Fantasy Story
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#31 [英]
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――いたぞ!あそこだ!!
突然、男の叫びが森中に響いた。そして叫びに続いて幾つもの足音がこちらへと駆けて来た。
人がこの森に居る事が分かって少し安心する事が出来た……が、何故かその足音は広場へとは出ず、途中で止まってしまった。
「何で隠れてるんだ…?」
小さな声で呟やいた透だが、風がなくなった今、物音一つしない森では十分に響いた。
だが誰一人、返事をする者はなく…ジッと木々の陰に潜んでいた。
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:08/09/18 22:16
:W53T
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#32 [英]
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あまりにも怪しい空気に緊張が走る。
一度流れた冷や汗はまた流れ出し、量が増すばかりだ。
木々の隙間から見える小さな光が幾つもあって、それらを見た透は立ったまま動く事が出来なくなった。
懐中電灯や携帯電話のライトとは全く違う、とても冷たくて鋭い光…。
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:08/09/19 01:50
:W53T
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#33 [英]
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「動くな。動けば貴様の身体に数十本もの矢が突き立つぞ」
男の言葉に、透は顔を真っ青にさせた。
先程から小さく光っていたものが矢だとわかると、足が、身体が、途端に震え始める。
動けば一斉に矢が放たれるだろう。透は動かないように足を突っ張らせるが、震える身体は言うことを聞かず、ガクンと折れるようにして座り込んでしまった。
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:08/09/19 14:29
:W53T
:Ltw.xKIY
#34 [英]
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「動くなと言ったはずだ!」
怒鳴る声と同時に数本の矢が放たれ、透を囲むようにして地面へと突き立った。
「ひ…っ」
矢だなんて初めて見る。
いつもなら興味津々にそれを見ていただろうが、今はそんな余裕なんて無かった。
もう透の心には恐怖しかない。
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:08/09/20 18:05
:W53T
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#35 [英]
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「汚らわしい王国の人間よ…“シュウレン様”を何処へやった…」
「教えろ、あの方は今…」
「早く…早く…」
「教えなければ、」
――殺す。
物騒な言葉、だけじゃすまない。
彼らの声はとても穏やかなものとは言えない。透は直ぐさまそんなもの知らない、と言い頭を横に振りたかったが、それすら出来ないぐらいに身体は竦んでいた。
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:08/09/21 01:27
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#36 [英]
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「やはり王国の人間は何処までも汚らわしい…」
もういい、他を当たろう。
その一言で周囲は冷たい空気に包まれた。また幾つもの鋭い光が木々の隙間に現れ、透へと向けられる。
ああ、こんなわけの分からない所で、理解出来ない事を言われて、僕は殺されてしまうのか…
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:08/09/21 01:35
:W53T
:dVBbJtIo
#37 [英]
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そんな事を思っている間にも無数の矢は透へと狙いを定められている。
何であの時授業をサボって屋上へと行ってしまったのだろうか。
あの子と出会っていなければきっとこんな事にもならなかった筈だ…
これから起こる事に耐え切れず、透は涙を流した。
「…まだ死にたくない…」
透の言葉は届かなかった。
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:08/09/21 01:46
:W53T
:dVBbJtIo
#38 [英]
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「放て!!」
誰か一人が合図を出せば、矢は一斉に射られた。
自分へと目掛けて飛んでくる矢に、そして迫りくる恐怖から逃れられず、声を出す事も忘れきつく目を瞑った。
刹那、透と無数の矢の間に二つの影が何処からともなく現われた。
前と後ろ。蹲る透を挟んでその影は立ち、飛んできた矢を的確に叩き落としていったのだ。
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:08/09/24 01:18
:W53T
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#39 [英]
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「此処はウェルドの地。貴様らエルフが何用だ!」
直ぐ側で高い女の厳かな声があがった。
――エルフ。
物語の中でしか存在しないはずの生き物。そして聞いた事の無い地名…
何が起き、そして突然現われた女が何を言っているのかわからず、透はきつく閉じていた目を恐る恐る開いた。
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:08/09/25 01:41
:W53T
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#40 [英]
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目の前には細い足があり、上へと見上げると漆黒の美しい髪が一つに束ねられていた。
その人物の足元には先程まで鋭い光を放っていた矢が折れた状態で幾つも散らばっている。
「どうせまたシュウレン様とやらを返せって言うんだろう?」
女の声とは別に、今度は真後ろから溜め息混りの若い男の声が聞こえてきた。
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:08/09/30 19:43
:W53T
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