Fantasy Story
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#37 [英]
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そんな事を思っている間にも無数の矢は透へと狙いを定められている。


何であの時授業をサボって屋上へと行ってしまったのだろうか。
あの子と出会っていなければきっとこんな事にもならなかった筈だ…



これから起こる事に耐え切れず、透は涙を流した。


「…まだ死にたくない…」


透の言葉は届かなかった。

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⏰:08/09/21 01:46 📱:W53T 🆔:dVBbJtIo


#38 [英]
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「放て!!」


誰か一人が合図を出せば、矢は一斉に射られた。

自分へと目掛けて飛んでくる矢に、そして迫りくる恐怖から逃れられず、声を出す事も忘れきつく目を瞑った。


刹那、透と無数の矢の間に二つの影が何処からともなく現われた。
前と後ろ。蹲る透を挟んでその影は立ち、飛んできた矢を的確に叩き落としていったのだ。


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⏰:08/09/24 01:18 📱:W53T 🆔:lWGJvETk


#39 [英]
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「此処はウェルドの地。貴様らエルフが何用だ!」


直ぐ側で高い女の厳かな声があがった。



――エルフ。
物語の中でしか存在しないはずの生き物。そして聞いた事の無い地名…

何が起き、そして突然現われた女が何を言っているのかわからず、透はきつく閉じていた目を恐る恐る開いた。


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⏰:08/09/25 01:41 📱:W53T 🆔:V0xX2K.6


#40 [英]
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目の前には細い足があり、上へと見上げると漆黒の美しい髪が一つに束ねられていた。

その人物の足元には先程まで鋭い光を放っていた矢が折れた状態で幾つも散らばっている。


「どうせまたシュウレン様とやらを返せって言うんだろう?」


女の声とは別に、今度は真後ろから溜め息混りの若い男の声が聞こえてきた。

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⏰:08/09/30 19:43 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#41 [英]
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「何度もしつこいね、アンタら。シュウレンってのはエルフ族の長だったはず……そんな奴が此処、ウェルドに居るわけないだろ」

「嘘だ!王国の人間は幾度と我々を騙してきた…もう人間の言葉など信じるものか!」

「でも本当に知らないんだけどな…」


どうしたものか、と困った声をあげる青年に、エルフの者は今まで以上に声を荒げた。

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⏰:08/09/30 19:58 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#42 [英]
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「我らは見た!お前らの王がシュウレン様を連れ去ったのを…!!」

噛み付くように叫ぶエルフに、透の目の前に佇んで居た女は手に握っていた細身の剣を姿の見えないエルフ達へと向ける。


「…でまかせばかり言うな!そのような嘘をついて貴様らはウェルドの民を殺したのか…っ」


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⏰:08/09/30 20:01 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#43 [英]
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「お前達のような偽りばかりの人間と一緒にするな!早く、早くシュウレン様を返せ!!」


お互いが違うものに対して怒りを感じ、言葉が噛み合わなくなってきた。

言葉と同時に放たれる一本の矢。
女は自分目掛けて飛んで来る矢に、そして自分達を囲んで居るエルフ達に苛立ちを抑え切れず小さく舌打ちをして矢を叩き落とした。


そしてそれを見た青年は焦げ茶の髪を揺らし、音も無く右手を素早く上げる。

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⏰:08/09/30 20:25 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#44 [英]
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直後、透達とその後ろに隠れて居たエルフ達の背後から、多くの足音が響いて来た。

驚いて瞬きをした透が足音のする方へと振り返ると、そこには今まで姿を隠していたエルフ達が、焦りと混乱を顔に浮かべながら一斉に木々の陰から飛び出して来たのだ。


そしてそれを追う、およそ三十名程の兵士。
白を基調とした軍服に身を包んでいる彼らの手には、既に鞘から抜かれた剣が握られていた。

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⏰:08/10/07 02:18 📱:W53T 🆔:KO/lUya6


#45 [英]
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「一人たりとも逃がすんじゃないよ!捕らえろ!!」


逃げ惑うエルフを鋭く睨み、女は兵達に号令を下した。――直後、目映い光が幾つも現れ、その光は一瞬にしてエルフ達を呑み込んでいった。

目を閉じていると言うのに、瞼を通り抜けて入り込んでくる程の眩しさ。

そして、光から出て来る風が吹き荒れる。台風並の強風に透の身体は飛ばされそうになるが、誰かが咄嗟に肩を押さえてくれたお陰で飛ばされずにすんだ。
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⏰:08/10/09 01:37 📱:W53T 🆔:F8yb.BUY


#46 [英]
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「何だったんだ…今の光。それに風まで…」


光が止み、風も止んだ。
目映い光の所為でチカチカする目は何度瞬きしても、暫くの間治る事はなかった。それ程、強烈な光だったのだ。


「風属性魔法。……瞬間移動だ」


耳元で聞こえる声。
まだ違和感のある目を擦り、透は横へと顔を向けた。するとそこには後ろに居たはずの青年が透を支える様にしゃがんでいた。自分の肩に置かれている手を辿ってみればやはりそれは青年の手だった。

⏰:08/10/09 01:54 📱:W53T 🆔:F8yb.BUY


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