【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
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#8 [◆BBhDve0Trg]
 
・・・12月。

また、この季節がやってきた。

「おう、サンター」

「サンタ!!プレゼントくれ」

「サンター。俺、新しいマフラー欲しいんだけど」

(・・・だーかーらー)

「俺は、サンタじゃねぇ!!」


……サンタにプレゼント…

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⏰:08/09/14 13:05 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#9 [◆BBhDve0Trg]
 

俺の名前は三田一輝(みたかずき)。

「さんた」じゃなくて「みた」。

放課後。

俺の事をサンタと呼ぶクラスメイトを怒鳴り付けた俺は、そのまま教室を出た。

(あーくそっ!!どいつもこいつも!!もとはと言えばあいつが・・・)

「サンター!!」

後ろから、あいつの声が聞こえた。
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⏰:08/09/14 13:07 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#10 [◆BBhDve0Trg]
 
俺は「みた」。

「サンタ」じゃないから振り向かない。

無視して歩いていると、後ろから制服を引っ張られた。

「もーサンタ!!無視するな!!」

こいつは中井優子。

中学からの腐れ縁。

ちなみに、サンタと呼び始めたのもこいつ。
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⏰:08/09/14 13:08 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#11 [◆BBhDve0Trg]
 
「俺はみた!!てか、お前がサンタって呼ぶせいで、他の奴らにも呼ばれるんだけど!!」

背の低い中井を見下ろして怒鳴る。

「・・・そんな怒鳴んなくてもいいじゃん。サンタって、この時期いっつも機嫌悪いよね」

中井は、フンッとそっぽを向いた。

(・・・誰のせいか分かってんのか)

「お前に、俺の気持ちは分かんねーよ。てか、何か用??」
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⏰:08/09/14 13:09 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#12 [◆BBhDve0Trg]
 
「あ!!そうそう・・・」

言いながら、中井はカバンの中をゴソゴソとあさる。

そして、1枚の紙切れを取り出した。

「はい!!これ」

そう言って、紙を俺に渡す。

「・・・クラス会??」

紙の1番上に、「☆平成18年度宮川中3Bクラス会☆」と、大きく書いてある。
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⏰:08/09/14 13:10 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#13 [◆BBhDve0Trg]
 
「そう!!中3の時の!!私と絵美が幹事なんだけど、来れる??」

俺は、紙にザッと目を通した。

「は??てか、わざわざクリスマスイブにやるの??」

イブって言ったら、恋人達の聖夜だろ。

「あ、そっか。サンタは、イブはプレゼント配りで大忙しだもんね」

「・・・おい」

俺が睨むと、中井は無邪気に笑った。
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⏰:08/09/14 13:11 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#14 [◆BBhDve0Trg]
 
「大丈夫だよ!!調べたところ付き合ってるのは、元3Bカップルの美穂と進藤君だけだから。2人一緒に来れるらしいし」

笑顔で言う中井の手元には、Vサイン。

(・・・お前、自分で言ってて虚しくならないか??)

なんて思った事は、口には出さない。

(・・・あいつら来るのか)

「サーンタ!!で、来るの??来ないの??」

ぼーっとしていると、中井が言った。
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⏰:08/09/14 13:13 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#15 [◆BBhDve0Trg]
 
「・・・行くよ」

「んー分かった!!忘れないでよ!!」

中井はメモをとると、回れ右して走っていった。

俺は、もう一度紙をじっくり見る。


『・・・ごめんね』


忘れたはずの声が聞こえた気がして、俺は頭を左右に振った。

(・・・もう、一年か)

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⏰:08/09/14 13:13 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#16 [◆BBhDve0Trg]
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中二の秋から中三の冬まで、俺には彼女がいた。

それが美穂。

告白したのは俺から。

美穂は、明るくて頭も良くて綺麗で・・・自慢の彼女だった。

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⏰:08/09/14 13:14 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#17 [◆BBhDve0Trg]
 

