*ドロップラブ*
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#1 [みい]
:08/11/10 23:35
:SH905i
:WX/jIpA.
#2 [みい]
缶に入ったドロップ。
いろんな色や、味があるよ。
甘かったり、ちょっと酸っぱかったり。
まるで、みんなの恋みたいだね。
*ドロップラブ*
:08/11/10 23:36
:SH905i
:WX/jIpA.
#3 [みい]
ガタンゴトン……
16時31分発、都営大江戸線赤羽橋駅4両目。
いつもと同じ時間、同じ場所。
そうでなければ、無事に家に着けないのだ。
私は目が見えない。
:08/11/10 23:37
:SH905i
:WX/jIpA.
#4 [みい]
:08/11/10 23:39
:SH905i
:WX/jIpA.
#5 [みい]
いつも通りドアの近くに立っていたら、人が近付いてくるのを感じた。
人の気配には敏感だ。
「ドア近くの席、座らへん?」
「あ、大丈夫です。ありがとうございます」
どうやらこの人は、親切にも私に席を譲ってくれようとしたらしい。
でもあいにく私にそれは必要ない。
:08/11/10 23:41
:SH905i
:WX/jIpA.
#6 [みい]
目が不自由なのと体が不自由なのとは、わけが違うのだ。
まあ、健常者にはわからないと思うけど。
私に断られた相手は、「あ、さいですか」とか言っている。
だが、一向に私から離れる気配がない。
「あの、まだ何か?」
:08/11/10 23:42
:SH905i
:WX/jIpA.
#7 [みい]
たまらず私が口を開くと、
「え、見えてるん?」
と驚いた声。
「見えてないですけど。あなたが20代男性なのはわかります」
「なんで?」
まず、男物の香水。近付いてきた時から恐らく男であろうとの予想はできていた。
:08/11/10 23:44
:SH905i
:WX/jIpA.
#8 [みい]
声が上から届くから、男性の中でも背はなかなか高いほうだろう。
あと、声が若い。ついでに加齢臭が皆無。
ジーンズ生地の匂いがするから、サラリーマンではなく学生。
「そんなとこですかね」
「ほえー、たいしたもんやね」
私の推理を聞くと、彼は感心の声をあげた。
:08/11/10 23:45
:SH905i
:WX/jIpA.
#9 [みい]
「そんなことないです」
目が見えなくなってから、自然とついた癖だ。
聴覚、嗅覚が視覚の代わりになる。
「君と喋っとったら、他の奴に席座られてしもたねん。せやから、こうして立ってんの」
「そうでしたか」
申し訳なく思ったが、謝罪の言葉を求めているようにも思えない青年の口調に、私はただそう答えた。
:08/11/10 23:46
:SH905i
:WX/jIpA.
#10 [みい]
その後は会話がなかったけど、彼が私の傍にいることは感じとれた。
しばらくして、車掌さんのアナウンスが、次の駅名を告げると、
「あ、君、次で降りるやろ」
それまで黙っていた彼が、急に言葉を発した。
たしかに彼に言われた通り、次が私の家の最寄駅だ。
:08/11/10 23:47
:SH905i
:WX/jIpA.
#11 [みい]
「はい。なんでわかるんですか?」
今度は私が聞く番だった。
「んー…、いつも見かけるから、かな?君は知らんと思うけど」
「知らなかったです。私、目が見えないから」
私の言葉に、彼が笑ったのがわかった。
「せやんな。見えへんもんな」
:08/11/10 23:48
:SH905i
:WX/jIpA.
#12 [みい]
私は正直、少し面食らった。
こういう場面になると、たいていの相手は謝ってくるのだ。
「無神経なこと言ってごめん」だの、なんだの。
それなのに、この初対面の青年ときたら、まるで正反対の反応。
…珍しい人。
:08/11/10 23:49
:SH905i
:WX/jIpA.
#13 [みい]
電車がホームに滑り込んだのを感じた時だった。
「ほな、行きますか」
そんな言葉と同時に、彼が私の頭をぽんと叩く。
「え?」
「俺んちも、ここの駅やねん」
彼の澄んだ声が、耳に届いた。
:08/11/10 23:49
:SH905i
:WX/jIpA.
#14 [みい]
なんだか変わった人だなあ、と思いながらも、杖を握り直し、電車を降りた。
「家まで送るわ」と言われ、一回は断ったものの、私はすぐに折れた。
近いから平気だと言うし、何よりこういう言い合いは得意ではないのだ。
:08/11/10 23:52
:SH905i
:WX/jIpA.
