【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
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#61 [◆67oIOf49hA]
私はずっとそこで1人だった。
いつものように、そよ風が心地よくあたり、時々私を訪ねる友と親しみのキスを交わす。
でも、ずっと1人だった。
そんなある日、流れていく白い雲を眺めていたら、あなたが私の前に現れた。
優しい笑顔で私に近づいてきた貴方は、そっと触れて、頭を撫でてくれる。
「君は1人ぼっちなの?さみしいね……」
その優しい手つきに、私の心は温かさで満ちていった。
指先1本1本が、私を気遣うように動く様が、たまらなくいとおしく感じる。
:08/09/14 14:07 :SO906i :☆☆☆
#62 [◆67oIOf49hA]
その時、遠くで誰かがあなたを呼んだ。
それに返事をしたあなたは、私の方を向いて、また優しく微笑むと、「またね」と告げて去って行った。
私はその後ろ姿をずっと見つめる。
[またね]
ここにずっといれば、またあなたに会えるのかしら。
頭には、まだ触れられた温かさが残っている。
誰も私に見向きしないなか、あなただけは私に触れ、「さみしいね」と気持ちを分かってくれた。
嬉しかった。
そんな人は初めてだったから。
:08/09/14 14:08 :SO906i :☆☆☆
#63 [◆67oIOf49hA]
あなたが「またね」と言ってくれるなら、私はずっとここないるよ。
ずっと待ってるよ。
あなたに会いたいから……。
でも、あなたは来なかった。
ずーっとずーっと来なかった。
でも、私は待ち続けた……。
明日なら、あなたに会えるかもしれないでしょ?
明日なら、またあなたが微笑んでくれるかもしれないでしょ?
あなたと交わした小さな約束。
それを守るために、私はずっとここにいるよ……。
「あれ、あなた」
たまにしか私を訪ねない友人が、いつもの派手な服で身をまとい、やって来た。
:08/09/14 14:09 :SO906i :☆☆☆
#64 [◆67oIOf49hA]
「なぁに?」
「まだいたの?」
「だって、約束したんだもの」
「でもあなた、自分で言ったじゃない。もう無理だって」
待つのが無理なのじゃない。
私の体が無理なのだ。
私は短い一生を終えようとしている。
体はボロボロで、立っているのだってやっとだ。
前はあんなに近かった白い雲が、今ではこんなにも遠い……。
あなたが来ない日が続いた。
私の命が途絶える日が近づいてきた。
:08/09/14 14:10 :SO906i :☆☆☆
#65 [◆67oIOf49hA]
早く来て……。
せめて最後に一目だけ会いたいの……。
意識が薄れる中、近くにある建物の鐘が大きく何回も鳴り響いた。
必死にその方を見れば、そこからたくさんの人が出てくる。
そして、私は見た。
花びらが舞う中を、白い服で身を包んで楽しそうに笑っているあなたを。
隣にいる誰かと一緒に笑っているあなたを……。
でもいい……。
それでもいいの……。
もう一度会えた。
それが嬉しい。
:08/09/14 14:11 :SO906i :☆☆☆
#66 [◆67oIOf49hA]
あなたが幸せならそれだけでいいの。
ありがとう。
あの日、私に気づいてくれて。
寂しさに気づいてくれて。
温かな気持ちをくれて。
幸せに……。
どうか幸せに……。
ああ、もう時間だ。
いかなくちゃ……。
―――――――――…………
「あ……っ」
「どうしたの?」
「この前来た時は元気だったのに。ホラ、可愛い花だろう?1人ぼっちで咲いてたから気になったんだ」
:08/09/14 14:12 :SO906i :☆☆☆
#67 [◆67oIOf49hA]
「あらこれスズランじゃない。見つけたって事は、私達、幸せになれるのでしょうね」
彼女は微笑む。
彼は1輪の花を手にとった。
もうシャキリと立つことが出来ないしなったその花を見た彼は、どうしてか泣きたい衝動にかられた。
ふわりとやわらかな風が吹いた時、彼は確かに聞いた。
―ありがとう―
小さな小さな可愛らしい声は、やがて風とともに溶けていった……。
-end-
:08/09/14 14:13 :SO906i :☆☆☆
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