『・・・他に好きな人ができたの』


中三の冬、十二月の初め。

そう、ちょうど今頃の時期。

美穂が別れ話を切り出した。

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⏰:08/09/14 13:16 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#18 [◆BBhDve0Trg]
 

美穂の進路希望は、県内で五本の指に入る進学校。

一方俺は、そことは比べ物にならない普通の県立高校。

美穂が好きになったのは、美穂と同じ高校を目指す進藤。

まぁ、よくある話。

その後、二人は無事志望校に合格し、進藤からの告白で付き合い始めた。

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⏰:08/09/14 13:17 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#19 [◆BBhDve0Trg]
 

『・・・ごめんね』


別れる時、本当につらそうに美穂は言った。

きっと、俺のことを嫌いになったわけじゃない。

それはよく分かった。

なのに・・・

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⏰:08/09/14 13:17 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#20 [◆BBhDve0Trg]
 

『もう、いーよ』


俺の口から出たのは、ひどく冷たい一言。

・・・あの時の美穂の泣きそうな顔が、瞼の裏に焼き付いて離れない。


何度も、何度も後悔した。

あの時、もっと優しい言葉をかけてやれたなら。

あんな顔、させずにすんだのに。

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⏰:08/09/14 13:18 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#21 [◆BBhDve0Trg]
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「・・・ここか」

イブ当日、俺は中井に渡された紙を見て、店の名前を確認していた。

(・・・よし)

店のドアに手をかける。

「あれー?サンタ?」

声をかけられて、俺はドアに手を当てた状態で止まった。

(この気の抜けた声は・・・)
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⏰:08/09/14 13:20 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#22 [◆BBhDve0Trg]
 
俺はゆっくりと声のした方を向く。

・・・予想通り。

振り向くと、いや、正確には振り向いて少し下を向くと、中井が不思議そうな顔で俺を見上げていた。

「なに?サンタも遅刻?」

中井は何が楽しいのか、笑いながら言った。

「あぁ、電車乗り過ごして・・・てか中井も?幹事のくせに?」

「ほら!!早く入ろ!!」
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⏰:08/09/14 13:21 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#23 [◆BBhDve0Trg]
 
質問には答えずに、中井は俺を押し退けてさっさと店の中に入っていく。

(・・・おいおい)

呆れながら中井の後に続く。

その時、中井が俺の方を振り向いた。

そして、まるで俺の心を読んだかのように、へへっと笑ってみせた。

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⏰:08/09/14 13:22 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#24 [◆BBhDve0Trg]
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「あ、サンタ!!おせーぞー!!」

部屋に入ると、すでに全員揃っていた。

「わりぃ!!電車乗り遅れた」

言いながら俺は、空いていた席に座る。

視界の隅に、美穂と進藤が隣同士に座っているのが見えた。

俺はさりげなく視線をずらして、二人を視界からはずす。
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⏰:08/09/14 13:23 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#25 [◆BBhDve0Trg]
 
まともに見る勇気は、まだない。

「あ、優子おそーい!!てか幹事のくせに遅刻って!!」

トイレに寄っていた中井が、遅れて部屋に入ってきた。

「ごめーんー!!」

手を合わして謝る中井。

(ふ・・・言われてら)

中井は座る暇もなく、もう一人の幹事である三宅に引っ張られ前に出る。
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⏰:08/09/14 13:24 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#26 [◆BBhDve0Trg]
 
「えー・・・ではやっと全員揃ったので」

三宅が言う横で、中井は慌ててかぶっていたニット帽を取る。

「みんな、飲み物の準備はいいですかー?」

「おー!!」

そこでみんな、それぞれの飲み物を手に持つ。

俺のとこには、すでにコップにつがれたジュースがあったのでそれを持つ。
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⏰:08/09/14 13:25 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#27 [◆BBhDve0Trg]
 
「え!?私持ってないよぉ」

と言いながら焦る中井に、そばに座っていた美穂が飲み物を渡しているのが見えた。

「それでは!!今日全員揃って集まれたことを祝して!!」

「「かんぱーい!!」」

結局、全部三宅が仕切っていた。

・・・中井が前に出た意味はあったのか?