#15 [みい]
「あんなあ、」
私の隣で、歩幅を合わせるように歩きながら彼は口を開く。
「なんですか?」
「さっきのん、一個だけ間違いあんねん」
完璧だと思ったんだけど、どうやら私の読みは少し外れていたみたいだ。
「君さ、俺のこと20代って言うたやんな?」
:08/11/10 23:53
:SH905i
:WX/jIpA.
#16 [みい]
「はい、違いましたか?」
「なんでそう思たん?」
おっさんとちゃうからって、20代とは限らんやん?もしかしたら、10代かもしれへん。
そう言う彼に、私は少し得意になって答えた。
「だって、煙草の匂いがしたもの」
「煙草?」
:08/11/10 23:53
:SH905i
:WX/jIpA.
#17 [みい]
「煙草は、ハタチからでしょ?」
そう言うと、彼が盛大に笑い始める。
「どうかしましたか?」
少しむっとした顔で、声のするほうを見ると、
「んははっ、いや、いい子ちゃんやなー思て」
と笑みを含んだ返答。
:08/11/10 23:54
:SH905i
:WX/jIpA.
#18 [みい]
「別に、当たり前のこと言っただけじゃないですか」
「せやね。でも残念ながらハズレー。俺、18やもん」
ただの不良じゃないか。というか、同い年じゃないか。
まあ、どうでもいいんだけど。
「そうでしたか、それは残念です」
「あ、ほんまに思てへんやろー」
私の棒読みの台詞に、彼が茶々を入れる。
:08/11/10 23:55
:SH905i
:WX/jIpA.
#19 [みい]
進学のため、滋賀県から上京したという彼。
名前は、悠(ユウ)というらしい。
「君は?名前なんて言うん?」
「都(ミヤコ)です」
かわいらしい名前やね、と言う彼の表情は伺えなくて、少し私を不安にさせた。
出会ってから初めて、声が笑っていなかったからだ。
:08/11/10 23:56
:SH905i
:WX/jIpA.
#20 [みい]
意味もないのに、彼の顔があるだろう方向を見上げる。
「ん?何?」
「いや…別に」
「言うてよ。そないじっと見られると、照れてまうやん」
あ、笑った。
「大丈夫、どうせ見えてないから」
思わず自虐的に言ってしまい、はっとする。
:08/11/10 23:57
:SH905i
:WX/jIpA.
#21 [みい]
なのに、彼は「せやった、見えてへんねや」とか言って、また笑ってる。
「さっき、なんで笑わなかったの?」
「へ?」
私は相手の表情が読めないとき、ついじっと相手の顔の辺りを見る癖がある。
そうすれば、何となくわかる気がして。
さっきも、その癖がつい出てしまったのだ。
:08/11/10 23:58
:SH905i
:WX/jIpA.
#22 [みい]
「私が名前を言った時よ。かわいらしい、なんて言いながら、笑ってなかったでしょ?」
「……ほんまに見えとるみたいやな」
「本当はかわいらしいだなんて、思ってなかったんでしょ」
嫌味ぶって言うと、彼がんー、と唸るのが聞こえた。
「いや、あんな、腹立つ奴らおったねん」
:08/11/10 23:59
:SH905i
:WX/jIpA.
#23 [みい]
「腹立つ?」
「あのー、何て言うたらええんやろ、じろじろ見てくるっちゅーか」
ああ、私に好奇の目を向ける人達のことか。
そんなの、私本人は全然気にしてないのに。
「せやから睨みきかせたった」
そんなことを笑いながら言うこの人は、一体何者なのだろう。
:08/11/11 00:00
:SH905i
:5HJ58mkI
#24 [みい]
それから毎日と言っていいほど、電車で悠に会った。
私は車両も時間も変えられないから、悠から逃れる術はなかった。
逃れる術はなかった、なんて言っておきながら、実は楽しみであったりもしたんだけど。
たった3駅分だけど、少しの間でも、悠が私といてくれることが嬉しかった。家まで送ってくれる優しさが嬉しかった。
:08/11/11 00:01
:SH905i
:5HJ58mkI
#25 [みい]
でも、そんな私のささやかな幸せを崩すのは、神様にとってはたやすいことだった。
いつもの時間、いつもの車両に乗り込む。
「都、座り」
そして今日もいつもどおり、悠は自分が座っていた席を、私に譲ってくれる。
:08/11/11 00:03
:SH905i
:5HJ58mkI
#26 [みい]
前に一度、「お年寄りや妊婦さんじゃないんだから、立ってられるよ」と言ったら、「ただのレディーファーストや」って笑われた。
悠的には、目が不自由だからってわけじゃないらしい。
「ありがとう」
「ん。あんな今日なー、」
悠が話しはじめた時だった。
「あっれー!?悠君!?」
:08/11/11 00:04
:SH905i
:5HJ58mkI
#27 [みい]
女物のきつい香水の匂いが鼻をつく。
「お、久々やね」
「ほんとだよー!悠君、全然サークルに顔出さないんだもん」
媚びるような女の口ぶりに、嫌悪感を覚えてしまう。
「…この人、知り合い?」
:08/11/11 00:05
:SH905i
:5HJ58mkI
#28 [みい]
「うん」
悠の平然とした返事に、彼女は少し間を置いたあと、
「そうなの、大変ねえ」
と、哀れむような声をあげた。
…心から思ってもないくせに。
「色々不便でしょ?少し出かけるにしても、」
:08/11/11 00:06
:SH905i
:5HJ58mkI
#29 [みい]
「ごめんまゆちゃん、次で降りるねん。先輩にもよろしゅう言うといて」
甲高い彼女の声を遮るように、悠が切り出す。
口調は優しいけど、私にはわかる。悠は怒っている。
彼女には悪いとは思いながらも、なぜだか少し嬉しい。
けど、次の彼女の言葉が、そんな私の心を切り裂いた。
:08/11/11 00:07
:SH905i
:5HJ58mkI
#30 [みい]
「そうなんだー。あれ、でも悠君ってもっと奥の方に住んでるんじゃなかったっけ?」
…え?
