先生の言うとおり③

　
「店長～この人かなり酔ってて大変だったんすから！どうにかしてください！」

麗子さんの相手を
してくれていた遊馬くん

結構手を焼いたみたい

「遊馬くんありがとう」

こそっとお礼を言うと
いつもの笑顔で答えてくれた
　

　
「ケーキ屋のオープンセレモニーで泥酔するか？普通。はぁ…。アコ、俺こいつ送ってくよ」

と言って麗子さんの
腕を持って
体を支えようとする

しかしそれを
秀人さんが止める

「…達也さん。私が麗子さまをお送りします。」
　

　
「秀じい…でも」

「まだセレモニーの途中でしょ？大丈夫ですよ。“私が”麗子さまをお送りします」

にこりと笑う秀じぃ
けどその微笑みは
最初のものとは違う気がする

…あれ？
もしかして秀じいって
麗子さんを…？
　

　
私のその
淡い期待が当たるのは

もう少し後の事だ

なんだか色々あったけど

セレモニーは
順調に終わっていった

明日は休みで
その次の日にいよいよ
お店のオープンになる。
　

　
朝起きると
すでに横には達也は
居なかった

休みなのに
もう起きてるの？

ゆっくりと体を起こす
　

　
居間に向かう
けど、達也はいない

あれ？いない？
あ、もしかして…

私は、達也がいつも
仕事をしたりするのに
使っている部屋に向かう

案の定達也の姿があった
　

　
達也は何かを
真剣に書いていて

こちらには
気付いていない

なに…してるんだろう

ケーキの試作品でも
考えているのかな？
　

　
そう思って、
体を動かし様子を
伺っていた私の気配に

達也は気付いて
その書いていた紙を
慌てて隠す

「あ、アコ？！」
　

　
「何書いてたの？ケーキの試作とか考えてたなら、私見たい！」

その問いに、
言葉を濁す達也

「…アコは見なくていいから。気にしないで」

そう言って
その紙を見えない様に折ると、オレンジ色のクリアファイルに入れる
　

　
「俺、ちょっと出てくる」

「え？何処に？」

「すぐ帰るから」

そう言って
達也は、行き先を告げず
何処かに出て行ってしまった
　