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⏰:08/09/14 13:26 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#28 [◆BBhDve0Trg]
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「・・・はー、さみぃ」

俺は一人店から出て空を見上げた。

中の盛り上がりは最高潮で、熱気もすごい。

温まった体に、外の寒さは身に染みた。

空には二三個星が見えるだけで、他は黒。

その黒さが、吐いた息の白さを際だたせる。

息は徐々に色を失い、他の空気と混ざり、溶けて消えた。
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⏰:08/09/14 13:27 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#29 [◆BBhDve0Trg]
 

美穂と進藤は、超が付くほどお似合いだった。

周りの奴らは俺を気遣ってか何も言わなかったけど、俺から見てそうなんだから、他の奴らから見てもそうなんだろう。

視界の隅に時々うつる美穂の笑顔は、昔と変わらずまぶしかった。

・・・あの頃、俺に向けられていた笑顔。

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⏰:08/09/14 13:28 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#30 [◆BBhDve0Trg]
 

俺は今日、本当は、付き合っていた頃のように普通に話せることを期待してた。

あ久しぶり、とか言って。

何事もなかったかのように。

けど実際は、視界の隅に映る二人を見るのが精一杯で、目すら合わせられなかった。

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⏰:08/09/14 13:29 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#31 [◆BBhDve0Trg]
 

別によりを戻したいとか思ってるわけじゃない。

いや、そうなるのを全く期待していなかったって言ったら嘘になる。

けど今日、幸せそうな美穂を見て、進藤の隣で笑う美穂を見て、そんなことは有り得ないんだって実感した。

そして、あの頃の思い出と、優しい言葉をかけられなかった後悔だけが残った。

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⏰:08/09/14 13:30 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#32 [◆BBhDve0Trg]
 

最後の最後にあんなに冷たかった俺を、美穂は嫌いになっただろうか?

俺と付き合ったことを、後悔しなかっただろうか?


カランッ

店のドアの開く音がした。

どうせ知らない人だろう、と俺は後ろを振り向きもしない。
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⏰:08/09/14 13:31 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#33 [◆BBhDve0Trg]
 
「・・・一輝」

声が、聞こえた。

聞き慣れていたはずの声。

(・・・これって)

まさかと思いながら、俺はゆっくりと振り向く。

「・・・美穂」

そこには、美穂がいた。

驚く俺をよそに、美穂は俺の隣に並ぶ。
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⏰:08/09/14 13:32 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#34 [◆BBhDve0Trg]
 
「・・・一輝、変わってないね」

冷たい風に長い髪をなびかせながら、美穂は言った。

「・・・美穂もな」

俺は、平然を装って答える。


いや、むしろ綺麗になったよ。

そんなこと言えないけど。

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⏰:08/09/14 13:33 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#35 [◆BBhDve0Trg]
 

美穂は髪を押さえて、ふふっと笑った。

俺はそんな美穂を、今日初めて正面から見た。


・・・あぁ、美穂だ。

笑った顔も、一つ一つの仕草も、何もかもが大好きだった。

大好きだった。

なのに・・・
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⏰:08/09/14 13:34 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#36 [◆BBhDve0Trg]
 
あの時、傷つけてごめん。

優しくなれなくて、ごめん。


「・・・美穂」

「ん?」

美穂がきょとんとした顔で俺を見る。
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⏰:08/09/14 13:34 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#37 [◆BBhDve0Trg]
 
(・・・あ)

言いたいことはいっぱいありはずなのに、いざとなると言葉が出てこなくて、俺は固まってしまった。

顔が赤くなるのが分かる。

そんな俺を見て、美穂は優しく微笑む。

「・・・一輝、私ね」

口を開いた。
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⏰:08/09/14 13:35 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#38 [◆BBhDve0Trg]
 