「俺んちも、ここの駅やねん」
出会った日の悠の言葉が蘇る。
:08/11/11 00:08
:SH905i
:5HJ58mkI
#31 [みい]
確かに悠はここが最寄だと言ったはずだ。
「あー…えっと、」
言葉を濁す悠を無視して、私は腰を上げる。
そして、ドアが開く音と同時に、ホームに飛び出した。
「都っ!?」
後ろから驚いた悠の声が追ってくる。
:08/11/11 00:09
:SH905i
:5HJ58mkI
#32 [みい]
人にぶつかり、舌打ちされながらも必死に走った。
が、不意に左手が掴まれる。
「な、にしてんねんっ…!」
悠だった。
「触らないで。嘘つきは嫌い」
そう言い放ち、悠の手を振りほどこうとする。
:08/11/11 00:10
:SH905i
:5HJ58mkI
#33 [みい]
「なんで途中下車してまで、私を送っていくの?ヒーロー気取り?
悪いけど、そんな押し付けがましい優しさなんて求めてない。
あの子と仲良く帰ればいいじゃない、本当の最寄駅まで。
別に私の話、してもいいわよ。「かわいそうだね」って哀れめば?
どうせ心の中では、いつもそう思ってたんでしょ?」
言い出せば止まらなくて、ほとんど八つ当たりのような内容だ。
:08/11/11 00:10
:SH905i
:5HJ58mkI
#34 [みい]
「…確かに俺、嘘ついてた。それは謝るわ」
悠の落ち着いた声が、嫌に胸を落ち着かせる。
「せやけど、何それ?俺がいつ、そんなこと言うた?」
「…本当は心の中で、笑ってたんでしょ。可哀相な奴だって」
「…都、大概にせえよ。怒るで」
悠の声が低くなる。
:08/11/11 00:11
:SH905i
:5HJ58mkI
#35 [みい]
「俺、自分を卑下する奴って、1番嫌いや」
「……」
「目が見えへんからって何?それだけやろ?何拗ねてんねん」
何も答えられない私は、ただ下を向くばかり。
「そんな子、もう知らんよ」
私の腕から手を離して、悠がこの場を去ったのがわかった。
:08/11/11 00:13
:SH905i
:5HJ58mkI
#36 [みい]
嫌われちゃった…かな。
そうだよね、こんなどうしようもない奴、嫌になっちゃうよね。
「帰らなきゃ…」
そう思い、杖を滑らせるがいまいち上手くいかない。
夢中で走ったから、いつものコースから外れてしまったようだ。
「最悪…」
:08/11/11 00:13
:SH905i
:5HJ58mkI
#37 [みい]
ママだって今日はパートの日だから、迎えに来てもらっても遅くなるな…。
仕方ない、誰かの助けを待とう。
東京って、みんな忙しいらしい。私に時間を割く暇なんて、ないみたい。
かれこれ1時間近く待ったけど、誰も声を掛けては来ない。
:08/11/11 00:14
:SH905i
:5HJ58mkI
#38 [みい]
自力で頑張ってみようか。
そう思い、杖を握り直した時だった。
「お姉さん、さっきから何してんのー?」
調子よさそうな声。見えなくてもわかる、ギャル男ってやつでしょ?
