人生の案内板

‘でも心理学部の推薦
はむずいよ
全部論文だし。’

『私はセンターで受験するつもりだけど…』

‘あっ、そうなんだ。’

一般入試の論文をさけるためにね。

‘そなんだ。
じゃあ、頑張れよ
待ってっから。’

自分の顔が熱くなってるのが
よくわかった。

『早くかえれ!!』

と叫び、布団にもぐった。

ツンツンと、綺麗な指で
つつるかける。

『なに？』

‘熱あがったんじゃん？
さっき顔が赤かった。’

『いいから早くかえれ!!』

と、叫びながら玄関まで
かけるの背中を押した。

ガチャ―

玄関の開ける音。

『かな？』
『父さん!?』

父さんがこちらをびっくりした顔でみていた。

『だっ……だっ…』

顔をピクピクさせながら
そうきいた。

『父さんこの人は…『お前は黙ってろ!!』

私が言おうとした瞬間、
父さんが怒鳴った。

‘娘さんの友達です。
娘さん、風邪気味だったので
家まで送りました。

では失礼します。’

かけるはそうノ―トに書くと、
私に会釈して帰った。

『なんだよ。ノ―トに
こまこま書きやがって。
そんで俺が来た途端に
逃げやがって。
情けない男。』

私は父のその一言がすごく傷ついた。

それと同時に憤りを覚えた。

『そんなこと言わないで!!
彼は耳が聞こえないの
話さないんじゃない!!
話せないの!!

なんで気づかないの？』

怒鳴り声をあげた私と裏腹に
父は静かな声で言った。

『世の中にはな、かな
みたいな人ばかりじゃないんだよ。

俺みたいに鈍感なやつもいるんだよ。』

そして父は速やかにテレビのスイッチを押した。

一言、謝ればいいのに。
そう思いながら布団に入った。

翌日。
熱もすっかり下がったので
学校に行った。

『かな!!』

ちえみの声に反応してしまった。

いつもなら喜ぶのに。

『ちえみ……』
『私はＴ大を目指す。
だから…お互い頑張ろ。
あなたは私の友達。
そしてライバル。
私はずうっとこの関係でいたいんよ。』

私はちえみの言葉を決して
忘れないだろう。

こんな友達、初めて。

『私も……。』

私がちえみの立場だったら
こんなことが言えるのか？

いや、ちえみの性格だからこそ
言えるのだ。

そういう所が尊敬してしまう。