「一輝のこと、本当に好きだったよ」

そう言って、美穂は少しうつむいた。

長い髪がさらりと揺れる。


・・・美穂に、こんなこと言ってもらえるとは思ってなかった。

俺も・・・今なら言えると思った。

もう、絶対に後悔したくない。

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⏰:08/09/14 13:36 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#39 [◆BBhDve0Trg]
 

俺は冷たい空気を吸い込んだ。

今は、夜空の星でさえも自分を応援してくれている気がする。

(・・・よし)

「・・・俺さ、ずっと後悔してたんだ」

白い息とともに、吐き出すように言った。

美穂が、真剣な顔で俺を見る。
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⏰:08/09/14 13:37 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#40 [◆BBhDve0Trg]
 
「最後に・・・美穂に冷たい言葉しか掛けれなかったこと」

美穂は、驚いたような顔をした。

「美穂のこと、好きだったのに・・・泣きそうな顔させた」

俺は目をつむって、頭を下げた。

「・・・あの時は、ごめん」

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⏰:08/09/14 13:38 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#41 [◆BBhDve0Trg]
 

やっと言えた。

謝ったからって、傷つけた事実が変わる訳じゃないし、ただの自己満足かもしれない。

けど、言わずにはいられなかった。


「一輝・・・顔上げて」

美穂に言われて、俺はゆっくりと顔を上げる。

それを確認して、美穂は口を開いた。
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⏰:08/09/14 13:39 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#42 [◆BBhDve0Trg]
 
「・・・よかった。私、一輝に嫌われたかと思ってたから」

美穂の言葉に、俺はブンブンと首を横に振った。

そんな俺を見て、美穂は微笑んだ。

「自分勝手だけと・・・一年以上付き合って、嫌われて終わるのって悲しいから・・・ずっと、聞きたかったの」

言った後、今度は美穂が頭を下げる。
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⏰:08/09/14 13:40 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#43 [◆BBhDve0Trg]
 
「・・・今まで、本当にありがとう。一輝と付き合って、すごく楽しかった」

美穂が言った。


心が軽くなった気がした。

ずっと胸につっかえていたものが、すーっと消えていくのが分かった。

あぁ・・・美穂も同じだったんだ。

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⏰:08/09/14 13:41 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#44 [◆BBhDve0Trg]
 

「・・・美穂」

美穂が顔を上げる。


俺も、ずっと言いたかったことがある。

あの時言えなかった言葉。

今度こそ、伝えたい。


美穂の顔を見て、自然に笑えた。

「俺も・・・今までありがとう・・・幸せになってな!!」
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⏰:08/09/14 13:42 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#45 [◆BBhDve0Trg]
 
ずっと言いたかった言葉。

それを聞いて、美穂は大きくうなずいた。

そして、照れたように笑う。

「今日、来てよかった。一輝と話せてよかったよ。・・・優子に感謝しなきゃな」

「へ?中井?」

俺が言うと、美穂はしまったという風に口を押さえた。
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⏰:08/09/14 13:43 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#46 [◆BBhDve0Trg]
 
俺の顔を見て、へへっと笑って見せる。

「えっと、じゃぁ先入るね!!」

そう言って美穂は、そそくさと店の中に戻っていった。

俺は頭にハテナマークを浮かべたまま、その場に立ち尽くす。

(・・・ま、いっか)

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⏰:08/09/14 13:44 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#47 [◆BBhDve0Trg]
 

俺も、来てよかった。

話せてよかった。

・・・もう、大丈夫だ。


もう一度空を見上げて、店のドアを開けた。

「わわっ!!」

その瞬間、声がした。

(・・・この間抜けな声は)
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⏰:08/09/14 13:46 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#48 [◆BBhDve0Trg]
 
下を向くと、案の定中井がいた。

俺と目が合うと、やばいといった顔をして不自然に目をそらす。

「・・・何してんだよ」

俺は呆れながら言った。

「いや!!たまたま偶然、ね!!」

明らかに怪しい身振り手振りを交えながら、中井が言う。

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⏰:08/09/14 13:47 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#49 [◆BBhDve0Trg]
 