「いや、別に」
:08/11/11 00:15
:SH905i
:5HJ58mkI
#39 [みい]
「冷たいなあー!困ってるんでしょ?俺が手伝ったげるよ!」
「え、本当?」
思いがけない申し出に、安堵感が胸に広がる。
友達が、ああいう奴はダメって言ってたけど、中には案外いい人もいるじゃない。
ごつごつした手が、私の左手を掴んだ。
「マジマジ!んでさ、そのかわりと言っちゃあなんだけど、」
:08/11/11 00:16
:SH905i
:5HJ58mkI
#40 [みい]
男の声は、急に遮られた。
「悪いけど、他あたってくれへんかな?」
…悠だ。悠の声、だ。
「な、なんだよ関係ねえだろ!」
「俺の連れやねん、はよ退け」
チッと舌打ちしたあと、男が去っていったのがわかる。
:08/11/11 00:17
:SH905i
:5HJ58mkI
#41 [みい]
「ゆ、う?」
「よう知らん人にのこのこ着いてったらあかんやろ」
悠のため息が聞こえる。
「ご、ごめんなさい…。でも、手伝ってくれるって言うから…」
「あれ、キャッチやろ。色々面倒な連中や」
またまた悠の長いため息。
:08/11/11 00:18
:SH905i
:5HJ58mkI
#42 [みい]
「でも、なんで…?」
とっくに帰ったと思っていたのに、なぜ悠がここに?
「ずっとおったで?」
「え?」
「あんな風に言うてもて、すぐ後悔してん。なんて言うたら許してもらえるかな、て考えとった。すぐそこのベンチで」
「……」
:08/11/11 00:19
:SH905i
:5HJ58mkI
#43 [みい]
「都、絶対道迷って困ってるなー、て気付いてたんやけど、あんなこと言うた手前、どないして話し掛けよかって悩んでて」
情けない、って、悠が笑う。
「変な輩に声掛けられとんの見たら、さすがに体が勝手に動いたわ」
「じゃあ、さっきの人に感謝だね」
笑いながら言うと、生意気言うな、って小突かれた。
:08/11/11 00:21
:SH905i
:5HJ58mkI
#44 [みい]
「…さっき、悪かったな。きついこと言うてもて」
「ううん、私こそごめんなさい」
私なんか、って勝手に拗ねていじけて、悠を責めて。
悪いのは私のほうだ。
「…あんな、嘘ついたことやねんけど、」
こほん、と悠が咳ばらいする。
:08/11/11 00:21
:SH905i
:5HJ58mkI
#45 [みい]
「ちょっとでも多く、知りたかったから。それでつい…」
「へ?」
意味が分からず、ぽかんと口を開ける。
悠が大きく息を吸うのがわかった。
「好きやねん、都のこと。最初っからずーっと」
「……え」
「付き合ってくれへんかな?俺、結構男前って評判やで?」
:08/11/11 00:22
:SH905i
:5HJ58mkI
#46 [みい]
悠がそんなことを言うから、つい吹き出してしまった。
「何笑とんねん。こっちは必死なんやぞ」
少し怒ったような声のするほうに手を伸ばす。
私の指先が触れたのは、恐らく悠の頬。
「ん、何?」
「悠の顔、見てるの」
:08/11/11 00:23
:SH905i
:5HJ58mkI
#47 [みい]
悠は、ほなしっかり見てや、と言うと、私の手が届く位置までしゃがんでくれる。
「輪郭は、割とシャープだね」
「太ってへんからねー」
「目元は…二重だけど、ちょっと切れ長な感じ?」
「あ、それよう言われる」
クスクス笑いながら、悠の顔を見ていく。
:08/11/11 00:24
:SH905i
:5HJ58mkI
#48 [みい]
「鼻は…うわ、結構高いね」
「言うたやろ?俺は男前やて」
はいはい、とあしらって私は指を滑らせる。
「次は、口……!?」
唇の形をなぞろうとした手が抑えこまれて。
自分の唇に、柔らかい温かさが生まれる。
:08/11/11 00:25
:SH905i
:5HJ58mkI
#49 [みい]
「…口は、こないな感じ。ど?」
悠は重ねた唇を離すと、そんなことを聞いてくる。
「……ちょっと大きめ?」
「あんなあ、こういう時は真面目に答えるもんとちゃうの」
いつもと同じ時間、場所。
もうひとつ、「いつもと同じ」ができました。
:08/11/11 00:25
:SH905i
:5HJ58mkI
#50 [みい]
「悠っ!」
「お、なんや元気やなー。ええことあったんか?」
それは、私を温かい優しさで包み込んで、いつも正しい道、光のある方向へ手を差し延べてくれる、
貴方の存在。
*end*
:08/11/11 00:26
:SH905i
:5HJ58mkI
#51 [凛
]
めちゃいい

頑張ってください

:08/11/11 15:04
:D905i
:xQRL1OZE
#52 [ん◇◇]
(´∀`∩)↑age↑
:22/10/27 05:03
:Android
:DE5DdzBs
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