春の希望と･･･【ＢＬ】

　
中村秋を壊しておきながら、望にまでその汚い手を伸ばそうとしている鈴原に、石田はとてつもない嫌悪を感じる。

少しでも早くこの部屋を出たくてたまらなかった。

たまに寝室の方から聞こえる秋の呻く様な泣き声も、もう耳に入れたくない。
　

　
勇気の事うんぬんではなく、石田は望の存在が自分の中で大きくなり過ぎている事に、まだ気付いていない。

ただ、ただ望を鈴原の手に落としたくなかった。

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食器を食堂へ返し、石田は３日前の事を思い出す。

調度すぐそこのテーブルで中西勇気の仲間である
森ナントカか、山ナントカ･･･名前は忘れたが、誰かが話しをしていた。

｢勇気さ、今週の土曜に
三波社長のﾊﾟｰﾃｨｰ行くらしいぜ。｣
　

　
｢三波社長？え！？
あの大手の社長のﾊﾟｰﾃｨｰに行くって？｣

｢ああ、だから５日ほど実家帰るってさ｣

｢マジかよー。｣

偶然聞いてしまった勇気の不在。
調度、自分のルームメイトも実家に帰っていた。

　
北本を監禁しよう･･･

そう思った。

衝動的だが、その考えしか頭に浮かばなかった。

そして思考がその時の事に捕われていて、石田は自分の背後に人の気配が近づいた事に気付いていない･･･
　

　
もし食器を手に持っていたら、確実に落としていただろう･･･。

いきなり古賀が石田の肩をバシっと叩いたのだ。

古｢よー！シンちゃん
　何やってんだよ。笑｣

石｢こｯ･･は！？｣
　

　
望を監禁している事で
普段より冷静さに欠けているのか、無駄に驚いてしまった。

古｢何？ビックリした？｣

石｢･･･別に；｣

皆が恐れる古賀だが、プライベートは今時高校生･･･こんな感じだ。
　

　
古｢シンちゃん暇そー｡｣

石｢シンちゃんって
　言うな；気持ち悪い｣

鈴原と違って古賀はあまり気を使わなくて良い。

周りはそうじゃないらしいが、みんな知らないだけで古賀は案外話しやすい奴だ。
　

　
だだ短気でキレやすい上に、人の好き嫌いが激しいので、扱いは難しいが･･･

コツさえ掴めば、人懐っこい気さえする。

石｢なんで上半身裸？；｣

古｢え？笑
　だって暑いじゃん｣
　

　
いつもより上機嫌な古賀に石田はこの後、１時間ほどその上機嫌の理由を語られたのだった。

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