『・・・優子に感謝しなきゃな』


その時、さっき美穂の言っていたことが頭をよぎった。

(・・・こいつ)

中井が俺の顔をちらりと見て、観念したようにひひっと笑った。

「美穂とはちゃんと話せた?」

そして、心配そうに言う。
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⏰:08/09/14 13:48 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#50 [◆BBhDve0Trg]
 
(あぁ・・・中井のお陰なのか)

俺は、中井を見て笑った。

「・・・ありがとな」

言いながら俺は、部屋に向かって歩き始める。

そんな俺を見て、中井は少し驚いた顔をした後、嬉しそうに笑った。

「どういたしまして!!」

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⏰:08/09/14 13:49 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#51 [◆BBhDve0Trg]
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ガラッ

部屋のドアを開けると、みんな一斉にこっちを見た。

「サンタと中井どこ行ってたんだよー!!遅刻コンビ!!」

「何かゲームやるぞ!!」

そんな言葉に、俺は手を合わしながら謝る。

向こうの方で、美穂が笑っているのが見えた。
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⏰:08/09/14 13:50 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#52 [◆BBhDve0Trg]
 
「・・・ふ」

(・・・ふ?)

小さく笑い声のした方を見ると、中井が肩を震わせて笑っていた。

「・・・何そんな笑ってんの?」

俺が聞くと、中井は自分の口元で手招きした。

俺はかがんで、自分の耳を中井の口元に近付ける。
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⏰:08/09/14 13:51 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#53 [◆BBhDve0Trg]
 
「あのね・・・サンタと中井、だって!!」

中井が俺の耳元に手を添えてこそっと言った。

「・・・?」

言った後また中井は笑ったが、俺にはさっぱり何のことか分からない。

そんな俺に気づいて、中井は少しすねたような顔をした。

「だーかーらー」

そう言って、もう一度口を近づける。
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⏰:08/09/14 13:52 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#54 [◆BBhDve0Trg]
 
「サンタ・トナカイ!!」

そして、今度は分かりやすく、区切って言った。

(・・・あ)


本当だ。

言われて初めて気づいた。

サンタとトナカイなんて・・・今日にぴったりだな。

嫌だったはずのそのあだ名が、急にくすぐったく感じた。

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⏰:08/09/14 13:54 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#55 [◆BBhDve0Trg]
 

なんだか可笑しくて、俺も笑えてきた。

中井も満足げに笑う。

「何こそこそ話してんだよー!!早く座れ!!」

さっき「サンタと中井」と言った奴が言って、俺たちは顔を見合わせてまた笑った。

この様子だと、周りの奴らも言った本人も気づいてないようだ。

「行こっ!!」

中井が自分の席に向かって歩き出す。
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⏰:08/09/14 13:54 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#56 [◆BBhDve0Trg]
 
「あ!!おい、雪!!」

その時、進藤が窓の外を指さして言った。

空から白い結晶がパラパラと舞い降りている。

「え、うそ!?」

「わー!!」

みんな口々に言いながら窓に近づく。

「雪!!」

中井も目を輝かせて、窓の方へ向かう。

途中、中井が俺の方を振り向いた。
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⏰:08/09/14 13:55 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#57 [◆BBhDve0Trg]
 
「ほら、サンタ!!」

そう言って、本当に嬉しそうに笑った。

その笑顔は、美穂に負けないぐらいまぶしくて、輝いて見えた。

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⏰:08/09/14 13:57 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#58 [◆BBhDve0Trg]
 

・・・その瞬間、俺の中で中井が、一人の女の子に変わった。

けど、そのことに俺自身が気づくのは、まだもう少し先の話・・・。


・・・明日はクリスマスだ。

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⏰:08/09/14 13:58 📱:D904i 🆔:☆☆☆


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