先生の言うとおり③

　
店の片付けや
レジ締めも終わり

達也を呼びに厨房に入る

すると、達也と美幸ちゃんが何か話していた

「達也…？」
　

　
二人は
私の存在に気付くと

さっきまで話していた
会話をピタリとやめる…

私に聞かれたら
ダメな話しなの…？

「あの、仕事終わったんだけど…。」
　

　
「そう。じゃあ、二人上がってイイよ。」

「…私、達也が終わるの待ってていい？」

そう言うと
困った様子でこちらを見る達也

「…ちょっと、美幸とケーキの事で詰めた話ししたいし、遅くなるから。先帰ってて」
　

　
「…分かった」

私、上手く笑えてる？

胸がざわめく

だって…

美幸ちゃんの呼びかたが

【深沢】から、
【美幸】に変わってた

　

　
ただそれだけ

けど、私には
大きな変化だよ…

「愛子？どうした？」

遊馬くんが私の顔を
覗き込む
　

　
「…な、なんでも。帰ろうっか！」

「…二人はまた残るの？」

「う、うん」

遊馬くんは、ふぅーん
て言うと厨房の方を見る

「まぁイイや。帰ろうか」
　

　
暗い夜道を
遊馬くんと並んで帰る

「愛子、」

「ん？なに？」

振り返ると
真剣な顔の遊馬くん

「店長と上手く行ってないの？」
　

　
「…なっなんで…。
前も言ってたけど、私たち結婚するし、上手くいってなくなんてないっ」

思わず声がでかくなる

「…俺にはそうは見えない。俺は、愛子が幸せになるならイイって思ってた……けど………」

そう言うと、遊馬くんに
腕を掴まられる
　

　
またあの目だ

前もこの目に捕らえられて動けなくなった

真剣な切ない瞳に

捕らえられそうになる

掴まれた腕
その手の力が強くなった時

聞き慣れた声が響く
　

　
「愛子ちゃーん！」

その声に反応した様に
遊馬くんがパッと
手を離す

「れ、麗子さん。」

「あら？こないだの…」

「遊馬です。…じゃあ、用が有るみたいだし俺は先に帰るね。またね、愛子」
　