そう言い、悠二は
適当に巻きつけたマフラーを
きゅっ、と握った。
「それがキーワードに
なっていろんなこと
思い出したんだ。」
「確かに、辛かったけど…
でも俺思い出して
良かったよ。久しぶり、絢。」
「………久しぶり…。」
絢も挨拶を返した。
悠二があまりにも
嬉しそうに言うので、
さすがに嘘をつくことが
できなかった。
:08/09/15 02:12 :F705i :☆☆☆
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