人生の案内板

『そんな、平気だよ』

私はそうノートに書いたが
押しに弱い私はかけるに
送ってもらうことになった。

内心、嬉しかったかも。

２人だけでいると
周りの雑音が大きく聞こえる。

“なんで泣いてたの？”

かけるは自分の携帯で
そう打ち、私に見せた。

私は言いたくなかったので
下を向いた。

“言いたくない？”

本当にかけるはずるい。
そんな顔で聞かれると
言うしかない。

『13才の少年が障害の弟を
殺害した事件を知ってる？』

と聞いた。

“ああ～あの事件がどうかしたの？”

私は少年のことを話した。

かけるは私が打った文字を
黙って読んだ。

“君が泣く必要ないよ
君のせいじゃないから

君は自分がやりたい事をすればいいんだ。”

とても嬉しかったが
私は納得できなかった。

『私ね、夢とかないんだ。
だから人のためになる仕事をしたい…

でもこんな私でも心理学
に興味を持ったの
だから心理学に関わる仕事をしたいんだ。』

するとかけるは私の前に立った。

いつもの優しい顔ではなかった。
見下ろして私を見てたから
余計怖かった。

“かなちゃんは人のために
生きてるの？
違うだろ。”

胸がズ―ン…と鳴ったみたいだった。

図星だったからだ。

かけるは私の本当の気持ちを
察してくれた。

自分も認めたくはないが
そうだと思った。

でも知られたら無性に
腹が立ってきた。
私の何を知ってるの？

何も知らないくせに…

『私の勝手でしょ…
これは私の勝手な生き方なの!!』

知ったような口調で言わないで…

“俺は思ったことをただ…”

かけるは驚いてた。
そりゃそうだよね。

『…ごめんなさい。
ここでいいよ。
家近いし。
じゃあ、ありがとう。』

そう言って私は走った。

母さんのため…
私は母さんのためにＴ大
に行こうとした。

自分の人生なのに…。